2015年3月31日火曜日

千葉・幕張新都心で大規模開発始動へ/総事業費1800億円

始動するプロジェクトの完成イメージ
 千葉市の幕張新都心で新たな大規模開発がスタートする。千葉県企業庁は、大規模未利用地「幕張新都心若葉住宅地区」(千葉市美浜区若葉3ほか)を、三井不動産レジデンシャルを代表者とする企業グループに280億円で売却することを決めた。
 三井不レジらは1800億円を投じ、総戸数4390戸のマンションを核とした新たな街づくりを進める。敷地は17万5809平方メートル。JR京葉線・海浜幕張駅の北東側に位置し、南東側は京葉線の線路に接している。
 売却が決まった土地は、1989年に幕張新都心が街開きした後、ほとんど手付かずの状態が続いていた。敷地を8区画に分割して開発する。建物の規模は固まっていないが、京葉線の線路沿いの区画には46階建て(高さ150メートル)の高層マンション、その他の区画には最高18階建てのマンションや低層の店舗などを配置する。オープンスペース型のオフィスやカフェ、予防医療や健康増進サービスを提供する医療モールも設ける。
 事業スケジュールは未定だが、マンションは東京五輪・パラリンピックの開催前年、2019年度から入居開始し、10年程度で供給を終える見通しだという。

どうなる就活戦線/理想と現実の狭間で揺れる採用拡大

本格化した採用活動。企業と学生の思いに違いはあるのか

 企業による16年春入社の新卒採用活動がスタートしてから1カ月。リクルートスーツに身を包み、「ただいま就活中」とひと目で分かる学生を街中で見かけることも多くなった。少子化による学生数の減少に、採用活動に前のめりな企業が増えたことが加わり、売り手市場が定着した就職戦線。建設業に限らず、「女性をどう採用していくか」はここ2~3年、企業にとって重要性が増している。ただ経営陣や採用部門の思いや動きとは裏腹に、実務の最前線では、急速な女性登用の流れに戸惑う声があるのも事実。女性労働問題の専門家からは、男性の意識改革や働き方の見直しがなければ、本当の意味での女性の活躍は難しい、との指摘も出ている。

 ◇社内環境が整っていないのに…◇

 「以前は、女子学生は本社で面接する前に落とせと言われていた。それが今は、女子学生を積極的に採用しろと言われている」
 ある中堅ゼネコンの採用部署の担当者は最近、会社からの指示が180度変わったことに戸惑っている。「目標の採用人数を確保するだけで精いっぱいなのに、その上一定割合の女子学生を採用しろと言われても無理がある」と話す。「女性社員は特に転勤を嫌がる。社内で女性を受け入れる環境が整っていないのに、わざわざ採用したいとは思わない」と、ついつい「本音」も漏れる。
 総務省の統計によると、建設業の就業者数はピークの1997年が685万人だったのに対し、2014年には26%減の505万人まで減少した。就業者の高齢化も進んでおり、このまま就業者が減り続ければ産業自体が立ち行かなくなるとして、官民挙げての人材確保の取り組みが始まった。その一つが女性技術者・技能者の採用拡大だ。
 国土交通省は昨年、業界団体と共同で「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」を策定。現場で活躍する女性技術者・技能者を5年後に倍増させる目標を打ち出し、女性が働きやすい環境を整備する取り組みに乗りだした。
 大手ゼネコンで現場作業所に勤務するAさんは、女性の登用を促進することについて、「女性の働き方に幅が出て良い」と歓迎する一方、「建設業界特有の長時間労働を見直さなければ実現は難しい」と指摘する。彼女が働く現場では、作業のスケジュールが発注者に左右されることも多い。そのため、業務を分割して他人に任せたり、自分で仕事の量を調整したりすることが難しく、長時間労働も避けられない。 それだけに「子どもを持つ女性が時間短縮勤務などを使って現場で働くというのは非現実的では」と話す。

 ◇トップの意識改革が絶対条件◇

 内閣府の有識者会議「新たな少子化社会対策大綱策定のための検討会」の委員で女性労働問題が専門のジャーナリスト・白河桃子氏(相模女子大客員教授)は、「名ばかりの女性活用の看板を掲げることは、入社後のミスマッチを生み出す懸念がある」と指摘。「企業のトップが女性の力を必要と感じるのなら、管理職がそれを納得するまで研修させることが大事だ」とトップの意識改革を促す。
 「女性活用とは、裏を返せば男性を家庭に帰すこと」とも指摘。長時間労働の見直しは「男性も含めて行うことが必要だ」と白河氏。ただ、長時間労働が定着している建設業界で、特に男性社員が育児などを理由に時間短縮勤務をすることへの抵抗は強いとみられる。
 白河氏によると、どの業界でも女性活用の最終段階は男性の育児参加を促すような労働改革だが、「建設業界はその一つ手前で止まっている状態。男性や会社は何も変わらずに女性の力だけを借りることはできない」と手厳しい。そうした中でも、未来の技術者である女子学生の間で建設業界の女性登用に対する注目度は高まっている。

◇企業の本気度見つめる女性たち◇

 きょう、大手ゼネコンの入社式に臨むBさんは、職場となる企業に育児休業を活用して働き続けている女性社員もおり、「人を大切にする会社だと感じられたし、そういう先輩たちがいるということはとても心強い」と話す。ハウスメーカーに入社するCさんは「就職活動では、自分が働きやすい環境かどうかを重視した。業界が女性活用に積極的になるのは良い流れだと思う」と業界の取り組みに期待を寄せる。中学生の時に自宅をリフォームした経験がハウスメーカーに興味を持ったきっかけだという。「入社後は建築士の資格を取り、暮らし方の提案に携わっていきたい」。
 日本女子大学の就職支援担当部署によると、「15年前は結婚・出産後も働きたいという学生は半分にも満たなかったが、今では約8割の学生が一生働き続けたいと考えている」という。「どんな会社ならそれが可能なのか、今の学生はそこをしっかり考えて進路を決めようとする傾向がある」とも分析する。
 白河氏は、男性社員の育児参加を促す策として、育休の取得義務化などを提案。超高齢化社会の到来で「男性も親の介護などで労働時間が制約される『制約社員』になる可能性があることを自覚させることも有効」とみる。業界に長く染み付いた意識や働き方を、新たな時代に合わせて改革できるかどうか。各企業の「本気度」を多くの女性が見つめている。

回転窓/「鉄の貴婦人」の誕生日

 1889(明治22)年の3月31日、フランス・パリの中心部にあるシャン・ド・マルス広場は群衆で埋め尽くされていた。フランス革命100周年を記念し建設されたエッフェル塔の落成式が行われたのがその理由▼凱旋門と並び、フランスのシンボルになっているエッフェル塔は、同年にパリで開かれた第4回万国博覧会に間に合わせるため、わずか2年2カ月という短期間で建設された▼総重量1万1000トンの構造体を4本の足で支えるデザインは、土木技師だったギュスターヴ・エッフェルが生みの親。120年以上昔の作品にもかかわらず、そのスタイルは、今も多くの人の心を魅了し続けている▼日本にも数多くの塔が存在する。以前なら東京タワー、現在は東京スカイツリーが代表格。いずれも観光名所には違いないが、エッフェル塔ほどの存在感があるかどうかは人によって評価が分かれよう▼2020年の東京五輪に向け、都はパリの街並みをお手本に新橋~虎ノ門地区の街づくりを進めるという。エッフェル塔の別名は「鉄の貴婦人」。東京に気品あふれる街が誕生することを楽しみにしている。

米アップルが横浜市に研究開発拠点建設/工事中、マニアの方々による実況中継はある?ない??

横浜市港北区に建設する技術開発拠点の完成イメージ

 米アップルが横浜市港北区に「テクニカル・デベロップメント・センター」を建設する。同社が米国以外に技術開発拠点を設けるのは今回が初めて。パソコンや携帯電話などで個性的でデザイン性が高い製品を提供し続けてきたアップル。今回のプロジェクトについて、同社は「この建物は、従来に比べエネルギー使用量を40パーセント削減し、敷地内に1200本以上の樹木を新たに植えたり、屋上の緑化や水の再利用を行ったりと、環境に配慮した特長を備える」と説明する。4階建て2万5000平方メートルの規模になる計画で、16年度の完成を予定している。敷地が旧松下通信工業本社跡、というのは何となく時代の流れを感じさせる。
 さて、世界で最もブランド価値があると言われ、注目度も高い同社。その一挙手一投足に注目する「マニア」は世界中に存在し、公認、非公認を織り交ぜて独自に情報発信するブログもあるほど。このブログには、米カリフォルニア州クパティーノ市に建設中の新本社ビルをターゲットに、小型無人航空機(UAV)を飛ばして建設現場を空撮した映像が定期的にアップされている。
 スマートフォンの新製品発売が決まれば、何日も前からショップ前の路上に陣取り続け、発売と同時に製品を手にして大喜び。その様子はたびたびニュースや新聞で報道され、もやは風物詩と化している。本社ビルの建設をめぐる情報発信も同様で、それだけ、アップルに対する期待と関心が高い現れとも言える。
 テクニカル・デベロップメント・センターの建設工事はそう遠くない将来、スタートする。もともと秘密主義が同社の代名詞なだけに、このプロジェクトも情報発信は今のところ限定的。着工がいつで、設計者や施工者が誰なのか、現時点で明らかになっていない。神秘性が多くの人を惹き付ける魅力の一つともいえるだけに、実際に建設工事が始まったら、「公式な情報がないのであれば自ら探ってやる」という思いから、本社ビルと同じようにその様子を空撮して発信する人が出てきても、決して不思議でない。
 これまでにも注目度の高いプロジェクトでは、進ちょく状況がSNSなどで発信されるケースは度々あった。UAVの価格が下がり、比較的安価に高性能な製品が入手できるようになった昨今、UAVを飛ばして現場内の様子を撮影する人が出てくるのは、自然な流れなのかもしれない。今後、どうなるかは分からないが、見よう見まねでUAVを飛ばし、思わぬ事故やトラブルが発生することもある。好奇心を否定するつもりはないので、マニアの方々に対しては「くれぐれもご注意あれ」と願うばかりだ。
 
 
 
 
 
 




2015年3月30日月曜日

回転窓/外国人観光客を地方創生に

 年度末を迎え、この時期は歓送迎会などで飲食店に行く機会が増える方が多いのではないだろうか。東京・新橋のなじみのガード下の飲食店も連日盛況で、景気の回復を感じさせる▼ただし、客層や店の雰囲気は以前と異なる。この店は外国人観光客向けガイドブックでリーズナブルな居酒屋として紹介されたため外国人が増加。店内には聞き慣れない言葉が飛び交う。電車が通過するたびに揺れを感じながら、日本の食文化を味わってもらうのも、旅の思い出としては悪くないのかも▼円安効果で、日本を訪れる外国人が急増中だ。昨年は過去最高の1300万人を突破。観光庁が発表した14年に国内のホテルや旅館に宿泊した外国人数も前年比33・8%増の4482万人に達した。日本人宿泊客が頭打ちになる中で、外国人宿泊数の増加はありがたい▼宿泊地は東京や京都、大阪などに集中しているが、全国の観光地に外国人観光客を呼び込めれば、地方創生にもつながる▼政府は4月、地方創生に取り組む市町村長の補佐役に国家公務員などを派遣する制度を開始する。どんな成果が挙げられるのか期待したい。

