時代とともに変わっていく技術の潮流を追い続ける |
交通インフラの整備・運営機関に技術職として就職し、25年ほどが経過した石毛佳彦さん(仮名)。働き始めたばかりのころは、新しい路線の建設に組織が力を入れて、着工を控える路線も複数あった。維持管理のウエートが徐々に高まり、現在は修繕や機能更新を効率的にどう進めるかが命題となっている。
非破壊検査をはじめとする点検・診断や、経年劣化に伴って低下した機能を回復させ、耐用年数を延ばすような対策工法など、技術者として向き合う技術も変わってきた。ICT(情報通信技術)の進歩が早く、地理情報システム(GIS)や3D点群データを活用し、現地に赴かなくても構造物の状況を把握できるようになるなど、10年前には理想だった取り組みが実現しつつある。「時代も技術も変わった。こっちも変わらないと」。スピードを増す変化に取り残されないよう外部の人と積極的に交流し、新しい技術や潮流に敏感になろうと努めている。
仕事に高い質と大きな成果を常に同時に求める上司や、外部に対する情報発信の在り方について考え方が自分とは全く違う上司、自分と同じように「とんがって仕事をしているなと認め合える同僚」など、さまざまな人と仕事を共にしてきた。インフラの整備を担ってきた組織だけに「新しい技術を追う人におおらかな風土がある」と感じている。「仕事に特に厳しい経営トップが、新しい技術に関することは『やってみろ』と応援してくれる」。期待に応えると同時に現代の技術者としての自分のため、今はICTの駆使にまい進しようと決めている。
組織の中で仕事をしているため、立場が変わって部下ができた。若手の育成も任されるようになった。「あいつが仕事をしていません」。風通しのいい職場にしようと心掛けてきた弊害かもしれないが、「ほかのやつのことなど放っておいて、自分のなすべきことをやれ」と言い返したくなるような意見を耳にすることもある。「この分野だけは負けないようにしたい」だけでなく技術力を養えると思って、若手に分類されていたであろう時分は毎日遅くまで働いていた。「働き方改革の必要性を認識せざるを得ない」。最近は今まで以上に時には早く帰ったり、休暇を取得したりするようになった。
うれしいことがいくつかある。若手が集まって、情報発信の新しい取り組みを始めた。企画の立案から情報の収集、発信までを主体的に行ってくれている。仕事を任せ、応援してくれた人たちがいたからこそ、「頑張っている若いやつらを応援したい」と思う。若いころ縁あって顔なじみになった記者と十数年ぶりに再会し、「雰囲気が柔らかくなりましたね」と言われた。少し目尻が下がって、笑顔を見せることが増えたようには感じる。「お互い年を取ったね。でも、ここからでしょ」。先輩技術者として、まだまだ奮闘し続ける。
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