2017年8月3日木曜日

【技能教育リポート】職業能力開発総合大学校(東京都小平市)


 ◇ものづくり産業支える指導員育成◇

 高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営する職業能力開発総合大学校(東京都小平市、圓川隆夫校長)のミッションは、国家資格の職業訓練指導員を育てることだ。1961年の設立からこれまでに約8500人を輩出。卒業生の多くが全国の職業能力開発施設などで指導員として活躍しながら、日本のものづくり産業を支えている。

 職業能力開発促進法に基づいて設置されている同大学校では、ものづくりの現場に必要とされる知識や技能・技術を学ぶ。他の大学と比較した場合の最大の特色は、授業と実験・実習の時間数の圧倒的な多さにある。4年間の総合課程の授業時間は約5600時間。このうち、実験・実習には約3500時間と一般の工学系大学の3倍近い時間が費やされる。それだけに夏休みもわずか2週間と少ない。

 指導員資格の取得に向けて、2年間の長期養成課程も用意されている。日本で唯一、「生産技術」の学士が取得できる同大学校の総合課程を卒業していれば、訓練期間が1年免除されるのは、厳しいそのカリキュラムのためだ。

 総合課程の専攻は、機械、電気、電子情報、建築の四つ。このうち建築専攻では、木造、RC造、鋼構造といった各構造別の建築生産に加え、建築材料、環境、設計製図についても学ぶ。

 木造建築では、材料加工を1年次から習得し、組み立てや解体など、軸組み工法の基本的な施工方法を習得する。RC造についても、鉄筋組み立てから型枠、コンクリート打設という一連の作業を実物に近い大きさで実習し、技能資格で2級レベルに相当する技能を身に付けられるようにする。

 建築専攻の卒業生は、半数以上が指導員を目指して長期養成課程に進むが、4割は企業への就職や公務員、他の大学の大学院への就職という道を選ぶ。特に、各種構造別の建築生産をみっちりと学んでいるだけに、大手ゼネコンをはじめ名だたる企業からも引く手あまたで、多くの求人が寄せられる。

 今、同大学校で教育研究のテーマにしようとしているジャンルは「技能科学」。技能を科学として確立させ、見える化、体系化する。例えば卓越した技能者と素人の違い。職人の訓練への人工知能(AI)の利用。コンクリートの打音検査の科学的な把握等々。技能を学問の域に高めようと、圓川校長を中心とするプロジェクトで鋭意検討を進めている。

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