サークル/日本設計 野球部



 「Challenging Spirit忘れず挑む」

 1968年に社内の野球好きが集まり、野球サークルとして発足したのが始まり。その後、対外試合などに参加するようになり、会社公認の野球部として本格的に活動するようになった。14年10月時点で部員はマネジャーを含め約40人。技術職や営業職のほかにグループ会社の社員なども所属しており、部員の特徴は「みんな野球を愛していること」だという。
 モットーは「『Challenging Spirit』を忘れず、高い意識と楽しむ心を持って挑み続ける」。常に高みを目指しながら野球を楽しんでいる。主な活動は春と夏に行われるトーナメント大会への出場で優勝実績もある。6月ごろに1泊2日の強化合宿を行うほか、年に数回、大会前の直前練習も行っている。
 今後は、参加資格がある大会だけでなく、参加資格を勝ち取った上位の大会で結果を残したいという。そのためにも出席できるメンバーで積極的に練習を行い、強化試合も企画してさらなる高みを目指していく。
 代表を務める都市計画群の村岡大祐さんは「家族やプライベートを優先しながら、部員全員が『個人の目標』と『チームの目標』を意識しています」と強調。さらに「楽しむことも忘れずに、今後も野球部の活動に取り組んでいきたい」と話している。

駆け出しのころ/飛島建設執行役員首都圏建築支店長・荒尾拓司氏



 現場の感動と喜びを味わってほしい

 大学の建築学科に入学した時から、施工に直接携われるゼネコンに就職しようと決めていました。祖父は国の橋梁技術者だったようで、父から栗橋にある鉄橋を通るたびに「この橋はおじいちゃんが造った」と聞かされたものです。そんな影響もあって自分で造ったものが残る仕事に興味を持ったのかもしれません。
 入社して最初に配属されたのは、茨城県那珂町(現那珂市)の中央公民館建設工事の現場でした。竣工が近づいたある日、所長から外構工事を担当するよう指示されました。仕事を任されたのはうれしかったのですが、新人には何をすればいいのか分かりません。このため事務所にただ一人座っていた所長にお願いし、外構の施工図をどう書くのか教えてもらいました。今にして思えば、何とずうずうしい新人だったのかと恥ずかしくなります。でも竣工検査で町役場の方にほめられた時は感動しました。
 入社して5年がたった1987年、埼玉県川口市の川口総合文化センター(現リリア)の建築工事現場に配属されました。オフィスや商業施設が入る高層棟と、2000席の大ホールが入る低層棟で構成され、私は躯体工事の途中から大ホールを担当しました。自分でクレーンの構台を設計するなどいろいろな経験を重ねて建物が竣工し、ホールのこけら落としのクラシックコンサートとアルフィーのコンサートを間近に見られた時は感無量でした。

社内に組織されている大学同窓会の懇親会で
(2列目の左から2人目が本人)
その後にいくつかの現場を経て携わった府中警察署の庁舎新築工事では、工務担当主任として施工図全般を担当しました。施工図には自信を持っていたのですが、設計監理者に図面を提出するとそれが真っ赤になるほどチェックされ、何度修正しても承認がもらえないのです。それが毎日のように続き、「設計図通りなのになぜだめなんですか」と声を荒らげてしまったこともありました。しかし、私の施工図では使い勝手や漏水対策が十分に検討されていない部分を細かくチェックできていなかったのです。
 この現場で設計監理者とやり取りした図面は3年間で1万枚になっていました。とても大変でしたが成長でき、ここでの経験がそれからの現場の施工管理に大いに役立つことになったと思います。
 現場では大変なことやつらいこともあるものです。若い人にはそれで転職をしたいと思ったとしても、一度は現場が竣工する時の喜びと感動を味わってほしいんです。建設業の仕事は最後に作品が残ります。自分の携わった作品で大勢の人に感動を与えられ、自分も感動できます。その感動と喜びを活力にしてほしいと願っています。
 (あらお・たくじ)1983年武蔵工大工学部卒、飛島建設入社。関東建築支店建築部工事部長、同支店建築事業部建築3G部長、東日本建築支店関東建築事業部長、首都圏建築支店建築事業部長、同支店建築部長などを経て14年4月から現職。栃木県出身、55歳。

中堅世代-それぞれの建設業・88/あのやり方で利益は出ない

これからのものづくりはどう変わっていくのか
 変えることはこれほど難しく、風当たりも強いのか-。
 地方都市の支店で現場の仕事に携わってきた坂井隆二さん(仮名)は、新たに赴任した他支店での現場でつくづくそう感じた。
 その現場は大規模工事の経験が豊富なベテラン所長の下、各職員の役割は細分化され、会社で長年かけて確立してきた仕事の進め方もあった。しかし、そんな従来通りの施工体制では対応できない特殊な工事もある。坂井さんが配属された現場もそうした一つだった。
 現場に出て間もなく、作業効率が悪い原因に気付いた。その日以降、より効率が高まる方法を繰り返し提案したが、工期の途中から加わった中堅社員の言葉に耳を貸す上司や同僚はいなかった。
 もともと現場で施工管理に当たりながら、民間顧客への営業や工事費の見積もりなども自ら手掛けてきた。だから現場の効率運営やコスト管理には自信があり、新たな現場でもマネジメント全般を任せてもらえると思っていた。ところが現実は違った。
 「あのやり方では作業のスピードは上がらないし、利益も出ない。現場の上司と自分とはことごとく意見が異なり、『それならここに私は必要ありませんよ』と伝えたんだ」
 転機になったのは、会社が近接する類似工種の工事も受注したことだった。坂井さんは新しい現場の責任者となり、自らの考え方とやり方を押し通した。
 「『安全第一』などといくら言っても駄目。なぜ安全が必要かを分からせないと。安全に配慮して作業すれば必ず作業効率も良くなる。つまり、そうした現場運営をすれば下請はもうけられるし、職員も現場や会社の利益に貢献していると自覚できる。次の受注にもつながる。だから決めたルールは絶対に守ってもらうし、守れない職員や作業員は要らない」
 そんな現場運営は社内で「強引すぎる」と批判されることも少なくない。だが、自分の信念を曲げなかったことで、社内で一目を置かれるほどの結果を残した。
 「何だかんだと言う人たちも、現場に来ればどうやって好成績を上げられたのかがすぐ分かるはず。社内の発表会でノウハウを説明したところで、『あの若造が偉そうに』と余計に反発を買ってしまうに決まっている」
 建設会社のものづくりについて、坂井さんはこんな信念を持っている。
 「良いものを造るのは当たり前だが、そもそも人によって良いものに対する価値基準などまちまち。そのことに一生懸命になる必要はない。今は自分たちが勝手に考える良いものを売っているだけで、それにこだわるあまり、捨ててしまっているものがあるのではないか。本当にお客さんが求めている良いものとは何なのか。それを追求して提供すればいい」
 この考え方をシステム化し、浸透させることが、今後の建設会社経営には欠かせないと考える。
 だが、変えるのは難しく、風当たりも強い。
 「これからも社内から飛んでくる矢に向かっていくか」。坂井さんは唇を少しかんだ。

凛/若築建設九州支店建築部・末田明子さん


 ビルダビリティーな設計ができるように

 山口市の出身で、中学3年の時に徳山工業高等専門学校のオープンキャンパスに参加。「自分の書いた線が実際の建物になる建築の仕事」に興味を抱き、同校への入学を決めた。土木建築工学科で5年間学んだ後、環境建設工学専攻に進み、さらに2年間、建築の勉強に打ち込んだ。
 入社後、最初に配属されたのが九州支店建築部。設計チームの一員として、事務所や工場、診療所などいろいろな設計・施工案件に関わった。「地域や用途によって条例や法規制が異なり、毎回新しい課題と向き合った。覚えることも多く、常に勉強が必要だと実感した」と振り返る。
 3年後、同じ部署内で積算チームに異動した。さまざまな工種の専門業者と接する機会が増え、「そこで得た内容をいかに積算に生かすことができるかが楽しみの一つ」と充実した日々を送る。「この材料だとこの仕様でいくらかかるかなど、価格の感覚を身に付けたい」という。
 モットーは「千里の道も一歩から」。「建築は奥が深くていくら知識や経験を重ねても、すべてを把握するのは難しいと思う。ただ知れば知るほど、良い建物はできるはず。地道に技術を高めていきたい」と意欲を見せる。
 今年で入社7年目。「将来は設計と積算、施工それぞれの知識を一段と深め、それらを網羅した『ビルダビリティー(建築しやすい)』な設計ができるようになりたい」と目標を語る。1級建築士の資格取得にも挑戦中だ。(すえだ・あきこ)

2015年3月27日金曜日

回転窓/週末は桜ブレークを

 東京は今週末、寒の戻りから一転して、暖かな春の陽気を迎えるという。各地でつぼみを膨らませた桜が一斉に開花しそうだ▼桜の開花予想に使われる代表品種は「ソメイヨシノ」。江戸末期から明治初頭に、染井村(現在の東京都豊島区駒込)で植木職人らがエドヒガン系の桜とオオシマザクラを交配して作り上げたとされる。この通説に一石を投じたのが、千葉大学が発表した東京・上野公園に現存する1本を原木とする新説だ▼千葉大は共通の親木を持つソメイヨシノと近縁種が並ぶ区画を特定し、全国に広がったと推定した。ちなみに原木とされる桜は上野動物園の表門近くに並ぶ大木。毎年、花見客でにぎわう上野公園だが、今年はこの木をお目当てに人も集まりそうだ▼東京には地方の有名桜の2世も存在する。虎ノ門の飯野ビルの敷地内には昨年、飛騨高山の「臥龍桜」と「荘川桜」の苗木が植えられたばかり。今は小さなつぼみが膨らんでいる▼年度末は仕事が集中し、体も心もくたびれる時期。週末には、体を心をリフレッシュする意味でも、街並み散策を兼ねた「桜ブレーク」を楽しんでみては。

築60年の木造アパート再生/東京・谷中「HAGISO」

築60年の味わいが何とも言えない雰囲気を醸し出している
東京・谷中地区で、築約60年の木造アパート「萩荘」をリノベーションして誕生した「HAGISO」―。カフェやギャラリーを活用したイベントを定期的に開催し、「最小文化複合施設」として地域住民や観光客の憩いの場になっている。既存ストックを地域拠点・文化拠点に生まれ変わらせたHAGISOの取り組みは、空き家や老朽建築物対策の新たな形として注目されそうだ。
 HAGISO(台東区谷中3の10の25)は、谷中銀座商店街からほど近い閑静な住宅地にたたずむ黒塗りの建物。木造2階建ての1階には木のぬくもりをそのまま生かしたカフェと、白壁の明るいギャラリースペースを整備した。2階にはヘアサロンとアトリエ、アパートの元住人でHAGISOの代表を務める建築士・宮崎晃吉氏の事務所が入っている。
 HAGISOの前身の賃貸アパート「萩荘」は1955年に竣工した。戦後、単身者向けに大量供給された中廊下型の共同住宅で、廊下を挟んで6畳の個室が一列に並んでいた。こうした構造が近年のライフスタイルと合わなくなり、2000年以降は空き家になっていたが、04年に近隣の東京芸術大学の学生5~6人がシェアハウスとして利用を開始。住人を中心に、芸大の学生などさまざまな人が集まる場になっていった。宮崎氏は、06年に住み始めたという。

