2020年7月31日金曜日

【JCT地中拡幅の工法変更などで】外環道都内区間、事業費7600億円増に

関東地方整備局と東日本高速道路会社、中日本高速道路会社による東京外かく環状道路(外環道)都内区間(関越~東名)の整備事業で、事業費が約7600億円増加することが分かった。

 中央JCT(東京都三鷹市)地中拡幅の工法変更などでコストがかさみ、予定していた約1兆5975億円(2016年度時点)から約2兆3575億円に膨らむ見通しという。

 事業費の増加は、関東整備局が30日さいたま市内で開いた事業評価監視委員会で報告した。増額要因を見ると、シールドトンネルの合流部となる中央JCT地中拡幅部の工法変更などで約5360億円を計上した。地下水がたまった地盤を非開削で掘削するため、凍結工法を基本に安全な施工方法を検討する。中央JCTの構造変更の追加費用は約780億円。大泉JCT側の軟弱地盤対策には約670億円を計上した。

 外環道都内区間は東名JCT(世田谷区宇奈根)と大泉JCT(練馬区大泉町)を結ぶ延長16.2kmの路線。計画車線数は6車線。2017年2月に東名JCT側、19年1月には大泉JCT側の本線シールドトンネル工事に着手している。

【けんせつ体幹体操、知ってる?】プロトレーナー・木場克己氏に聞く「コロナ禍でも元気で健やかに過ごすポイント」

 ◇体幹鍛えて、きょうもご安全に◇

 建設業振興基金と徳島県建設業協会が事務局を務める委員会が製作した「けんせつ体幹体操」が広まってきた。大きなけがをしかねない転倒の防止や腰痛の予防になる筋肉の強化、関節のストレッチなどを取り入れてあり、けがの防止と体力を保つのに効果的と愛好者が増えている。採用する現場があり、小学生や高校生らが対象の社会貢献活動にも役立てられている。企画監修したプロトレーナーの木場克己氏に体操へ込めた思いと、建設関係者がコロナ禍でも健やかに過ごすポイントを語ってもらった。

 --体操のプログラムがインターネットの動画サイトにアップされた2016年7月から4年になる。

 「建設業の現場は転倒や墜落が多いと聞いていた。作業前のラジオ体操を見学したが、ヘルメットや安全帯を装着した姿でしっかり体操している作業員と、慣れがあるのかなと思った人がいたのが印象に残っている。慣れはすごく怖い。仕事をするスイッチを体に入れる体操をしっかり行っている人とそうでない人とでは大きな差が出てしまう」

 「講演をきっかけに体操のプログラムを考案してほしいという依頼をいただいた。体幹はアスリートが鍛えるイメージがあるが、階段を上り下りしたり、物を持ち上げたりする仕事だけでなく生活の中の動作でも使っている。転倒しないように踏ん張る、つまずかないように足が出るようにする体操を仕事の前に現場で行ってもらうと効果は大きい」



 --知名度や人気の高い方々が協力している。

 「音楽プロデューサーの田中隼人さんに協力してもらい、サッカー元日本代表の福西崇史さんに体操のモデルになってもらった。建設業の皆さんはサッカー選手や野球選手が活躍するスタジアムなどを造っている。サッカー日本代表の長友佑都選手からは、『元気で安全に建設業に携わっていただくためにも、ぜひ、けんせつ体幹体操を実践してみてください』と、けがをするかもしれないリスクを負って頑張ってくれている建設業の皆さんへのメッセージをもらった。たくさんの人の思いがこもった体操ができたと考えている」

 --体幹の大切さと機能を。

 「体幹は頭、腕、足を除いた胴体の部分。腹筋のようなアウターマッスルと、姿勢を整えるインナーマッスルがあり、腹圧がかからないと、体重の1割くらいの重さの頭が上にくる体はぐらぐらしてしまう。腹横筋、多裂筋、腸腰筋、尻の筋肉などがうまく動かないとバランスを崩して墜落事故が起きてしまうかもしれない。体操は初級編と上級編に分かれ、片足立ちなどのプログラムがある。できない人もラジオ体操と同じように習慣にすることで筋肉が付き、動作の前のスイッチが入り、けがをしにくくなる。そういうメニューを意識した。体のバランスを整え、動きやすさが高まり、一般の人にも効果がある」

 --働く人の健康の在り方がコロナ禍で注目されている。

 「仕事を急に長く休まざるを得なくなり、『コロナ太り』と言われるようになった。休んだ筋肉を元に戻すには3倍の期間、アスリートは1週間休んだら3週間が必要になる。筋肉が衰えたいつもと違う状態になっていて、バランスを保つ筋肉を鍛え、体幹、外側と内側の筋肉を手当てしておかないと、『こんなはずじゃなかった』という事態になってしまう。サッカーのドイツ・ブンデスリーガは再開してけがをした選手が多く出た。一般の人はなおさらで、建設業でも体を使ってきた人は準備が大切になる」

 「手洗い、マスクが習慣になったように、筋肉と向き合って意識した運動で免疫を高める必要がある。腹圧やインナーマッスルを意識するだけで効果は大きく違ってくる。お昼を食べて休んで仕事を始める前に少しの体操を習慣化するなど、体にスイッチを入れましょう。体力を付けるには20分走るだけでも効果がある。歩幅を広くするだけで筋力、体力が強化され、腹式呼吸を意識することで効果はさらに高まる」

 --東京五輪が延期になった。

 「建設業の皆さんが造ってくれた舞台で輝けるように、アスリートはコンディションを整えてきた。選手のコンディションやメンタルが落ちないようトレーナーらがサポートしている。アスリートは来年に向けて準備している。災害時には自衛隊よりも早く対応してくれて、ライフラインを整えてくれる建設業の皆さんがいないと生活ができない。健康に働いて安全第一で頑張っていただきたい」。



 (こば・かつみ)体幹力は人間力を上げる-。KOBAスポーツエンターテイメント代表。サッカーや水泳、陸上などトップアスリートのトレーナーを務める。パリ五輪の出場を目指す水泳の池江璃花子選手は中学2年生、サッカーのリーガ・エスパニョーラ(スペイン)で活躍する久保建英選手は小学5年生からサポート。FC東京のヘッドトレーナー(1995~2002年)をはじめプロチームのトレーナー、トレーニングアドバイザーなどを歴任。トップアスリートのリハビリから考案した安心・安全な「KOBA式体幹☆バランストレーニング(KOBA☆トレ)」を提供。鹿児島県出身、54歳。

 《けんせつ体幹体操とは》

 製作は建設業振興基金、徳島県建設業協会が事務局の「けんせつ体幹体操製作委員会」。腹圧を強化する「ドローイン」などプログラムが15種類の初級編、体幹部全体に効果のある「ハンズアップレッグリフト」など16種類の上級編で構成。約2分40秒の動画と説明書付きのDVDがある。

 自動車の整備工場にも採用され、18年にはラグビーワールドカップ日本大会に出場したニュージーランド代表オールブラックスの4選手を起用したスペシャル動画をAIG損害保険が制作した。生命保険協会の「スポーティライフ大賞」で企業部門のグランプリを獲得している。建設産業戦略的広報推進協議会のポータルサイト「建設現場へGO!」で公開されている。

 製作委員会のメンバーは日本建設業連合会、全国建設業協会、全国中小建設業協会、全国建設業協同組合連合会、全国建設産業団体連合会、建設産業専門団体連合会で構成する。

2020年7月30日木曜日

【回転窓】観光の新常態

時間と場所を選ばずに働ける就業・休暇スタイルの「ワーケーション」。コロナ禍を契機に在宅勤務などリモートワークへの転換が叫ばれる中、落ち込んだ観光需要の回復も狙った新たな働き方に注目が集まる▼政府もリゾート地などの休暇先で働くワーケーションの普及を、今後の観光戦略の目玉の一つに挙げる。休暇の取得・分散化といった課題を解決し、国内観光の新しい形の創出を目指す▼企業と地域が連携し、普段の職場とは別にリゾート地に拠点を設けて社員が働きながら心身を休める環境づくりが進む。ワーケーション対応のオフィス整備をはじめ、ホテルにリモートワーク用の機材を配備した宿泊プランを販売する動きも広がる▼ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を合わせた造語のワーケーションは、もともと有給休暇の取得率が低かった米国での働き方の一つとして広がった。ビジネスマンが旅先でも電話会議や報告書の作成などで完全な休暇にならないことがよくあるという▼地方創生の切り札でもある観光産業。成長軌道への再修正は人々の働き方や価値観の変化にどう対応するかが鍵になりそうだ。

