2019年6月28日金曜日

【延べ1.2万㎡規模、2022年12月オープンめざす】新滋賀県立体育館整備PFI(大津市)、日立キャピタルら12者グループに

滋賀県は26日、PFIを導入する「新県立体育館整備事業」の総合評価一般競争入札で、日立キャピタルグループを落札者とする結果を公表した。

 落札金額は97億1735万0204円(税込み)、総合評価点は1000点満点中764・27点。7月中に仮契約を交わし、議会承認後の10月に事業契約を締結する予定。2022年12月1日の供用開始を目指す。基本計画等策定業務とPFIアドバイザリー業務はみずほ総合研究所が担当した。

 日立キャピタルグループの構成員は▽日立キャピタル(代表企業)▽梓設計(設計、監理)▽大成建設(設計、建設)▽滋賀県建築設計監理事業協同組合(設計、監理)▽桑原組(建設)▽内田組(同)▽ハリマビステム(維持管理)▽協栄ビル管理(同)▽西武造園(同)▽美津濃(運営)▽南産業(同)▽Perfect Trainers(同)-の計12者。入札には2グループが参加した。

 24年に開催される第79回国民体育大会・第24回全国障害者スポーツ大会を見据え、施設の老朽化が進む県立体育館(大津市におの浜4の2の12)を移転建て替えし、県民のスポーツ・健康づくりと文化活動の新たな中核施設として整備する。建設予定地はびわこ文化公園都市内にある滋賀医科大学・付属病院の南側敷地(大津市上田上中野町)約11ヘクタール。現施設はプロバスケット・Bリーグの滋賀レイクスターズがホームアリーナとして使用し、バレーボール・Vリーグの東レ・アローズのホームゲームも開催されている。

 同グループの提案によると、施設は3階建て延べ約1万2838平方メートルで、メインアリーナ約2917平方メートル(1階席2516席、2階席2500席)、サブアリーナ約1322平方メートル(2階席200席)の規模を想定。施設内には多目的室やトレーニング室、キッズルーム、会議室などを設ける。敷地内には多目的広場(約8000平方メートル)や駐車場(常設・臨時で900台)なども整備する。

 事業方式はBTO(建設・移管・運営)で、PFI事業者は▽施設整備▽開業準備▽維持管理▽運営(自由提案事業を含む)-の各業務を担当。事業期間は設計・建設期間が10月~22年9月末の3年間、開業準備期間が22年10月1日~11月末(供用開始日は12月1日)、維持管理・運営期間は22年12月~37年3月末の14年4カ月。予定価格は97億3451万円(税込み)。

 審査では、選定委員会が「事業実施」「施設整備」「維持管理」「運営」「地域経済」に関する提案内容(700点満点)と価格(300点満点)を評価。落札者に決まった日立キャピタルグループの提案は「維持管理運営の知見を盛り込む設計・施工体制」や「アリーナ・多目的広場を含め一体感を得られる施設計画」「スポーツだけでなく文化や地域を意識した事業運営」などの面が評価された。

【自然体験型観光の拠点に】高知県、ヤ・シィパーク(香南市)にオートキャンプ場など整備へ

高知県は、県立公園ヤ・シィパーク(香南市夜須町)を中部エリアの自然・体験型観光拠点とするため、オートキャンプ場やグランピング等の整備を計画している。6月補正予算案に整備計画推進調査委託料990万円を計上、全国の類似施設の調査などを行う。

 ヤ・シィパークは、「道の駅やす」に隣接し、公園内にはバーべキューサイトやビーチバレーコート、遊具施設が整備されている。夏季は海水浴場としても利用されている。

 県は、ヤ・シィパークを中部エリアの自然・体験の拠点として磨き上げるため、マリンアクティビティーの環境整備を進めるとともに香南市や地元の関係者等で構成する「ヤ・シィパーク活性化推進協議会」を設置し、今年3月に活性化に向けたグランドデザインを策定している。

 グランドデザインには▽オートキャンプ場、グランピング、RVパーク(車中泊施設)等の整備▽公園遊具、多目的広場、芝生広場の整備▽アクティビティーセンターの整備▽サイクリングルートと連携可能な環境整備▽ボードウオークの改修等▽景観保全のための植栽の伐採、撤去▽商業施設・公園エリアの統一サインの整備-などが盛り込まれている。

 今後のスケジュールは、7月に調査を委託し、12月から調査結果を反映した整備を順次進める。また、サイクリング環境整備事業の第1弾としてヤ・シィパーク周辺の整備に着手する。

【代表作「住吉の長屋-東邸」の図面も展示】「安藤忠雄展」、9月19日まで国立近現代建築資料館で

 国立近現代建築資料館(大野彰子館長)が、建築家・安藤忠雄氏の建築作品展「安藤忠雄 初期建築原図点-個の自立と対話」を開催している。

 代表作「住吉の長屋」など約190点の建築模型などを交えながら紹介する。初期の作品を交え、空間づくりに懸ける安藤氏の思いを知る貴重な機会となりそうだ。会期は9月23日まで。

 作品展は、1969年に設立した「安藤忠雄建築研究所」が50年の節目を迎えたことを記念して行う。独学で建築を学んだ安藤氏が、90年代まで手掛けた初期の作品を展示。作品展のタイトルにもなっている「個の自立と対話」は都市や自然、光と対話しながら、利用する人々の個性を生かす安藤氏の建築思想を反映して名付けた。

 代表作の一つで、長屋の中央部分をコンクリート打ち放しの住宅にした「住吉の長屋-東邸」(大阪市住吉区、76年竣工)の建築模型に触れることができる。

 敷地内部に水辺を設けた「水の教会」(北海道占冠村、88年)や、壁に十字架のスリット窓をあしらった「光の教会」(大阪府茨木市、89年)の図面(30分の1サイズなど)も閲覧可能。作品展開催に当たり安藤氏は「1枚の図面の中に設計者の思想を凝縮させたい。図面は設計者の言葉だ」とのメッセージを寄せている。

 会場は東京都文京区湯島4の6の15の国立近現代建築資料館(湯島地方合同庁舎内)。開館時間は午前10時~午後4時30分。入館は無料となっている。詳細は建築資料館のホームページへ。

2019年6月27日木曜日

【回転窓】実りと祈りの雨

梅雨入りが遅れていた地域も前線の北上によって、ようやく雨の季節に入った。気象庁は26日に九州北部と四国、中国、近畿が「梅雨入りしたとみられる」と発表。空梅雨で水不足が心配されていた地域にとっては、恵みの雨が期待できるだろう▼春から夏へと移り変わる季節現象の梅雨は、農作物にとっては実りの雨。適度な降雨は人々の暮らしを豊かにするが、過度に少なかったり、多かったりすれば災いをもたらす。豪雨被害が相次ぐ昨今、天候には十分注意を払う必要がある▼気象庁だけに認められていた天気予報は、1995年から民間なども行えるようになった。天気予報の自由化に伴い、気象予報士の資格を新設。警報・注意報などの防災気象情報を除いて、民間企業などが独自に天気や気温などの予想を発信している▼激甚化する自然災害などを受け、国は水害・土砂災害の防災情報の伝え方を見直した。警戒レベルを5段階に分け、危険度や取るべき行動を分かりやすく明示。住民のより迅速な避難行動を促す▼2018年7月豪雨から間もなく1年。災害が起こらないことを祈りつつ、非常時には命を守る行動を!

【町屋風建築の商業施設など整備へ】京都市中央卸売市場第一市場賑わいゾーン活用、契約候補に中央倉庫

 京都市は、京都市中央卸売市場第一市場「賑わいゾーン(南関連棟跡地)」活用事業者を選定するため実施していた公募型プロポーザルで、中央倉庫を契約候補者に選定した。

 対象地約730平方メートルに商業施設や飲食店舗などで構成する2階建ての施設を整備する計画で、買い受け希望価格は4億3000万円。市は今後、売買契約の締結に向け同社と協議する。

 事業候補者に決まった中央倉庫の提案によると、2階建てで本格的な町家風建築の施設を整備。隣接地で同社が計画している宿泊施設と直結させるとともに、施設内には中央卸売市場の食材を活用した飲食店や商業施設、伝統文化・伝統産業製品の「学び・体験」や販売の場などを設ける予定。選定委員会では新たなにぎわい創出だけでなく、回遊性の向上や地域経済・伝統産業の活性化につながる点を評価した。

 今回の事業者公募は、京都市中央卸売市場第一市場の再整備事業で、七条通沿いに誕生した土地を活用し、京都駅西部エリアに新たなにぎわいを創出するのが目的。七条通沿いの土地については、同エリアの活性化将来構想で「賑わいゾーン」と位置付けており、2019年3月に開業したJR梅小路京都西駅の集客力や市場・商店街との相乗効果によって大きな人の流れを生み出すことを目指している。

