2020年3月31日火曜日

【回転窓】就職氷河期世代は作らない

行政機関や企業などは今日が年度末というところも多い。国や地方自治体が4月から翌年3月までの1年間を会計年度としたのは1884(明治17)年。当時の政府が財政破綻を回避するために予算の繰り上げなどを行った結果、今の会計年度が始まったという▼新たな年度のスタートに合わせて、4月1日付で人事異動を発令する企業は多い。今年は新型コロナウイルのまん延で海外を含め新しい赴任先に行けないケースもあると聞く▼新型コロナの感染拡大は景気にも暗い影を落とす。雇用環境悪化を危惧する声も高まる中で、本来であれば最盛期の新卒採用も困難な状況にある▼人材サービス各社の就職説明会は延期や中止が相次ぐ。インターネットを活用した説明会や面接なども行われているようだが、相対せずに就職・採用活動をするのは学生と企業にとって不安や苦労も大きいだろう▼バブル崩壊後の不況期に新卒を含め人材の採用を企業が絞った結果、十分な職業経験が積めない「就職氷河期世代」を生み出してしまった。事態収拾の糸口が見えない今こそ、即効性のある支援策の立案と実行が政府に求められている。

【首都圏の新たな水がめが完成】八ツ場ダム(群馬県長野原町)、4月1日から稼働開始

 国土交通省関東地方整備局が群馬県長野原町に建設していた「八ツ場ダム」が31日に完成する。

 建設構想の浮上から70年余り。約5320億円を投じて整備した新しい首都圏の水がめは、利根川下流に位置する地域の治水や利水に活用される。

 八ツ場ダムは利根川水系吾妻川の中流に位置する重力式コンクリートダムで、堤高116メートル、堤頂長290・8メートル。貯水池の総貯水容量は1億0750万立方メートルに達する。最大発電容量は1万1700キロワットを計画する。

 清水建設・鉄建建設・IHIインフラシステム異工種JVの施工で2015年2月に本体建設工事を開始。19年6月に堤体のコンクリート打設が完了し、同10月から試験湛水に入り堤体や貯水池周辺の安全を確認していた。

 国土交通省は運用開始に当たって竣工式を開催予定だったが、新型コロナウイルスの感染防止対策として延期する。

【2023年6月の開館目指す】鳥取市民体育館再整備PFI、合人社計画研究所ら設立のSPCと契約

 鳥取市は、BTO(建設・移管・運営)方式のPFIで取り組む「鳥取市民体育館再整備事業」について、公募型プロポーザルで選定した合人社計画研究所グループが設立した特別目的会社(SPC)「PFI鳥取市民体育館会社」と、25日付で事業契約を締結した。

 契約金額は54億9998万6479円。今後、設計・施工に着手し、2023年3月末の完成、同6月の開館を目指す。維持管理・運営期間は38年3月31日まで。

 SPCの構成企業は、合人社計画研究所(代表企業・事業マネジメント、維持管理業務等)、アーキテック、安藤ハザマ、こおげ建設、藤原組、美津濃、ミズノスポーツサービス。このほか、SPCへの出資を行わない協力企業として、昭和設計(協力企業)が参画している。

 同グループの提案は「暮らしにとけ込み、愛され続ける“My・Active・Home鳥取”」をコンセプトに掲げ、その実現へ向け▽地域との絆を重んじ、市民の豊かな暮らしと誇りを育むスポーツ・生活拠点▽豊かで長閑な風土への調和と気軽な日常利用を実現する快適・安全・安心な施設▽暮らしに身近な新たなアクティブフィールドを生み出す未来につなぐ事業▽市民のニーズ・市初のPFI事業を確実に具現化する盤石な体制-とすることを盛り込んだ。

 施設は、機能重視・シンプル・コンパクトを基本とし、体育館実績豊富な昭和設計と安藤ハザマが、地元企業と共同し、ミズノと設計会社でもある合人社の運営・維持管理ノウハウを計画上流から反映することで、気軽な日常利用の創出とLCC(ライフ・サイクル・コスト)低減を実現するとしている。

 建設地は吉成3の1の1(敷地面積1万6738平方メートル、建築面積4976平方メートル)。計画によると施設規模は延べ6874平方メートルを想定。施設要件としてアリーナはバスケットコート2面(2200平方メートル程度)を確保、天井高13メートル程度、観客席500席程度(固定式、可動式は問わない)、放送室などを整備。このほか、トレーニングルーム(250平方メートル程度)、キッズルーム、更衣室などトレーニング諸室、ウオーキング・ランニングコース、多目的スペース(100平方メートル程度)、事務・管理に関わる付帯施設、防災関連諸室、駐車場(240台以上)なども整備する。