【8月1日、レインボーブリッジなどがブルーに】国交省、「水の日」にライトアップイベント

 レインボーブリッジがブルーに染まる-。国土交通省は8月1日の「水の日」に、さっぽろテレビ塔(札幌市中央区)やレインボーブリッジ(東京都港区)など全国10施設をライトアップする。

 ライトの色は「水」を連想させる青で統一。多くの人に水の大切さや健全な水循環への理解を深めてもらうきっかけにしたい考えだ。

 実施施設は△さっぽろテレビ塔△マイクロ無線鉄塔(盛岡市)△東京ビッグサイト(東京都江東区)△アサヒグループ本社ビル(同墨田区)△ゆりかもめ新橋駅(同港区)△フジテレビジョン(同港区)△レインボーブリッジ△乃村工芸社(同港区)△モザイク大観覧車(神戸市中央区)△別府タワー(大分県別府市)-の10カ所。点灯時間など詳細はホームページへ。

【中道場を新設、本館はLED照明に】日本武道館(東京都千代田区)の増改修工事が完了

増改修工事が完了した日本武道館(写真提供:日本武道館)
日本武道館(高村正彦会長)が進めていた日本武道館(東京都千代田区)の増改修工事が完了した。竣工式を29日に開き、関係者らが無事完成を祝った。

 同工事では本館の改修のほか、延べ約3000平方メートルの「中道場棟」を新設した。設計は山田守建築事務所、施工は竹中工務店。外観の照明デザインは石井幹子デザイン事務所が手掛けた。

 日本武道館の所在地は千代田区北の丸公園2の3。来年に延期された東京五輪の空手・柔道、パラリンピックの柔道の試合会場となっている。

 竣工式には高村会長、山田守建築事務所の宮原浩輔社長、石井幹子デザイン事務所の石井幹子社長、竹中工務店の宮下正裕会長らが出席した。

 式典後の記者会見で、宮原社長は「(増改修の)テーマは再生と成長。従来のイメージを継承しながら安全性などを向上させた」と設計のポイントを説明。竹中工務店の大嶋康文専務執行役員は「多くのことに配慮しながら工事を進めた。関係者の協力に感謝したい」と述べた。

 本館の改修では日本武道館を象徴する八角形の大屋根の葺き替えに当たり、銅板からステンレスに変更。バリアフリー化やトイレの増設のほか、全照明のLED化も図った。外観のライトアップ設備も新設し、世界初の金色に輝くLED照明を採用した。9月にライトアップの点灯式を開く予定という。

 本館に隣接する中道場棟はSRC一部S造地下2階地上1階建て延べ3048平方メートルの規模。地下2階に400畳の中道場を設けた。屋根は本館と同じ緑青色とし、周辺の景観と調和した外観となっている。床にヒノキの集成材、壁には杉の無垢(むく)板を使用し、快適な空間を創出した。

 中道場は選手らの試合前のウオーミングアップのための練習場としての活用を想定。試合会場となる本館大道場と直結しており、スムーズに移動できる。

2020年7月29日水曜日

【水の大切さ、子どもたちに伝えたい】「水の天使」が赤羽一嘉国交相を表敬訪問

 2020ミス日本の「水の天使」に選ばれた中村真優さんが28日、東京・霞が関の国土交通省で赤羽一嘉国交相を表敬訪問した。

 中村さんは教育支援関係のNPOで代表理事を務める経験から「次世代を担う子どもたちに水の大切さを教えていきたい」と話した。赤羽国交相は「子どもたちに水の大切さを知ってもらうのは大切だ。普及啓発活動をよろしくお願いしたい」と今後の活躍に期待した。

 中村さんは水の広報官として全国で開催される下水道関連イベントに参加する。表敬訪問では、新型コロナウイルスの流行を踏まえ「エッセンシャルワーカーとして私たちの生活のために頑張ってくれている上下水道関係者の方々の応援団長でいたい」と語った。

 赤羽国交相は「災害発生や感染症の拡大など非常時になると、上下水道の存在が当たり前のものではないということが認識される。日ごろから水の大切さを啓発するのが重要」と水の天使の活動意義を伝えた。

【お客様、ご満足いただけますか?】ターゲットはにゃんこ、建材で運動不足を解消!!

 スコティッシュフォールドにマンチカン、アメリカンショートヘア…。国内のペット市場を猫が席巻している。ペットフード協会の調査によると、2017年の飼育頭数は全国で952万頭と、犬の頭数(892万頭)を上回り、その数は増え続けている。

 飼育頭数の増加とともに室内で飼われる猫も増えた。注意すべきなのは運動不足。人と同じくストレスや肥満の元になる。大建工業は市場拡大とともに深刻化する猫の健康問題を俊敏にキャッチ。壁面に設置する階段状の「ねこステップ」を15年に発売した。売り上げは右肩上がりの状況で、直近の1~2年でも前年比20~30%増えているという。8月21日には商品を拡充する。

 マイペースで気ままな生き方に人はどこか心を引かれるのだろう。経済効果の大きさから「ネコノミクス」なる言葉まで創られた。市場調査や商品企画などを担当した同社の船渡まなみさんは「猫ステップは猫市場に向けてお試しという面があった。手応えがあったので大幅に商品を拡充することにした」と商品追加の背景を明かす。

 開発は家庭動物住環境研究家の助言も得ながら“猫目線”で進められた。壁面設置型の「ねこルート」は「いままでは階段状の『猫ステップ』しかなかったのでキャットウオーク的な商品を追加した」(船渡さん)。ルートの途中にはのぞき穴を開けた休憩用のボックスも設けた。「猫は身を隠して高い所から人間を見下ろすのが好き。見られた飼い主もうれしいという話もある」と船渡さん。猫と飼い主の両者が満足する商品だということを強調する。

 実はそののぞき穴にも苦労があった。船渡さんは開発者から聞いた話として「狭すぎてものぞいてくれないし、広すぎると落ちてしまう。絶妙な穴の直径とか細かいところを(専門家に)アドバイスしてもらった」。

 デザイン性の高い既存の壁面収納「ミセル」を応用した「ミセルねこ対応カウンター」は窓の下に取り付ける。カウンター上部の板を猫が歩けるように改良した。「猫は窓から外を見るのが好き。今までのミセルは上の板は滑りやすかった。滑りにくいカウンターにすることで、猫の動線として使えるようにした」(船渡さん)。収納スペースと猫の隠れ家を両立した「ねこシェルフ」や、猫の屋外への飛び出しを防ぐ「ねこゲート」も打ち出す。

 運動不足対策として今はキャットタワーがホームセンターなどで売られている。だが、インテリアにこだわりのある人の部屋だとどこかなじみにくい。船渡さんは「値段は高くなるかもしれないがインテリアとコーディネートしやすいアイテムはニーズがある」と自信を見せる。今後は「建材を選ぶ時に『まずは大建工業の商品を見よう』という印象付けができるようなブランドにする」ことを目指す。

【デザインはUniform Circus BEAMS】飛島建設、イベント用「HAPPI」新調!!