 公募対象地は、賑わいゾーンのうち、南関連棟跡地となる下京区朱雀内畑町7の3の雑種地で、敷地面積は727平方メートル。用地地域は商業地域(建ぺい率80%、容積率400%)で、20メートル第4種高度地区や沿道型美観形成地区に指定されている。敷地の北側は七条通、東側は新千本通とそれぞれ接している。最低売却価格(予定価格)は2億8510万円、土地の引き渡しについては現状有姿で行う。

【みんなおいで!待ってるよ!!】8月7~8日に夏休み恒例「こども霞が関見学デー」

 東京・霞が関の官庁街で開かれる夏休み企画「こども霞が関見学デー」が今年も行われる。8月7、8の2日間、各省庁がさまざまな仕事を紹介。国土交通省は「冒険!発見!国土交通省!!」をテーマに、41件のプログラムで子どもたちを迎える。

 建設業の魅力を知ってもらうため、大工や庭師、鉄筋といった職人の仕事体験を準備。庁舎の正面玄関ではショベルカーによる書道などが間近で見られる。庁舎の地下を探検しながら免震装置を見学するイベントも用意する。

 バーチャルリアリティー(VR)グラスを装着して高所作業やドローン(小型無人機)を操縦し、インフラメンテナンスが体験できる。ダムカードやダムペーパークラフトなどを使いダムの形状や役割を学んでもらう。恒例の「国土交通大臣とおはなししよう」などは事前予約が必要。詳細は特設サイトへ。

【提携紙ピックアップ】建設経済新聞(韓国)/インフラ改善に32兆ウォン

政府は総額32兆ウォンを投じて老朽化したインフラの改善事業に乗りだす。「持続可能な基盤施設安全強化総合対策」を18日の閣僚会議で決定。供用開始から30年以上が経過した地下施設は原則更新する。

 下水管路1500km、鉄道4100kmをはじめ、老朽化した道路、港湾、空港、貯水池などで大規模な改善・補修工事を順次展開していく。

 完成後30年が経過しているインフラ構造物の割合は貯水池が96%と高い水準を占める。続いてダム45%、鉄道37%、港湾23%などが目立つ。こうした現況を踏まえ、政府は老朽基盤施設に対する安全投資を拡充する。来年から2023年までに年間平均で国費5兆ウォン、公共・民間投資3兆ウォンの計8兆ウォンを継続的に投じることにした。

 具体的な改善計画では22年までに一般鉄道3421kmと高速鉄道692.8kmを改良。20年以上経過した下水管路1507kmを更新・補修する。老朽上水道は来年までに381km、27年までに835kmを改良する計画。済州空港など20カ所の空港施設の耐震補強にも取り組む。

 橋梁・トンネルなど老朽化した道路(事故多発区域を含む)では拡張・舗装工事のほか、線形改善事業も展開。安全度が不十分(Dランク)の港湾・漁港施設10カ所の補強工事も進める。

 地域の民間事業者が管理するガス・熱水送管に対しては融資を通じた国費支援を行う。通信や電線などケーブル難燃材交換事業、都市ガス環状網270kmの整備などを推進する。安全投資を拡大する公共機関には経営評価点の付与、民間企業には減税措置を講じるなど、インフラの安全対策への投資意欲を喚起する。

CNEWS、6月19日)

【提携紙ピックアップ】セイ・ズン(越)/メコンデルタ開発計画の進捗報告

 政府は18日にホーチミン市で、メコンデルタ地方の気候変動に対応した持続可能な開発へ向けた2か年計画を評価する会議を開いた。関係省庁がそれぞれ進捗(しんちょく)を報告した。

 ファム・ホン・ハー建設相は「建設省は行動計画を立て、九つの課題ごとにワーキンググループが対応してきた。地方政府との調整も行っている」と状況を説明した。

 報告によると、同地方の水道が普及している都市人口の割合は全国平均を上回る89.6%。建設省は現在、世界銀行の支援を受けて上水道整備プロジェクトを実施している。廃棄物の回収率は78%。10カ所の廃棄物処理場があり、処理能力は排出される全廃棄物の3割にとどまる。同地方には、グレード1都市2カ所、グレード2都市9カ所を含め169の都市エリアがある。都市化率は27.2%と上昇を続けており、生活環境は徐々に改善している。

 ハー大臣は「メコンデルタの都市化率は全国平均よりかなり低い。都市インフラはぜい弱なままだ。廃棄物処理や下水道整備は大きな改善がなく、設備は旧式の技術を用いたものだ。福祉住宅の整備も計画より遅れている」と課題も指摘した。さらに政府に対し、洪水や地滑り、干ばつ、塩害といった気候変動の影響に対応する安全な住宅の整備を建設省が地方政府を先導して行えるよう要望した。

セイ・ズン、6月22日)

【設計・施工は竹中工務店】東宝ツインタワービルを建て替え、完成予定は2023年春

 東宝は東京・日比谷にある複合ビル「東宝ツインタワービル」を建て替える。完成から半世紀が経過し老朽化した建物の更新を図る。設計・施工は竹中工務店が担当する。12月末に閉館して解体・新築工事を進め、2023年春の開業を目指す。

 東宝ツインタワービルの所在地は千代田区有楽町1の5の2(敷地面積1474平方メートル)。東京メトロ・都営地下鉄日比谷駅やJR有楽町駅に近接し、西側に日比谷公園が広がる。建て替え後の規模は、地下SRC・RC地上S造地下2階地上11階塔屋1階建て延べ1万6697平方メートル。主用途はオフィスを想定。一部低層部に商業施設を入れる。

 東宝ツインタワービルは1969年5月に完成した。オフィスや商業、ダンスホールなどが入り、東宝が土地と建物を所有する。屋上にある2本の円柱塔が特徴で、東宝が創業した日比谷のシンボルとして親しまれている。

2019年6月25日火曜日

【回転窓】大切なのはストーリー

高校3年生の冬休みに初めてアルバイトをした。勤め先は東京都内の物販店。年上の大学生が働いていて大人の世界に足を踏み入れたような気分になった▼新米の高校生にとてもよくしてくれた先輩大学生が休憩所で本を読んでいた姿がかっこよく、では自分もと思って同じ本を買った。その本は当時大流行していた村上春樹さんの『ノルウェイの森』だった▼数多くの作品を世に送り出し国内外で高い人気を誇る村上さんが資料を寄贈し、母校の早稲田大学に「国際文学館(村上春樹ライブラリー)」が作られるという▼大学在籍時に村上さんがよく利用していた演劇博物館の隣にある4号館の一部を改修。先週記者会見した早大の田中愛治総長によると、以前から村上さんと親しかった建築家の隈研吾さんに設計を依頼したところ、快諾を得られたそうだ▼田中総長が小説にとって大事なことはと聞いた時、村上さんは「それはストーリーです」と答えたそう。同館のオープン予定は2021年春。多くの人を魅了してきた村上文学がどのような形で建築に落とし込まれるのか。隈さんの手による設計の完成が今から楽しみだ。

【記者手帖】消える魔球も今は昔

福島市にある福島県営あづま球場は1986年に完成した。総合運動公園内にあるこの球場はかつて、一部の人から「消える魔球場」というあだ名で呼ばれていた。その理由は砂ぼこりが尋常ではないから◆晴れた日に風が吹くとグラウンド内は恐ろしいほど砂じんが舞い、選手は体を風下に向け背を丸めて風がやむのを待った。ネット裏のスタンドで弁当を食べている時、砂ぼこりに見舞われると砂が落ちてきて、まるでコショウをまぶしたようになったという逸話もある◆砂ぼこりが舞うたびに球審はタイムをかけて試合を中断するのだが、その前に投手が投げれば打者は目を開けていられずボールが見えなくなる。それが「消える魔球場」というあだ名の由来である◆あづま球場は来夏の五輪で野球とソフトボールの競技会場に選ばれている。グラウンドは人工芝になるそうで、名物だった消える魔球は姿を消すことになる。オールドファンにとっては少し残念かもしれないが、新装された球場をぜひとも見に行ってみたい。(石)

【11人のけんせつ小町が登場!!】キャリア教育サイトに「けんせつ小町特設ページ」が誕生

 東京書籍が運営する国内最大級のキャリア教育サイト「EduTownあしたね」に、けんせつ小町の特設ページが誕生した。

 施工管理や設計、研究、不動産開発などさまざまな分野で活躍中のけんせつ小町11人が登場。建設業を志した理由や仕事への思いなどを写真・イラストを交えて紹介している。

 日本建設業連合会(日建連)のけんせつ小町委員会(新井英雄委員長)が協力した。同サイトは全国の小学・中学・高校約7000校の児童や生徒、教員ら110万人が利用している。建設業の仕事を紹介するのは初めて。