黒塗りの壁が印象的なHAGISOの外観

 11年に東日本大震災が起こると、建物や設備の老朽化などを理由に萩荘の解体が決まった。入居者をはじめとする萩荘に縁のあるアーティストが「建物に死に化粧をしよう」(宮崎氏)と集まり、12年2~3月に建物の空間自体を作品化するグループ展「ハギエンナーレ2012」を開催した。萩荘の壁にビスを何本も打ち付けた作品や、2階の床を一部取り払って作った吹き抜けを金網で囲って大きな鳥小屋にした作品など、解体が前提だからこそできる大胆なパフォーマンスが観客の心をつかみ、開催期間中に1500人の集客を記録。グループ展の成功で解体計画が見直され、改修して最小複合文化施設として生まれ変わることになった。
 改修後のHAGISOは13年3月にオープンした。改修に当たっては、1階の居室スペースの壁を壊して、中廊下を挟んでカフェとギャラリーを配置し、一体感と開放感のある空間を創出した。ギャラリースペースは北側に窓を設け、安定した採光を実現。柱や天井は化粧材を取り払って萩荘を長年にわたって支えてきた躯体をあらわにした。このほか、築年数を考慮し、壁内に火打ち金物を入れるなどして建物の耐震強度も高めた。
 宮崎氏によると、最小複合文化施設というコンセプトを打ち出すには、カフェやギャラリー以外の要素も必要との考えから、定期的にギャラリーを活用したイベントを開催している。内容はダンスや映画上映会、子どもへの絵本の読み聞かせや建築に関するトークイベントなどさまざま。「一般的な複合施設は各要素がエリアで分かれているが、HAGISOは時間によって要素が変わっていく」と話す宮崎氏は、今後もイベントなどを通じて同施設の複合化を進め、地域に根差し、地域の人が集まる「公共的な建物」にしたいと展望を語る。

吹き抜けのあるギャラリーがなんともお洒落
東京23区全体(面積6万2670ヘクタール)に目を向けると、約24%(同1万5100ヘクタール)を萩荘のような建物が多い木造住宅密集(木密)地域が占めている。東京都は首都直下地震などに備え、木密地域の不燃化に向けて共同建て替えの推進や延焼遮断帯の整備などに取り組んでいる。
 木密地域の住民らも地区の防災性向上を目指し、再開発事業で高層ビルを建設するケースも多い。萩荘のような古い木造アパートはいずれ消えゆく運命にあるともいえる。
 HAGISOは、リノベーションで施設の用途は大きく変わったが、「人が集まる」という元の萩荘が持っていた性質を引き継いで再生された。木密地域で進む新しい街づくりとは別の軸で、HAGISOのように地元に根差し、土地や建物が持つポテンシャルを生かしたリノベーションの取り組みが広がれば、都市の中に多様性が生まれ、「東京全体の魅力や価値が高まる」(宮崎氏)可能性もある。

椛川ダム(高松市)が本体着工/大成建設JVの施工で完成は20年9月

関係者による鍬入れ
香川県が香東川総合開発事業として建設する椛川(かばがわ)ダムの本体工事が本格的に始まる。26日、高松市塩江町の建設予定地近くで安全祈願祭が行われ、発注者や地元住民、施工を担当する大成建設・飛島建設・村上組JVの関係者ら約70人が出席して工事の無事完成を祈願した。
 椛川ダムは、洪水調節や高松市へ新たに1日当たり最大9000立方メートルの水道水の供給、流水の正常な機能の維持、異常渇水時などの緊急水補給を目的とした多目的ダム。香川県中央部を南北に流れる香東川の支流椛川に建設される。
 ダムの型式は重力式コンクリートダム。堤高88・5メートル、堤頂長265・5メートル、堤体積約43万5000立方メートル、総貯水容量約1056万立方メートル、有効貯水容量約1029万立方メートル。堤高と貯水容量は県内最大規模となる。
 96年度に建設事業に着手し、05年9月に工事用道路、06年1月に付け替え道路の工事にそれぞれ着手。完成は20年9月で、同年度の運用開始を予定している。

ダム建設予定地

これって、ひょっとして凄い!?/旭硝子が透明ガラススクリーン開発/15年秋以降に一般発売へ


映像を投影しないと普通のガラス、映像を映しても背景が透けて見える

 旭硝子は、透明なガラスに映像が投影できる技術を完成させた。写真をご覧いただいて分かるように、見た目は普通のガラスだが、プロジェクターで画像や映像を投影すると、ガラスがスクリーンに早変わり。映像を映していてもガラスは透明なままで、背景と映像がきれいに融合する。
 ガラスの背面から映像を投射する「リア」タイプと、前面から投射する「フロント」タイプがあり、100インチ以上の大画面化や曲面化もできるという。ガラスなのでもちろん電源は不要。
 4月にイタリア・ミラノ市で開催される世界最大規模の家具見本市「ミラノサローネ」にブースを初出展し、「従来のデジタルサイネージの概念を覆す、ガラスによる情報と空間の新しい関係を提案する」と旭硝子。高さ約3メートルの透明ガラススクリーンを配置し、建築家の川島範久氏と佐藤桂火氏、クリエーターの遠藤豊氏、映像作家の勅使河原一雅氏による映像空間を作り出すという。どのような展示になるのか、興味がそそられる。
 ちなみに透明ガラススクリーンは、「Glascene(グラシーン)」のネーミングで15年下期から販売を開始する予定だ。

2015年3月26日木曜日

回転窓/秘仏に願いを…

 江戸時代の2人の仏師、円空と木喰の木彫り像を集めた展示会を見た。切り込み跡が荒々しく、力強さが特徴的な円空。柔らかく、丸みを帯びた像を多く残した木喰。彫り方は全く異なるが、どちらの仏像・神像にも同様の温かさを感じる▼各地を巡りながら作り上げた数々の像は人々から深く信仰された。見る者に荘厳さや畏怖の念を抱かせる像とは異なり、素朴なぬくもりに満ちた像だからこそ、庶民に愛され続けたのだろう▼一方で、人の目に触れないよう厨子などに納め、扉を閉ざしてまつられる秘仏もある。一般社会との隔絶によって像の神秘性が高まり、見えないものへの信仰心をかき立てる。ただ、その像を作った仏師の思いはどこにあるのかとも考えてしまう▼長野・善光寺の阿弥陀三尊像は秘仏として有名だ。将来にわたって全く公開されない「絶対の秘仏」とされるが、数え年で7年に1度行われる御開帳では、代わりの「前立本尊」が姿を見せる▼今年の4~5月がその御開帳の時期に当たる。秘仏への信仰心に加え、北陸新幹線の延伸効果で地元は多くの参拝客が訪れることに願いを込める。

NTTコム、大林組/作業員の心拍数など常時監視/着用型センサーでデータ収集

ウエアラブルセンサーのイメージ

 NTTコミュニケーションズと大林組が、ICT(情報通信技術)を活用した作業員の安全管理システムの実用化に向け実証実験に乗りだす。作業員にウエアラブルセンサー(身に付けられる端末)を装着してもらい、心拍数などのバイタルデータをリアルタイムで収集。作業員ごとの体調を同時にモニタリングするシステムを検証する。クラウド技術を活用して現場の管理者がタブレット端末で作業員の健康状態を把握することで、熱中症などの未然防止につなげる狙いがあるという。
 作業員の体調管理は、現場で相互に管理し合うのが一般的。個々の作業員の体力・体調の違いから熱中症などの根絶は難しかったが、今後は心拍数の増加などからリアルタイムに熱ストレスや疲労具合を推定することが可能になり、作業員一人一人の個々の体調を「見える化」できるようになるという。両社は4~9月をめどにシステムを実証・完成させる考え。大林組はシステムなどを活用し、作業員と従業員の安全な作業環境の実現を追求していくとしている。


渋滞の名所が1カ所、近い将来なくなるかも/中央道・小仏トンネルの渋滞緩和対策が明らかに/上り線に新トンネル建設


小仏トンネル増設のイメージ図

 高速道路の中で渋滞の名所として知られる中央道・小仏トンネル(東京都八王子市~神奈川県相模原市)の渋滞が近い将来、大幅に緩和されるかもしれない。トンネルを管理する中日本高速道路会社が現在のトンネルと並行する場所に、東京に向かう上り線の新トンネルを建設する計画を検討し始めたのがその理由。完成すれば上り線は3車線となり、同時に進める車線運用の見直しと合わせて、慢性的な渋滞の緩和につながる期待が大きい。
 行楽シーズンや盆暮れの帰省時期は、全国の高速道路で渋滞が発生する。数十キロにも達する渋滞に巻き込まれ、辟易した経験があるドライバーは少なくないはず。渋滞の名所として名高い(?)場所は、東名高速・上野原バス停付近や名神高速・天王山トンネル、東北道・矢板インターチェンジなどなど、枚挙にいとまがない。
 小仏トンネルの渋滞は、その中でも悪名の高さで1位、2位を争うとか争わないとか…。「なんでこの時期、こんな時間に渋滞が!?」と思った人は多い(はず)。
 そもそも小仏トンネルは渋滞が発生しやすい要因がいくつも重ねっている。一つ目は、道路全体が平坦ではなく、緩やかな上下の勾配があって知らず知らずの間に自動車の走行速度が落ちてしまう点。二つ目はトンネルに入るときや出るときに、明るさの違いなどからブレーキを踏んだり、アクセルを緩めてしまう点。最後に東京に向かう上り線は小仏トンネルの手前で3車線が2車線に減ることも挙げられる。

現在の小仏トンネル

 さて中日本高速道路会社が計画している小仏トンネルの渋滞緩和対策。長さ約3・5キロの上り線トンネルを新設するため、間もなく現地測量と設計に着手するという。トンネルを出た後、八王子ジャンクションに向かう約1・5キロ区間も車線数2から3に増やすという。いつ工事を始めて完成するかは現時点で未定。多くのお金と時間がかかる話で、許認可手続きも経なければならない。ただ渋滞が緩和されることに、反対する人はおそらくいないだろう。この計画がいつ実現するのか、プロジェクトの動きに対する関心は高いはずだ。

 