 事業範囲は▽施設整備(事前調査業務、設計、解体撤去業務、建設工事、工事監理業務など)▽開業準備業務▽維持管理業務▽運営業務▽自由提案事業に関する業務。

【コンクリスラブの平滑性コンテストで1位に】清水建設JV、長根屋内スケート場で高品質施工を実現

プロジェクションマッピングでコンクリート表面の凸凹を可視化。凸部を即座に見つけて修正した
コンクリートスラブの平滑性を競う米企業主催のコンテスト「ゴールデン・トロウェル」で2月、清水建設JVが施工した「長根屋内スケート場」(青森県八戸市)が1位に輝いた。コンクリート表面の凹凸を可視化する清水建設のプロジェクションマッピングなどを導入することで、6350平方メートルのリンクに打設するコンクリートの平滑性をプラスマイナス2ミリ以内に抑えた。ゴールデン・トロウェルで日本企業が入賞したのは初めて。高い平滑性を実現した技術を取材した。

 ゴールデン・トロウェル賞を受賞した長根屋内スケート場は設計監理を山下設計が担当。建築工事は清水建設・穂積建設工業・石上建設JVが手掛けた。RC一部S造延べ2万6274平方メートルの規模で、2019年6月に完成した。

 ゴールデン・トロウェル賞は測定装置メーカーの米FACEが主催する。コンクリートスラブの平滑性を競うコンテストで、米国やブラジルなどの企業は受賞実績があるものの、これまでアジア企業の受賞実績はほとんどなかった。

 今回受賞で特に評価されたのはスケートリンクの大きさだ。スケートリンク部門の過去の受賞事例を見ると、規模はほとんどが1000~1500平方メートル程度。平滑性を確保する面積が増えるほど施工の難易度も高まるが、長根屋内スケート場の面積は6350平方メートルと、過去の受賞事例を大きく上回る。

 大規模な面積で高い平滑性を可能にした工夫の一つが、打設後のコンクリートをならす機械「トラススクリード」の活用だ。一般的にコンクリート表面を滑らかにするには職人が打設後の凹凸を見つけならす作業を繰り返す。これに対し、今回活用したトラススクリードは幅3メートルのユニットを6基連結させることで幅18メートルのならし作業を一度に実施。作業効率が大幅にアップし大規模面の施工を可能にした。

 トラススクリードを使ったならし作業中は常にタブレットで厚みが均一になっているかチェックした。トラススクリードは1ユニットで50キロの重さがあり、直線上に連結している中央部分ほど、機械の重みでたわみやすい。

 そのためユニットに設置したレーザーを使ってリアルタイムで厚みにむらがでていないかチェックした。厚みが1ミリずれるとユニットのジョイント部分の高さを調整し、凹凸を修正。これらの作業を2メートルごとに繰り返すことで高い平滑性を確保した。

 さらに平滑性の精度を上げるため、トラススクリードでならした後の表面を、クレーンでつり下げた3Dレーザースキャナー(LS)で上空からチェック。表面の凹凸を可視化し、これをプロジェクションマッピングとして硬化前のコンクリートに投影した。プロジェクションマッピングでは凸部が赤く色分け表示されるため、赤い部分を削り取ることでより滑らかな仕上がりを実現した。

 清水建設によると、コンクリート表面の仕上がりをチェックする目的でプロジェクションマッピングを導入したのは今回が初めて。3DLSでチェックした結果を効果的に職人に伝えることは難しい。凸部分の位置などが理解しやすく共有も容易なプロジェクションマッピングを採用した。表面の凹凸を正確に可視化できるため、不足している左官に代わる技術としての活用も期待できる。

 コンクリート表面の平滑性を求められる建物は、スケートリンクのほかに倉庫、精密機械を設置する研究機関などがある。清水建設は今回の技術がこれらの用途の建物にも有効としている。