 特設ページでは11人がインタビューに応じ、日々の業務内容ややりがいなどを語っている。自己紹介のほか、「私のおすすめ本」などユニークな切り口が満載だ。日建連の担当者は「建設業に興味を持ち、もっと知りたい、学びたい、なりたいと思えるきっかけにしてほしい」としている。

【1700人参加、グラブ浚渫船など披露】中部整備局名古屋港湾ら、名古屋港で「海で働く船見学会」開く

 中部地方整備局名古屋港湾事務所と港湾関連4団体が主催する「海で働く船 船内見学会」が21、22日の2日間、名古屋市港区の名古屋港ガーデンふ頭で行われた。

 親子連れなど2日間で1700人以上が訪れ、普段はめったに見ることができない作業船の内部や港内を見学した。グラブ浚渫船の作業デモンストレーションも行われ、参加者は海水がグラブ内からこぼれ落ちる様子に歓声を上げていた。

 港湾関連4団体は、日本海上起重技術協会中部支部、日本潜水協会中部支部、全国浚渫業協会東海支部、名古屋清港会。愛知県港湾空港建設協会も後援した。

 展示、公開されたのは名古屋港湾事務所が所有する浚渫兼油回収船「清龍丸」、名古屋清港会が所有する清掃船「あゆち」と「清港丸」、小島組が所有するグラブ浚渫船「第361良成丸」と空気圧送船「KR3000」。また、名古屋港ポートビル内の名古屋海洋博物館では作業船の模型・パネル展示のほか、22日には名古屋港湾事務所所有の「翔龍」による港内見学会も行われた。


【JRA、メインスタンド改築など計画】京都競馬場(京都市伏見区)を全面改修、完成予定は2024年3月

新スタンドの外観イメージ(提供:JRA)
 日本中央競馬会(JRA)は24日、京都市伏見区にある「京都競馬場」を全面リニューアルすると発表した。2025年に迎える京都競馬場の開設100周年を記念した事業の一環。延べ6・1万平方メートルのメインスタンド改築をはじめ、サブスタンドの改修、厩舎(きゅうしゃ)関連施設の改築、馬場の改修を含め施設全体を一体的に整備する。20年2月から整備工事に着手し24年3月の完成を予定している。工事の発注方式や時期などは未定(本部広報部)。
接続エリアの完成イメージ(提供:JRA)
 京都競馬場の観覧席はグランドスワンとビッグスワンがあり、メインスタンドのグランドスワンは現在のS・SRC造7階建て延べ約6万6000平方メートルからS造6階建て延べ6万1000平方メートルの規模に改築する。サブスタンドのビッグスワン(7階建て延べ約5万2000平方メートル)は内装や設備などを全面改修。両スタンドともに新たな席数は未定。
全面リニューアル後の京都競馬場全景(提供:JRA)
 厩舎関連施設は現在の当日厩舎20棟200馬房から17棟200馬房、滞在厩舎を6棟44馬房から4棟44馬房に改築する。このほかレースに出走する競走馬が使用する装あん所や競走馬診療所なども配置を見直した上で改築する。

 馬場は芝、ダート両コースの路盤改修し、馬場入退場経路の整備を含めた地下馬道なども改修する。リニューアル後もコースの線形(レイアウト)は変更しない。
新パドックの完成イメージ(提供:JRA)
 工事のため、20年11月から23年3月まで京都競馬場はレース開催を休止する。天皇賞(春)や菊花賞など同競馬場で行っていたレースの振り替え先は未定。現スタンドのグランドスワンは1980年、ビッグスワンは1999年に完成した。

2019年6月24日月曜日

【回転窓】構造と感性

「人間が自分で判断する自信をなくし、コンピューターに形まで決めてもらうようになるのは望ましくない」。5月29日に亡くなった構造設計家・川口衞氏が生前そう話していた▼1960年代から構造設計に携わり、建築構造と造形の在り方や新しい構造技術の開発を基軸に数多くの功績を残した。新たなアイデアと斬新な建築物を具現化した象徴が28歳で挑んだ国立代々木競技場(東京都渋谷区、1964年竣工)であろう▼当時について「前例のない建築を実現するため自ら構造計算式を生み出し手動の加算機で計算した」と伺ったことがある。後にコンピューターで構造計算をやり直すと、全く同じ結果だったという話も印象的だった▼難しい理論を積み重ねる努力は貴重だが「事象の始まりは根源的なもので簡単な原理から考え始める。それが楽しい」とも。語り口は静かながら建築に対する情熱がひしひしと感じられる構造家だった▼ICT(情報通信技術)や人工知能(AI)など技術の進歩はめまぐるしいが、肝心なのはそれを使う人材。直感や本能を磨き自信を持とう-。こう後進に投げ掛けているに違いない。

【米NFLへの挑戦後押し】山下PMC、アメフト・佐藤敏基選手とパトロネージ契約

 山下PMC(東京都中央区、川原秀仁社長)は、アメリカンフットボールの佐藤敏基選手とパトロネージ契約を締結した。

 佐藤選手は2018年から同社で勤務しながら、米国のプロリーグ(NFL)挑戦を続けている。同社は佐藤選手の夢に共感するスポンサーの募集や広報活動などで支援していく。

 佐藤選手は、17年からトライアウト(入団テスト)に参加しており、20年開設予定の新興リーグ「XFL」のスカウトから高評価を得ているという。XFLのスターティングメンバーに入り、21年のNFL入団を目指している。NFLのチームに入団できた日本人選手はおらず、実現すれば初の快挙となる。

【凜】丹青社コミュニケーションスペース営業統括部・田原政耶さん

 ◇仲間と共に顧客を笑顔に◇

 学生時代のアルバイト先で丹青社が手掛けた空間に魅了され、強い決意を秘めて就職活動に臨んだ。入社後は得意のコミュニケーション力を生かし、顧客との対話が重視される営業職を希望。2年間は営業のイロハを学び、3年目に制作部門へ配属。現場監督として汗を流した。さまざまな関係者と時間を共有する中で「性別を超えて活躍できるのが魅力」と思うようになった。

 現在、執務空間や遊戯施設を中心に顧客が求める空間デザインを引き出すコミュニケーションスペース営業統括部に身を置く。川上段階での営業は「時に自分が試される場」と責任の重さを感じる。フランクになり過ぎないよう幅広い知識を織り交ぜながらの会話を肝に銘じる。

 今年に入り念願だった米国出張の機会を得た。向かった先は、毎年3月にテキサス州で開かれる音楽と芸術の祭典「サウスバイサウスウエスト」。映像コンテンツや世界が何に注目しているのかを目の当たりにし、「他社と差別化を図る高度な提案力に役立てられる」と手応えを実感。同時に海外視察を許してくれた会社に感謝しているという。

 入社5年目。プロジェクトを成功させるには「性別や年齢を超えたチームの結束力が重要だ」と考える。「人と人との橋渡し役になること」を目標に、語学の勉強など自己研さんを怠らない。

 (営業3部2課、たはら・まや)

【やっぱり!マイ・ユニホーム!!】東亜建設工業「動きやすさと通気性で快適に」

 動きやすさと通気性に優れた自慢の作業服と胸を張る。作業時の突っ張り感を解消するために特種立体裁断などを取り入れた。

 夏用ブルゾンや夏用シャツには、通気性向上と吸汗速乾機能を持つ素材を採用。衣服内の換気のためにエアレーション機能なども取り入れ快適性向上につなげている。現場社員からは「一気に仕事モードへ切り替えてくれる大切なアイテム」(現場土木職の女性)といった声が寄せられている。

 現在のユニホームが導入されたのは2016年4月。女性現場社員から「自分に合うサイズが無い」「だぶつきが目立つ」といった声があったことなどを踏まえ、約20年ぶりに刷新した。「中身が一新され、特に夏の暑さが厳しい現場で、通気性・速乾性に優れた夏服が重宝されている」(開発を担当した人事部ヒューマンアフェア事業室の青木健児室長)。

 デザインは従来のカラーを踏襲。冬用、夏用作業服の両方に、ブルゾンと長袖シャツ、パンツを準備した。女性用作業服も新たに用意。現場建築職の男性は「この作業着と言えば東亜建設工業と認知してもらえるよう仕事に臨んでいる」と話す。ユニホームを身に着けた一人一人が会社の看板という思いを胸に、日々の業務に当たっている。

【駆け出しのころ】佐藤工業執行役員監査室長・脇田和久氏

 ◇エンジニアとしての自信と誇りを◇

 大学進学時に土木工学科を選んだのは小学3年生の時に見た映画「黒部の太陽」がきっかけです。石原裕次郎が主演だったことは分かっていなかったと思いますが、「こんな大きなモノを作る、すごい仕事があるんだ」と強い印象を受けたのを覚えています。