 飛島建設は展示会や現場見学会などで着用するイベント用ユニホーム「HAPPI」を新調した。江戸時代から続く法被をアレンジ。伝統を尊重しながら新しいものを取り入れる経営姿勢を表現した。

 デザインは、アパレル事業を展開するビームス(東京都渋谷区、設楽洋社長)のユニホームブランド「Uniform Circus BEAMS」に依頼した。

 色は創業時の飛島組の法被をイメージし紺色を採用。背面に大きく「飛」の漢字をあしらった。袖の裏地に施した市松模様のデザインは、事業拡大や繁栄の思いを込めた。胸元には飛島建設のロゴマークを刺しゅうしている。社用の紙袋も新調。内側の市松模様はHAPPIとおそろいだ。

 「いろいろなイベントで活用したい」と大矢雅一常務執行役員。建設事業本部コンシェルジュゼネラルオフィスの左川雄人部長は「海外でも会社をアピールできるのではないか」と今後に期待する。

【ジブリ作品の世界再現へ】ジブリパーク先行3エリア(愛知県長久手市)が起工

 愛知県は28日、スタジオジブリアニメ作品の世界観を表現する「ジブリパーク」の起工式を長久手市の愛・地球博記念公園内で開いた。設計・監理は日本設計、施工を鹿島が担当し、2022年秋開業を目指す。
 大村秀章知事は「人・生き物・愛を表現するジブリの世界観が、05年愛知万博の理念を継承する。子どもから大人まで多くの人を迎えて夢を届け、日本を盛り上げていきたい」とあいさつした。この後、大村知事、鈴木清文スタジオジブリ社長、千鳥義典日本設計社長、片山豊鹿島常務執行役員中部支店長ら関係者10人が盛り土に鍬を入れ、工事の無事完成を祈念。片山支店長が「総力を結集し、安全第一で完成させる」と工事開始を宣言した。

 「ジブリパーク」は、全体5エリアで構成する。今回着工したのはこのうち▽青春の丘▽ジブリの大倉庫▽どんどこ森-の3エリア。施工予定者が設計を支援するECI方式を採用、スタジオジブリの監修を受けながら、日本設計と昨年10月に技術協力事業者に選定された鹿島が実施設計を進めてきた。

 「青春の丘エリア(約0・8ヘクタール)」では、「地球屋」「猫の事務所」の建築、エレベーター棟改修、ロータリー広場の造園工事を実施。「ジブリの大倉庫エリア(約0・8ヘクタール)」では、元温水プールを改修し常設展示室5室、企画展示室、映像展示室(約170席)、カフェを整備。「どんどこ森エリア(約1・8ヘクタール)」では「社」「社務所」、管理棟の建築、サブゲート棟の改修・増築、散策路、スロープカー等の造園工事を行い、22年2月末に完了させる。その後、展示関係工事が行われ、同年秋に3エリアがオープンする。

 残る▽もののけの里(約0・8ヘクタール)▽魔女の谷(約2・9ヘクタール)-の2エリアについては、本年度に実施設計を行い、21年度着工、23年度開業を目指す。先行3エリアと同様にECI方式を採用し現在、技術協力事業者の選定を進めている。

【回転窓】頑固な汚れに…

梅雨前線の影響で不安定な天気が続く。西日本の日本海側沿岸から東北地方に伸び、列島にべったりと張り付いたような梅雨前線に暖かく湿った空気が流れ込み、連休中も各地で大雨が降った▼うんざりするような蒸し暑さ。いつになったら夏はやってくるのか。7月も最終週を迎え、週内には太平洋高気圧の勢力が増し梅雨前線が北陸~東北エリア近辺まで北上しそう。西日本~東海は間もなく夏が到来、関東甲信や北陸、東北地方は梅雨明けが8月上旬になる見通しだ▼例年に比べ長い梅雨。降水量も多く、日照不足は農作物の育成に大きな影響を与えている。キュウリやトマト、ナスなどの夏野菜が軒並み高騰しているというニュースを見て、うんざりした気持ちが増したのは一人や二人ではないだろう▼じめじめした気候で気になるのが水回りのカビ汚れ。外出自粛ではないけれど連休に家の掃除をした方も多いのでは。普段は見過ごしている所をのぞき込むと思わぬ事態にびっくりという経験も▼家にいる時間が多くなっている昨今、頑固なカビの撃退方法をしっかり学んで実践するのも案外、楽しいのかもしれない。

【東京五輪まで1年】国立競技場、仮設オーバーレイ工事は中断

 来年に延期された東京五輪・パラリンピックの開幕まで1年を切った。メインスタジアムの国立競技場(東京都新宿区、渋谷区)では23日、競泳の池江璃花子選手が世界に向けてメッセージを発信。映像で配信されたイベントは報道関係者などを除き無観客で行われた。

 当初計画では24日に五輪が開幕。熱狂の舞台となる国立競技場も万全の準備を整えているはずだったが、スタジアムはいまだ仮囲いに覆われたままだ。

 世界中で新型コロナウイルスが猛威を振るい、国内でも感染者数に歯止めが掛からない中、観客を入れた盛大なイベント開催は見送った形だ。聖火を手に一人でスタジアムの芝生に立った池江選手は「逆境からはい上がっていく時には、どうしても希望の力が必要だ」と訴えた。

 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会によると、国立競技場の仮設オーバーレイ(プレハブやテント、照明設備など)工事は大会延期が決まった今春以降「豪雨や台風対策に必要な措置を取った上で中断している」(広報担当者)。施設所有者の日本スポーツ振興センター(JSC)と調整し来年の開幕に目標を再設定。プランニングの見直しを進めているという。工事業者との契約変更も今後必要となる見通しだ。

 組織委は今月、全競技会場の施設所有者から来年の利用について了解を得たと発表。ただ今後1年で各会場は五輪以外の利用も予定している。このため、いずれも国立競技場と同じように仮設オーバーレイ工事で再度の調整が必要となっている。大会運営の簡素化や新型コロナ対策の検討が今後進めば、工事内容に影響を及ぼす可能性もある。

 6月時点で武藤敏郎事務総長は、仮設オーバーレイ工事について「仮設物の中には(来年まで)存置できるものもあるが、そのままにすると不都合や危険が生じるものは(一時的に)撤去しなければならない」と指摘。施設所有者と調整した上で「ある程度のところまで仮設工事を進めて存置をお願いし、本番に間に合うよう施工する」と話していた。

【掘進開始は2021年度を予定】リニア新幹線・第一首都圏トンネル工事、1号シールド機の組み立て進む

 JR東海が建設しているリニア中央新幹線(東京・品川~名古屋)で、本体トンネルを掘削する最初のシールドマシンの組み立て作業が東京都品川区内で進んでいる。

 25日までにカッターヘッドの全周を発進立坑の地下約80メートルに降ろした。組み立ては9月末ころに完了する見通し。10月から掘進準備に入り、2021年1月ころまでに作業を終える。掘削開始は21年度からを予定。熊谷組・大豊建設・徳倉建設JVが施工する。

 シールド機は東京都から神奈川県まで延長約37キロの第一首都圏トンネルの一部区間を掘る。品川駅(東京都港区)に近い発進立坑となる北品川非常口(東京都品川区北品川4丁目)から東雪谷非常口(東京都大田区東雪谷1丁目)までの約4・7キロと、同非常口から等々力非常口(川崎市中原区等々力)の約3・5キロを掘削する。等々力到達後はマシンの一部を再利用し北品川非常口で組み立て・発進準備を行い、品川駅方面へ約1キロ掘削する。

 北品川非常口は都市部最初の非常口として19年12月に立坑が完成した。リニア中央新幹線は市街化が進んだ首都圏や中京圏が地下40メートル以上の大深度区間となる。トンネルは外径約14メートル。等々力非常口への掘削は23年度まで、品川駅方面へは24年度から掘り進み、25年度に終える予定だ。

 シールド機は最深部で地下約90メートルの固い地盤を掘り進む。外径約14メートル、機長約14・5メートル、重さ約3000トン。掘進速度は1日平均約20メートル、1カ月平均約400メートルと想定している。

 神戸市内の工場で1月に完成し搬送した。立坑搬入は4月から分割して実施。カッターヘッドのベアリングは荷重などを考慮して大型クレーンで水平にして降ろした。カッターの駆動部は水平に組んでから垂直に起こした。カッターヘッドは21日から立坑へ降ろしていた。立坑内での作業完了後は大型クレーンを解体し、掘進に伴う設備を地上に設ける。

【モデルは星乃明日美さんと福本莉子さん】建災防、全国労働衛生週間の啓発ポスター販売開始




 建設業労働災害防止協会(建災防、今井雅則会長)は、10月1~7日に実施される「全国労働衛生週間」(準備期間9月1~30日)の普及啓発に向けたポスターの販売を始めた。

 モデルの星乃明日美さん=写真左=と、映画などで活躍する女優の福本莉子さんをモデルに起用。福本さんのポスターは同週間のスローガン「みなおして 職場の環境 からだの健康」を記載した。

