2019年6月4日火曜日

【天神ビッグバン初弾、施工は前田建設】プロジェクトアイ「天神ビジネスセンター新築工事(福岡市中央区)」

 福岡市の都心部で再開発事業が連鎖的に展開される天神エリア。2024年までに既存ビル30棟の再整備を目指す「天神ビッグバン」構想の初弾案件が着工した。

 施工を担当する前田建設の塚本修史統括所長は「周りの再開発事業にもいい影響を与えられるよう、現場関係者はもちろん、工事中に天神エリアを訪れた人たちも楽しく感じる取り組みを積極的に発信していく」と意気込む。

 初弾案件の名称は「(仮称)天神ビジネスセンター新築工事」。地下鉄の出入り口、地下街と接し、人や車両の通行が多い計画地に、オフィスを中心とした大型複合ビルを整備する。実施設計・施工を前田建設が担当し、既存施設の解体工事も同社が行った。

 当初の基本設計段階では、建物の高さ69メートル(地上16階)、地下部分の掘削深度18・55メートルだったが、国家戦略特区に基づく高さ制限の緩和措置で高さ89・9メートル(地上19階)、掘削深度10・9メートルに変更した。当初計画では容積率を上限まで活用し、敷地形状に合わせて建築面積を最大限確保していた。高さの規制緩和で階数を増やす一方で、建築面積を減らして建物の角を90度に正形化。「いびつな外壁ラインをそろえたことで、施工性も向上した」(塚本所長)。

 本体工事の進捗(しんちょく)率は5月21日時点で13・5%。掘削作業などを現在進めており、8月以降に地下の躯体工事に着手し、20年5月に地上部の鉄骨工事を開始する見通しだ。

 土砂の運搬効率を高め、工程短縮を図るため、オープン掘削で最大限進められるように施工手順を見直して掘削土量を確保。外周部を支える切梁などの配置形状を変更し、外側の切梁を減らすことで、解体・掘削重機の施工性向上のほか、資機材の投入や揚重作業などの安全性や効率性を高めている。

 建物の基本デザインは福岡出身の建築家である重松象平氏(OMAのパートナー兼ニューヨーク事務所代表)が担当。外観の一部をピクセル状に削り取ったデザインが目を引く一方で、施工にはさまざまな事前検討を要する。カーテンウオールなどの外装委員会を2週間に1回、鉄骨委員会を毎月1回の頻度で開き、関係者間で作業を円滑に進めるための準備・調整を進めている。

 施工イメージの事前確認や仕上げ表の見える化など、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)データも積極活用している。打ち合わせ室にはタッチパネルディスプレーを配備し、デジタル化された書類に各職長が直接入力。作成した配置図などを翌日、朝礼広場に設置しているデジタルサイネージ(電子看板)に表示し、業務の省力化を図る。


 ◇現場から建設業の魅力発信◇

 女性活躍や働き方改革にも先進的に取り組む。更衣室やトイレ、休憩室の整備、完全週休2日制導入に向けた取り組みなど、すべての現場関係者が快適に働ける環境づくりに力を入れる。

 仮囲いの外側にも電子看板を設置し、前田建設のPR動画のほか、地域貢献活動の写真や児童が描いた絵画作品、天気予報などを投影している。クリスマスイルミネーションやこいのぼりなどを飾り、季節感を演出。夜間の注意喚起ライトをLEDライト(テープ、丸形)に変更し、視認性の向上と現場のイメージアップを図る。

 一般の人たちに現場を見てもらう仕掛けが随所に見られる。塚本所長は「現場内外の双方向のコミュニケーションを密にし、最優先の安心・安全はもちろん、みんなが楽しくなる職場づくりを通して、建設業の魅力を広く伝えていきたい」と力を込める。

 《工事概要》

 ▽名称=(仮称)天神ビジネスセンター新築工事

 ▽計画地=福岡市中央区天神1の10の17ほか(敷地面積3917m2)

 ▽規模=S一部RC造地下2階地上19階塔屋2階建て延べ6万1115m2(免震構造)

 ▽発注者=福岡地所

 ▽基本設計=日本設計

 ▽実施設計・施工=前田建設

 ▽工期=解体17年6月~18年12月末、新築19年1月~21年9月末

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