2015年8月3日月曜日

【回転窓】パルテノン神殿でストック効果


 「地下のパルテノン神殿」。埼玉県春日部市にある首都圏外郭放水路はよくこんなふうに表現される▼この放水路は、台風などの洪水時に中川流域の洪水の一部を地下トンネルを通じて江戸川に排水し、首都圏を水害から守る目的で06年度に完成した。ポンプ施設や導水路などは桁外れの大きさで、世界最大級の地下河川と言われる▼中でも圧巻なのが水の勢いを調整する調圧水槽。長さ117メートル、幅78メートル、高さ18メートルの巨大地下空間の中に、長さ7メートル、幅2メートルのコンクリート柱が59本立ち並ぶ。貯水時の浮力防止で造られたこの柱は古代の神殿を想起させ、パルテノン神殿と呼ばれる所以(ゆえん)ともなる▼放水路ができたことで、周辺地域の水害被害は激減。地元の春日部市は「水害に強い街」を積極的にPRし、商業施設の誘致件数や共同住宅の着工件数を伸ばしているという。まさに地域の生産性や安全性を高めるストック効果の典型例だ▼本日付本紙の別刷り暑中号は「建設産業の今を記録する」をテーマに、国土強靱(きょうじん)化や地方創生、担い手確保など喫緊の課題を取り上げた。もちろんストック効果も。ぜひご一読を。

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