 B2判(73cm×52cm)で、価格は200円(税込み)。東京からの注文は建災防本部の教材管理課(電話03・3453・3391)、東京以外は道府県支部で受け付ける。

2020年7月27日月曜日

【山下ふ頭を2万人が住む街へ】建築家・山本理顕氏、横浜市にカジノのない街づくり提案

上空から見た山下ふ頭の整備イメージ
横浜市が中区の山下ふ頭に誘致を計画しているカジノを含むIR(統合型リゾート)施設整備を巡り、横浜市在住の建築家で名古屋造形大学学長の山本理顕氏が、カジノを含まない住職一体の街づくり構想を提案している。ふ頭に計画人口2万人規模の居住スペースの付いた店舗と約4000室の宿泊施設を建設。居住者が生活と仕事を営む「現代の町家」をコンセプトに、生活空間へ観光客が集まる街づくりを提案している。

続きはHP

【予定価格は500.3億円】瑞穂公園陸上競技場PFI(瑞穂区)WTO入札公告

名古屋市は22日、PFIを導入する「名古屋市瑞穂公園陸上競技場整備等事業」の総合評価一般競争入札(WTO対象)を公告した。31日に現地見学会を行い、参加申請を9月3日から7日まで受け付ける。

 10月14日から16日まで官民対話を実施する。事業提案書の提出日と入・開札日は2021年1月6日。同3月上旬に落札者を決め、基本協定を締結する。議会の承認を得て、同7月に事業契約を結ぶ。予定価格は500億3545万4546円(税込み)。

 参加できるのは、新施設の設計、工事監理、建設、現施設の解体・撤去、公園全体の維持管理・運営担当企業で構成するグループ。このうち、設計企業は1級建築士事務所、建設企業は建築工事A等級で、建築一式工事の総合評点1100点以上などが条件。

 瑞穂区山下通5ほかにある同公園は、第1種公認陸上競技場はじめ各種スポーツ施設を備える総面積約24ヘクタールの総合運動公園。PFI事業者は、現陸上競技場の解体・撤去、新競技場の建設と広場や散策路、駐車場などの整備に加え、既存の北陸上競技場、ラグビー場、野球場、相撲場、テニスコート、体育館(建設中)などを含めた公園全体の維持管理・運営を担当する。事業方式はBTO(建設・移管・運営)。提案により民間収益施設の整備・運営も可能。

 新陸上競技場は、26年の第20回アジア競技大会でメイン会場に利用される。総延べ約6万4000平方メートルで、約3万席の観客席をすべて大屋根で覆う。アジア競技大会の開・閉会式では、フィールド内に約5000席の仮設席を設けて対応する。フィールドや競技・運営関連諸室は、国際的な陸上競技大会、サッカーJリーグ公式戦の開催に必要な機能を備える。

 新陸上競技場の設計・建設期間(解体、公認等取得、開場準備含む)は21年7月から26年3月まで。同4月に供用を開始する。そのほかの建築施設、公園施設も21年7月以降に整備を進め、アジア大会開催までに完成させる。ただ、宿泊研修棟の改修は、一部を除き大会後になる。公園全体の維持管理運営期間は、23年4月から41年3月まで。

【総事業費700億円、V長崎の本拠地に】長崎スタジアムシティ計画(長崎市)、環境デザインJVで設計着手

通信販売大手のジャパネットホールディングス(HD、長崎県佐世保市)は、収容人数2万人規模のサッカースタジアムなどを建設する「長崎スタジアムシティプロジェクト」の基本設計に、環境デザイン研究所・安井建築設計事務所JVの担当で着手したと発表した。

 年内に基本設計を完了し引き続き実施設計を進め、2022年の着工、24年の完成・開業を目指す。総事業費は約700億円を見込む。

 プロジェクトは三菱重工業長崎造船所幸町工場跡地(長崎市幸町、敷地面積6万8746平方メートル)の活用事業。ジャパネットHDのグループ会社であるリージョナルクリエーション長崎(長崎市)が進めている。跡地は21年4月に引き渡しを受ける予定。

 事業費はジャパネットHDが負担し、民間主導の地域創生モデルの確立やスタジアムを核とした新しいまちづくりを目指している。

 基本設計段階の概要によるとサッカーJリーグ2部(J2)に所属するV・ファーレン長崎のホームスタジアムとなる2万~2万3000席のスタジアムを中心に、5000席のアリーナ、300~350室のホテル、延べ約2万平方メートルのオフィス、延べ約2万平方メートルの商業施設などを建設する。

 プロジェクトマネジメント(PM)はジョーンズラングラサールとJLLモールマネジメント、コンストラクションマネジメント(CM)は三菱地所設計が担当。

【凜】内閣府沖縄振興局・増本美子さん

 ◇インフラで人生を豊かに◇

 空港整備を通じた沖縄振興策の企画立案などに携わる。県内にある13カ所の空港は島しょ部に暮らす県民の生活を支える重要なインフラ。3月に那覇空港で第2滑走路の利用が始まり「無事に供用を迎えた」と胸をなで下ろす。一方で「整備、完成で終わりではない。沖縄県の発展に向け空港が最大限活用されるよう取り組んでいきたい」と気持ちを新たにしている。

 空港施設の整備事業は地域住民をはじめ自治体や学識者といった多くの関係者と一緒に進める。時には意見がぶつかることもあるが、需要予測や費用対効果をきちんと説明し、合意形成に力を尽くす。福岡空港の滑走路増設事業着手に携わった経験もある。合意プロセスの難しさを感じたが「新しい人間関係が築け、やりがいもあった。何よりふるさとの福岡に貢献できた」と話す。

 北九州市にある実家は最寄り駅までバスで30分かかるなど、交通利便性があまり良くない。交通インフラは生活を支える大切な基盤。「人生の幸福度にもつながる交通インフラの観点から、より豊かさが実感できる社会づくりに携わりたい」。そんな思いを胸に国土交通省へ入省した。

 空港施設の整備計画や海外展開などに従事し、昨年7月から現在の仕事に。これまで携わってきた航空行政の知識が自身の強み。「専門性をさらに高めきちんと仕事に還元できる人になりたい」。心からそう思っている。

 (振興第3担当参事官付専門官〈空港担当〉、ますもと・よしこ)

【やっぱり!マイ・ユニホーム!!】鴻池組「アクセントカラーで“直線”表現」

 2021年に迎える150周年記念事業の一環として6月、約30年ぶりに作業服をリニューアルした。リニューアルでは「ダイバーシティー(多様性)」「労働環境向上」をテーマに社内アンケートを実施。社員の声に耳を傾け着用時の利便性や快適性を追求した。

 デザインコンセプトは「Line(直線)」。アクセントカラーを直線状に配置し、コーポレートスローガンの「まじめに、まっすぐ」を表現している。すっきりとしてシャープなシルエットが印象的だ。

 ベースカラーはブラウン。春夏用はダークネイビー、秋冬用にはダークブラウンを組み合わせた。春夏服は従来よりも通気性が良く、乾きやすい。秋冬服は保温性の高さが特徴という。可動性を高める縫製方法など随所に工夫を凝らし、現場での動きやすさに気を配った。

 これまで男女共通だったデザインを改め、女性用のシルエットとサイズを追加した。女性社員の意見を取り入れ、動きやすさはもちろん、化粧品が付いても目立たないよう襟裏の配色を変更するなど、細部にわたって配慮している。

【駆け出しのころ】NIPPO常務執行役員関東第一支店長・赤池利孝氏

 ◇目標に向かって挑戦を◇

 高校時代に地元の舗装会社でアルバイトをしていた時、現場代理人の方が部下や協力業者に指示する姿に憧れました。工事全体を采配する現場代理人の力量で舗装の出来栄えが左右されるところに、ものづくりの魅力を感じました。

 当時、一般道の舗装普及率は約20%程度。3年間お世話になった恩師から「土木の会社なら将来性のある大手舗装会社に行ったらどうか」というアドバイスもあり、日本鋪道(現NIPPO)に入社しました。半年間の研修を経て当時の東京支店に配属されました。

 憧れていた東京での仕事に期待も抱いていましたが現実は甘くはありません。官庁発注の夜間工事に多く携わり、交通量が多い現場で作業服を真っ黒にしながら働く日々。仕事が終われば宿舎に帰り、ただ酒を飲んで寝るだけの生活が続き会社を辞めたいと思った時期もありました。