 1983年に入社。最初の配属先は水資源開発公団(現水資源機構)発注の長柄ダム建設工事現場(千葉県市原市)でした。土を盛り上げて作るアースダムで、堤高52メートル、長さ250メートルと、この形式では東洋一の規模を誇ります。大学で土質を勉強し、ダムを造りたいと思っていたので、希望通りの職場でした。

 施工は当社と青木建設(現青木あすなろ建設)のJVが担当。職員は30人超で、年の近い先輩も多く、測量や現場実務の基本を習いました。7~8カ月過ぎたころ、ダムの土質試験室に異動。試験室はスタッフが5人で、私以外はすべて青木建設の方でした。

 室長は大変厳しい方でしたが、何も知らない新入社員の私に会社の枠を超えて丁寧にいろいろなことを教えてくれました。何よりも衝撃だったのは、その室長が事務系一般職で会社に入られ、独学で土木を学び、エンジニアになられたということでした。仕事に対し妥協を許さず、エンジニアとしてのプロ意識の高い方でした。この方との出会いが、その後の私の土木技術者としての歩みに大きな影響を与えたと思います。

 1990年に大阪支店へ移り、2010年に支店の土木部長に就任するまではほぼ現場勤務でした。高速道路や浄水場、ダムなど大半は“明かり工事”で、3本だけシールド工事を担当しました。このうち、神戸市発注の西神シールド工事(径2・8メートル)は、マシン到達部をマンホール(人孔)の決められた空間に寸分違わず誘導しなくてはいけない工事で苦労しました。

 到達部を薬液注入で固め、セグメント1リング分90センチを掘るたびにマシンを止めて位置を測量。ズレがあればマシンの掘進角度を変えて調整する。ドキドキしながら最後の掘進を終え、到達側の壁からマシン先端のカッターが見えた時の喜びは今も忘れられません。その後、「貫通の脇田」と呼ばれるようになりました。

 建設業の仕事はやりがいがあると言われますが、それは実際にやり遂げた者にしか分かりません。だから、若い技術者には最後までやり抜く力をつけてほしい。エンジニアとしてプロ意識を持ち、自分が目指すべきエンジニア像をしっかりと見定め、それに向けてさまざまな挑戦をしてもらいたい。エンジニアがみんな自分の仕事に自信と誇りが持てるようになれば、一般の方々にも建設業はどういうものかが伝わり、「建設リテラシー」がきっと進むと思います。
入社8年目で担当した大阪支店西神シールド作業所の現場で(左側が本人)。
写真㊧は到達したシールドマシン
(わきた・かずひさ)1983年大阪工業大学工学部土木工学科卒、佐藤工業入社。大阪支店土木事業部土木部長、同土木事業部長兼土木企画部長などを歴任。2018年から執行役員監査室長。奈良県出身、59歳。

2019年6月21日金曜日

【回転窓】アジサイと選挙

アジサイが見ごろを迎えている。先週、東京でも開花宣言があった。近所の庭に咲くアジサイも青紫の鮮やかな色彩を放っている▼アジサイの原産地には諸説あるが日本説が有力。古くから和歌にも詠まれている。「言問はぬ/木すらあぢさゐ/諸弟(もろと)らが/練りのむらとに/あざむかれけり」(万葉集、大伴家持)。アジサイは梅雨の時期に美しい姿を見せるがすぐにあせた姿になる。このため変わりやすいものの例えとして使われる▼この歌も、もの言わぬ樹木でさえアジサイのように移り変わりやすい。あなたの練達な心にだまされました、という解釈になるのだろうか。あでやかな外見ばかりに目をとらわれていると、いつ欺かれるか分からないと暗示しているのかも▼永田町ではダブル選挙の風が収まり、参院選に向けた準備が着々と進む。ご存じの通り参院選は選挙区代表と比例代表を選ぶ。比例代表には各業界を代表する職域代表者も立候補する▼心地よい言葉だけを並べる候補者ではなく、業界のためにしっかりと働いてくれる候補者を見極めて国会に送り出したい。そのためにもまずは投票所に足を運ぼう。

【総延べ16.5万㎡、設計・施工は大林組】ららぽーと沼津、10月4日オープン

 三井不動産は静岡県沼津市で建設中の「三井ショッピングパークららぽーと沼津」の概要を発表した。

 オープンは10月4日。飲食や物販など214店舗が入る県東部最大級のショッピングモールとなる。コミュニティー・キッズスペースも充実させる。設計・施工は大林組が担当している。

 建設地は同市東椎路の国道1号北側。敷地面積約11万9816平方メートル。建物はS造4階建ての店舗棟と同5階建ての立体駐車場棟で構成し、総延べ面積約16万5000平方メートル。店舗棟の外壁には軽量で耐久性に優れたALC(軽量気泡コンクリート)材を採用。南側エントランスは富士山、北側エントランスは街並みをイメージした外観になる。

 店舗棟は1~3階が店舗、4階が屋上駐車場。中央には、屋上までの吹き抜けと壁面イルミネーションで構成する「ひかりの広場」を設け、大人数のイベントにも対応する。レストラン街を1階、フードコートを3階に配置。2階には、乃村工芸社と協働でデザインしたキッズスペース「こにわハウス」と「こもりらのもり」もあり、子育て中の家族連れが安心して過ごせる場を提供する。施設内にはシネマコンプレックス、ボウリング・ゲームセンターを備えた大型アミューズメントも設ける。駐車台数は約3600台。

 現地で概要を発表した山上真吾三井不動産商業施設本部リージョナル事業部事業推進グループ統括は「市全体の活性化に貢献し、地域に愛される施設にしたい」と意気込みを語った。

【渋谷に新名所、商業施設や劇場など】渋谷パルコ、11月下旬オープン

 パルコは、東京都渋谷区に建設中の大型複合施設「渋谷パルコ」を11月下旬にオープンさせる。

 商業施設、劇場、オフィスなどで構成。「次世代型商業施設」と銘打って、デザイン、アート、エンタテイメント性の優れる専門店を配置するとともに、デザイナーやクリエイターとさまざな取り組みを行い、感性や個性を求めて世界中から人が訪れるビルを目指す。

 2015年に都市再生特別地区の決定を受け、市街地再開発事業として整備を進めていた。計画地は宇田川町15の1。規模はS一部RC造地下3階地上19階建て延べ約6・4万平方メートル。設計・施工は竹中工務店が担当している。約180店舗が入り、ファッション、ゲーム、アニメといった日本の文化の発進拠点を設ける。劇場は636席の規模。産官学民連携組織の渋谷未来デザインも入居する。

 商業空間の基本構想は英国に拠点を置くデザイン事務所のBenoyが練った。高低差のある敷地を生かし、立体的な街路や屋外広場を配置する。コージェネレーションシステムを中心とした高効率エネルギーシステムなどを導入しており、国土交通省のサステナブル建築物等先導事業に採択されている。環境デザインを地下1階の「CHAOS KITCHEN」が藤本壮介氏、2階をシンガポールなどで活動するクリエーティブディレクターのテセウス・チャン氏が手掛けた。

【建設業らに協力呼び掛け】東京都と五輪組織委、今夏に交通混雑緩和策試行

東京都と東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、2020年東京五輪・パラリンピックの開催に向け今夏に試行する交通混雑緩和策を公表した。

 大会期間に相当する集中取り組み期間(土日を除く7月22日~8月2日、同19~30日)を設け、物流や建設などの関係企業に混雑回避の取り組みを依頼する。都は期間中に稼働している都発注工事のうち、受注者の協力が得られる現場に対し、早朝や夜間の工事車両の出入りや工事車両数の削減も呼び掛ける予定だ。

 集中取り組み期間には五輪大会本番並みの交通量削減目標を掲げる。東京圏の一般交通は通常時の一律10%減を目指す。競技会場が集中していたり道路・鉄道の混雑が多発したりするエリアを重点取り組み地区(都内16カ所)と位置付け、出入りする交通量を30%減らす。首都高速道路の交通量も最大30%減を目標とする。

 都らは、交通需要の抑制・分散・平準化を図る交通需要マネジメント(TDM)の取り組み例として、混雑時間や混雑エリアを避けた車両通行などを挙げている。特に五輪開幕1年間に当たる7月24日前後の同22~26日には実際の削減効果の測定を計画している。

 7月24日、26日には本番さながらに交通システムマネジメント(TSM)も試行する。高速道路では都心方向に向かう11カ所の本線料金所で開放レーン数を制限するとともに、大会時に関係者専用となる選手村周辺など4カ所の入り口を閉鎖する。混雑が発生しやすい路線はモニタリングをし、混雑状況に応じた閉鎖入り口の追加や解除も行う。

