2021年8月5日木曜日

【回転窓】現実と向き合い、真摯な姿勢を

  新型コロナウイルスの流行が長引き、業種間で業績に与える影響も大きな差が出ている。打撃を受けた企業であれば、経営を存続するためにコスト削減や処遇の見直しなど厳しい選択をせざるを得ないケースもあろう▼経団連が先月末に公表した大手企業の「2021年春闘妥結結果」の最終集計。定期昇給とベースアップを合わせた月例賃金の上昇率は1・84%と前年に比べ0・28ポイント低下した。2%を割り込むのは13年以来8年ぶりという▼建設業の月例賃金上昇率は2・43%。自動車など5業種が2%を超えた。一方、コロナ禍で苦境に直面する私鉄に加え、鉄鋼や貨物運輸などの業種も1%の上昇率にとどまった▼政府が賃上げを要請し経済界が応える「官製春闘」が始まったのは14年。それが正しい姿だったのかは賛否両論あるだろう。五輪開催による景気の再拡大という思惑が外れ、大手企業であっても業種間はもちろん、同じ業種の中でも徐々に差が浮き彫りになり始めている▼大手企業以上に中小企業は大変な思いをしているはず。政府には現実と正面から向き合い、道を指し示す姿勢が求められているのではないか。

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