 数年が過ぎて仕事を覚えてくると、いろいろなことを任されるようになり、ものづくりの面白さを感じていきます。当時の上司は「下積みをきちんと経験させてから現場代理人にする」という考えの持ち主。仕事には厳しい方でしたが気配りの人でもあり、背中を見ながら経験を積んでいきました。

 22歳からほぼ毎年、東京都内での国道の道路修繕工事に携わり、29歳の時、念願の現場代理人として工事を任されます。交通量が多く周辺に住宅も密集し、これまで経験した現場の中で一番厳しい施工環境でした。苦情が多い地域で、発注者からもしっかり対応し現場を止めることのないよう指導されていました。

 地元の方々に対する日々の工事説明などが功を奏し、ほとんど苦情なく無事故で工期内に完成できました。発注者から評価され局長賞をいただいたことは、多くの現場勤務の中で一番の思い出です。

 入社から45年がたちますが、そのうち32年が都内の現業でした。地域柄、危機管理が最優先課題であり必然的に意識が高まりました。その経験と上司から教えていただいた人材育成の大切さは、組織を管理する立場になってからも役立っています。

 ICT(情報通信技術)の普及や働き方改革などで建設業の労働環境も3K(きつい・汚い・危険)から新3K(給与が良い・休暇が取れる・希望が持てる)に変わってきています。現場ごとに違うものを大勢の人たちで完成させていく面白さは、今も昔も変わらない建設業の魅力です。自分の中で目標を持てば、苦しいことがあっても頑張れます。将来の建設業界を担う技術者には夢と希望を持ちながら、ものづくりに挑戦してほしいと思います。

入社15年目ごろ。子どもと出かけた水族館での一枚
(あかいけ・としたか)1974年峡南高校土木科卒、NIPPO入社。執行役員北信越支店長や常務執行役員関東第二支店長などを経て2018年4月から現職。山梨県出身、64歳。

2020年7月22日水曜日

【注意喚起やイルミネーションに】大林道路ら、太陽光発電で発光する舗装用ガラス開発

 大林道路と早水電機工業(神戸市長田区、藤井純一代表取締役)、宮吉硝子(名古屋市昭和区、立木彰一社長)の3社は太陽光発電で発光する舗装用ガラスユニット「ソーラーウェイ」を開発した。

 ユニットに組み込んだ発電パネルで昼間に蓄電し、任意の時間に発光できる。ガラスに文字やイラストを印刷すれば夜間の注意喚起や情報発信、イルミネーションに活用可能だ。

 ソーラーウェイは太陽光パネルとガラス導光板を複層状に組み合わせた。パネル1枚の大きさは縦724ミリ、横1337ミリ。参考価格は1枚230万円。

 表面は滑り止め機能付き強化ガラスで、歩道に設置して上を歩くこともできる。太陽光で発電するため、電気工事をせずに設置できる。パネル付近に設置するバッテリーは、非常用電源として携帯電話の充電などにも活用できる。

 ガラス導光板にはさまざまな文字やイラストが印刷可能。QRコードを印刷して情報発信したり、床面を明るく照らして歩道の安全性を高めたりできる。さまざまな色に点滅させてイルミネーションとしても活用できる。路面の発光以外の用途では街灯、ミストシャワー、散水設備の電源を想定している。

 表面の強化ガラスは車両の重さにも耐えられる。早水電機工業の沖孝二専務は「将来的には車道への展開も視野に入れていく」としている。

 初弾として東京都の「都有施設における再生可能エネルギー見える化モデル事業」として、江東区の東京ビッグサイト敷地内に設置した。4月からの測定では一定量の発電と二酸化炭素(CO2)削減の効果を確認できたという。

【2020年7月豪雨】球磨川流域の被災地を見る㊦ 地域建設会社が「守り手」の役割果たす

路面が崩れ落ちた国道219号の応急復旧状況(熊本県球磨村)
豪雨被害に見舞われた球磨川流域を訪れた際、同川に沿うように走る国道219号で災害支援の自衛隊車両とともに目についたのが「熊本県建設業協会人吉支部」と横断幕を張ったダンプトラックだ。同支部は被害発生時から国、県、市町村の要請に応じて応急対応に奔走。建設業界に託された「地域の守り手」としての役割を果たしている。

松村陽一郎支部長(熊本建協副会長)らは、今月3日から降り続いた記録的な豪雨で被災した道路や河川施設への対応策を県の球磨地域振興局と協議。孤立した球磨村役場にアクセスする県管理の国道219号、球磨川に注ぐ山田川、万江川の堤防決壊箇所の応急復旧を優先することにした。

 応急復旧工事は219号を味岡建設、山田川を三和建設、万江川を松村支部長が社長を務める丸昭建設が受け持った。球磨川の決壊した堤防の対応など国の要請に応じた活動と並行して現地作業に当たった地元企業らの奮闘で、県の応急復旧は月内完了の見込みだ。

 球磨川沿いの219号では、球磨村一勝地地区で作業が行われていた。河川側に崩れ落ちた道路を通行できるよう回復するため、大量の大型土のうを一つずつクレーンで積み込む作業が進む。川沿いの崖に作業員を配した作業は危険を伴い、断続的な降雨や酷暑が追い打ちを掛ける。

 堤防が120メートル決壊した万江川では、山江村万江地区で河川内に工事用道路を作り、基礎がむき出しとなった沿川の住宅と崩れた護岸の上に大型土のうを合計1700袋積み上げる作業が行われていた。住宅と堤防の機能を応急的に復旧させるのが狙いだ。

 8日から現場作業に従事する丸昭建設の尾崎孝要土木部長は「午前7時と午後7時に作業員を入れ替え、24時間態勢で施工している」と話す。現場にはバルーン照明機を8機配備。夜間も作業を行える環境を整え、対応に当たっている。

 1965年の「昭和40年7月洪水」で人吉市の市街地が浸水した。「これだけの浸水はあれ以来」(松村支部長)。支川を含め洪水被害が頻発していた球磨川水系だが、街を飲み込む大水害は半世紀ぶりだ。


万江川の河川内に工事用道路を設け緊急対応に当たっている(熊本県山江村)
今後、本格的な復旧や復興へとシフトするが、同じような惨事を繰り返してはならない。球磨川と共に生きてきた地域を存続させるためにも「219号やくま川鉄道など被災した交通インフラのルート変更を含め、総合的な対応策も求められるのではないか」。松村支部長はそう指摘する。


 □公共土木施設被害は1352億円□


熊本県は、2020年7月豪雨による公共土木施設の被害額をまとめた。国と熊本市、JR施設を除く20日時点の速報値で被害額は約1352億円。16年の熊本地震の被害額(5月16日時点、1379億円)に匹敵する被害となった。

 河川や道路を中心に被災箇所は4168カ所に上る。八代市、人吉市、芦北町、球磨村の2市1町1村の被害額が全体の8割超を占めた。

 県施設の被災箇所は1400カ所、被害額は約769億円。市町村は2768カ所が被災し被害額は約582億円。市町村別の被害額は球磨村が最も大きく約458億円。次いで八代市が約279億円、人吉市が約199億円、芦北町が約184億円となった。

 施設別では被災箇所、被害額ともに道路が最も多く、2338カ所、約431億円。河川が1500カ所、約369億円でこれに次いだ。橋梁は被災箇所数が27カ所と少なかったものの、被害額は施設別では3番目に大きい約363億円となった。

 これ以外では砂防設備が245カ所で約40億円、下水道(農業集落排水を含む)が20カ所で約117億円、公園が19カ所で約25億円、港湾が17カ所で約5億円の被害となった。今回の集計は現時点での判明分のため、今後調査が進めば被災箇所や被害額は増える可能性がある。

【空調・換気能力向上、映像設備も充実】東京ドーム、100億円投じ大規模改修へ

 読売新聞グループ本社(東京都千代田区、山口寿一社長)と読売巨人軍(同千代田区、今村司社長)、東京ドーム(同文京区、長岡勤社長)の3社が東京ドームの改修計画をまとめた。