 一般道では環状7号線にある都心方向の信号機で、午前5時~正午の青信号時間を短縮する。各競技会場で今夏から本格的に始まるテストイベントの期間に合わせ、会場付近の交通規制や駐車場の利用抑制の試行も別途行う予定だ。

 これらの取り組み内容は19日に開かれた両者主催の「輸送連絡調整会議(第8回)」で示された。約1カ月後の試行に向け、都が進めるスムーズビズの参加企業などを中心に、経済団体・業界団体なども介して協力を呼び掛ける。試行結果を踏まえ、本番に向けた改善策や追加対策の検討、TSM実施場所の見直しなどを進めるという。

 都は「都庁2020アクションプラン」の中で、大会期間中に都発注工事の調整に取り組む方針を打ち出している。今夏の試行については、関係各局で詳細を詰めている段階だ。

2019年6月19日水曜日

【回転窓】リケジョに違和感

理系女子を指す「リケジョ」という言葉に違和感を覚える女性が増えているという。理工学部系にもっと女子が進学すれば、わざわざ理系女子だけを強調する、こうした言葉は不要になるだろう▼政府がまとめた2019年版の男女共同参画白書によると、大学での理工系分野の女性割合は依然として低く、諸外国に比べても低水準だった。その原因は学力不足ではなく家族の意向が影響しているという▼日本の女子の数学、科学の成績は経済協力開発機構(OECD)加盟国の男子平均よりも高い。白書では満足できる進路選択ができなかった人のうち、家族の反対を理由に挙げた女性は17・3%で、男性より7・3ポイント高かった▼家族が反対する理由にはいろいろあるだろうが、理工系関係の就職先に手本となる女性技術者が少なく、将来のライフプランが描きにくいというのも進路に大きな影響を与えていることは間違いない▼国土交通省は14年8月に関係5団体と策定した「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」の見直しの検討に入る。女性が活躍できる職場づくりをどう進めるのか。業界全体を巻き込んだ議論を期待したい。

【ダイナミックな曲面外壁を実現】大林組、ガラスファサードの「ねじり工法」初施工

 大林組が短工期・低コストでダイナミックな曲面のガラスファサードを実現できる「コールドベント工法」を国内で初適用した。フラットな四角形のユニットカーテンウオールを現場でねじりながら取り付ける。

 多数の三角形ユニットを組み合わせる方法などに比べ、製作・施工期間が約15~20%短縮でき、約20~25%のコスト低減も期待できるという。施工での知見に基づいた独自の技術基準を確立し、積極的に提案していく。

続きはHP

【こちら人事部】中設エンジ「専門性と総合性持つ人材を育成」


 ◇一期一会の姿勢を大事に◇

 「食品工場に特化した総合エンジニアリング企業」として事業を展開する中設エンジ(名古屋市西区)。1968年にサブコンとして出発し、親会社である伊藤忠商事や名古屋鉄道の関連施設、両社が開発する分譲マンションの設備工事などを担ってきた。その後、他社との差別化を図るため、食品工場を対象にした生産設備の設計・据え付け施工や建設に事業領域を広げてきた。

 現在は、食品工場の建築・設備・生産ラインのすべてを、計画から設計・施工まで一貫して手掛ける。人事部採用チームの金岩聡チーム長は「事業の8割が食品工場という点で日本でもまれな存在」と特徴を紹介する。

 採用で重視するのは「知的好奇心が強い」と「人が好きである」の2点。食品工場はさまざまな技術要素が凝縮されており、各技術者には専門性とともに広い技術領域を俯瞰(ふかん)して見る力が求められる。「未知の分野に対しても強い興味を示すような人材を求めている」と金岩氏は言う。

 さまざまな専門分野の技術者が集まってチームとして仕事を進めるため、互いに助け合うコミュニケーションも不可欠。「スマイル&コミュニケーション」という方針を全社員が共有して取り組んでいる。

 採用に向けては、まずは会社のことを知ってもらうことが大切との認識から、1日のインターンシップ(就業体験)を行っている。会社や仕事を説明する際は、良い面も悪い面もすべてをオープンに伝え、「一期一会」を意識して学生に向き合うよう心掛けている。面接でも楽しく会話をすることを大事にしている。時には、就職活動全般に関してアドバイスすることもあるという。

 研修制度も充実している。入社から1年間は新入社員教育期間と位置付けている。まずは、親会社の伊藤忠商事グループ全体の集合研修でビジネスマナーを学んでもらう。その後、社内研修で建築などの基礎知識を学んでもらう。CAD実習や設計研修、現場研修なども行う。2人程度を1組とした現場業務の体験期間も設けている。2年目以降は専門職種ごとに月1回程度の技術研修を実施している。

 食品工場という施設を理解するには、プロジェクトの最初から最後まで自身の目で見て体感することが重要となる。入社後最低5年間は、現場での施工管理業務に従事し、食品工場の特性を理解しながら基礎的な技術を身に付けてもらっている。同社が目指すのは「食品業界におけるトップブランド企業」。一人一人が専門性と総合性を兼ね備える必要があり、そうした観点から人材育成に力を入れている。

 「仲間意識が強く、厳しい時、辛い時でも一人で悩むことなく、明るく前を向いて仕事ができる会社」と金岩氏。就職活動に取り組む学生に向けては、「キラリと光る会社はいろいろなところに埋もれている。1社でも多く足を運んで、働く人を見て話をすることで、一番の会社を見つけてほしい」とアドバイスする。

 《新卒採用概要》

 【新卒採用者数】 男性9人(うち技術系9人)、女性2人(うち技術系1人)(2018年度実績)
 
 【3年以内離職率】14%(16年度新卒)

 【平均勤続年数】 男性14年、女性8年(19年4月末時点)

 【平均年齢】   44・2歳(19年4月末時点)。

2019年6月18日火曜日

【回転窓】改めて思う災害への備え

最大震度6弱を観測した大阪北部地震が発生してからきょうで1年。災害の教訓を防災対策に生かす大切さは常々言われてきた▼地震から1年を迎えるのを機に、大阪商工会議所は会員企業を対象に防災・減災対策に関する調査を実施したそうだ。結果を見るとBCP(事業継続計画)を「策定済み」「策定中」と答えた企業は38・8%にとどまり、3割弱は「策定していない」と回答した▼災害への備えでは、BCPの策定や食料備蓄、緊急連絡網の整備などとともに、情報を速く正確に伝え住民の避難行動につなげる重要さも注目されている。特に水害や土砂災害ではいち早い情報の伝達が命を守る上で非常に大切になる▼国土交通省の近畿地方整備局が新聞、テレビ関係者とともにメディア連携協議会を設け、住民の避難行動につながる情報の提供や共有について検討するという。「気象情報を出し、メディアが危険な状況を伝えてもなかなか逃げてもらえない」。初会合の席で行政担当者は苦しい胸の内を明かしたそうだ▼いつどこで起こるか分からない自然災害にどう備えていくか-。まだまだ絞れる知恵はあるはずだ。

【環境保全を考えるきっかけに】レインボーブリッジなど5橋、6月22日と7月7日にライトダウン

 首都高速道路会社は夏至の22日と地球環境を考える「クールアース・デー」で七夕の7月7日に、首都高に架かる五つの橋でライトダウンを実施する。

 地球温暖化の防止と、環境配慮意識の向上を促すのが狙い。自主的な取り組みの一つで、ライトアップされていない首都高の夜景を見てもらい、環境に配慮した生活を考えるきっかけにしてもらいたい考え。高速道路本線の照明は消さない。

 レインボーブリッジ(高速11号台場線)=写真、横浜ベイブリッジ(高速湾岸線)、鶴見つばさ橋(同)は午後8~10時、かつしかハープ橋(高速中央環状線)、五色桜大橋(同)は日没から午後10時までライトダウンする。両日の取り組みで合計約2000kW時の電力削減になるという。

 クールアース・デーはG8(主要国首脳会議)が北海道・洞爺湖で2008年の7月7日に開かれたのを機に定められた。環境保全などの取り組みが毎年各地で行われる。

【記者手帖】ものづくりの原点は人

世界遺産にも登録されている頭ケ島天主堂は長崎県の五島列島北東部、人口20人にも満たない小さな島にある。建物は小ぶりだが珍しい石造りの教会で、内部のかわいらしい花の装飾から「花の御堂」とも呼ばれる◆新上五島町出身の建築家・鉄川与助が設計・施工を手掛けた。費用を抑えるため地元の石を切り出し、信者らが船で運び、積み上げた。石壁には作業の際に刻まれた符丁の漢数字がいくつも残る。資金難により工事は2度中断したが、約10年をかけ1919年に完成した◆石壁を利用して列柱をなくした折り上げ天井、花の彫刻、窓枠下の水抜き穴など随所にきめ細かな工夫や心配りが見られる。素朴で人の手のぬくもりにあふれた穏やかな祈りの場だと感じた◆「鉄川与助さんが造ってくれたんです」。案内してくれた老人の言葉には誇らしさと感謝が込められているように思えた。信者が生活を切り詰めて建設資金を捻出しているのを知っていた鉄川与助は、工事が中断しても決してやめようとはしなかったそうだ。小さな教会にものづくりの原点は人だと改めて教えられた。(松)

