◇提案と実行が『実現力』生む◇
学生のころは建設業界とはまったく違う将来を描いていました。航空業界を志望していたのです。しかし、時代は不況の中にあり、国内航空会社の新卒採用は抑えられていました。そんな時に大学の就職課からゼネコンも悪くないと紹介を受けたのが、飛島建設に入るきっかけでした。
ただ、建設業の景気も悪く、入社すると朝礼のあいさつで「建設業冬の時代ですが…」と枕ことばのように言われていたのを記憶しています。
入社2年目になったころ、事務係として初めて現場に勤務しました。茨城県大宮町で小学校の体育館を新築する工事です。この建築工事は町を挙げての大イベントであり、翌春の卒業式に間に合わせるために大突貫で工事を進めました。町の方々からは毎日差し入れを頂き、地元の職人さんたちも残業をいとわず頑張ってくれました。
そうして無事に間に合い完成すると、卒業式に私たち工事関係者も招待して下さいました。その式で「工事のおじさんたちが頑張ってくれたので、新しい体育館で卒業式を迎えられました」と、卒業生が答辞で感謝の言葉をくれたのです。これには感動しました。子どもたちに良い思い出をつくれましたし、人々に喜んでもらえる仕事という建設業の原点を感じた瞬間でもありました。
現在は仕事のフィールドこそ違いますが、この経験は、あらゆる場面で常にユーザーを意識するという仕事の姿勢につながっていると思っています。
今はこれまでになかったサービスが新たな社会をつくり出す時代です。だから、企業の規模に関係なく、解決力と実現力のある企業には飛躍のチャンスがあると考えています。ただし、競争のあり方が変わっています。
技術に優れていれば仕事が取れる、施工に優れていれば次の仕事につながる。こうした「信仰」を良い意味で払拭(ふっしょく)していくことが重要です。もちろん技術や施工は大切ですが、施工能力以外の要素が市場競争を左右する局面に来ており、ものづくりを情報やサービスの組み合わせで高度化させていく必要があります。そういったところに事務の担当者は目線を向けていかなければなりません。
「土木・建築・事務」ではなく、「土木・建築・企画」となっていく時代であり、それに合った人材が求められてもいます。提案力に実行力が合わさってこそ実現力となります。若い人たちには、建設事業に取り組む切り口を変えて、常に「変身」にチャレンジする姿勢を持ってほしい。そして「変身力」を強みにしてDNA化していってほしいと思います。
(たかはし・みつひこ)1985年中央大文学部卒、飛島建設入社。経営本部事業戦略室部長、関東建築支店管理部長、東日本建築支社副支社長、社長室長、経営管理本部副本部長などを経て、14年から現職。神奈川県出身、54歳。
入社当時の1枚。 2年目に初めて配属された現場で建設業の原点を実感した |
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