2015年8月17日月曜日

【ロボット、続々】建設生産改革の切り札、ロボット活用の動き拡大

山岳トンネル工事で活躍する作業ロボット
◇危険伴う現場で導入進む◇

 建設工事の生産性向上でキーワードになっている「ロボット」。ゼネコン各社は、ICT(情報通信技術)を駆使して情報化施工や無人化施工の高度化を図るとともに、小型無人機(ドローン)など新しいロボットを建設生産に取り入れるための研究開発にも力を入れている。14年6月に政府が決定した成長戦略「日本再興戦略」の中に「次世代社会インフラ用ロボット」が位置付けられたことで各社の技術開発も加速。この1年で発表されたロボット技術は、生産性向上に加え、作業員の安全確保という観点にも重点が置かれている。


 鹿島は福島第1原発事故に伴う福島県内の除染で発生した汚染土を保管する中間貯蔵施設の建設予定地で、森林の伐採工事に用いる遠隔伐採システムを開発した。林業用バックホウの運転席に無線操縦用ロボットを搭載し、離れた所からリモコンで動かす仕組みだ。人が作業するのに比べ、施工時間を大幅に短縮でき、作業員の被ばく量の低減にもつながる。清水建設は、地盤性状の悪い不良地山での山岳トンネル工事で、切羽前方の作業を機械化する技術を実用化している。トンネル底部に鋼製支保工を一括設置するロボットで掘削を遠隔管理するシステムと併用し、不良地山での施工性・安全性を高めるのに力を発揮している。


 大成建設は遠隔操縦で水中作業を行える水中作業機を現場に導入した。さまざまなアタッチメントを装備できる作業機を水上の台船からシャフトで水中に昇降させ、可視化・情報化の技術を駆使して、遠隔操縦で掘削や砕岩などの作業を実施。水深30~40メートルで各種作業を潜水士を使わずに安全・確実に行っている。


 作業員が重い物を持った時、腰にかかる負荷を軽減するためのロボットも誕生している。大林組は作業支援用ロボットスーツ「HAL」(開発・製造=サイバーダイン)の現場実証を9月まで行う予定で、現在は防じん・防水などの課題解決に取り組んでいる。大和ハウス工業、大和小田急建設、フジタ、大和リースもHALの現場実証を行っており、16年5月の本格運用を目指している。
 ロボットスーツで腰への負担が軽減されれば、生産性の向上と労働環境の改善にもつながり、担い手確保にも役立ちそうだ。

斜張橋の斜材保護管点検にもロボットは導入されている
 ◇インフラ点検・調査でも活躍◇

 ロボットが活躍する場は、建設現場にとどまらない。老朽化したインフラや建築物の点検・調査・診断では、人間の目や手が届かない場所も多い。そこで登場するのがメンテナンス分野のロボットだ。竹中工務店はタイル張りのビルの外壁を調査するシステムを実用化している。壁面の打診調査の結果をカメラで撮影し、調査記録の漏れや間違いを防ぐ。画像を基にしたCAD図を用いて損傷部分の数量積算や報告書の作成を行うことで、短期間で正確な結果を報告できるようになる。


 土木構造物では、西松建設が斜張橋に張られたケーブル(斜材)の保護管の損傷状況を短時間で把握できるシステムを実用化した。独自の斜材保護管調査ロボットで撮影した動画を解析し、損傷箇所を短時間で自動検出。結果は帳票に出力され、記録管理を簡易化できるという。大水深構造物の点検用に遠隔操作無人探査機(ROV)を用いた水中調査ロボットを開発した五洋建設。計測用の光学カメラや音響カメラによる画像取得機能に加え、調査箇所を清掃した上で鋼材の肉厚測定やコンクリートの打音検査を行える機能も搭載し、高精度の点検を実現する。ダム湖での実証試験で性能を確認。海洋・港湾構造物にも展開していく。


 東急建設は、トンネルのコンクリート壁の変状を、交通規制をせずに打音で高度に自動識別できるシステムの開発を推進している。打音装置が車道側に倒れないように自社開発の吸着式クローラーを採用し、作業時の安全性を確保。周囲に車の走行音などがあっても変状を識別できるシステムなど技術の高度化に取り組んでいる。
 土木、建築ともメンテナンス分野でロボット技術の活用が着実に進んでいる。今後も需要増が期待できる分野だけに、各社の技術競争も一段と激しくなりそうだ。


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