2020年7月31日金曜日

【けんせつ体幹体操、知ってる?】プロトレーナー・木場克己氏に聞く「コロナ禍でも元気で健やかに過ごすポイント」

 ◇体幹鍛えて、きょうもご安全に◇

 建設業振興基金と徳島県建設業協会が事務局を務める委員会が製作した「けんせつ体幹体操」が広まってきた。大きなけがをしかねない転倒の防止や腰痛の予防になる筋肉の強化、関節のストレッチなどを取り入れてあり、けがの防止と体力を保つのに効果的と愛好者が増えている。採用する現場があり、小学生や高校生らが対象の社会貢献活動にも役立てられている。企画監修したプロトレーナーの木場克己氏に体操へ込めた思いと、建設関係者がコロナ禍でも健やかに過ごすポイントを語ってもらった。

 --体操のプログラムがインターネットの動画サイトにアップされた2016年7月から4年になる。

 「建設業の現場は転倒や墜落が多いと聞いていた。作業前のラジオ体操を見学したが、ヘルメットや安全帯を装着した姿でしっかり体操している作業員と、慣れがあるのかなと思った人がいたのが印象に残っている。慣れはすごく怖い。仕事をするスイッチを体に入れる体操をしっかり行っている人とそうでない人とでは大きな差が出てしまう」

 「講演をきっかけに体操のプログラムを考案してほしいという依頼をいただいた。体幹はアスリートが鍛えるイメージがあるが、階段を上り下りしたり、物を持ち上げたりする仕事だけでなく生活の中の動作でも使っている。転倒しないように踏ん張る、つまずかないように足が出るようにする体操を仕事の前に現場で行ってもらうと効果は大きい」



 --知名度や人気の高い方々が協力している。

 「音楽プロデューサーの田中隼人さんに協力してもらい、サッカー元日本代表の福西崇史さんに体操のモデルになってもらった。建設業の皆さんはサッカー選手や野球選手が活躍するスタジアムなどを造っている。サッカー日本代表の長友佑都選手からは、『元気で安全に建設業に携わっていただくためにも、ぜひ、けんせつ体幹体操を実践してみてください』と、けがをするかもしれないリスクを負って頑張ってくれている建設業の皆さんへのメッセージをもらった。たくさんの人の思いがこもった体操ができたと考えている」

 --体幹の大切さと機能を。

 「体幹は頭、腕、足を除いた胴体の部分。腹筋のようなアウターマッスルと、姿勢を整えるインナーマッスルがあり、腹圧がかからないと、体重の1割くらいの重さの頭が上にくる体はぐらぐらしてしまう。腹横筋、多裂筋、腸腰筋、尻の筋肉などがうまく動かないとバランスを崩して墜落事故が起きてしまうかもしれない。体操は初級編と上級編に分かれ、片足立ちなどのプログラムがある。できない人もラジオ体操と同じように習慣にすることで筋肉が付き、動作の前のスイッチが入り、けがをしにくくなる。そういうメニューを意識した。体のバランスを整え、動きやすさが高まり、一般の人にも効果がある」

 --働く人の健康の在り方がコロナ禍で注目されている。

 「仕事を急に長く休まざるを得なくなり、『コロナ太り』と言われるようになった。休んだ筋肉を元に戻すには3倍の期間、アスリートは1週間休んだら3週間が必要になる。筋肉が衰えたいつもと違う状態になっていて、バランスを保つ筋肉を鍛え、体幹、外側と内側の筋肉を手当てしておかないと、『こんなはずじゃなかった』という事態になってしまう。サッカーのドイツ・ブンデスリーガは再開してけがをした選手が多く出た。一般の人はなおさらで、建設業でも体を使ってきた人は準備が大切になる」

 「手洗い、マスクが習慣になったように、筋肉と向き合って意識した運動で免疫を高める必要がある。腹圧やインナーマッスルを意識するだけで効果は大きく違ってくる。お昼を食べて休んで仕事を始める前に少しの体操を習慣化するなど、体にスイッチを入れましょう。体力を付けるには20分走るだけでも効果がある。歩幅を広くするだけで筋力、体力が強化され、腹式呼吸を意識することで効果はさらに高まる」

 --東京五輪が延期になった。

 「建設業の皆さんが造ってくれた舞台で輝けるように、アスリートはコンディションを整えてきた。選手のコンディションやメンタルが落ちないようトレーナーらがサポートしている。アスリートは来年に向けて準備している。災害時には自衛隊よりも早く対応してくれて、ライフラインを整えてくれる建設業の皆さんがいないと生活ができない。健康に働いて安全第一で頑張っていただきたい」。



 (こば・かつみ)体幹力は人間力を上げる-。KOBAスポーツエンターテイメント代表。サッカーや水泳、陸上などトップアスリートのトレーナーを務める。パリ五輪の出場を目指す水泳の池江璃花子選手は中学2年生、サッカーのリーガ・エスパニョーラ(スペイン)で活躍する久保建英選手は小学5年生からサポート。FC東京のヘッドトレーナー(1995~2002年)をはじめプロチームのトレーナー、トレーニングアドバイザーなどを歴任。トップアスリートのリハビリから考案した安心・安全な「KOBA式体幹☆バランストレーニング(KOBA☆トレ)」を提供。鹿児島県出身、54歳。

 《けんせつ体幹体操とは》

 製作は建設業振興基金、徳島県建設業協会が事務局の「けんせつ体幹体操製作委員会」。腹圧を強化する「ドローイン」などプログラムが15種類の初級編、体幹部全体に効果のある「ハンズアップレッグリフト」など16種類の上級編で構成。約2分40秒の動画と説明書付きのDVDがある。

 自動車の整備工場にも採用され、18年にはラグビーワールドカップ日本大会に出場したニュージーランド代表オールブラックスの4選手を起用したスペシャル動画をAIG損害保険が制作した。生命保険協会の「スポーティライフ大賞」で企業部門のグランプリを獲得している。建設産業戦略的広報推進協議会のポータルサイト「建設現場へGO!」で公開されている。

 製作委員会のメンバーは日本建設業連合会、全国建設業協会、全国中小建設業協会、全国建設業協同組合連合会、全国建設産業団体連合会、建設産業専門団体連合会で構成する。

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