2020年7月22日水曜日

【2020年7月豪雨】球磨川流域の被災地を見る㊦ 地域建設会社が「守り手」の役割果たす

路面が崩れ落ちた国道219号の応急復旧状況(熊本県球磨村)
豪雨被害に見舞われた球磨川流域を訪れた際、同川に沿うように走る国道219号で災害支援の自衛隊車両とともに目についたのが「熊本県建設業協会人吉支部」と横断幕を張ったダンプトラックだ。同支部は被害発生時から国、県、市町村の要請に応じて応急対応に奔走。建設業界に託された「地域の守り手」としての役割を果たしている。

松村陽一郎支部長(熊本建協副会長)らは、今月3日から降り続いた記録的な豪雨で被災した道路や河川施設への対応策を県の球磨地域振興局と協議。孤立した球磨村役場にアクセスする県管理の国道219号、球磨川に注ぐ山田川、万江川の堤防決壊箇所の応急復旧を優先することにした。

 応急復旧工事は219号を味岡建設、山田川を三和建設、万江川を松村支部長が社長を務める丸昭建設が受け持った。球磨川の決壊した堤防の対応など国の要請に応じた活動と並行して現地作業に当たった地元企業らの奮闘で、県の応急復旧は月内完了の見込みだ。

 球磨川沿いの219号では、球磨村一勝地地区で作業が行われていた。河川側に崩れ落ちた道路を通行できるよう回復するため、大量の大型土のうを一つずつクレーンで積み込む作業が進む。川沿いの崖に作業員を配した作業は危険を伴い、断続的な降雨や酷暑が追い打ちを掛ける。

 堤防が120メートル決壊した万江川では、山江村万江地区で河川内に工事用道路を作り、基礎がむき出しとなった沿川の住宅と崩れた護岸の上に大型土のうを合計1700袋積み上げる作業が行われていた。住宅と堤防の機能を応急的に復旧させるのが狙いだ。

 8日から現場作業に従事する丸昭建設の尾崎孝要土木部長は「午前7時と午後7時に作業員を入れ替え、24時間態勢で施工している」と話す。現場にはバルーン照明機を8機配備。夜間も作業を行える環境を整え、対応に当たっている。

 1965年の「昭和40年7月洪水」で人吉市の市街地が浸水した。「これだけの浸水はあれ以来」(松村支部長)。支川を含め洪水被害が頻発していた球磨川水系だが、街を飲み込む大水害は半世紀ぶりだ。


万江川の河川内に工事用道路を設け緊急対応に当たっている(熊本県山江村)
今後、本格的な復旧や復興へとシフトするが、同じような惨事を繰り返してはならない。球磨川と共に生きてきた地域を存続させるためにも「219号やくま川鉄道など被災した交通インフラのルート変更を含め、総合的な対応策も求められるのではないか」。松村支部長はそう指摘する。


 □公共土木施設被害は1352億円□


熊本県は、2020年7月豪雨による公共土木施設の被害額をまとめた。国と熊本市、JR施設を除く20日時点の速報値で被害額は約1352億円。16年の熊本地震の被害額(5月16日時点、1379億円)に匹敵する被害となった。

 河川や道路を中心に被災箇所は4168カ所に上る。八代市、人吉市、芦北町、球磨村の2市1町1村の被害額が全体の8割超を占めた。

 県施設の被災箇所は1400カ所、被害額は約769億円。市町村は2768カ所が被災し被害額は約582億円。市町村別の被害額は球磨村が最も大きく約458億円。次いで八代市が約279億円、人吉市が約199億円、芦北町が約184億円となった。

 施設別では被災箇所、被害額ともに道路が最も多く、2338カ所、約431億円。河川が1500カ所、約369億円でこれに次いだ。橋梁は被災箇所数が27カ所と少なかったものの、被害額は施設別では3番目に大きい約363億円となった。

 これ以外では砂防設備が245カ所で約40億円、下水道(農業集落排水を含む)が20カ所で約117億円、公園が19カ所で約25億円、港湾が17カ所で約5億円の被害となった。今回の集計は現時点での判明分のため、今後調査が進めば被災箇所や被害額は増える可能性がある。

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