2017年8月23日水曜日

【中堅世代】それぞれの建設業・176

その国の事情は生活してみないと分からない
 ◇かの大国のインフラ事情は◇

 大手報道機関の記者として活躍する百田幸雄さん(仮名)。これまで国内で政治、行政、企業などを対象にした取材活動を幅広く展開してきた。ここ数年間、担当したのは国土交通省。建設業界に大きな影響を及ぼすさまざまな政策の取材に精力的に取り組んだ。

 この春の人事異動で取材フィールドが一気に広がった。米国への転勤だった。

 折しも米国では今年1月にトランプ政権が発足。大統領の一挙手一投足に世界中のメディアが注目している。とりわけ、トランプ氏がツイッターでつぶやくさまざまな事柄に対する見解や意見は、日本でもニュースとして大きく取り上げられることが少なくない。ツイッターなどのSNS(インターネット交流サイト)をフル活用して世論も動かそうとする新しいタイプのリーダーの誕生に、当の米国民たちはどう反応しているのだろうか。

 日本ではテレビなどを通じて、例えばニューヨークにあるトランプ・タワー前に集まった群衆が大統領の発言に異を唱える抗議活動を繰り広げるなど、「メディア受け」しやすい情報が届けられる。しかし、その国にいなければ、実際の経済や生活への影響を肌で感じることはできない-。そんな思いも抱いての新天地への赴任だった。

 国交省の取材を担当した数年間で、建設関連の行政機関や企業、専門のメディアなどに多くの人脈ができた。互いに情報交換をし合う間柄になった人も少なくない。

 米国へ赴任する直前に会ったそれらの人たちから、「米国のインフラ整備事情を現地から伝えてほしい」とお願いされた。国土が広大な米国では、人々の行き来や経済・産業活動などに道路や鉄道、空港などの交通機関をはじめとするインフラの整備が不可欠。トランプ大統領もインフラ整備には積極姿勢と伝えられていた。「インフラ建設がどのように行われているのか、その実態を見てみたい」。自身もそう考えていた。

 米国での取材は、政治、経済、生活、文化など取り上げる事柄も幅広い。先日は初めての出張を経験。普段拠点にしている東海岸側から西海岸側に飛行機で何時間もかけて移動した。日本と違い、同じ国内にもかかわらず時差もあり、国土の広大さを実感する。

 日本で慣れ親しんだ生活環境とは大きく異なるだけに、赴任以来、驚かされることばかり。しかし、それがかえって新鮮に映り、日々の取材活動にも生かされている。

 妻と中学生、小学生の2人の子どもを伴い、家族4人で赴任した。日本人学校に入った子どもたちは、まだ数カ月しかたっていないが、既に現地の生活に慣れ始めている。仕事が休みの日には家族と共にさまざまな場所を訪れ、日本の生活では知り得なかったことを体験している。数年後に日本に戻った時、子どもたちにとっては、世界を見てきた経験が大きな財産となっているだろうと思う。

 自身も、米国のインフラ整備の現状や米国民の考え方をじかに知ることができれば、将来、日本の公共事業のあり方を論じる上でも大いに参考になると考えている。

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