2020年10月23日金曜日

【回転窓】美術と豊かさ

  国内初の日本画専門美術館として1966年に開館した山種美術館(東京都渋谷区)。速水御舟が描いた重要文化財の「炎舞」など優れた作品を所蔵している▼企業の寄付金や公的補助金にほぼ頼ることなく運営してきた。だが、新型コロナウイルスの影響で臨時休館を余儀なくされるなど大幅な収入減が続いているという▼初の試みとして今月始めたのがクラウドファンディング。6日間で当初目標の500万円に達し、運営資金の一つの柱にしようと1000万円に再設定した。22日午前8時時点で、447人が合計650万円超を寄付している▼同館は山種証券(現SMBC日興証券)の創業者で「相場の神様」と評された山崎種二が創立した。「金もうけも結構だが、このへんで一つ世の中のためになるようなことをやっておいたらどうか」。親しかった日本画の大家、横山大観の言葉で設立を決意したという▼経済が悪化しゆとりがなくなると日々の生活の維持ばかりに目がいきがち。もちろん仕方の無いことだが、一度失われると取り戻すのが難しい豊かさもある。成熟社会と言われる日本の懐深さが問われていると思う。

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