「清正公さん」と言われ、今も熊本県民に親しまれている武将の加藤清正。各地を転戦し武功を挙げたことは有名だが、最大の偉業は治水事業とも言われている▼清正が残した「治水の五則」は今の治水事業にも通ずる。水の流れを調べる時は「水面だけでなく底を流れる水がどのようになっているか調べよ」。堤を築く時は「川の流れに近いところには築いてはいけない」▼「外だけ大石を積み、中は小石ばかりという工事をすれば風波の際には破れる」「遊水の用意なく、川に水を早く流すことばかり考えると、水はあふれて大災害を被る」「普請の際には川守や年寄りの意見をよく聞け」。治水の提要を余すことなく伝えている▼五則は竹林征三氏の近著『治水の名言』(鹿島出版会刊)から引いた。竹林氏は清正の治水を「水に逆らうのではなく、水をうまくなだめるやり方で綿密に計画を立てている」と分析する▼暴れ狂う濁流と、泥まみれになって片付けを行う被災者の方々の映像を見るたび心が痛む。先人たちも洪水や土砂災害から身を守るために戦ってきた。今を生きるわれわれも決して手綱を緩めてはならない。
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