 3年間で約100億円を投じ、空調・換気設備の能力増強工事、メインビジョンやコンコースの拡張工事などに取り組む。全観客席の換気環境を強化するなど感染症対策を徹底し、世界トップレベルの清潔・安全・快適なスタジアムを目指す。施工者は明らかにしていない。

 換気はグラウンドレベル、来場者が利用する1、2階エリアとバルコニーの給気量を50%引き上げる。現状の給気量120万立方メートルを180万立方メートルに高め、観客席の空気は客席の下などから場外に排気する。気温と湿度を適切に保てるよう、12億円を投じて大型冷凍機を増設し、冷房能力も高める。東京ドームは加圧送風システムで膜屋根を浮揚させ維持させる構造になっており、大容量の換気設備の特徴を生かす。

 メインビジョンは2023年の開幕に向けて面積を約3・6倍にする。工事を2期に分け、1期はビッグボードと呼ばれる外野大型看板、下部のサブビジョンを一体化する。2期はスコアボードの演出をはじめ、デジタルネットワーク技術を駆使して情報発信の機能を向上させる。

 2期ではサブビジョンを合わせた現在の298平方メートル(メインビジョン238平方メートル)が1073平方メートル(968平方メートル)になる。メインビジョンは1期工事で約2倍、2期完了後に国内最大になる。

 感染症対策として観客の飛まつが1階に飛ばないよう、2階スタンドの最前部には透明のひさしを27日までに設ける。コンコースには大型の送風機を30台設置する。空気の流れが強まり観客は涼しさを感じられるという。来季にかけて女子トイレを121ブース、洗面台は145台新設し、それぞれ約1・6倍の313ブース、約3倍の220台にする。12カ所の手洗いスポットも新設する。

 来季は立ち見エリアの改修や喫煙ブースの撤去によって1階のコンコースを広げる。トイレや売店への人の動線を工夫し、密を防ぐ。デジタルサイネージや3Dセンサーを活用することで女性がトイレに分かりやすくたどり着けるよう工夫する。2階内野コンコースには新たにスイートルームを設置。7~10人用の半個室を8部屋整備する。

【年間稼働率向上で収益力アップを】横河システム建築ら、ピッチ昇降型スタジアムの提案強化

 横河システム建築(千葉県船橋市、桑原一也社長)とスポーツ施設の設計などを手掛けるクーダジャパン(河野久米彦代表)が、サッカースタジアムにピッチ昇降システムを組み入れた「マルチユーススタジアム」の提案を強化している。

 ピッチを上昇した後、空いた下のスペースでサッカー以外のイベントが年間約300日開催できる。スタジアムの稼働率を高め収支改善につなげる。

 天然芝を敷設したサッカー場は試合の間隔を開けピッチコンディションを整える必要性がある。アウェーでの試合時やオフシーズンでも、スタジアムに人を入れてイベントを開くのは困難だった。

 マルチユーススタジアムは、ピッチ下の土間コンクリートにバスケットボールやバレーボール、テニス、スケートなどの競技会場を設営。スタンド最下部客席は分割して移動できるため、大きさの違う競技会場を取り囲むようにセッティングできる。大規模コンサートにも対応する。

 上空に移動したピッチが屋根代わりになるためよほどの荒天でない限り、安定した施設運営を実現する。上空で十分な日照を確保し芝生の成長を促進する。競技場の上部にはアーチ状の鉄骨を設置。ピッチ昇降に使うワイヤを取り付けるほか、開閉式の日陰膜を設置すれば夏場の強い直射日光が防げる。サッカークラブがJ2やJ1に昇格した場合、増築で客席数を増やす設計も可能だ。

 国内のサッカースタジアムは、ほとんどを自治体が所有している。使用しない期間が多く維持管理の費用負担も重い。事業収支をどう改善するかが課題となっていた。横河システム建築らは商業施設との組み合わせなどで、マルチユーススタジアムの稼働率を上げるトータル提案も視野に入れている。

天然芝ピッチ昇降システムの紹介動画はこちら

2020年7月21日火曜日

【中堅世代】それぞれの建設業・261

職人のこだわりと業界のトレンド。両方を把握し製品を取りそろえる

 ◇職人に寄り添い、頼られるショップに◇

 職人に寄り添う-。工具や衣類をはじめ、現場の職人が仕事道具を調達するプロショップの店長だった庭野雅司さん(仮名)は、接客をそう心得るようになった。

 流通・販売業の会社の中で職人向けの専門商品を扱う初めての店舗の責任者を任された。開店当時は売り上げを増やせるという手応えを感じると同時に、顧客が好む店舗にするための課題が山積していると実感し、先行きへの不安感を覚えた。

 ホームセンターでは扱っていない工具や備品を求めて来店してくれた職人に「すぐ取り寄せますよ」と応じたが、「じゃあいいや」と予約せずに帰ってしまった。「道具にこだわりのある人ばかり。代替品では納得してもらえない」と痛感した。

 こだわりのあるDIY用の道具を求めるような一般消費者以上に、職人のニーズに応える店舗というふれこみで出店した。ホームセンターのプライベートブランドのような製品ではなく、高額なハイスペックを含めた専門メーカーの製品をそろえるよう心掛けた。「こういう製品ではなく、『これ』を求めて来てくれる職人に応えたい」。店頭の商品は大幅に入れ替えてきた。近郊の店舗になかった商品を見つけた職人がうれしそうに買い物してくれた。昼休みや仕事帰りにふらっと立ち寄ってくれる顔なじみの職人が随分増えた。

 仕事柄、建設業のトレンドには敏感だ。法令整備に伴ってフルハーネスタイプの安全帯の販売量が一気に増えた時期があった。労働災害を少しでも減らしたい元請業者が熱中症対策にも一段と力を入れており、評判を口コミで聞いた職人が送風ファン付きの作業着を次々と手に取っていく。このタイプは「一度着たら脱げないよ」とある職人が話したように夏場の必需品になりつつある。充電切れに備えて、予備の送風機を購入していく職人が少なくない。

 速乾性のある下着は一般の人も購入していく。衣類はデニム系の素材の人気が続いている。防火や耐水の機能が高いのに安価でデザイン性の高い衣類が多くあり、アウトドア用に購入する一般の人が来店することもある。衣類の販売コーナーは開店当時と比べると大幅に広げた。

 躯体系、設備系、造園関係など顧客の職人はさまざま。おそろいのワーキングシューズや、同じ色の安全靴を買っていった施工班らしき一行がいる。ワーキングシューズは大手スポーツメーカーが参入し、高価だが機能の優れる商品が増えてきた。価格帯が広いが、売り手としては「靴の寿命は1000円で1カ月。1万円なら10カ月くらい」と見ている。現場の元請業者と下請業者の作業員のように、販売店の現場も信頼関係が欠かせない。人気ブランドのスニーカーと同じように、入手が難しいワーキングシューズがある。メーカーとの関係が深い仕入れ先からは、「日頃の信頼関係がないと商品を回してもらえない」という。

 コロナ禍で建設投資の先行きを懸念している。店には大手ゼネコンの現場で働くような職人や、一戸建て住宅の大工、内装工事の職人らが訪れる。景気の影響は受けながらも建設の需要には底堅さがある中で、「仕事に誇りを持った職人がたくさんいる」と考えている。求められるのはプロの職人に頼られる店。店長からは退いたが、ニーズと業界のトレンドに敏感になって店舗と職人をサポートし続ける。

【やっぱり!マイ・ユニホーム!!】福田道路「誠実さ伝わるデザインに」

 福田道路が約10年ぶりにユニホームを刷新する。11月2日に迎える創立50周年記念事業の一つに位置付けている。「働き方革新と生産性の向上を体現でき、個人が心地良く、仕事が充実し、社会に当社の誠実さが伝わるデザインを目指す」(同社)という方針だ。

 ホワイトシルバーとネイビーを基調とすることで、全体的にすっきりとしたスリムなイメージにする。コーポレートカラーであるオレンジ色を上着の左胸と左右脇に配色することで、ユニホームのオリジナル性を高めるとしている。

 夜間作業時でも目立つよう光反射機能を持つテープを腕や足など各所に縫いつける。伸縮素材や新立体裁断構造といった新しい縫製技術を積極的に取り入れ、動きやすさの点からも機能性を高める。女性サイズのスラックスも用意する。