2015年3月25日水曜日

鉄道駅で進むホームドア整備/山積する課題への対応が普及拡大の鍵

東京メトロ東西線の妙典駅(千葉県市川市)で実証実験
が行われた「二重引き戸式大開口ホームドア」
大都市を中心に整備が進むホームドア。プラットホームからの転落や列車との接触を防ぎ、安全性を高める目的で普及が拡大している。2020年に五輪開催を控えた東京では、JR東日本と東京メトロがメーン会場となる国立競技場(東京都新宿区)の最寄り駅であるJR中央線の千駄ヶ谷駅と信濃町駅、東京メトロ銀座線の外苑前駅でホームドアの設置に着手する。国土交通省の調査によると、ホームドアは14年9月末時点で全国593駅に設置済みだという。安全対策の切り札ともいえるホームドアだが、設置を進める上では課題も残されている。
 ホームドアは、駅利用者の安全を確保し事故防止に貢献するだけでなく、列車の定時運行にも役立つ。ただホーム側のドア位置が固定されているため、車両の種類が異なる場合は運用が難しい上、車両の停止位置をホームドアと正確に合わせることも必要になる。新線の開通に合わせてホームドアを設置するのはハードルが低い一方で、既存駅に設置する場合、プラットホームを拡張したり、ドアの重さに耐えられる補強をしたりなど、時間とコストも想像以上に掛かる。
 国交省は、乗降客数が多い駅を中心に数値目標を設定してホームドアの設置を促す取り組みを推進。新しいホームドアを開発する動きも目立つようになっている。
 例えば神戸製鋼所は東京大学生産技術研究所と連携し、車両の長さやドア数に関係なく設置が可能な「乗車位置可変型ホームドア」の開発を実施。西武新宿線の新所沢駅で13年に実証実験を行った後、現在は「実用化に向けて耐久性やコストダウンなどの研究を進めている」(神戸製鋼所秘書広報部広報グループ)という。
 東京メトロも車両のドア位置や幅が異なる列車が複数運行している路線に対応した「二重引き戸式大開口ホームドア」の実用化を目指している。一般的なホームドアよりも開口幅を1メートル広くしているいのが特徴。東西線妙典駅で実証実験を行い、実用化に必要なデータを集めて、設備の改良・改善を進めるとしている。
 東京では、今後10年間で1日の利用者数が10万人を超える駅を優先し、ホームドアの整備を進める方針が打ち出されている。行政と鉄道事業者、そしてメーカーが連携を深め知恵を出し合いながら課題をどう克服していくのか、取り組みに注目したい。

回転窓/造らない現場に挑む


 東日本大震災からの復興に向けて歩む福島県。県を訪れる観光客数は回復傾向にあるが、福島第1原発事故の影響はいまだ大きい。事故の収束とともに、対象地域で進められている放射性物質を除去する除染作業が急がれる▼本紙1面に「除染-『造らない』現場に挑む」が24日まで計7回掲載された。国が直轄事業で除染を行う除染特別地域。この地域を取材し、どのような体制で除染が実施されているかをリポートした▼対象となるエリアが広く、除染作業には多くの人員を要する。建設工事を経験したことのない作業員も多い。工程管理や安全管理は一般的な建設工事と同じようにはいかず、作業員や職員のモチベーションをどう維持・向上させていくかも大きな課題という▼一生懸命に除染作業を進めても、住民は戻ってきてくれるだろうか。携わる人たちの願いは「早期復興」で一致するが、そんな複雑な胸の内を明かしてくれた人もいる▼現地取材でよく分かったことがある。除染現場はものこそ造らないが、未知の作業に挑むための管理手法など、さまざまなものを造り上げなければならない現場だった。

茨城県神栖市にそびえ立つ巨大風力発電システム/風車の直径は126メートル!!

写真では伝わりにくいが、とにかく「デカい」
日立製作所が茨城県神栖市の深芝公共埠頭(ふとう)に建設していた国内最大のブレードを搭載した風力発電システムが完成した。風車の直径はなんと126メートル!、ブレードの長さは1枚62メートル!!。大きさのイメージが分かりにくいので比較対象を挙げると、奈良の大仏を8体、あるいはガンダムを7体積み重ねた高さに匹敵する。 発電出力は5メガワットで、これから発電システムの検証・評価試験を行い、今年の夏から運転を開始するという。
 巨大な風力発電システムは、 洋上風力発電所への採用を視野に入れて開発した。日立製作所が製造しているのは2メガワットの風力発電システムだが、出力を約2・5倍に増強。これによりローター・ブレードとも現時点で国内最大の大きさになった。24日に現地で開いた完成式典で同社の担当者は「海外の風車にも負けない風力発電施設が出来上がった。日本の電源を担う一つとして普及していきたい」と出来映えに胸を張っていた。

安藤ハザマ/HPに新コンテンツ/現場見学リポート掲載


 安藤ハザマがホームページの新コンテンツとして、現場見学リポート「ゲンバる」をアップした。新キャラクターの「アン姉さん」と「ハザ丸」が全国の作業所を訪問。そこで働く人のインタビューや技術紹介などを通じて、仮囲いの中にある現場の姿を伝える。1回目は埼玉県富士見市で工事中の「ららぽーと富士見」をアン姉さんとハザ丸が訪問し現場の様子などを紹介している。
 ゲンバるは、「現場」と「がんばる」を組み合わせた造語。現場で頑張る人はもちろん、そこから生まれるモノ、人々の交流、社会貢献などへの思いを込めた。 今後、年4回の更新を予定している。 「ゲンバる」へのアクセスはこちらから

2015年3月24日火曜日

今、東京・墨田区が熱いらしい/相次ぐ博物館・美術館の建設計画

間もなくリニューアルオープンするJTの「塩とたばこの博物館」

 外国からの観光客を呼び込むインバウンド政策に力を入れる東京・墨田区が、博物館や美術館の誘致・整備に力を注いでいる。個性的な文化施設を区内に集めることで集客力や回遊性を高めるのが狙い。4月に日本たばこ産業(JT)の「塩とたばこの博物館」が東京都渋谷区から東京スカイツリーの近くに移転し、リニューアルオープン。両国地区では「刀剣博物館」の移転計画や、14年に着工した「すみだ北斎美術館」の整備事業も着々と進んでいる。
 江戸時代から「ものづくりの街」として発展してきた墨田区。観光都市として国内外に知られるようになったのは、12年の東京スカイツリーの開業がきっかけだ。スカイツリー以外にも、相撲人気の再燃で注目されている両国国技館が、東京五輪でボクシングの競技会場になるなど観光資源には事欠かない。
 山崎昇区長は「五輪開催を機に増加する外国人観光客の受け入れ体制を整え、国際観光都市づくりを強化する」と意欲的。施策の柱になるのが文化施設の誘致や整備だ。「塩とたばこの博物館」は、4月25日にリニューアルオープンする。新博物館(横川1の16の3)は、東京スカイツリーから徒歩10分以内と好立地位置で、浅草や両国など人気の観光スポットにも近い。
 両国地区では、日本美術刀剣保存協会が運営する「刀剣博物館」の移転計画が進む。移転先は、国技館北側の旧安田庭園。両国駅の東側では、区が「すみだ北斎美術館」(亀沢2の7の区立緑町公園内)の整備を進めている。地元出身といわれる江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎の作品を収蔵・展示する美術館だ。浮世絵は海外でも知名度が高く、個性的な建物と相まって観光の目玉施設になりそうだ。
 区内の観光産業をけん引するスカイツリー周辺、両国の両地区には、既に「郵政博物館」や「江戸東京博物館」などの個性的な文化施設があり、休日は多くの来場者でにぎわっている。区は、これらの既存施設に新たな文化施設を組み合わせて「芸術・文化のプロームナード」(山崎区長)を作り上げ、観光都市として国内外にアピールしたいと目論んでいる。

イマドキ新入社員は日々ストレスとの戦い!?/会社に行くのが「楽しい」人はわずか2割/アサヒフードアンドヘルスケアがネット調査

ストレスと上手に付き合うことも社会人として必要なスキルの一つかも
間もなく新年度が始まり、多くの会社で新入社員を迎えることだろう。昨年4月に社会人生活をスタートさせた人たちも後輩ができ、「新入」の看板が取れて先輩社員として仕事に励むことになる。そんな入社1年目の人たちを対象に、食品メーカーのアサヒフードアンドヘルスケアがインターネットで実施した「新入社員のストレスと健康に関する意識調査」の結果が非常に興味深い。
 対象は首都圏に住む2014年度入社の男女300人。「働く中でストレスを感じるか」と聞いたことろ、半数以上の52・7%が「ストレスを感じる」と回答。女性の場合、この割合は58・0%と6割近くまで上昇する。
 「ストレスが原因で会社を辞めたい」と思ったことがある回答者は約4割。「会社に行くことが楽しい」と感じている人は回答者の約2割とどまり、多くの人が学生時代からの環境の変化やプレッシャーで、ストレスを抱え込んでいるようだ。ストレスを感じている人の6割は入社後、便秘や下痢といった「胃腸のトラブル」を経験。この傾向は女性の方が多く、「お腹が痛いから今日は会社に行けない…」という冗談も、人によっては冗談で済まなくなっている。
 イマドキの新入社員は、日々ストレスと戦っている。ベテラン社員にしてみれば「甘いことを言っている」と感じるかもしれないが、かつての自分もおそらくイマドキ新入社員と同じような思いをしてきたはず。 ちなみに若者世代では使うのが当たり前になっているフェイスブックやツイッターなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)。職場の人たちとSNSでつながることについて、回答者の約半数が「友達になることに抵抗を感じる」としている。 この結果をどうとらえるか、先輩社員の方々も一度考えてみては?
 

シンガポール政府/チャンギ空港新滑走路・ターミナル配置計画決定

第5ターミナルビルと第3滑走路の配置イメージ
 シンガポール政府が、チャンギ空港の旅客対応能力を2020年代半ばまでに年間1億人以上へと倍増させる拡張計画を進めている。同国運輸省はこのほど、世界最大規模となる第5ターミナルビルと3本目の滑走路の配置計画を発表した。
 総事業費は未定だが、政府は建設基金の設立を決め、2月に発表した15年度予算案に初弾の出資として30億シンガポールドル(約2600億円)を盛り込んだ。
 関係省庁や空港運営会社で構成する検討委員会が、提案されていた拡張区域の配置プラン3案から最終案を選んだ。今後2~3年かけてより詳細な計画を策定する。
 拡張エリアは空港東側の埋め立て地で敷地面積は1080ヘクタール。第3滑走路は軍用の既存滑走路を延長して再整備し、20年代早期の供用開始を目指す。第5ターミナルは2期に分けて建設され、25年ころの完成を見込む。計画には、ホテルや航空機整備施設の整備、都市鉄道(MRT)の延伸も含まれる。
 チャンギ空港では拡張や新設工事が相次いでおり、日本企業が多くの工事を受注している。竹中工務店は現在、第4ターミナルを建設中で、今月には第1ターミナルの拡張工事の受注も決めた。大林組は昨年、第1ターミナル隣接地に建設する複合商業施設「ジュエル」を現地企業とのJVで受注し、現在工事を進めている。今回の拡張エリアでは、五洋建設と現地企業のJVが準備工事を施工中だ。
 15年半ばには第3滑走路の再整備工事の入札手続きが始まる。日本企業の受注機会拡大への期待も高まりそうだ。

回転窓/国産木材を使おう

 こう書いたのを読んだだけで鼻がむずむずする方もおられよう。3月も下旬に入り、東京ではスギ花粉の飛散はピークを越えたようだが、4月にはヒノキ花粉がピーク。いましばらく辛抱が必要だ▼今や国民病ともいえる花粉症。遠因は戦後の木材需要急増に対応して国が進めた拡大造林政策といわれる。広葉樹林を伐採し、成長が速く商品価値の高いスギやヒノキを大量に植える政策である▼だが当ては外れ、安い外材に押されて国産材の需要は低迷。伐採も手入れもされずに放置されたスギやヒノキが成長して花粉を大量にまき散らしてきた。そんな中、これは朗報といってよいだろう▼財務省の貿易統計で、スギなどの国産木材の輸出額が14年は前年の1・5倍近くになり、2年続けて過去最高を更新したそうだ。中国向けなどが絶好調らしい。コンクリート型枠に国産針葉樹を使う動きもある。最近は大型建築への木材利用のニュースも多い▼花粉の飛散を抑えるには、まず成長した木を使うこと。問題はこの流れを本物にできるかどうかだ。木材振興は地方創生とも不可分。息の長い取り組みが欠かせない。

2015年3月23日月曜日

米土木学会が橋梁フォトコンテスト開催/3月31日まで応募受付/日本からの応募もOK!!




