2020年7月21日火曜日

【2020年7月豪雨】球磨川流域の被災地を見る㊤ 鉄道や生活道路が寸断

線路が流出した肥薩線(熊本県球磨村)
◇国交省出張所も浸水◇

 2020年7月豪雨は記録的な降雨により各地に大きな被害をもたらした。特に熊本県南部では球磨川流域を中心に河川の氾濫や土砂崩れが発生。大規模な浸水に加え、橋の流失や道路の崩壊といったインフラ関連の甚大な被害も出た。災害発生から2週間を迎えた17、18日、豪雨の爪痕が残る球磨川中流部の球磨村と上流部の人吉市を取材した。

 球磨村ではJR肥薩線の渡駅周辺で浸水時に水深が最大9メートル程度まで達したと推定されている。同駅の駅舎内は天井が剥がれ落ち、泥水が残ったまま。線路は路盤が流出しレールが宙に浮き、あめ細工のように曲がっていた。駅周辺の折れた電柱や道路標識はほとんどが下流方向を向き、濁流の激しさを物語っていた。

 国道219号を下流側に向かうと流失した肥薩線の第二球磨川橋梁が見えた。川の中に石造りの橋脚だけが残る。並行して架かっていた県道の相良橋も同様に流失し、2橋の橋桁が散乱していた。近くにいた交通誘導員の男性は「JRが元に戻るには相当な時間がかかる」と表情を曇らせた。

 「温泉くま村湯の駅」の物産館はガラスが割れ、建物内が泥や漂流物であふれ、隣接する建物に軽トラックが頭から突っ込んでいた。すぐ先の道路は川側の崖が大きく崩落していた。

浸水被害を受けた九州地方整備局八代河川国道事務所人吉出張所(熊本県人吉市)
人吉市中心部は至る所にごみ袋や家屋からかき出された泥の山があり、畳などが積まれていた。付近では生活道路である県道の西瀬橋が被災。橋桁の1径間が失われ、残る橋桁には流木などが引っかかり、照明灯が下流に向かってほぼ水平に折れ曲がっていた。

 中心部に近い市の複数の排水機場は浸水被害に遭い、機能を失った状態だ。このため、国土交通省中部地方整備局のテックフォース(緊急災害対策派遣隊)が降雨に備えて宝来町排水機場のすぐ近くに排水ポンプ車を前進配備していた。

 同排水機場に隣接する九州地方整備局八代河川国道事務所人吉出張所も浸水した。中村良一所長によると4日朝に「市街地側から水が駆け上がってきた」ため避難した。建物内は天井近くまで泥水の跡が残る。

 同出張所は被災後も最前線で決壊した堤防などの応急復旧に当たってきた。欠かせないのが地元建設業者の協力だ。中村所長は「自身や家族、親類、知り合いが被災された人もいると思うが、次の雨に備えて地元の復旧のために頑張ってもらっている」と話した。

橋桁の一部が流出した西瀬橋(熊本県人吉市)

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