ホテル開発は供給過剰にならない-。事業用不動産サービスのシービーアールイー(CBRE、東京都千代田区、坂口英治社長)は10日、新規供給が拡大するホテル市場を展望したリポートを発表した。
東京や大阪など主要9都市で既存ストックの24%に相当する客室が2021年までに供給され、必要な客室はストックを下回るという。ただインバウンド(訪日外国人旅行者)をはじめ潜在的な宿泊需要は大きく、需要の顕在化と回帰が続くと見ている。
リポートによると東京や大阪、京都など国内の主要9都市は、19~21年に供給が計画されるホテルの客室がここ1年ほどで約2・5倍の8万室に増えた。既存ストックと今後供給される客室の割合を見ると、インバウンドに人気の京都が51%、次いで大阪が32%、東京は24%になる。京都は賃貸オフィスが面積ベースで減少し、ホテルへの建て替えが進んでいることがうかがえる。
インバウンドを巡る政府の目標や、人口減少を考慮した日本人の宿泊需要から推計した必要な客室数は9都市とも、既存と新規供給を合わせた客室数に届かないが、需要の掘り起こしになるとも指摘した。
大阪は17年に宿泊した外国人が64%(14年90%)に低下した。背景に宿泊施設が予約しにくくなっている実態があり、リポートは、新規供給が流出していた宿泊需要を引き戻し、国内の日本人旅行者の宿泊需要も増やせる公算が大きいと分析。京都はインバウンドの宿泊率が上昇し、既に需要が戻りつつあるという。
ホテル関連の事業者や投資家にとっては、戦略的な対応が一段と求められるようになると警鐘を鳴らしてもいる。生き残りのポイントには▽立地戦略▽客室構成▽富裕層が好むアッパークラス以上▽価値や体験などを意識したブティック・ライフスタイル-を列挙。立地は劣るものの集客力のあるホテルを整備するなど、投資コストを考慮したきめ細かな立地戦略の重要性を強調した。
インバウンドが好むダブル、ツインの客室の導入や、レストランやスパなどを備え、多くがアッパークラス以上に分類されるフルサービスホテル、機能や価値が宿泊だけにとどまらないブティック・ライフスタイルホテルなどをホテル事業のポイントに挙げた。
世界観光機関(UNWTO)によると、日本は国際観光客の到着人数に対し、四つ星・五つ星のホテルの軒数が少ない国に分類される。21年までに新規供給されるホテルのうち、フルサービスは5%にとどまるのが実態で、リポートは供給余地は小さくないとの見方を示した。
30年のホテル市場を見据えると、UNWTOが国際観光需要の増加を予想しているのに加えて、東京五輪やIR(統合型リゾート)の計画が集客装置として機能し、ホテル需要は拡大すると予想した。同時に、ニーズが多様化するため、需要に応じ「ホテルも絶えず変化し続ける」ことを提案した。
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