 米土木学会(The American Society of Civil EngineersASCE)が恒例の「橋梁フォトコンテスト」を今年も開催する。3月31日午後11時59分(米東部時間)まで、インターネットで応募を受け付けている。世界中の橋梁が対象で、ASCE会員でなくても18歳以上であればプロアマ問わずだれでも応募できる。
 審査員が決定する7つのカテゴリーの優勝作品と、一般投票で選ばれる「ビューワーズチョイス賞」は、ASCEが作成する2016年のカレンダーに採用される予定だ。日本にある橋や、日本企業が設計や施工にかかわった世界の橋梁が選ばれる可能性ももちろんある。腕に覚えのある方は応募してみては?
 カテゴリーは、新設橋や歩行者用、白黒写真、ASCE学生部門など7つ。受賞作品は10月に決定する。各優勝作品の賞金は250ドル。応募は以下のフェイスブックページから。

https://www.facebook.com/ASCE.org?sk=app_451684954848385&brandloc=DISABLE&app_data=chk-54cfeb44df6b5

ちなみに2015年カレンダーの収録作品はこちらからどうぞ。



首都高速道路が渋滞しらずに!?/あの手この手で渋滞撃退/当面の目標は2020年

合流部で行うハード対策のイメージ
東京の都心部に血管のように張り巡らされた首都高速道路。平日の昼間は渋滞していて当たり前と思いつつ、「もしかしたらスイスイ走れるかも」と賭けに出て、まんまと渋滞地獄にはまった経験を持つドライバーも少なくないはず。そんな首都高速道路で、東京五輪が開催される2020年に渋滞・混雑量を現在の半分にし、10年後にはさらにその半分にする「快適走行」プロジェクトが進行しているのをご存じだろうか。
 「道路を賢く使うための渋滞対策を、15年度からの3カ年計画や単年度の事業計画にしっかりと盛り込み、快適走行の取り組みを強化する」と話すのは、首都高速道路会社の菅原秀夫社長。渋滞が起こりがちな合流部に付加車線を整備したり、いつの間にか走行速度が落ちてしまう上り勾配区間に速度回復誘導灯を設置したりなど、あの手この手で渋滞を撃退するという。
 速度回復誘導灯は、2月に3号渋谷線(下り線)池尻~三軒茶屋付近で運用を開始。効果を検証しながら設置区間の拡大や他の箇所への設置を進めていくとか。合流部に付加車線を整備するといった改修工事は、効果は大きいものの、大規模であるが故に時間と費用がどうしても必要になる。そこで首都高速道路会社は、合流部の渋滞対策に、ジャンクション合流部付近の車線数や優先・非優先路線などの運用変更を任意に行う道路交通指示システム「可変チャンネリゼーション」の導入も検討するという。
 本格化しつつある首都高の渋滞解消対策。「平日の昼間はジリジリ動く駐車場」の汚名を返上し、スイスイ走れる都市高速道路に生まれ変わる日が一日でも早いことを、多くの人が待ち望んでいる。

中堅世代-それぞれの建設業・87/地元密着型企業としての誇り

地方の建設業を取り巻く環境は厳しいまま…
  震災被災地の東北や好景気の東京に人手を取られ、昔から地元にいた職人の姿をすっかり見なくなった-。首都圏に近い地方でクレーンのオペレーターとして働く真田俊治さん(仮名)は、ここ数年、現場で会う業者の顔ぶれが一変してしまったことに驚く。
 工事量が急増し、人手不足などから単価が大きく上昇したエリアを新たな活動拠点とする業者が増えたという。処遇など条件面で割のいい仕事を求め、地元を離れて仕事をすること自体を否定はしないが、日ごろから付き合いの深かった仲間がいなくなることに寂しさも感じる。
 真田さんの営む会社は、数台のクレーン車を保有し、現場で揚重作業を担当する。親の代に始めた会社を継いで20年以上がたつ。地元で仲良くなった業者などから優先的に仕事を回してもらえる関係を築いてきた。クレーンのオペレーターは、元請の現場監督に指示された作業だけをやっていればいいわけではない。実際に現場で作業をするとびなどの専門工事業者の要求にも応えなければならない。刻々と変わる現場の状況を踏まえ、周りに合わせる中間管理職的な立場にあり、クレーンの操作技術だけでなく、コミュニケーション能力も求められる。
 経営的には決して楽な状況ではなかったが、これからも仕事を続けていく自信が付き始めた矢先に、東日本大震災が起きた。
 被災直後の混乱期から復興期に入り、建設需要は総体的には膨らんだが、被災地以外の地方が厳しい状況には変わりがない。
 とびや型枠大工、鉄筋工など、仲の良かった職人たちが、仕事があふれるエリアに拠点を移し、地元から姿を消したことで、これまで真田さんの会社に回ってきた仕事も思うように取れなくなった。
 「政権交代後のアベノミクスによる景気浮揚に一時は期待もしたが、地元ではまったく仕事が出ていない状況。大きな工事は被災地や東京を中心とした大都市圏に偏り、地方の中小都市まで恩恵は届いていない」と不満を募らす。
 クレーン車による揚重作業はスポット的に行う短期間・単発の仕事が多いため、地元を離れて仕事を請け負うことは難しいという。
 「大規模な現場で数年単位の仕事をもらえるなら遠隔地でも行く気になるが、単発の仕事では現場への移動時間や燃料費もばかにならない。身一つで動ける職人とはフットワークに大きな差がある」
 優秀な職人ほど、元請けや上位の下請業者などに誘われ、地元から離れた場所で割のいい仕事を請け負っている。
 仕事が少なくなった地元には、いい職人が集まらず、現場での業者間のコミュニケーションも良好とは言い難い。それでも地元に残り続け、新しく知り合った業者との信頼関係を構築しながら頑張ろうと思う。
 これまで人生の大半を過ごした地元への愛着もある。「仕事ほしさに縁もゆかりもないエリアに出るほどの気概はないが、このまちに根付いたクレーン屋としての自負はある」。先行きは決して楽観できないが、地元密着型企業としてのなりわいを続ける覚悟だ。

サークル/鉄建ハイキングクラブ/「心地よい汗を温泉で流し、杯を重ねる」

一歩一歩前に進み、目標に近づく実感が得られるのが山の魅力
 

13年秋、百名山を踏破した林康雄副社長(現社長)の呼び掛けで同好会的にスタート。14年8月にクラブ活動が会社の正式な制度となり、9月30日に公認クラブとして発足した。15年1月時点で56人が所属。社長、土木本部長、建築本部長をはじめ本社の内勤者を中心に構成し、現業部門と東北支店からそれぞれ8人が参加している。
 モットーは「自然の中でマイナスイオンをいっぱい浴びて、心地よい汗を温泉で流して、みんなで杯を重ねて、社員相互の融和と懇親を図ろう!」。春と秋に首都圏近郊の低山ハイキングを実施。昨年11月には41人のメンバーとともに丹沢の大山ハイキングを行った。
 発足2年目の今年は、新たな山の魅力をメンバーに感じてもらおうと、さまざまな活動を企画中。4月は箱根山系の明神ケ岳ハイキング、6月は尾瀬に1泊2日で山行、7月の3連休には2泊3日で北アルプスか南アルプスへ。8月末には1泊2日で富士山、11月にも活動を計画している。
 代表を務める荒明浩登さん(建築本部建築営業部長)は「今まで山に興味がなかった人も2、3時間汗を流し、山頂に立ち、そこから見える眺望に感動している。山の魅力に取り付かれるようになっている。一歩一歩、確実に前に進み、目標に近づくことを実感できるのも大きな魅力ではないでしょうか」と話している。

駆け出しのころ/日本国土開発取締役執行役員経営企画室長兼企画部長・増成公男氏



 ◇一つの駒にも重要な役割がある

 学生時代は仙台市内のコーヒー専門店でアルバイトをしていました。この店の常連さんに日本国土開発仙台支店(現東北支店)の方がいて、「うちの会社どう」と声を掛けていただいたのが入社試験を受けるきっかけでした。
 入社して最初の配属は縁のある仙台支店で、総務部経理チームに勤務しました。法学部出身の私にとって、経理の仕事を覚えるのは本当に大変でした。何カ月かたち、今度は先輩に連れられて現場の月次(決算)を教えてもらいました。しかし、最初のころは間違ってばかり。伝票を1冊無駄にしたこともあります。
 仕事にだんだん慣れてくると、現場の地元説明会なども手伝うようになりました。しばらくして支店の事務社員が減ったこともあり、東北6県にある大型現場以外のすべての現場の経理を3人ほどで担当することになりました。私もその一人として、青森、秋田、岩手3県の現場を担当しました。各地の現場には車を運転して出向き、月間走行距離が約5000キロに上ったこともありました。
 自分で自らのスケジュールを立て、そして自分で管理する。こうした貴重な経験を積めたのがこのころでした。どんなに忙しくても相手と顔を合わせるのが大切なことも学びました。制約を受けて窮屈に仕事をしていたら、今の私はなかったかもしれません。
 小さな支店でしたから、それこそ何でもやりました。地鎮祭や竣工式の準備なども含まれます。かなりの数の現場があり、外部の式典業者と一緒に移動しながら設営と撤収を繰り返していったこともありました。
 そうした式典ではいろいろなことにも直面しました。予定していないのに突然にテントの外に出て弓で矢を放ち始めたり、ホラ貝を吹き始めたりする神主さんもおられました。神主さんが連絡も取れずに遅刻されて来た時は、さすがにどうしたらいいものかと真っ青になりました。
 会社の若い人たちには、自分の仕事がどのような位置付けにあるのかを考えようとよく言っています。例えばこの伝票を切らないと、支店の月次ができず、それが会社の月次ができないことにもつながり、さらに会社の営業成績を発表できないことになってしまう。一つの駒だとしても、それぞれに重要な役割があるのです。
 会社には自分がステップアップできるためのさまざまな機会や道具、情報があります。家にいてはとてもそろえられないものばかりです。そう考えれば仕事に対する意欲も出てくると思います。
 (ますなり・きみお)1981年東北大法学部法学科卒、日本国土開発入社。広島支店事務部長、管理本部総務部総務・法務グループリーダー、執行役員事業管理部長、同経営企画室副室長兼企画部長などを経て、14年8月から現職。広島県出身、58歳。