2020年3月30日月曜日

【回転窓】ザハ・ハディドの新国立競技場

 英国の建築家ザハ・ハディド氏(1950~2016年)が亡くなって明日で5回目の命日。生前にデザインした建築が世界各地で誕生し、死去後にザハ事務所がコンペで取ったプロジェクトも進行中だ▼幾何学的な曲線、直線、鋭角が織り成す流動的でダイナミックな外観が特徴のザハ建築は時として物議をかもした。来年に開催は延期されたが、東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる国立競技場の当初案もその一つ▼世界からデザイン案を募る国際コンペで選ばれた完成イメージ図を見た誰もが、近未来的な流線形の大屋根に強いインパクトを受けた。だが総工費が大幅に膨らんだことに批判が集まり、15年7月に白紙撤回された▼当時、業界内では設計や施工の発注方法で注文合戦が繰り広げられ、日本全体でデザインやコストを巡る激論が巻き起こった。この騒動で新競技場建設プロジェクトが国民に近くなり、良いスタジアム、良いスポーツ文化を作ろうとの意識が高まっていったように感じた▼ザハ氏のデザイン案は実現しなかったが、新しい国立競技場を国民のものにした。そんな役割は果たしたのだろう。

【凜】東京都財務局建築保全部・太田由起子さん

◇挑戦を諦めず努力を◇

 東京都の管理職選考(種別B)に本年度、合格した。建築職で年3人ほどの狭き門。最近は女性の合格者も出ていなかった。建築構造の専門職としてキャリアを全うする道もあったが「挑戦しないと後悔する」との思いで数年かけて難関を突破。今後、より幅広い領域で責任ある立場を任されるとあり、「広い視野で都政に貢献していきたい」と決意を新たにする。

 大学を卒業した後はゼネコンで約10年、構造設計に従事した。出産を機に退職し、公務員に転じた中途採用組の一人だ。これまでは主に営繕業務を担当。「建築を通じ社会が抱える問題の解決に携われる」ことがやりがいの源泉という。

 現在は畜産関係の試験研究を担う青梅畜産センター(青梅市)の改築工事に当たる。鳥インフルエンザや豚熱といった感染症リスクが高まる中、最新鋭の施設が必要とされている。東京五輪に向けスピード感を持って進めた東京体育館(渋谷区)の改修工事も大変だった分、思い出深い。

 地道な努力は、いつか未来に生きてくると確信している。子どもが2歳だった入都直後、片道2時間の出先事務所に配属された。建築主事の資格を得ようと、電車の中でも休むことなく法令集を広げた。「子どもが小さいからと挑戦を諦めたらもったいない。やろうと思えば子育て中であってもスキルアップできる」。若手職員にもそう伝えていくつもりだ。

 (施設整備第一課課長代理〈建築担当〉、おおた・ゆきこ)

【やっぱり!マイ・ユニホーム!!】佐藤渡辺「作業着から制服へ」

 昨年7月、佐藤道路と渡辺組の合併で佐藤渡辺が発足した2005年以来14年ぶりに作業着をリニューアルした。「建設会社の作業着然」とした以前の作業着から、制服のようなデザインにイメージチェンジを図った。

 アスファルト合材で汚れやすい部分に汚れが目立ちにくい濃紺を配色したり、汗をかいても乾きやすい素材を採用したりと、道路舗装会社の働き方に対応した作業着となっている。

 リニューアルしたのは夏用と冬用のジャケットとシャツ。コーポレートカラーの青を基調とした清潔感のあるデザインが特徴だ。機能面は作業時の着心地にも配慮しており、夏の作業着には吸水・速乾機能のある素材を採用。汗をかいてもべたつかずに快適に作業できる。生地はしわになりにくく、アイロンがけなどといった日ごろの手入れが簡単という。

 リニューアルに携わった堀口正義総務部人事課長は「作業着から制服になったという印象が強く、会社のイメージも大きく変わったと感じる。気持ちを新たにして業務に取り組みたい」としている。今後は社員の要望に応じて部分的に改良を図っていく予定だ。

【駆け出しのころ】アジア航測取締役営業統括部長・大場明氏

 ◇自身の魅力と人間力を問う◇

 学生時代は明確な夢や目標がなく、父親が教員だったので何となく教育学部を選びました。「東京の大学に行けば有名人に会えるかも…」といった不純な動機で上京。当時何を考えていたか覚えていませんが、企業への就職活動はせずに大学を卒業しました。

 教員資格は持っていたので、地元で教員試験を受けましたが不合格。中学校などで常勤講師を2年間務めました。2年目の勤務先で校長先生と意見が食い違い衝突したこともあり、将来を見据えて別の道に進もうと考えました。

