2021年2月1日月曜日

【中堅世代】それぞれの建設業・276

どんな相手ともしっかりとタッグを組む。それがポリシーだ

  ◇じっくりと人物を見極めて◇

 地盤改良工事を得意とする建設会社で技術者として働く内藤浩助さん(仮名)は、チームワークを第一に考えて現場を動かしてきた。多くの人と連携する中で痛感してきたのは「人は見かけによらない」ということ。一見もじもじしているタイプが粘り強さを持っていたり、自信満々に見える人でも実力が伴っていなかったりなどいろいろなケースがある。

 多くの人と力を合わせなければ現場は前に進まない。だからこそ、早合点するのではなく、じっくりと人物を見極めて相手に合わせながら、より円滑に仕事が流れるための道筋を作っていくべきだと思っている。

 内藤さんは、入社してすぐに配属された地下構造物の現場で、先輩に鍛えられた。地下水位が高く、削孔するたびに水が逆流してきた。なかなか作業が進まず、「毎日が本当に大変だった」と苦笑いしながら振り返る。そうした中で先輩は、元請ゼネコンと打ち合わせを繰り返し、地下水対策を強化しながら無事に切り抜けた。

 先輩は見るからに厳しそうなタイプ。「妥協するな。目の前にある物に対しても、仕事相手に対しても、ちゃんとやれ」と何度もげきを飛ばされた。要領の悪い自分に対して、繰り返し指導してくれ、作業内容はもちろんのこと、仕事に対する姿勢をたたき込まれた。

 尊敬する先輩に負けないように、自分も若手を育てていこうとやる気になっていた時期に2人の部下と出会った。最初の部下は、優秀な大学を出ていて、物おじせずに意見を言うタイプだった。やる気も自信もあるので数億円の現場を任せてみた。現場が終盤に差し掛かったころ、これまでとは全く違う暗い表情で事務所に帰ってきて、「あんなの無理です。間に合いません」と突然言い出した。

 「大丈夫か? 問題ないか?」と顔を見るたびに念押して確認していたつもりだったが、後の祭りだった。近くの現場の仲間たちに連絡して機械や作業員をかき集めて、翌日から乗り込んで、何とか間に合わせた。

 もう1人は、髪の毛を赤く染めていて問題児という触れ込みだった。配属日に「しっかりやってくれ」と声を掛けて、最初に返ってきた言葉は「毎日の仕事を頑張るから、もっと休みがほしいです」。仕事優先の自分からするとふざけるなとも思ったが、芯の強そうな目をしていた。「本当にできるのか?」とたたみかけると、「しっかりやります」と言い切った。

 作業の都合でなかなか休めない時期も多かったが、仕事をやりくりしながら上手に休日を取って遊びに出掛けていた。「見た目で決めつけては駄目。内面や頑張りを見てあげないといけない」と内藤さんは言う。

 若者と接するのは難しい。だが、しっかりと現場をやり遂げてくれると、自分のこと以上に喜びを感じる。さじを投げた部下も、あの時の失敗を糧に成長してくれた。内藤さんは、今の姿勢を大事にしながら、次世代を担う多様な人材を育てていこうと思っている。

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