東北の支店で経理を担当していた当時。
さまざまな仕事に携わった

結/三井住友建設国際支店建築営業部・ハシタ・S・グナラトネさん

 
「久々の母国での仕事、自身の経験生かす」

 「子どものころ、地図は変わらないものだと思っていたが、日本人は海を埋め立て、土地を増やし、地図を変更した。自然が変わるようなイメージに感動した」。日本企業が造ったものは丈夫で長持ちする。そんな良いイメージもあって、「大きくなったら日本に行って日本人がどうやっているのかを見たかった」。
  大学を卒業後、政府開発援助(ODA)の国立病院建設工事に日本人とスリランカ人の橋渡し役として従事。「頭でイメージし、紙の上で徹底的に議論、確認してものを造る。図面やスケジュールなどを、紙をコミュニケーションツールにプロジェクトに関わる全員が共有する」。そんな日本流のものづくりに触れた。
 スリランカの事務所では主に経理の業務に携わり、1986年に初来日。91年から日本勤務となった。国際支店経理部に所属し、自身の経験と日本の技術を掛け合わせて海外の経理担当者が使いやすい経理システムを構築するなど業務を支えてきた。現在は経理の知識と英語力を生かし、海外での建築営業に当たっている。内戦が起きていたスリランカは現在、治安が回復し、日本政府の支援も再開。「プロジェクトが動き始めそうだ。撤退していた当社も再始動に向け準備中だ。私自身もこれまでの経験を生かしたい」と久々の母国での仕事に熱がこもる。
 その先の夢について聞くと、「現場で活躍する技術者や職人のレベルアップを図るため、スリランカに日本の技術を教える学校をつくりたい」。(営業第一グループ主任、スリランカ出身)

2015年3月20日金曜日

回転窓/病巣は存在し続ける

 「もう」というべきか、「まだ」というべきか-。日本の安全神話を揺るがしたあの事件から20年がたつ。年初に起きた阪神大震災という都市部を襲った未曽有の災害の余韻が残る中での地下鉄サリン事件。カルト教団が起こしたこの無差別テロは世界を震撼(しんかん)させた▼優秀な頭脳を持った若者たちが、なぜ一人の教祖に身を委ね、あのような犯罪に手を染めていかざるを得なかったのか。当時そのことが不思議でならなかった▼事件が起きた1990年代半ばの日本は、バブル景気に沸いた80年代後半から一転し、長期低迷期に入っていた。あれから20年。18日の東京株式市場は日経平均株価が15年ぶりに1万9500円を超えた。主要企業の大幅な賃上げのニュースも相次ぐ▼人々をくぎ付けにした一連の事件に関与した者のほとんどは刑が確定したが、一方で事件の後遺症に苦しむ被害者も依然少なくない。看板を掛け替えた教団もいまだ世間を騒がせている▼経済が回復しても、社会の病巣がすべてなくなるわけではないことは日々のニュースを見れば明らかだ。好調に浮かれず、常に「闇」にも目を向けたい。

ダムツーリズムってなに?/国交省が旅行会社と企画/ダムカードも密かな人気

昨年11月に宮ケ瀬ダム(神奈川県)で行われたツーリズムの様子
  国土交通省と旅行会社が企画している「ダムツーリズム」の人気が高まっている。以前はダムマニアと呼ばれる愛好家の参加が多かったが、家族連れやカップルでにぎわうことも増えたとか。普段は目にすることができない管理用通路などダムの裏側を見せるコースを組み込む企画もある。ダム周辺の地域振興を目的に始まったイベントは、何かと批判されがちな公共事業や土木インフラへの理解を深めてもらう上で、大きな役割を果たしつつありそうだ。
 ダムツーリズムが始まったのは13年6月。巨大なダムが間近で見られる見学以外に、参加者を引きつける魅力がある。それは管理事務所などで配られる「ダムカード」。1人1枚の配布が原則のこのカード、ツーリズム実施前から存在したが、ここにきて人気に火がついてるそうだ。昨年10月までに発行したカードは365種。ネットオークションで予想外の高値が付くものも。
 間もなく春の観光シーズン。ダムを訪れて桜や新緑を楽しんでみてはいかが?

カードの中にはオークションで5000円の値が付くものもあるとか・・・。

ゼネコン各社/新卒獲得で知恵の絞り合い/需要拡大で採用競争激化

合同企業説明会での採用担当者の説明にも熱がこもる
 建設需要の拡大に伴いゼネコン各社が一斉に採用枠を広げたことで、本格化している16年春の採用活動で企業間の人材競争が激化している。優秀な人材をより早く確保するため、インターンシップや企業説明会の実施を多くしたり、リクルーターを増員したりなど取り組みはさまざま。これまで採用実績がなかった大学や高等専門学校、学部や学科へのアプローチ、外国人留学生を対象にした説明会やセミナーなど、あの手この手で新卒獲得競争を勝ち抜く姿勢が鮮明になっている。 
 採用活動で重要となるのが大学へのアプローチ。多くの社がインターンシップの実施回数や会社説明会の機会を増やしている。「採用実績がない大学や高等専門学校、学部や学科からも採用するようにした」(竹中工務店)、「留学生対象の学校説明会やオープンセミナーを開催している」(大成建設)という社もある。アプローチの方法として、フジタは学校OBによる訪問を強化。前田建設、熊谷組、三井住友建設、東急建設などがリクルーターを増員した。五洋建設と西松建設は現場の雰囲気に触れてもらうため、現場見学会を開催。安藤ハザマ、飛島建設は「1Dayインターンシップ」と銘打ち、インターンシップの日数を短縮することで多くの学生が参加しやすくした。
 若い世代が使い慣れ、一度に多くの情報を提供できるホームページ(HP)やソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の活用も進む。求人広告媒体を増やしたり、高等専門学校のデザインコンテストに協賛したりすることで、認知度を高める動きも。
 16年春に大学を卒業する学生の採用に向けた企業の会社説明会が、従来より3カ月遅れとなった影響に対し、東洋建設は「採用活動が新入社員を受け入れる準備と重なり、負担増となる」と指摘。清水建設は「会社と学生間の相互理解を深める期間が従来より短くなるため、職務理解を促し、会社の魅力を伝えていく機会を設ける必要がある」と柔軟な対応を見せる。
 最近の学生は地元志向が以前にも増して高くなっている。転勤が当たり前のあるゼネコンを敬遠しがちな面もあるが、公務員や他産業との人材争奪戦に打ち勝つには、各社が自社だけでなく業界全体の魅力をPRしていくことも必要になりそうだ。

4月から「外国人建設就労者受入制度」始動/日刊建設工業新聞主催のセミナーでポイントや注意点説明

 3月19日に東京・築地の浜離宮建設プラザで日刊建設工業新聞主催の「外国人建設就労者の有効活用とリスク管理セミナー」が開かれました。
 4月から始まる外国人建設就労者受入事業の概要、同事業に基づく特定監理団体と適正監理計画の認定など制度全般について、国土交通省の屋敷次郎建設市場整備課長からご説明いただいた後、エナジェティックグリーンの和田征樹共同代表取締役に「外国人材の管理とリスク回避」についてお話いただきました。
 外国人建設就労者受入事業は、日本で3年間の技能実習を終えた外国人材を対象に特定活動として在留資格を与え、建設現場で活躍してもらう措置です。2020年に東京で開催されるオリンピック・パラリンピックに向けた一時的な建設需要の増大に対応しようと昨年4月に関係閣僚会議で導入が決定されたことを受けて、国土交通省が中心となって制度化の検討が行われました。
 外国人に就労者として日本の建設現場で活躍してもらうため、従来の技能実習制度を上回る監理体制を構築することを前提に、事業スキームが構築されました。就労する外国人が得る報酬も日本人と同程度とし、在留期間中の転職も認められています。屋敷氏によれば「働く人を大切にする」という基本理念の上に立脚する制度だということです。
 和田氏は「CSR調達では、法令順守や人権・労働・環境保全にかかわる分野の要求事項を含まれる」と指摘。それを踏まえ、外国人材を受け入れる際のコミュニケーションや継続した教育の必要性を強調しました。
 セミナーには、ベトナム大使館参事官のグェン・ザー・リェム労働管理部長も出席。ベトナムにおいて、建設労働者の能力向上を目指した取り組みが急ピッチで進められていることなどを紹介いただきました。グェン氏からは「技術レベルが高い日本の経験は、ベトナムの近代化に貢献できる」と大きな期待を寄せられました。
 その後、日本貿易振興機構の山田美和氏をモデレーターに屋敷氏、和田氏、グェン氏が再び登壇してのパネルディスカッションを実施。最後に日本に在留する外国人材を対象とした母国語による相談への対応について、翻訳センターの高橋恵介氏が説明しました。

セミナーには各社の労務担当らが多数参加

2015年3月19日木曜日

球技専用スタジアム整備相次ぐ/世界の潮流は「利益生む施設」


間もなく着工予定の北九州市スタジアムの完成予想図
 
 全国でサッカーを中心とする球技専用スタジアムの整備や計画立案が相次いでいる。15年中の完成に向け、長野市と大阪府吹田市で建設プロジェクトが進行。北九州市ではPFI方式を採用した事業が始動し、福島県では商工会議所や県サッカー協会が「福島市にサッカースタジアムをつくる会」を設立した。クラブが自前でスタジアムを所有する欧州と異なり、日本の場合、その多くは自治体が整備主体。「施設をフル活用し、いかに利益を生み出すか」がスタジアム運営の世界的な潮流であり、完成後を見据えると課題は決して少なくない。
 球技専用競技場は現在、プロサッカーJ1・ガンバ大阪の本拠地となるスタジアムの建設が今年秋の完成を目指し大阪府吹田市にある万博公園内で進む。長野市ではJ3リーグで戦うAC長野パルセイロがホームゲームを行う南長野運動公園総合球技場の建設が進行中。北九州市では、小倉北区浅野3丁目にある海沿いの敷地にPFI方式でスタジアムを建設するプロジェクトが17年3月の供用開始を目指し、4月に着工する予定だ。
 このほかにも、京都府が収容人数2万5000人程度のスタジアムを建設するため「京都スタジアム(仮称)基本設計業務」を設計会社に委託済み。広島市や那覇市、富山市、静岡市などでもスタジアム建設の機運が高まっており、基本構想を策定する動きなどが出始めている。

ガンバ大阪の本拠地となるスタジアムの完成予想図
(スタジアム建設募金団体提供)
 
 ガンバ大阪の新サッカー専用スタジアムは、企業やサポーターからの寄付で建設費を賄うスキームを組んでいるが、それ以外は地方自治体が公共事業の一環として整備するケースが大半。欧州のサッカークラブのように潤沢な資金を使い、自前でスタジアムを建設する動きは、残念ながら日本では皆無。クラブが自前で専用スタジアムを持つのは、千葉県柏市を本拠地とするJ1柏レイソルだけで、そのスタジアムもスタンドの一部は仮設状態が続き、日常的な改修費の捻出にも苦労している。
 欧州では、中心市街地にある巨大なスタジアムにVIPルームを設け、ビジネスや宿泊施設に活用する例や、老人ホームや福祉施設を併設している例など、「サッカーを見る場所」という枠を超えた活用が進む。オランダには試合がない平日にスタジアムの駐車場を「パーク・アンド・ライド」の拠点して使い、市街地への一般車両の乗り入れを減らす取り組みもある。
 これに対して日本の場合、建設地が公園や公有地などにあるために商業利用や二次利用が難しいケースや、鉄道の駅など交通結節点から距離があるケースも見られる。プロサッカーチーム自体の資本力が乏しいことと相まって、欧州と同じような動きが今すぐ出てくるのは現実的ではない。
 さらにスタジアムを作ったとしても莫大な維持管理費を賄いきれず、持て余してしまうケースは少なくない。サッカー王国・ブラジルでも、昨年開催されたワールドカップのために改修した地方都市のスタジアムが開店休業状態に陥り、対応に苦慮した行政がバスターミナルとして活用している事態が起こっている。
 試合日にはホームチームを応援するため多くの観客が集まり、他地域からも来場が見込めるスタジアムは、自治体にとって格好の集客施設。公共投資で競技場を造るという発想から一歩踏み出し、欧州では当たり前のようになっている施設の姿をどう実現するのか、関係者の知恵と工夫が求められている。