 アジア航測に入社したのは知人の紹介でした。営業マンとして働き出しましたが、思っていた営業職のイメージとは違っていました。定価がある商品販売とは異なり、取り扱う技術が文系の私には複雑怪奇で、興味もあまり持てません。それでも先輩たちから頼まれた業務をこなし、自分なりに一生懸命やっていたつもりでした。けれども半年が過ぎたころ、外回りの少なさをやる気のなさと見られ、会社から転職を勧められます。

 そんな時、「環境アセスメント」関連の業務に関心を持ち、文系の私でもなじめたので営業してみたところ、これがはまります。大きな金額の案件が受注でき会社人生の転機になりました。当時近寄り難かったカリスマ的な営業課長が一緒に営業先を回った際に私を高く評価してくれ、「十分できるから会社に残れ」と勇気づけてくれたのも大きかったです。

 駆け出しのころ、先輩に「営業マンは役者」と言われたのも強く覚えています。顧客の前で辛そうな顔をして嫌な雰囲気をつくらない。会社が提供する技術やサービスの良さは仕事を取る上で不可欠な要素です。けれども他社と圧倒的な差別化が図れないならば、最後は営業マンが好かれるかどうかで決まる。自分が「会社の商品」なのです。人と会って話をすること、人との巡り合わせが仕事を引き寄せてくれるのだと感じます。

 仕事が取れた時は安心感からホッとします。それ以上に、業務完了後の発注元からの「いい仕事をしてくれてありがとう」との言葉がうれしい。これがやりがいです。相手に喜んでもらえれば次の仕事につながる。トラブルが起きても乗り越えることで、相手との関係がより深まるケースも少なくありません。

 仕事では嫌なこともあります。自分も家族や会社、時にはライバル会社の営業マンなど周りの助けを借りながら、悩みや迷いを吹っ切ることができました。

 営業マンは人に会わなければ始まらない世界。いろいろな人と出会い、親交が深まっていく過程が面白い。興味を引きつける雑学も必要でしょう。優劣を決めるのは自身の魅力であり、人間力なのです。

入社2年目ころ、社員旅行の懇親会で
(おおば・あきら)1985年早稲田大学教育学部英語英文科卒、地元の中学校の常勤講師に。87年アジア航測入社。広島支店長や大阪支店長、首都圏営業部長、執行役員営業統括部長(現任)を経て2017年から現職。島根県出身、58歳。

2020年3月27日金曜日

【4棟総延べ56・7万㎡規模】うめきた2期開発(大阪市北区)、20年度下期に着工へ

プロジェクトの完成イメージ(2018年5月提案時)
三菱地所を代表とする9社連合が大阪駅北側(大阪市北区大深町)の「うめきた2期区域」に計画している超高層ビル群の建設工事が2020年度下期スタートする。25日開催の大阪市都市計画審議会で都市計画案が承認され、4月に都市計画決定される見通しとなった。超高層ビルは大きく4棟に分かれ、商業や業務、ホテル、住宅、国際集客・交流機能などが入る。総延べ床面積は約56万7000平方メートル。24年夏ごろの先行まちびらき、27年度の全体開業を目指す。

 2期地区は、先行開発事業として三菱地所などの企業連合が開発したグランフロント大阪の西側に隣接。基盤整備は都市再生機構による土地区画整理事業と防災公園街区整備事業、大阪市とJR西日本が行うJR東海道線支線地下化・新駅設置事業で構成し、着々と工事が進む。

 開発事業者は都市機構から土地(4・6ヘクタール)を取得した三菱地所、大阪ガス都市開発、オリックス不動産、関電不動産開発、積水ハウス、竹中工務店、阪急電鉄、三菱地所レジデンス、うめきた開発特定目的会社の9社連合。

 区域中央部に設置される都市公園(4・5ヘクタール)を挟んで北街区(約1・6ヘクタール)には、地下3階地上27階建て延べ約6万9200平方メートルの賃貸棟と、地下1階地上47階建て延べ約8万5000平方メートルの分譲棟(ハイグレード都市型住宅、約600戸)を建設する。賃貸棟では中層部に中核機能の新産業創出・産学官民交流拠点、高層部にライフスタイルホテルを配置。1・2階の低層部には中核機能やホテルと連携した商業機能(店舗面積約3000平方メートル)が入る予定だ。

