2021年8月2日月曜日

【中堅世代】それぞれの建設業・292

3密に気を付けながら他業種とも仲良く話すように心掛けている

 ◇生き生きと働く姿、子どもたちに◇

  建設現場で躯体構築に従事する中根良介さん(仮名)。元請のゼネコンから若くして優秀な職長として認定され、数々の現場で活躍してきた。温和で人当たりが良いタイプ。「回りが支えてくれて、力を貸してもらえたから仕事ができている。皆の見本になれたらそれが一番」と笑顔で話す。

 建設業界に入ったのは18歳。高校を中退して身の振り方を考えあぐねていた時に、年上の知人から「土木の仕事をやってみないか」と誘われた。建設業界への興味はまったく無かったが、現場に入って仕事を始めてみると、難しさと同時に面白さを感じた。

 誘ってくれた知人は、現場経験20年以上の大ベテラン。「世話してもらいながら、いつしか現場の仕事にのめり込んでいった」と振り返る。原動力となったのは「職人として追いつきたい」というライバル心だった。「今から考えるとおこがましい」と恥ずかしそうな表情を見せ、「何とか近づきたいと思って必死だった。いまだに超えられていない」と話す。

 力を伸ばすために必要な素養には「聞く力」を挙げる。入ったばかりのころは分からないことだらけだった。ベテランになるにつれ知識も経験も増えるが、現場が変わるたびに新たに覚える事柄が必ず出てくる。「分からない時に分からないと聞かなければ吸収できない」と中根さん。今の現場は、若い現場監督の下で働いている。「元請だからと気負ったりせずに、分からないことを職長や作業員たちにどんどん聞いてくる。だから、吸収が早く、こちらも仕事がやりやすい。自分も見習っていきたい」。発注者でも元請でも下請でも、現場を円滑に進めるためには、そうした姿勢が必要だと感じている。

 現在の現場は、昼夜で進める土木工事。特に注意するのが夜間作業だ。決められた作業を、予定時間までに確実に終えなければいけない。多い時には50人以上を率いて作業する。大事にするのは支え合うチームワークで、「お互いに楽しく働くことが理想」と話す。やりがいや充実感を得ながら働くという意味で、甘えを認めることではない。「なあなあになると、トラブルが生じたり事故が起こったりしてしまう。それでは駄目だ」と厳しい口調で言い切る。

 40代に入って、体がきついと思うようになってきたという。教わる立場から、現場を引っ張る職長に成長してきた。今後は、育てる側に軸足を移していく時期となる。

 担い手不足をひしひしと感じており、子どもから見た仕事の姿を大事にしたいと思っている。「現場で働く大人が生き生きとしていたら、『私もやりたい!』と言ってもらえる」と中根さん。そのためには、まずは自分自身と周りの人を、もり立てていくことが不可欠だ。普段の仕事の中で自分ができることを地道に積み上げる--。そうした姿勢で日々、現場に立ち続ける。

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