2015年3月4日水曜日

回転窓/五つの味覚に感謝

 ペンギンの味覚には塩味と酸味だけしかないそうである。米国の大学のチームによるそんな研究結果を先日、外電が伝えていた▼基本的な味覚は、甘味・苦味・うま味・塩味・酸味の5種類。南極にすむコウテイペンギンやアデリーペンギンは、極寒の環境下でこのうち甘味・苦味・うま味の受容遺伝子が働かなくなった可能性が高いという。何とも気の毒な話だと思うが、ペンギンからすれば余計なお世話だろうか▼スーパーマーケットの青果売り場に、今年も春の食材がたくさん並び始めた。菜の花、フキノトウ、タラの芽、セリ、ウド…。ほのかな甘味やうま味の中に、春の味を特徴付けるのは、やはり苦味だろう▼和食の世界では昔から、「春の皿には苦味を盛れ」と言うらしい。あの独特の苦味が、長い冬の間にたまった老廃物を排出して新陳代謝を活発化させ、体を目覚めさせるのだという。山の動物たちが雪解けを待ちわびて木々の新芽や山菜をむさぼり食うのを見ても、それは理にかなっているようだ▼五つの味覚がそろった舌に感謝しつつ、野山の土の香りがする春の恵みをたっぷりと味わいたい。

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