2015年8月10日月曜日

【中堅世代】それぞれの建設業・105

現場の生産性向上は永遠の研究テーマ…
 ◇ピンチをチャンスに!情熱燃やす◇

 日本全体で労働力が減少していく中、省力化・省人化の取り組みは今後のビジネスの重要テーマの一つ。市場の先行きを読みながら、技術開発や組織体制の強化に取り組んでいく必要がある-。
 葉山清順さん(仮名)は、少子化に伴う生産年齢人口の減少によって人材不足が社会問題となっている現在の状況を見越し、勤めていた設備メーカーを十数年前に退職。建設現場の管理・運営を支援するシステム開発の会社を立ち上げた。ここ数年は、建設現場へのシステムの納入実績も堅調に推移。さらなる収益拡大を目指し、研究開発と人員拡充に重点的に経営資源を投じる戦略を描く。
 しかし、建設に限らずどこの業界でも人材は枯渇し、即戦力となるシステムエンジニアなどの技術者を確保するのは難しい。「人材不足などの問題解決に向けたエンジニアリングサービスを提供する会社が、自社の人材確保で苦労するとは本末転倒」と頭を悩ます毎日だ。
 ものづくりへの思い入れが強い葉山さんは、設備メーカーに勤めていたころ、機器の設計を行いながら、顧客への技術営業も担当。営業先で顧客から聞いた意見などを参考に製品の改良・高度化に取り組んだ。
 それでも自ら考え出した設計思想が会社に素直に受け入れられないこともあった。「自分が思い描くものづくりができないなら、自分で会社を立ち上げればいい」。営業先の建設会社とのパイプなどを生かしながら、ものづくりを実践する建設現場を支えるためのシステム開発をコアビジネスとして起業を決意した。
 会社を設立して以降、経営は決して順風満帆ではなかった。公共事業への風当たりが強まり、建設投資の減少傾向に歯止めが掛からない。「コンクリートから人へ」を標ぼうする政権の誕生が、その流れを加速させた。
 建設需要が大きく落ち込む一方で、建設会社の数は減らず、供給過多の市場では安値受注合戦が広まった。顧客の建設会社の現場担当者からは、「直工費とは別に、現場を間接的に支援する管理システムの開発・導入に予算を回すだけの余裕がない」といった声を数多く聞いた。
 こうした意見を聞いた葉山さんは、人件費などの間接コストをより低減できるシステムの開発に一段と力を注いだ。「問題が山積している厳しい時代だからこそ、ビジネスチャンスも多い。立ちはだかる厚い壁をブレークスルーした先に、新たな市場が見えてくる」。
 2011年3月の東日本大震災発生後、復旧・復興事業に、新政権の経済対策などが加わり、国内の建設市場は事業量が急増。建設業界には明るさが戻りつつある。一方で人材不足の問題が深刻化し、現場は厳しい環境が続く。
 「ピンチをチャンスに」と考える葉山さん。建設現場の生産性を高めるBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)やCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)、ロボット化などの分野で、新たな事業展開を模索する。ものづくりへの情熱はますます高まる一方だ。

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