【YouTubeで期間限定公開】東急建設ら制作の「復興の道しるべ」、土木学会映画コンクールで最優秀賞受賞


 東急建設らが制作したドキュメント作品「復興の道しるべ」が、2018年度土木学会映画コンクール(主催・土木学会)で最優秀賞を受賞した。東日本大震災で甚大な被害を受けた三陸鉄道北リアス線(現三陸鉄道リアス線)の復旧を描いた作品。鉄道建設・運輸施設整備支援機構、鉄道総合技術研究所と共同で制作した。

 同作品は東日本大震災で大きな被害を受けた三陸鉄道リアス線の復旧工事に携わった土木技術者が、一日も早い復旧に向け奮闘した姿を描いたドキュメンタリー。災害復旧工事に携わった土木技術者や関係者へのインタビューを中心に構成した。

 土木学会映画コンクールは、社会基盤整備に対する適切な理解や技術の発展、土木技術者の資質と社会的評価の向上につながる優れた映像作品を顕彰し、企画者や制作者を表彰する。1964年から2年に1度開催している。

 今回の受賞を記念して7月16日まで動画投稿サイト・YouTubeで同作品を一般公開している。

【実施設計・施工は大成建設JV、五輪ボート・カヌー会場に】海の森水上競技場(東京都江東区)が完成

 東京都が中央防波堤の内側埋め立て地と外側埋め立て地の間に建設していた「海の森水上競技場」(江東区青海)が完成し、16日に披露式典が開かれた。

 2020年東京五輪・パラリンピックではボートとカヌー(スプリント)の会場となる。基本設計はパシフィックコンサルタンツ、実施設計・施工は大成建設・東洋建設・水ing・日立造船異業種特定JVが担当した。

 式典であいさつした小池百合子都知事は「五輪・パラリンピックでは選手と観客の熱気と興奮に包まれ、皆さんに感動を与える場になるだろう。(五輪後も)アジア最高峰の水上競技場としていきたい」と話した。関係者によるテープカットに続きボートやカヌーのトップ選手や学生らが競技デモンストレーションを行い、新しい競技場の水の感触を確かめた。8月には五輪のテストイベントとなる国際大会も開かれる。

 海の森水上競技場のコースは長さ2300メートル、幅200メートル。水路の東西両端に水門と揚排水設備を備えた締め切り堤を設け、競技に必要となる静かな水面を維持する。

 競技関係施設は▽グランドスタンド棟▽フィニッシュタワー▽艇庫棟-などで構成。グランドスタンド棟には約2000席の観客席を配置した。五輪大会時には仮設席を増設し、最大1万6000人を収容する。施設内の壁や天井には多摩産の杉材をふんだんに使った。

2019年6月17日月曜日

【回転窓】次に備える記憶と教訓

近所の人たちが世話をしている公園の花壇で、ひまわりがすくすくと育っている。小ぶりな種を植えたそうで40センチほどの高さになるという。そろそろ上には成長し終えるようで、茎のてっぺんにある緑のつぼみが日増しに大きくなっている▼伝える側が梅雨明けを待ち遠しいと思っているからなのか、ひまわりの生育を巡るニュースが続けて報道されていた。その一つに、東日本大震災の被災地から届いたひまわりの種から花を育て、取った種から花を増やしてきた地域の取り組みがあった。震災を考えるきっかけにしようと、毎年幼稚園児に植えてもらっているそうだ▼東日本大震災から8年以上。現地の医療機関は今も被災地域の保健医療の在り方を検討中。岩手県立大船渡病院救命救急センターはダンプトラックの運転手ら、緊急対応に従事し病気のために現地で入院した労働者の健康状態を分析している▼「災害時に過酷な環境で働く方々の健康を守ることにつながれば」と担当者は話す。当時の労働者の健康状態や生活実態の情報をさらに集めるという▼震災の記憶と教訓は次の災害が起こった時、確かな備えになる。

【7月23日から全国19現場で】けんせつ小町活躍現場見学会、19日から専用サイトで参加受付開始!!

日本建設業連合会(日建連、山内隆司会長)は19日午前10時から、女子小中学生と保護者が対象の2019年度「けんせつ小町活躍現場見学会」の参加者受け付けを開始する。今年で5回目。7月23日~8月23日に会員企業19社の19現場で行う。

 熊本、香川、三重の3県で初開催する。仙台市内のマンション現場で作業服を着て現場監督の仕事を体感してもらうなど、各地でさまざまな取り組みが予定されている。

 ホームページの専用コンテンツで申し込む。国土交通省が後援する。今回は前半と後半に分けて申し込みを受け付ける。前半は8月3日開催分まで。後半は同5日以降の開催分で、7月5日に申し込みの受け付けを開始する。キャンセル待ちができるようにした。

 けんせつ小町活躍現場見学会の開催日時、現場の概要は次の通り。(▽開催日(時間)=〈1〉工事名など〈2〉施工会社〈3〉工事場所または現場事務所〈4〉分類〈5〉受け入れ人数)

 【 前 半 】

 ▽7月23日(午後1時30分~3時30分)=〈1〉外かく環状道路本線トンネル(南行)東名北工事〈2〉鹿島〈3〉東京都世田谷区喜多見3の12〈4〉道路〈5〉22人

 ▽7月25日(午後1時~3時)=〈1〉NHK新奈良放送会館建設工事〈2〉奥村組〈3〉奈良市三条大路1の696の1〈4〉放送会館〈5〉20人

 ▽7月26日(午前10時~正午)=〈1〉恵比寿西二丁目複合施設建築工事〈2〉東急建設〈3〉東京都渋谷区恵比寿西2の13の3〈4〉複合施設〈5〉18人

 ▽7月27日(午後1時~3時)=〈1〉みなとみらい21中央地区20街区MICE施設建設工事〈2〉竹中工務店〈3〉横浜市西区みなとみらい1の9ほか〈4〉複合施設〈5〉30人

 ▽7月30日(午前10時~正午)=〈1〉北陸新幹線、福井下莇生田高架橋工事〈2〉佐藤工業〈3〉福井市下莇生田町〈4〉鉄道〈5〉20人

 ▽7月31日(午前10時~正午)=〈1〉東京港クルーズ・海の建設現場見学(東京臨港道路南北線建設工事・新海面処分場護岸築造工事)〈2〉五洋建設〈3〉東京都江東区新木場2の3の1〈4〉港湾〈5〉30人

 ▽8月1日(午後2時~4時)=〈1〉西部処理場北系水処理施設築造工事(土木)〈2〉戸田建設〈3〉神戸市長田区南駒栄町1の12〈4〉下水道〈5〉20人

 ▽8月2日(午後1時30分~3時30分)=〈1〉(仮称)海老名駅間マンション計画新築工事〈2〉三井住友建設〈3〉神奈川県海老名市めぐみ町512の11、12〈4〉集合住宅〈5〉20人

 ▽8月3日(午後2時~4時)=〈1〉(仮称)プラウド堤通雨宮町III計画新築工事〈2〉日本国土開発〈3〉仙台市青葉区堤通雨宮131の1〈4〉集合住宅〈5〉10人

 【 後 半 】

 ▽8月5日(午前10時~正午)=〈1〉(仮称)福島7丁目ホテル計画〈2〉鴻池組〈3〉大阪市福島区福島7の22の1〈4〉ホテル〈5〉18人

 ▽8月6日(午後2時~午後4時)=〈1〉立野ダム建設(一期)工事〈2〉西松建設〈3〉熊本県南阿蘇村立野180の3〈4〉ダム〈5〉20人

 ▽8月7日(午前10時~正午)=〈1〉29-新千里東町団地先工区建設工事〈2〉青木あすなろ建設〈3〉大阪府豊中市新千里東町2の7新千里東町団地内〈4〉集合住宅〈5〉30人

 ▽8月8日(午前10時~正午)=〈1〉高松赤十字病院新東館(仮称)建築等工事〈2〉大林組〈3〉高松市番町5の1の7高松アイシンビル2階〈4〉病院〈5〉20人

 ▽8月9日(午前10時~正午)=〈1〉高速横浜環状北西線シールドトンネル(港北行)工事〈2〉大成建設〈3〉横浜市緑区北八朔町218の6〈4〉道路〈5〉30人

 ▽8月9日(午前10時~正午)=〈1〉赤坂迎賓館前公園施設(仮称)新築(18)建築その他工事〈2〉鉄建建設〈3〉東京都新宿区四谷1の12の11〈4〉公園施設〈5〉15人