長野市で建設中の球技場完成イメージ





回転窓/防災会議から世界へ

 仙台市で開かれていた第3回国連防災世界会議が、18日で閉幕した。メーン会場は世界各国からの会議出席者や報道関係者らの熱気であふれていた▼パブリックフォーラムとして、多数のシンポジウムも開かれた。建設に関連する企画も多く、立ち見が出る会合もあった。興味深かったのは、業界関係以外の参加が目立ったことだ▼宮城県建設業協会らが開いたシンポジウムでは、参加した1000人のうち、半数が一般からの応募だったという。当日は、同協会が発刊している震災記録誌の総集編が全員に配布されており、開会前に熱心に見入っている方を見掛けた。地域に密着した建設業の活躍ぶりを、初めて知った人もいたのではないか▼東北の被災地を回った中学生記者の報告にも注目が集まった。立命館守山中学校(京都府)の正岡碧海さんは、気仙沼建設業青年会を取材。震災後の道路啓開の取り組みを知り、「道路は生命線」ということを実感したそうだ▼同会議がきっかけで東北に注目が集まることは、復興にもプラスに働くはず。参加者たちの思いや気付きが、世界に広く羽ばたくことを期待したい。

百聞は一見に如かず/映像で建設業の魅力や役割を紹介/企業や団体が一般向けDVD作成

 
就職活動中の学生や一般の方に、映像を使って建設業の魅力や役割を伝える取り組みが相次いでいる。鹿島は過去に手掛けた代表的な工事の記録映像をまとめた「君の情熱が100年をつくる 建設業をめざす人たちへ」を作成。青函トンネルや霞ヶ関ビル、宮ケ瀬ダムなどの建設に情熱を注いだ技術者が現場の最前線で活躍する姿を収録した。DVD5000枚を作成し、協力会社のほか、全国のハローワークや学校などに配布する予定。「採用活動や教育のツールとして利用してもらえれば」(同社)としている。
 日本基礎建設協会は、構造物を支えるコンクリート杭工事を分かりやすく解説したDVDを作った。建設業界ではお馴染みでも、業界の外に一歩出れば「コンクリート杭って何?」となりがちな分野。基礎杭業界のPRと新規入職者の獲得に向けて、全国の大学や高等専門学校、工業高校に配布したという。
 建設業が何をしているのか知ってもらうことが、仕事の魅力を理解してもらう第一歩。「百聞は一見に如かず」で、建設業界の企業や団体が作ったDVDをぜひ見てほしい。

2015年3月18日水曜日

建設産業で広がるUAV活用/現場管理やインフラ点検など用途探る/米国では飛行に規制の動きも

インフラ点検や現場管理などで活用が期待されている
 小型無人航空機(UAV)の活用が建設産業で広がっている。ラジコンヘリに比べて操縦が容易で安定性も高く、自らのタイミングで安価に空撮が可能なことなどが、普及を後押ししている。ゼネコンや建設コンサルタントが日常業務にUAVを活用。現場向け情報通信技術(ICT)ソリューションにUAVを組み込み、ビジネス展開を狙う企業もある。その一方で、無秩序な運用による事故や事件の発生を懸念し、米国では一定のルールを設ける動きも出始めている。
 建設業界の利用では、竹中工務店が16日、大阪府吹田市で施工中の大規模建築現場にUAVを導入し、工事記録映像の撮影や作業員への注意喚起に活用していると発表。今後、活用の水平展開を図るとしている。
 建設コンサルタントでは、ラジコンヘリの代替としてUAVを利用している。既にパシフィックコンサルタンツは、優れたホバリング性能を利用し「橋梁の三次元モデルを作るための撮影などに使っている」。応用地質は「昔は気球を使っていた空撮がラジコンヘリに代わり、今度はUAVになりつつある」と現状を説明する。ラジコンヘリに比べて操縦が容易な上、高速無線通信や高解像度画像撮影などの技術がめざましく進歩する中で、「UAVは大きな可能性を秘めている」と見る業界関係者は少なくない。
 現時点でUAVを飛ばすことに法規制はない。自主的に安全弁を設ける意味で「内規を設けて運用している」(パシコン)。その一方で「本当は都市部で使いたいが、絶対に落ちないとは言い切れないので、現時点では安全面で心配がない郊外での利用に限定している」という企業もある。商業利用を進める場合、操縦者の技術水準の確保、異常挙動などを防ぐ電波障害対策の確立、航続距離の延長や信頼性が高い自動飛行技術の開発などが当面の課題になる。
 政府は17日、大久保勉参院議員が提出したUAVに関する質問への答弁書を公表した。米国連邦航空局が2月にまとめたUAVに関する規制案を踏まえ、政府は「運用実態の把握を進め、公的な機関が関与するルールの必要性や関係法令なども含め、検討を進めていく」と説明。現時点で取り組みは緒に就いたばかりとの印象を受ける。
 米国連邦航空局が2月に公表した規制案は▽操縦者の視野内での飛行▽高度500フィート(約152メートル)未満での飛行▽夜間飛行の禁止▽プロジェクト関係者以外の頭上の飛行禁止―などが柱。この案に対し、米国では「商業利用を促進する立場から規制が厳しい」などの意見が出ているという。
 国際的な動向を受け、UAVの優れた点を生かすために日本で政府や民間企業がどのような動きを見せるのか、新しい産業育成や技術開発の側面からも注目する必要がありそうだ。

災害対応で建機レンタル業界と陸自が連携/建機の保有状況など情報提供

合意書を手に握手する角口会長㊨と黒川部長
 日本建設機械レンタル協会(角口賀敏会長)と陸上自衛隊補給統制本部施設部が、「建設機械等の情報に関する合意書」を交わした。陸自に対し協会が会員企業の建設機械の保有台数といった情報を定期的に提供するという内容。災害時に重機が必要になった場合、陸自はこの情報を活用して油圧ショベルなどを効率良く調達し、迅速な救助・復旧活動につなげる狙いだ。合意書の期限は16年3月31日までで、両者に異議がない場合は1年ごとに自動更新する。
 陸自によると、11年3月の東日本大震災発生時には、民間の建機レンタル会社から油圧ショベルや掘削機を借りて復旧・救助活動を行ったという。合意書を交わしたことで、建機を保有している企業がどこにあるかが事前に分かるため、より効率的な活動につながるとみている。
 17日に東京都北区の陸自十条駐屯地で調印式が行われ、角口会長は「災害に対する社会的責務を果たせることに誇りを感じる」と述べた。星川辰雄陸自補給統制本部施設部長は「合意書により、以前より速やかかつ効率的に救助活動を行うことができるようになるのでは」と期待を寄せた。

回転窓/学校の耐震補強にひと言

 先週末に自宅のある町をそぞろ歩きしていると、小学校の生け垣を大人たちがきれいに刈り込んでいた。今週開く卒業式の準備であろうか。巣立っていく児童たちへのはなむけとあれば精も出よう▼別の小学校には、いつの間にか見慣れないプレハブ校舎が立っていた。校舎を耐震補強する工事のための仮設教室だ。かつて同じように工事が始まった小学校に子どもを通わせる保護者から聞いたことがある。工事期間が知らされただけで、何をどう補強するかの説明はなかったという▼どんな工事をすれば地震に強い建物になるのか。工事はどうやって進むのか。それを児童に分かりやすく説明するのも、防災意識を根付かせる大きな一歩となるに違いない▼仙台市で開かれていた第3回国連防災世界会議がきょう閉幕する。太田昭宏国交相は15日の閣僚級会合で、日本では阪神大震災を契機に学校や住宅の耐震補強を進めてきたことなどを説明した。震災の教訓が生かされた好例であろう▼校舎の耐震補強に興味を持った児童の中から将来の建設技術者が育つかもしれない。卒業シーズンは大人も期待に胸が膨らむ。

福島県の名産をどうぞ/戸田建設が東京・京橋の本社ビルで物産市開く

ふくしまマルシェのブースには多くの人が集まった

 戸田建設が17日、東京・京橋の本社で福島県の名産品を販売する物産市を開いた。「ふくしまマルシェ」と題して、銘菓「ままどおる」や「いもくり佐太郎」、2年連続金賞を受賞した銘酒、喜多方ラーメンなどを品揃え。東日本大震災の復興支援の一環で、福島県東京事務所とアンテナショップの日本橋ふくしま館のスタッフ、戸田建設の社員が協力し、販売や呼び込みを担当した。周辺オフィスに勤務する人が大勢立ち寄り、終日にぎわいを見せた。
 会場はTODAビル新館1階エントランスホール。福島を代表する品を約40点そろえた。地元で採れた野菜などを使ったお弁当も販売した。災害への備えを意識付けてもらうため、購入した人にはBCP(事業継続計画)対策として戸田建設が社内に備蓄している「アルファ米」もプレゼント。午前11時のスタートと同時に完売した商品もあったという。
 路上に出て呼び込みを行った広報・CSR部CSR課の佐藤孝一課長は「(東京電力福島第1原発事故の影響で)福島県では風評被害に悩んでいる。それを少しでも払しょくし、復興に貢献できれば」と話していた。

2015年3月17日火曜日

岡山理科大学/建築学科3年生が木造戸建て住宅の現地水平加力試験実施

3月13日~14日に行われた実験の様子
 
岡山理科大学工学部に通う学生が、岡山県倉敷市内にある木造一戸建て家屋を使い、現地水平加力試験を行った。建設重機を反力に、建物の梁2カ所に固定したワイヤをウインチで交互に引きながら、1カ所3~4トン程度加力し、建物各所の変形状況を調べた。小林正実准教授は、住宅などの耐震診断が進む中、木造建物の耐震性に関する貴重な資料になるとしている。
 実験は、工学部建築学科3年生の吉田明宗さん、濱野眞人さん、室井拓也さんの3人が、小林准教授の指導の下で実施した。木造家屋の現地水平加力試験は、阪神淡路大震災以降、全国各地で行われたが、重機の設置場所が必要となることから、中国地方では山口県内のかやぶき民家2棟だけしか実施されていないという。
 今回、取り壊しを予定している元住宅兼事務所を提供した吉田眞喜治吉田組代表取締役会長、重機を提供した綾野工務店(倉敷市)、加力を担当したタイシン技建フクダ(滋賀県)の協力により、耐震性に関する詳細なデータが得られる貴重な機会となった。
 対象建物は、1975年に竣工した木造2階建て(鋼梁)と隣接する1926年竣工の木造2階建ての2棟。実験では、それぞれ建物の梁2カ所にワイヤを固定。ウインチで交互に引っ張りながら、少しずつ荷重し、柱や壁に設置した変位計でデータを収集した。