 ユニホームは会社のビジュアルイメージを社会に発信する重要なツールというのが同社の認識。「ユニホームを着ているのが福田道路の社員と認識してもらえるよう認知度を高めたい」と担当者は話す。

 新ユニホームは来年1月の導入を予定。試作品が完成しており、ベルトやヘルメットなども含めて全体的にイメージを刷新していく。

【駆け出しのころ】オリエンタル白石執行役員営業本部副本部長・角本周氏

 ◇軸を作り逃げずに前進◇

 子供の頃、両親の実家を訪れる時に関門橋をよく通り、夏休みの工作で模型を作りました。高校時代はボート部の練習で川から橋を眺め、橋への関心が深まりました。

 将来は橋の仕事ができればと考えていましたが、特に鉄やコンクリートといった構造にこだわりはありませんでした。就職先を考え出したころ、大学の研究室にオリエンタルコンクリート(現オリエンタル白石)から求人がありました。同じ大学の先輩が一人もいなかったことに加え、たまたま見た専門誌の表紙を当社が北九州市内で施工した斜張橋が飾っていたことが決め手となり、入社を決断しました。

 入社後の研修を経て本社技術部に配属。まず担当したのは橋ではなく、台湾で計画されていた下水処理場の卵形消化槽の設計でした。米国のコンサルタントから業務受託したもので、設計コードは米国の基準を使用。大学時代に学んだことが役立ち、構造解析などは苦になりませんでしたが、問題は苦手な英語。設計計算書の作成に当たり、最初は上司から「日本語で書いておけば英訳はこちらで行う」と言われたにもかかわらず、1週間後には「いつまで日本語で書いているのか」と怒られました。

 2年目は建設省(現国土交通省)土木研究所に出向。その頃に建設が増えだした斜張橋の耐震設計が研究テーマでした。上司の方々の厳しい指導の下、研究成果を分かりやすく伝える書き方や耐震設計の基本を身に付けることができました。

 3年目に会社へ戻り、斜張橋やつり床版橋など特殊構造形式への対応や耐震関連の業務を担当しました。入社5年目には当社単独で初めて行う張り出し施工のPC(プレストレストコンクリート)斜張橋として、鹿児島の上甑島と中甑島を結ぶ「甑大明神橋」の現場に赴任。いきなり過去に経験したことのない大型台風が来襲し、工事用道路が流され、事務所のトイレが飛ばされるなど、逃げ出したくなるような厳しい環境でした。

 机上の計算で精度を追い求めても実際の現場ではその通りにいきません。いろいろ苦労の多い現場でしたが、実体験での気づきなどを通じて現場を見る目が養われました。開通式で島の人たちが喜ぶ姿を見て、斜張橋の下を漁船団がぐるぐる回って完成を祝ってくれた時は感動しました。

 中堅時代は社外の委員会で技術基準類の改定作業にも数多く携わりました。異なる立場の人たちの見方や考え方などに接しながら、合意形成の進め方も学びました。

 若い人たちには基礎を身に付け、自分の中の軸をしっかり作ってほしい。いくら経験を積んでも基礎がないと応用が利かず、成長できません。目の前の困難から逃げず、大変な状況を楽しむ。軸があれば、どんなところでもぶれずに歩いて行けます。

入社6年目。甑大明神橋の主塔頂部に設けた足場での一枚
(つのもと・めぐる)1987年金沢大学大学院工学研究科修了、オリエンタル白石入社。執行役員事業開発部長などを経て2020年から現職。島根県出身、57歳。

【3段階でプロジェクト推進】首都高日本橋区間地下化、準備工に4~5年

首都高速道路会社が計画する都心環状線日本橋区間の地下化事業は、トンネルなど本体工事の実施が2024年ころからになりそうだ。

 地下化事業はフェーズ1~3の3段階に分けて進める。フェーズ1の地下埋設物移設や既存出入り口の撤去工事について、同社の宮田年耕社長は17日に東京都内の本社で開いた会見で、「埋設物の移設と出入り口撤去に4、5年かかる」との見通しを明らかにした。

 地下化事業は3月31日に国土交通大臣から事業許可、東京都知事から都市計画事業認可を4月30日に取得した。6月に地域への事業説明に入り、7月3日に最初の大型工事となる江戸橋・呉服橋出入り口の撤去工事の入札を公告した。地下埋設物の移設工事は今秋に着手する。

 開削トンネル、シールドトンネル、河川内、擁壁・掘割、高架といった本体工事はフェーズ2に位置付けている。今のところ同社はフェーズ1は主に通常の一般競争入札などで発注する。フェーズ2は難度が高く工期設定の長い工事が多い。大規模修繕工事のような一括発注や工区を分けた分割発注など入札契約方式を検討している。高速道路の地下化は35年、日本橋川上空の高架の撤去は40年の完成を予定している。

 地下化に伴い、周辺では大型を含む複数の開発事業が計画されている。会見で宮田社長は「工程も含めて綿密に協議している。(高速道路工事、建築工事とも)工程を順守して、ウィンウィンになる必要がある。綿密な協議はもう終わっていると解釈している」と状況を説明した。

【2022年度着工めざす】新宿駅西口地区開発計画(東京都新宿区)、設計は日本設計

 小田急電鉄と東京メトロが東京・新宿駅西口で計画する「(仮称)新宿駅西口地区」の開発事業で、設計を日本設計が担当することが分かった。

 同社は東京都の環境影響評価(環境アセス)手続きに伴う調査計画書の作成業務も担う。施工者は決まっていない。年度内の都市計画決定を経て、2022年度の着工、29年度の竣工を目指す。

 計画地は新宿区西新宿1の1(区域面積約1・6ヘクタール)。小田急百貨店や新宿ミロードなどの商業施設、小田急電鉄の鉄道設備などを建て替える。

 現状の計画によると、建て替え後の規模は地下5階地上48階建て延べ28万1700平方メートル。高さは約260メートル。低層に商業施設、業務を高層部に入れる。イベント利用を想定した空間やコワーキングスペースなどを設け、ビジネス機能の発信と創出を促す。

 計画地を含むエリア「新宿駅直近地区」は、都が土地区画整理事業(事業区域面積約10・1ヘクタール)を計画。駅前広場の整備と線路上空の東西連絡デッキを柱とする「グランドターミナル構想」実現に向けた基盤整備を進める。連動して開発事業でも、地上と地下、デッキレベルの広場、ビル中層部の滞留空間「スカイコリドー」などを整える。

 19年5月の東京圏国家戦略特別区域会議で、同事業は都市再生プロジェクトが追加提案された。都の都市再生特別地区の制度を活用し、容積率の緩和などを受けたい考えだ。

【2020年7月豪雨】球磨川流域の被災地を見る㊤ 鉄道や生活道路が寸断

線路が流出した肥薩線(熊本県球磨村)
◇国交省出張所も浸水◇

 2020年7月豪雨は記録的な降雨により各地に大きな被害をもたらした。特に熊本県南部では球磨川流域を中心に河川の氾濫や土砂崩れが発生。大規模な浸水に加え、橋の流失や道路の崩壊といったインフラ関連の甚大な被害も出た。災害発生から2週間を迎えた17、18日、豪雨の爪痕が残る球磨川中流部の球磨村と上流部の人吉市を取材した。

 球磨村ではJR肥薩線の渡駅周辺で浸水時に水深が最大9メートル程度まで達したと推定されている。同駅の駅舎内は天井が剥がれ落ち、泥水が残ったまま。線路は路盤が流出しレールが宙に浮き、あめ細工のように曲がっていた。駅周辺の折れた電柱や道路標識はほとんどが下流方向を向き、濁流の激しさを物語っていた。

 国道219号を下流側に向かうと流失した肥薩線の第二球磨川橋梁が見えた。川の中に石造りの橋脚だけが残る。並行して架かっていた県道の相良橋も同様に流失し、2橋の橋桁が散乱していた。近くにいた交通誘導員の男性は「JRが元に戻るには相当な時間がかかる」と表情を曇らせた。

 「温泉くま村湯の駅」の物産館はガラスが割れ、建物内が泥や漂流物であふれ、隣接する建物に軽トラックが頭から突っ込んでいた。すぐ先の道路は川側の崖が大きく崩落していた。

