◇感謝の心でつながり深める◇
就職時にハウスメーカーやゼネコンを志望する同級生が多かったです。チャレンジを望む性分なのか、みんなとは違うところで頑張りたいと思い、縁あって大成温調に入社しました。
最初の配属先は各現場に出向いて施工図を作成する専門部署。当時はCADがありません。ドラフターとコンパス、三角定規を使いトレーシングペーパーに自筆で描き上げます。まずは格好いいと感じた先輩の図面をまねることから入りました。自分で考えながら線の太さや濃さ、数字の書き込み方など、見栄えのいい図面をまねながら学ぶことが自分には合っていたと思います。
見栄えがいい図面は、若手が担当したものでも現場の職人さんが見てくれます。形から入ることも重要ですが、やはり経験不足から収まりなどに問題が散見され、手直しを繰り返しながら図面の精度を高めていきました。
5年目には東北営業所が管轄する仙台の比較的大規模な複合施設の現場に、長期出張の形で勤務。工事部員ではなく、施工図の作成支援で呼ばれたのですが、現場では自分が一番若かったこともあり、現場に出ていろいろ作業もしました。
図面とだけ向き合っていた時には感じられなかった面白さが現場にはあります。他の職種の関係者も含め、多くの人たちと仲良くなり、視野もどんどん広がりました。工期1年半の間には、建築の職人さんから「設備屋を辞めて、うちの若い衆になれ」と誘われることもありました。
難題は東北の職人さんたちが話す言葉を理解すること。それまで東京から出たことがなく、現場のこともよく分かっていません。まずは言葉を覚えようと、現場の人たちとの会話を心掛けた結果、人の輪もさらに広がりました。
その現場が終わっても東北エリアの現場を次々と回り、気付いてみれば東北での生活が8年過ぎました。独り身での出張がいつの間にか出向となり、東京に戻る時は妻と子どもも一緒でした。
家族とともに現場を転々とするのは、自分にとっては苦になりませんでした。一人で任されていた現場ではその時々で自己判断に基づき、働き方改革を臨機応変に実行していました。忙しい日々でしたが、家族との時間をつくり、各地の名所を回るのも楽しい思い出になりました。
ものづくりの仕事ですが、われわれが相手にするのは顧客であり、他職のゼネコンや設計事務所、協力会社の関係者らといった人になります。良好なコミュニケーションによる人とのつながりが、より良いものづくりにつながります。若手には感謝の心を忘れずに、周囲の人たちとの関係を深めてもらいたい。一緒に働く人たちを好きになれば仕事も好きになり、会社も好きになります。
入社5年目ごろ、東北営業所時代の現場事務所で |
(たまき・まさゆき)1974年川崎市立工業高等学校建築科卒、大成温調入社。リニューアル事業部長、上席執行役員東京本店工事統括部長(現任)などを経て2020年6月から現職。東京都出身、64歳。
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