企業財務のプロとして専門家目線で経営に貢献する |
◇専門家の立場を生かす◇
東京都内に本社を置くゼネコンで働く加藤敦さん(仮名)が大手会計事務所を辞め、今の会社に入社したのは約5年前。経営コンサルティングやM&A(企業合併・買収)に携わる仕事にやりがいは感じていた。だが子どもが生まれ、激務で家族との時間がほとんど取れない生活が続くと思った時、新たな道を進む選択をした。
企業内会計士として再出発した当初は、「何もかもが違って同じことを探す方が難しかった」職場の環境に戸惑いを覚えた。前職はプロジェクトごとにチームが編成され、案件に対応していた。「決まった上司と決まった部下がいる」環境で仕事をするのも慣れるまで少し時間が掛かった。それでも新しい職場と仕事と向き合うことに、楽しさを感じる自分がいた。
ゼネコンに入社して感じたのは、外から見ていた建設業と内側から見た建設業に大きな違いがあることだった。トンネルや道路、ビルなどを造り上げる工程には多くの会社と数多くの人が関わり、しっかりと利益を得るには「優れた現場所長の存在が非常に重要」と知った。そして現場をうまく運営するには管理部門の役割も大きく、現場と管理部門のバランスを整え「原価管理などを本社や支社の管理部門で肩代わりする」ことで、「現場の作業負担が軽減できる」と理解できた。
転職してからあっという間に過ぎた時間。仕事にすっかり慣れ、周囲に目を向ける余裕も出てきた。そんな自分の中で以前からくすぶっていた思いがある。それは「うちの会社はなぜ女性の管理職がほとんどいないのだろう」という疑問だ。能力があれば年齢や性別に関係なくプロジェクトを任された会計事務所。それが当たり前と思っていただけに、「意思決定をするのは男性の管理職ばかり」という環境を、できるだけ早く変えるべきではないかと感じている。
数年前から続いてた産業間、企業間の人材獲得競争。加藤さんの会社も採用に苦戦するケースが多々あった。一緒に現場を動かす協力会社はより厳しい状況にあり、今の状況が続けば「人材難を理由に廃業してしまう会社が後を絶たなくなるのでは」と危機感を募らせる。企業財務の専門家という立場をどう生かしていけるのか。自分の果たすべき役割を考えるようになった。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)もあり、世の中の動きを読むのは難しくなっている。数字を見て分析し、問題点を洗い出して解決方法を探っていく。不安定な時代だからこそ「財務基盤の強化と着実な技術力向上が必要」という思いは日増しに強くなっている。
ゼネコンの社員として働く自分にできることはたくさんあるはず。強い信念を胸に秘め、まっすぐ前を見据えて歩み続けようと思っている。
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