海から見る橋はひと味違う/橋建協が大阪港で橋めぐりクルーズ開く

港大橋は全長980メートルのトラス橋。中央径間510メートルは日本最長を誇る
 日本橋梁建設協会(橋建協、藤井久司会長)が14日、大阪港内に架かる八つの橋をめぐるクルーズを行った。関西で「橋めぐり」を開催したのは昨年3月「なにわ橋めぐりクルーズ」以来。親子連れら約90人が参加し、船に乗って普段は見られない真下から橋の姿を楽しんだ。
 参加者は乗船前にホテルに集合。広報委員会の山路祥一幹事長は「大阪湾ほどアーチ橋やつり橋などいろいろな橋がある場所はない。普段は車や歩いて渡っている橋も下から見ると景色が違う。今日は楽しく過ごし、いい思い出にしてほしい」とあいさつ。続いて阪神高速道路会社の金治英貞さんが「世界に誇れる大阪ベイエリアの橋」をテーマに話をし、大阪湾にはつり橋で世界最長の明石海峡大橋やダブルデッキアーチ型の神戸大橋など多彩な橋があることや、東神戸大橋や天保山大橋など阪神高速の長大橋を紹介した。
 クルーズ船に乗り込んだ参加者は、約1時間半をかけて大阪港にある橋を海上から見学。天保山大橋から此花大橋、夢舞大橋、かもめ大橋、南港大橋、新木津川大橋、なみはや大橋をめぐり、最後に大阪港を代表する港大橋に向かうコースで、記念撮影などを楽しんだ。

回転窓/花見ができる環境は

 3月も半ばを過ぎた。朝晩の冷え込みが緩んだのに加え、花粉症の不快な症状が本格的な春の訪れを感じさせてくれる。半月後に迫った新年度を前に進学に就職、転勤など新生活の準備に忙しい方も多かろう▼この時期、日本人として気になるのは、やはり桜がいつ開花するか。日本気象協会の予測によると、今年のソメイヨシノの開花は「平年並みか早い見込み」だそう。今週末に高知から桜前線の北上がスタート。西日本から東日本にかけての広い範囲で満開の桜とともに4月が始まりそうだという▼もっとも、年度末で仕事が繁忙を極め、桜前線の動向など気にする余裕がないという方も少なくないだろう。特に建設産業界では、役所の予算の関係もあって工期や納期が3月に集中しがち。連日の長時間勤務では桜前線どころではなかろう▼ある業界の取材を担当していたころ、長時間労働の是正について各社の担当幹部と話す機会がたびたびあった。会社は違っても結論は大抵同じ「特効薬は見当たらない」というところに落ち着く▼3月にゆっくりとお花見ができる環境になれば業界も大きく変わるのでは。

2015年3月16日月曜日

Woman/宮城県東部土木事務所道路建設第一班技師・我妻順子さん


 ◇忙しいがやりがいある
 宮城県東部土木事務所(石巻市)に赴任して3年。沿岸部に設けるかさ上げ道路の設計などを担当している。住民から電話や直接訪問で復興事業の進ちょくを問われることがあり、早期復興への期待を肌で感じる。それだけに「業務は日々忙しいがやりがいがある」。
 蔵王町で生まれ育ち、栃木の宇都宮大学で土木全般を学んだ。構造物のスケールの大きさや仕事の成果がはっきり見える点に魅力を感じ、卒業後は迷いなく建設業を志した。
 公務員試験を受けるも不合格となり、国営みちのく杜の湖畔公園の事務所で数年間アルバイトとして勤務。周囲の薦めもあり宮城県庁の採用試験を受け、見事合格。09年に入庁し、土木技術者としてのキャリアをスタートさせた。
 県沿岸の被災地域で土木技術職に携わる正規の女性職員はほかにおらず、県全体でも女性技術者の数は限られている。しかし、周りの職員や住民はみな親切に接してくれ「女性だから仕事をやりにくいと思ったことはない」。むしろ顔を覚えてもらいやすいなどメリットの方が大きいと感じている。
 春から県東京事務所への異動が決まっている。初の東京勤務を前に不安もあるが「復興が円滑に進むよう調整役を果たしたい」と意気込む。(あがつま・じゅんこ)

凜/ピーエス三菱東京土木支店土木技術部設計グループ・下風笑美子さん



 ◇自分だけの強みを持ちたい
 3歳上の姉の影響を受け、高等専門学校に進学。卒業後は大学に編入し、工学部社会環境デザイン工学科でさらに2年間学んだ。「土木は人の生活に関わるところがいい。中でも、離れた土地と土地を結ぶ橋梁に魅力を感じ、橋梁工事を多く手掛けるピーエス三菱への就職を決めた」という。
 所属する東京土木支店土木技術部設計グループでは、主に受注したPC(プレストレストコンクリート)橋の設計照査を担当。着工前の図面に誤りがないか、施工する上で何か問題がないかどうかをチェックしている。「少しのミスが工事中の大きな不具合につながる。そうしたことがないように心掛けている」。
 これまで照査を手掛けたのは6橋。「一つとして同じ橋はない。苦労もあるけれど、それ以上にやりがいがある」。初めての橋は、勉強を兼ねて現場に行く機会も多かっただけに印象に強く残っているという。「橋長22メートルの普通のPC橋でしたが、完成した時はとてもうれしかった」と笑顔で話す。
 入社2年目で、まだまだ周りの人に助けられながら仕事を進めている。「もっと早くこなせるようになりたいし、自分だけの強みを持てるようになりたい」。将来は現場に出て施工管理をしてみたいという気持ちもあるが、今は設計の腕を磨く日々だ。
 ランニング部に所属し、仕事が終わると同僚と汗を流す。「体を動かすことが好きで、運動すると良いリフレッシュになる」。最近はゴルフとフラダンスも始めた。(しもかぜ・えみこ)

駆け出しのころ/安藤ハザマ取締役常務執行役員建築事業本部副本部長・杉本文雄氏




 ◇安全と品質は大切なお守り
 私が間組(現安藤ハザマ)に入社した年は、第2次オイルショックによる不景気のために、その前まで数百人いた新入社員がわずか12人でした。3日間の新人研修後、最初に配属されたのは東京都内の大規模な地下変電所工事です。
 この工事では、電力施設での大数量の土と鉄、コンクリートとどう付き合うか、どう扱うのかといったことを学びました。そして厳しく教え込まれたのが安全と品質です。場内に入ると、仮囲いに「安全は全てに優先する」という間組の社是が掲げられていました。所長や先輩たちが場内を巡視する際にわざと私を同行させて、職員や作業員に指導していくのを見せてくれました。
 現場に出て3カ月ほどしたころのことです。現場で所長が私を連れて歩きながら、足場やいろいろな仮設構造物を見て指差し呼称を行っていきました。それは安全面でのものだけでなく、仮設構造物を見て頭で瞬時に計算して「よし」とやっていくのです。構造出身の所長であり、これには素直に「格好良い」と思ったものです。
 私は学生時代に構造力学をあまり真剣に勉強しなかったため、コンプレックスがありました。でも、この日を契機に一念発起。自宅のアパートから現場まで電車で片道2時間近くかかっていたのですが、この往復時間を利用して構造の勉強を始めました。
 そうして半年ほどで『建築仮設物の構造計算入門』(彰国社)や『鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説』(日本建築学会)、『鋼構造計算規準・同解説』(同)といった数冊の専門書をマスターしました。この現場にいた2年間で仮設の計算や設計をほとんど自分で手掛けられるようになり、大きな自信も付きました。
 その後、さらに地下変電所工事2件の現場を担当します。これらの経験があったからこそ、その後の私があり、12年にわたる海外勤務もやり遂げられたのだと思います。
 マレーシアではペトロナスツインタワー建設工事に携わりました。現在もツインタワーでは世界一高い建物です。現場では契約・工務課長を務めました。主な仕事は施主やコンサルタントとの膨大な量の追加変更やクレーム交渉です。自分たちは安全で良い品質の建物を造っているという自信があったので、正々堂々と胸を張って粘り強く交渉することができました。
 現場では、安全と品質で確かなものがあるからこそ、これをよりどころにそれ以外のこともやれるのです。建設会社の社員にとって、安全と品質は大切なお守りなのです。
 (すぎもと・ふみお)1977年東大工学部建築学科卒、間組入社。執行役員北陸支店長、常務執行役員東京建築支店長、同建築事業本部長などを経て、14年6月から安藤ハザマ取締役常務執行役員建築事業本部副本部長兼営業統括部長兼営業統括部都市開発部長。愛媛県出身、60歳。
入社2年目(1978年、手前)とマレーシア勤務時代(95年)の身分証

中堅世代-それぞれの建設業・86/「利他利己」の精神がなければ

 公共事業に対するバッシングが激化したあの時代は何だったのか-。
 交通インフラを整備・管理する組織で技術者として働く中堀達也さん(仮名)は、「コンクリートから人へ」を政策スローガンに掲げた民主党政権時代の出来事をいまだに理解できずにいる。社会のために役立つ仕事を選んだ自分の信念は揺るがないが、短絡的に「公共事業=悪」と見る社会の風潮に違和感を感じていた。
 この10年余りの間、建設産業を取り巻く環境は変化し続けた。公共投資の減少傾向に歯止めが掛からず、東日本大震災の前がマイナスの底に。震災以降は被災地の復旧・復興事業だけでなく、全国的にインフラ整備の重要性が再認識され、事業が凍結されていたインフラプロジェクトも相次ぎ再開へ動きだした。
 経済対策を重視する現政権に交代し、その流れに一段と拍車が掛かる。震災の被災地以外でも防災・減災効果を見込んだ新規事業や、老朽化施設の更新事業などが活発化してきた。
 中堀さんの職場も、震災前までは建設部門を縮小する方向で組織の再編が進んでいたが、それが一転。事業急増への対応を迫られるようになった。今は個人の踏ん張りで持っている面もある。
 30年近く交通インフラの建設現場を渡り歩いてきた。事業を進める際、今も昔も反対する人は少なからずいる。周辺地域の住民にとっては自らの利害に直結するから、正論だけで問題は解決しない。地元への事業説明会でそれぞれの言い分を聞き、考え方の異なる関係者が折り合いを付けながら事業を一歩ずつ前に進めていくしかない。
 十数年前に建設事業に携わった場所の近接地で再び工事を行うことになり、昨年、近隣住民への説明会を開いた。「工事車両が自宅前の道路を通ることに快く応じてくれる人もいれば、前回の工事の際に事業者に不信感を抱き、厳しい声をぶつける人もいた。インフラ整備にはいつの時代も賛否両論があり、理解を得るのは容易ではない」。
 それでも地域のためになるものを造り続けてきたというプライドが、中堀さんが今の仕事を続ける原動力になっている。
 10年ほど前に新居が完成し、引っ越し作業が終わったその日に大きな地震が発生した。幸い家屋に被害はなかったが、管轄する施設が被災。早期啓開への対応や復旧事業に向けた関係先との調整などで数日間、自宅に帰ることができなかった。
 地域の人たちのために、被災した施設を一日でも早く復旧させようと寝る間も惜しんで工事関係者らと作業に当たった。「他人のために行動することが自分の幸せにつながるという『利他利己』の精神がなければ、インフラを整備・管理する仕事は続けられない」と思う。
 公共インフラは市民の暮らしや企業活動に欠かせない。それを整備・管理する仕事もなくなることはない。それだけ重要な役割を担っているのに、建設産業への社会の評価とイメージはまだまだ低いと感じる。
 社会のためにと一心不乱に仕事を続けてきたが、これからは建設産業の社会的地位の向上のために何ができるかを考えていこうと思う。「みんなを幸せにする産業」に関わり続けることに迷いはない。
インフラを支える建設産業の未来は…