 ▽8月20日(午前10時~正午)=〈1〉29-堺市原池公園〔第3期〕野球場建設工事〈2〉前田建設〈3〉堺市中区八田寺町320ほか〈4〉野球場〈5〉30人

 ▽8月21日(午前10時~正午)=〈1〉トヨタ紡織株式会社体育館建設工事及び神明寮改修工事〈2〉清水建設〈3〉愛知県刈谷市神明町6の705〈4〉体育館など〈5〉24人

 ▽8月22日(午前10時~正午)=〈1〉内径1200粍配水管シールド工事(四期・羽津)〈2〉安藤ハザマ〈3〉三重県四日市市羽津御田371の1〈4〉工業用水道〈5〉24人

 ▽8月23日(午前10時~正午)=〈1〉(仮称)練馬区北町三丁目賃貸マンション計画〈2〉飛島建設〈3〉東京都練馬区北町3の16〈4〉集合住宅〈5〉15人。

【未契約は3会場、開催準備順調に進む】五輪仮設オーバーレイ整備、40会場で工事契約締結

伊豆ベロドローム(© tokyo2020)
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、2020年東京五輪・パラリンピックの競技会場に整備する仮設施設やオーバーレイ(テント、プレハブ)について、5月末時点の工事発注状況を公表した。整備工事が必要な43会場のうち、40会場で工事契約を締結した。残る3会場では価格交渉や見積もり依頼を進めている。

 直近のオーバーレイ契約案件3件の詳細も公表した。自転車競技で使用する静岡県伊豆市内の「伊豆ベロドローム」を対象とした「伊豆自転車競技会場整備工事1(伊豆ベロドローム他)」は23億8700万円(税込み)で清水建設に発注した。契約期間は21年2月26日まで。伊豆マウンテンバイク(MTB)コースを含めた自転車競技会場共用の仮設施設を整備する「伊豆自転車競技会場整備工事3(仮設建築物)」は23億7492万円(税込み)で大和リースに決めた。契約期間は20年12月28日まで。
武蔵野の森総合スポーツプラザ(© tokyo2020)
調布市にある武蔵野の森総合スポーツプラザ、東京スタジアム、武蔵野の森公園を対象とした「東京オリンピック・パラリンピック競技大会仮設オーバーレイ整備業務(その21)」は42億4571万8880円(税込み)で大和ハウス工業と契約した。契約期間は21年1月29日まで。

【再整備想定し施設規模など検討】日比谷公園大音楽堂基本計画策定業務(千代田区)、みずほ総研に

東京都建設局は「日比谷公園大音楽堂基本計画策定委託」業務をみずほ総合研究所に発注した。

 千代田区の日比谷公園にある大音楽堂の再整備に当たり、昨年度に施設の活用検討業務を受託した同社と特命随意契約を締結した。契約金額は850万円。

 委託業務では、再整備した場合の施設規模や市場動向などを踏まえ採算性の可否を判断するシミュレーションなどを実施する。都は「野音」の名で親しまれる大音楽堂と日比谷公会堂について、民間活力を生かして再整備する方針を示している。昨年12月には「日比谷公園グランドデザイン」を策定し、具体的な整備計画の検討に入った。

【整備内容や運営方法など検討】広島市、中央公園サッカースタジアム基本計画策定支援業務を発注

広島市は14日「中央公園サッカースタジアム(仮称)基本計画策定支援業務」の委託先を選定する公募型プロポーザルを公示した。21日まで参加申請を受け付け、7月5日まで企画提案を求める。履行期限は2020年3月19日。業務にかかる費用は4980万円以内としている。

 単体もしくは2~3者JVが参加できる。単体企業、JVの構成員のうち1者以上が、広島市が発注し元請として完成・引き渡しが完了した交通量推計の実績を有すること、1級建築士事務所の登録を受けていることなどを条件としている。

 業務では、5月に公表した「サッカースタジアム建設の基本方針」を踏まえ、施設の具体的な整備内容や管理・運営方法等の調査・検討を行い、基本計画案を策定する。対象地は中区の広島市中央公園広場。スタジアム本体は日本サッカー協会の定める「スタジアム標準」と、日本プロサッカーリーグの定める「スタジアム検査要項」に準ずる仕様とする。

 業務内容は、▽中央公園広場周辺エリアの条件整理(整備の基本方針・事業コンセプト、ゾーニング、紙屋町エリアの回遊性向上、管理・運営の基本方針、スタジアムと広場の一体的計画・整備・運用の可能性など)▽中央公園広場内のスタジアム配置検討(メリット、デメリットの整理、配置の絞り込み、配置計画図作成)▽多機能型スタジアム施設の検討(サッカー以外の利用に関する考え方整理やデザイン理念、客席規模、施設計画、導入機能、機能配置、動線計画、設備計画、再生可能エネルギーの導入などの検討)▽県内外からの年間を通じた集客を目的とした多機能化の検討(ウェブアンケート、サウンディング〈対話〉型市場調査など)。

 中央公園広場の年間を通じたにぎわいづくりの検討では、スタジアムを除く部分について複合開発の在り方や整備手法(Park-PFI、設置管理許可制度など)を検討する。このほか、広場内の既存機能の確保、周辺環境への配慮、概算事業費、事業・運営スキームなどを検討し、中央公園サッカースタジアム(仮称)基本計画素案を作成、市民意見の募集を行い計画案を作成する。

【凜】国土交通省大臣官房官庁営繕部・下野恵理子さん

 ◇空間への興味が公私の原動力◇

 働き方改革や生産性向上といった建設産業を取り巻く環境の変化を、直轄営繕事業の入札契約動向から読み解く-。本省と地方整備局の発注状況を四半期ごとに集計。週休2日の推進や生産性向上技術の活用など諸施策の広がりを把握して、働き方改革や円滑な発注に向けた取り組みを後押ししていく。

 入省2年目に近畿地方整備局営繕部整備課で設計審査に従事。庁舎を使いながらの改修工事で施設管理者と密に議論し設計を進め、「1センチの段差が解消されてすごく良かったとの声を頂いた。細かいところだが、仕事のしやすさや居心地のよさに直結している」と実感。一方、供用を始めてから分かる課題も。設計段階では見えないこともあり「どのような仕事の仕方で、どう空間を使っているのかをきちんととらえることが大事だ」と話す。

 営繕部では制度や基準を作り、それに基づき建物を建てて維持管理する。「制度に携わる仕事と、最前線で建築に携わる仕事の両方を行き来しながら、ステップアップしていきたい」。

 共働きで平日は互いに仕事を頑張り、休日は一緒の時間を楽しむ。長期休暇を利用した海外旅行でリフレッシュ。最近はアジアの国々が多く、「旅の面白さはまち歩き。町並みや家には人の生活が如実に表れる」。身近な空間への興味は尽きず、仕事とプライベート両方の原動力となっている。

 (計画課計画調整係長、しもの・えりこ)

【中堅世代】それぞれの建設業・229

時代とともに変わっていく技術の潮流を追い続ける
 ◇年を重ねたここからでしょ◇

 交通インフラの整備・運営機関に技術職として就職し、25年ほどが経過した石毛佳彦さん(仮名)。働き始めたばかりのころは、新しい路線の建設に組織が力を入れて、着工を控える路線も複数あった。維持管理のウエートが徐々に高まり、現在は修繕や機能更新を効率的にどう進めるかが命題となっている。

 非破壊検査をはじめとする点検・診断や、経年劣化に伴って低下した機能を回復させ、耐用年数を延ばすような対策工法など、技術者として向き合う技術も変わってきた。ICT(情報通信技術)の進歩が早く、地理情報システム(GIS)や3D点群データを活用し、現地に赴かなくても構造物の状況を把握できるようになるなど、10年前には理想だった取り組みが実現しつつある。「時代も技術も変わった。こっちも変わらないと」。スピードを増す変化に取り残されないよう外部の人と積極的に交流し、新しい技術や潮流に敏感になろうと努めている。

  仕事に高い質と大きな成果を常に同時に求める上司や、外部に対する情報発信の在り方について考え方が自分とは全く違う上司、自分と同じように「とんがって仕事をしているなと認め合える同僚」など、さまざまな人と仕事を共にしてきた。インフラの整備を担ってきた組織だけに「新しい技術を追う人におおらかな風土がある」と感じている。「仕事に特に厳しい経営トップが、新しい技術に関することは『やってみろ』と応援してくれる」。期待に応えると同時に現代の技術者としての自分のため、今はICTの駆使にまい進しようと決めている。