浸水被害を受けた九州地方整備局八代河川国道事務所人吉出張所(熊本県人吉市)
人吉市中心部は至る所にごみ袋や家屋からかき出された泥の山があり、畳などが積まれていた。付近では生活道路である県道の西瀬橋が被災。橋桁の1径間が失われ、残る橋桁には流木などが引っかかり、照明灯が下流に向かってほぼ水平に折れ曲がっていた。

 中心部に近い市の複数の排水機場は浸水被害に遭い、機能を失った状態だ。このため、国土交通省中部地方整備局のテックフォース(緊急災害対策派遣隊)が降雨に備えて宝来町排水機場のすぐ近くに排水ポンプ車を前進配備していた。

 同排水機場に隣接する九州地方整備局八代河川国道事務所人吉出張所も浸水した。中村良一所長によると4日朝に「市街地側から水が駆け上がってきた」ため避難した。建物内は天井近くまで泥水の跡が残る。

 同出張所は被災後も最前線で決壊した堤防などの応急復旧に当たってきた。欠かせないのが地元建設業者の協力だ。中村所長は「自身や家族、親類、知り合いが被災された人もいると思うが、次の雨に備えて地元の復旧のために頑張ってもらっている」と話した。

橋桁の一部が流出した西瀬橋(熊本県人吉市)

【回転窓】今こそアイデアが必要

収束の兆しが見えない新型コロナウイルスの流行。東京など大都市で感染者が急増するなど予断を許さない状況にある▼厳しい状況に直面しながらも日常を取り戻そうと行政機関や企業はさまざまな策を講じている。プロスポーツも無観客試合から有観客試合に移行。ニューノーマル(新常態)での試合開催が始まった▼入場者を大幅に絞ったサッカーJリーグの試合を先週末に観戦した。年間チケットで確保している席とは違う場所。自分の周囲に取られた空間。選手が発するコーチングの声だけが響く試合は不思議だけれど新鮮な印象を受けた▼クラブは多少なりとも入場料収入が確保でき、関係者もホッと胸をなで下ろしただろう。サポーターにとっても開幕戦以来遠のいていた生観戦で日常を少し取り戻せた気持ちになったはず▼高水準が続く感染者数に加え長引く梅雨の不安定な天候もあり野球もサッカーも観客動員に苦戦するチームが多いと聞く。感染リスクは拭い去れず来場に二の足を踏む人も多かろう。困難をどう乗り越えるか-。プロスポーツは観客に制約を課すだけでなく、集客に向けた知恵と行動力が今こそ必要と感じた。

2020年7月17日金曜日

【2020年7月豪雨】群馬建協、段ボール製間仕切り100セットを被災地に搬送

 群馬県建設業協会(青柳剛会長)は、避難所などで利用できる段ボール製の間仕切り「KAMIKABE(かみかべ)」を2020年7月豪雨の被災地に向けて15日に発送した。

 100セットを積んだトラックが出発しており17、18日に福岡、熊本、鹿児島の3県4市町にある7カ所の道の駅に搬送する。

 KAMIKABEは厚さ3ミリ、標準ユニットが2・1メートル×2・1メートルサイズ。テープや金具を使わずに20分ほどでプライバシーと感染症対策に配慮した居住スペースが構築できる。直方体に荷造り可能で、搬送や備蓄に適している。群馬建協は全国道の駅連絡会(石井裕会長)、全国建設業協同組合連合会(全建協連、青柳剛会長)との3者で、被災地の緊急支援として100セットを提供することにしている。

【石狩、守山、熊本に新店舗】コストコ、2021年春から3店舗を順次開業

大手会員制量販店のコストコホールセールジャパン(川崎市川崎区、ケン・テリオ代表取締役)は、2021年春から3店舗を順次オープンする。

 開業するのは▽(仮称)石狩▽(仮称)熊本▽(仮称)守山-の各倉庫店。いずれも設計はKatachi ap(東京都港区、北園直路代表取締役)。施工は大成建設で敷地の造成工事を終えている。1店舗当たり約300人の地域雇用を計画する。

 石狩倉庫店と熊本倉庫店は21年春に開業する。石狩倉庫店の建設地は北海道石狩市新港南2の733の1(敷地面積3万4628平方メートル)。建物はS造平屋1万5487平方メートルの規模。収容台数866台の駐車場を設ける。熊本倉庫店は熊本県御船町小坂宮田689の1(敷地面積5万5074平方メートル)に建設する。建物はS造平屋1万5184平方メートルの規模を計画。駐車場は801台分を確保する。

 守山倉庫店は21年夏に開業する。所在地は中志段味特定土地区画整理事業区域内70街区に位置する名古屋市守山区中志段味東海道730の1(敷地面積6万6000平方メートル)。建物規模はS一部RC造2階建て3万2504平方メートルを予定している。914台が収容可能な駐車場を設ける。

【施工は大成建設ら、5000匹がフワリ】京都水族館にクラゲ展示エリア

 謎の多いクラゲの魅力を再発見-。オリックス不動産が京都市下京区にある「京都水族館」にクラゲを展示する新エリア「クラゲワンダー」を16日オープンした。20種類以上のおよそ5000匹のクラゲの泳ぐ姿が楽しめる。

 クラゲワンダーの広さは約350平方メートル。約1500匹のミズクラゲをパノラマ水槽で楽しめる「GURURI(グルリ)」、クラゲの繁殖や研究などの作業を公開する「京都クラゲ研究部」などが入る。

 2択の質問の回答から性格をクラゲに当てはめて診断する「クラゲ別キャラ診断」、さまざまなクラゲの特徴を解説する「クラゲワンダー大図鑑」といったコーナーも設置。エリア公開を記念して、クラゲのぷるぷるした感触のようなゼリーをトッピングしたドリンク、クラゲをかたどったクッションなどを販売する。

 グルリの設置工事の設計・施工は大成建設が担当。その他の工事は電通ライブが設計と施工を手掛けた。京都水族館の所在地は観喜寺町35の1の梅小路公園内。2012年3月に開業した。

2020年7月16日木曜日

【回転窓】飲食店の新常態

街のにぎわいに欠かせない飲食店もコロナ禍で厳しい経営が続く。いったん解除された休業要請は、感染者の急増を受けて感染防止対策を未実施の事業者らを対象に再度要請されるようだ▼感染拡大の要因に挙げられる接待を伴う飲食店を「夜の街」と総称して危険視する発言は、他の飲食店に風評被害を与える。対策に率先して取り組んでも繁華街から客足は遠のくばかりだ▼テークアウトやランチ営業などで急場をしのごうとする店も少なくない。夜の営業では値段が張ってなかなか入れなかった店の料理を、手ごろな価格で食べられると人気を集める店も▼外食業界で閉店・休業の動きが強まる中、東京・新橋に一風変わった食堂がオープンした。居酒屋のランチタイムを利用し、群馬県高崎市の地元で親しまれてきた絶品グルメ「絶メシ」を提供。レシピを伝授した店にはロイヤルティーを還元するという▼絶メシは後継者問題に悩む飲食店を支援する地域発の取り組み。地方再生と集客増を狙った都心の食堂をはじめ、従来モデルでは生き残れないと危機感が高まっている飲食店のニューノーマル(新常態)に注目したい。

【みんなできてる?】宮城建協、新型コロナ対策啓発ポスター作成

 宮城県建設業協会(千葉嘉春会長)は、マスクの着用や水分をこまめに取るなど新型コロナウイルスの感染症対策と熱中症対策を呼び掛ける啓発ポスターを作成し、県内の377小学校に配布した。建設会社向けのポスターも作り、工事現場での感染防止に役立ててもらう。

 子ども向けポスターは社会貢献活動の一環として3000枚作成。バックホウやダンプトラックなどの重機が帽子をかぶったり、マスクを着けたりするシーンをイラストで描き、「みんなできてる?」と呼び掛けている。各校に6枚ずつ送付した。

 現場用ポスターは5000枚作成。密閉・密集・密接の「3密」回避、消毒や手洗い、マスクの着用、検温などの体調管理を求めているほか、いざという時のための連絡体制の整備も呼び掛けている。会員会社には1枚ずつ配布し、必要枚数を確認して改めて送付する。ポスターはいずれもB2判。