2017年8月25日金曜日

【周辺エリア巻き込む開発実現を】今治スタジアム実現へ報告書取りまとめ

 トップチームのJリーグ昇格にあわせて、1万5000人規模の複合型スマートスタジアムを建設する-。サッカー日本代表元監督の岡田武史氏がオーナーを務めるFC今治(愛媛県今治市)が実現を目指すプロジェクトの方向性や課題を示した報告書がまとまった。

 人を呼び込む機能と快適な観戦スタイルを提供する機能を組み合わせた「複合型スマートスタジアム」の新設と併せて、周辺エリアに宿泊施設やサービス付き高齢者住宅などを整備。「健康・スポーツ・教育」をキーワードに、スタジアムを中心としたエリア全体でにぎわいや収益を生み出す仕組みの実現を目指すという。

 検討に当たっては今治市やFC今治、民間企業、金融機関などで構成する協議会が事業モデル案や整備運営手法案などを議論した。

 報告書ではサッカー専用スタジアムを単体で整備した場合、複合機能を持たせた施設でも運営を黒字化するのは困難と指摘。スタジアムが提供可能な基本機能と周辺エリアで提供する拡張機能を組み合わせて、地域の活性化や課題可決につなげる方向性を打ち出した。

 スタジアムの整備は▽公共による整備運営▽PFI方式▽負担付き寄付方式-の3手法を比較検討した。自治体が整備と運営を担う従来手法は、マツダZoom-Zoomスタジアムのように指定管理者が納付金を支払う方式を採用しても「興行日数が限られているサッカースタジアムでの成立は難しい」とした。

 PFI方式を採用したミクニワールドスタジアム北九州(北九州市小倉北区)、負担付き寄付方式を導入した市立吹田サッカースタジアム(大阪府吹田市)の事例もメリット・デメリットを分析。その上で「事業候補地の立地条件や公共の関与度合い、タイムスケジュール、民間事業者候補の考え方などを踏まえ慎重に検討する」必要性を指摘した。

 施設整備に不可欠な資金調達は個人や企業からの寄付金、自治体やスタジアム運営事業者の資金拠出に加え、スタジアム内外のさまざまな施設(スタンドやスペース)を第三者に転貸する方法を検討。事業権対価や前払い賃料を施設整備費に充てるという仕組みの具体化を目指す案を打ち出した。

 スタジアムと周辺エリアの整備による経済波及効果は建設段階で約120億円、運営段階で毎年10億~20億円と試算。エリアマネジメントを徹底して交流人口の底上げを図れば、地域経済への貢献はさらに大きくなると見ている。

 FC今治らは今後、報告書をたたき台にスタジアム建設に向けた協力者や中核企業の選定、ソフト面でのビジネスモデルの実現可能性調査、施設整備の総事業費と資金調達目標の具体化、整備運営手法の確立などを進める。報告書は経済産業省の「魅力あるスタジアム・アリーナを核としたまちづくりに関する計画策定等支援事業」の検討成果として、デロイトトーマツコンサルティングが取りまとめた。

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