 組織の中で仕事をしているため、立場が変わって部下ができた。若手の育成も任されるようになった。「あいつが仕事をしていません」。風通しのいい職場にしようと心掛けてきた弊害かもしれないが、「ほかのやつのことなど放っておいて、自分のなすべきことをやれ」と言い返したくなるような意見を耳にすることもある。「この分野だけは負けないようにしたい」だけでなく技術力を養えると思って、若手に分類されていたであろう時分は毎日遅くまで働いていた。「働き方改革の必要性を認識せざるを得ない」。最近は今まで以上に時には早く帰ったり、休暇を取得したりするようになった。

 うれしいことがいくつかある。若手が集まって、情報発信の新しい取り組みを始めた。企画の立案から情報の収集、発信までを主体的に行ってくれている。仕事を任せ、応援してくれた人たちがいたからこそ、「頑張っている若いやつらを応援したい」と思う。若いころ縁あって顔なじみになった記者と十数年ぶりに再会し、「雰囲気が柔らかくなりましたね」と言われた。少し目尻が下がって、笑顔を見せることが増えたようには感じる。「お互い年を取ったね。でも、ここからでしょ」。先輩技術者として、まだまだ奮闘し続ける。

【サークル】三井住友建設鉄ちゃんの会


 ◇鉄道語り尽きず同好会発足、鉄子も募集中◇

 社内の鉄道ファン同士で語り合っていた時、話が尽きず同好会を立ち上げようという流れになった。

 本社や首都圏の支店、関係会社から10人ほどが集まり、有志による「鉄ちゃんの会」が誕生した。時刻表検定(時刻表検定協会主催、2009年終了)を持つ会員もいるという、粒ぞろいのメンバー構成だ。

 活動モットーは「自分が好きなことを自由に楽しむ」。鉄道ファンと言っても興味がある分野はさまざま。「鉄道について語り始めると各自の専門分野の話が止まらなくなってしまう。そんな気さくな空気を大切にしたい」と話すのは代表の阿部譲管理本部本部次長だ。

 活動の基本は個人。模型作りを楽しむ部員(作り鉄、集め鉄)、ドアの開閉音や車両の加速音で沿線を当てることを楽しむ部員(音鉄)、写真を楽しむ部員(撮り鉄)など、得意分野でそれぞれの道を究めようとしている。3カ月に1回のペースで食事会を開き親睦を深めている。

 今後、活動成果を報告し合う場も設ける予定で、けんせつ小町ならぬ「鉄子」も募集中。「鉄道ファンにもダイバーシティーを!」(阿部次長)。

【駆け出しのころ】ライト工業執行役員・楠浦重富氏


 ◇やり遂げた先に喜びがある◇

 熊本県の山間地で生まれ育ちました。父親の仕事が土木に関係していたこともあり、高校から土木の道に進みました。入社後、山間部ののり面防災工事を二つ手掛け、次に福岡市地下鉄の博多駅を構築するための地盤改良工事の現場に従事しました。三つの現場で出会った先輩3人の人柄や指導が、私の成長に大きな影響を与えてくれました。私にとって人生の師です。

 のり面防災の現場では何も分からない中で現場管理や書類作成など、仕事の基礎を厳しく指導いただきました。地下鉄の現場は地下水位が高く、削孔時すごい勢いで水が逆流してくる厳しい条件下での現場で求められる対応を学び経験することができました。3人とも仕事にはとても厳格で「造る物に対して、妥協せずにきちんとやり遂げろ」が共通の教えでした。

 後輩を指導する立場になり、共に働いたことも良い経験です。優しく指導するのか、厳しく接するのかなど、相手の性格によって指導法を変えることを学び、部下育成の難しさを痛感しました。ある現場で優秀な若手社員に仕事を任せたところ、完成図書の作成が間に合わず慌ててしまったことがあります。指導に問題がなかったかを自省し、その経験を次に生かすことができています。

 思い出に残っている仕事は、北九州市内で手掛けた老朽化したトンネルの補修工事です。1車線分の通行を確保しながらトンネル内部のコンクリートをはつり、鉄筋を配筋して吹き付けコンクリートで仕上げる工事です。非常に狭い中での作業に加え、既存コンクリートが当初の想定以上に固いなど条件が厳しく、本当に苦労した現場です。「この現場が終わったら仕事を辞めよう」。正直そこまで思い詰めていました。そんな中で3人の師の言葉を思いました。受けた以上はやり遂げようと決意を新たにし、後輩や協力会社の皆さんとともに無事工事を終わらせることができました。

 複数の工区に分かれていましたが最終検査が終わった後、私だけが発注先の所長に呼ばれました。「非常に難しい現場をやってくれてありがとう」。そう言ってもらえたのです。責任を持ってしっかりやれば良いことがある。本当にうれしく辞めようという気持ちは消えていました。

 災害時の応急復旧などが典型ですが、皆で協力すれば終わらないものはありません。仕事で追い込まれた若手から相談の電話があり、慌てて駆けつけて一緒に作業したこともあります。助け合うことが大事です。忙しい私を支えてくれた妻にもとても感謝しています。

 若い人には工期内に良い成果品を納めることを徹底してほしいと願っています。失敗しても正直に報告し妥協せずやり遂げる。会社は若い人が伸びなければ成長できません。さまざまな経験値を積み上げてほしい。若い人の育成が私の使命だと思っています。
家族で訪れた鵜戸神宮(宮崎県日南市)で。
長男(左端)はライト工業の社員として奮闘中だ
(くすうら・しげとみ)1978年熊本県立球磨農業高校(現南稜高校)卒、ライト工業入社。執行役員九州統括支店長、同本社技術営業本部副本部長、同関東支社副支社長など歴任。2018年4月から同本社安全品質環境本部副本部長。熊本県あさぎり町出身、59歳。〈本社安全品質環境本部副本部長兼衛生環境部長〉

2019年6月14日金曜日

【回転窓】豊かな生活に必要なお金は

担当大臣が受け取りを拒否したところで報告書の内容が消えてなくなるものでもないが、夫婦の老後資金に「2000万円が必要」と試算した金融庁の金融審議会市場ワーキンググループの報告書がさまざまな波紋を広げている▼この老後資金問題。2000万円という数字が独り歩きしている感が否めない。人生100年時代とは言うが、試算で挙げた95歳まで皆が生きるわけではない(2017年の日本人男性の平均寿命は81・09歳)▼さらに、毎月の平均収入と平均支出の差を「不足額」としているが、お金持ちが毎月たくさん支出すれば単純計算での平均値は上昇するので、試算自体が無意味との指摘もある▼審議会の報告書は長期での積み立てや分散型の投資など高齢者にマネープランの見直しを求めることが狙いだったようだ。しかし社会保障政策を巡る議論に発展し、炎上状態となった▼毎月50万円もらえるが生きがいのない生活と、30万円だけど仕事に行くのが楽しみで仕方ない生活のどっちがいいかという電車の中づり広告の文面が不評を招き、こちらも炎上した。そもそも「豊かな生活」とは、どんな生活か?

【インタビュー】紫綬褒章を受章した建築家・隈研吾氏「日本の風土生かした建築を追究」

 作家や芸術面で功績を残した個人が受ける紫綬褒章の受章者に、チームプレーで成り立っている建築家として名を刻め感動している。国内外での実績と、東京大学教授として後進の育成に当たっている点が評価されたと認識している。

 建築家を志したのは、1964年開催の東京五輪・パラリンピックで建設された建築物に心を打たれたのがきっかけだった。東大入学後は「梅田スカイビル」(大阪市北区、1993年竣工)などの設計を手掛けた原広司氏の研究室で建築を学んだ。当時は世界各国に点在する集落の成り立ちなどを研究していた。

 卒業後は日本設計に入社した。建築家の多くは個人事務所を立ち上げ活動する。あえて組織事務所を選んだのは発注者や施工者と関わる中で、建築家が果たす使命を確認したかったのだと思う。約6年間、実務に携わった。

 個人事務所を立ち上げる前に米コロンビア大学で非常勤の研究員を務め、その後に独立を決意した。その当時を振り返ると、日本が持つ価値観のすばらしさを改めて実感していた。木材や布など素材の良さを生かした建築づくりが自分に合っているだけでなく、学生時代に没頭した集落研究を通じ、大量生産が目的の工業化社会に対抗したかったのだろう。

 数多くの設計デザインを経験し肝に銘じているのは面白みを持った人間と関わることと、工業化社会とかけ離れた人間と仕事を共にする点だ。熟練した技を持つ職人と協力し合い、今後も従来にはない建築デザインを創造したいと考えている。

 来年3月で東大教授を退官することになった。今後は教育機関に限定せず、建築の魅力や可能性を発信したいと考えている。現在は住民参加型のワークショップに関心を持っている。

 建築家を目指す若者に対しては精神的にタフであれと言いたい。設計技術のレベルアップは仕事を通じて達成できることもある。だが精神力は自らが鍛え上げなければならない。学生のころからより多くの人と親交を深め、精神力を養ってほしい。