 南街区(約3ヘクタール)には、地下3階地上39階建て延べ約32万平方メートルの賃貸棟と、地下2階地上51階建て延べ約9万3000平方メートルの分譲棟(ハイグレード都市型住宅、約600戸)を計画。賃貸棟は東西に分かれ、西棟には低層部に商業機能やMICE(国際的なイベント)施設、中高層部に基準階面積約4100平方メートルの大規模オフィスやスーパーラグジュアリーホテルが入る。

 東棟では低層部に商業機能や健康増進施設、中高層部に基準階面積約1500平方メートルの中規模オフィス、ビジネス・観光など幅広いニーズに応えるアップスケールホテルを設ける。

【施工は前田建設、事業費50億円】仙台空港、旅客ターミナルビルの大規模改修に着手

 仙台空港(宮城県名取市、岩沼市)を運営する仙台国際空港(岩井卓也社長)は26日、旅客ターミナルビルの2階と3階を中心に大規模なリニューアル工事を実施すると発表した。

 飲食や物販の店舗エリアを約2割増やし、保安検査場は5レーンから9レーンに増やして手続きに費やす時間の省力化を図る。増築棟も建設し、チェックインカウンターを拡張する。同日、工事の安全祈願祭を行い、2021年度下期の全面開業を目指す。事業費は約50億円。設計は日建設計、施工は前田建設が担当。

 同空港では16年7月に民間運営に移行後、1階到着フロアのリニューアルや駐車場の拡張などを進めたほか、18年10月にはピア棟を供用し、国内線専用の搭乗デッキを4カ所増設。18年度の国内、国際線を合わせた旅客数は361万人と前年度に比べ18万人増と順調に推移してきた。

 ただ、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、国際線の運航はほぼゼロに落ち込み、イベント開催の自粛要請や外出制限で国内線の旅客数も大幅に減少している。岩井社長は「新型コロナウイルスの感染拡大が終息すれば、国内線を中心に急速に航空需要が回復するだろう」と話し、リニューアルプロジェクトに着手することを説明。プロジェクトでは「Fast Travel」と「素晴らしい空港体験」をコンセプトに、最新の保安機器導入や店舗面積の拡大など空港機能を強化する。

 ターミナルビル(面積4万9180平方メートル)は全体の約2割に当たる9848平方メートルを改修し、新たに増築棟(1683平方メートル)を建てる。

 店舗エリアは2288平方メートルから2804平方メートルに広げ、保安検査場を通過後の店舗エリアは2013平方メートルと従来の10倍に増やす。国内、国際線の保安検査場を拡張し、2階と3階にある店舗エリアは保安検査場通過後に利用できるようにする。

 店舗エリアには東北の名産品や土産物をそろえ、フードコートやカフェを新設するなど買い物や飲食で搭乗までの時間を楽しめる。岩井社長は「今回のリニューアルで将来目標の旅客数550万人に向けた体制ができる」と話している。

【県らと官民探究会設立】モンテディオ山形、新スタジアム整備へ詳細計画議論

サッカーJリーグ・モンテディオ山形の新ホームスタジアム整備を担う共同出資会社「新スタジアム推進事業」(山形市、寒河江浩二社長)は、官民で整備計画の詳細を話し合う「山形スタジアム探究会」を設立する。山形県の参加が決まっているほか、27日から新スタジアムの立地を目指す県内市町村に参加を呼び掛ける。時期は未定だが、議論の結果を踏まえ整備事業者の公募手続きを始める予定だ。

 共同出資会社の事務を受託しているモンテディオ山形の担当者によると、山形スタジアム探求会は自治体や地元企業など官民の関係者で構成。今後、定期的に集まり、合弁会社が昨年3月に策定した基本計画をベースに建設地や施設規模、建設費などを話し合う。整備事業者の公募手続きに向けた準備も進める。議論の結果をまとめる時期は未定。

 基本計画によると、新スタジアム整備は官民連携で実施。事業費約72・5億~113億円を投じ、最大1・5万~2万人程度を収容するサッカー専用スタジアムを整備する。客席すべてを覆う屋根を設ける。建設地は明記しておらず複数の交通アクセス手段があることを条件とする。2019年度中に市町村や民間企業などを対象に整備事業者の公募手続きを始めるとしていた。

 共同出資会社は山形スタジアム探究会による詳細計画の議論開始に伴い、整備事業者の公募手続きを20年度以降に延期。供用開始時期については、引き続き整備基本計画で明記していた25年を目指す。

 基本計画によると、山形県天童市にある現在のホームスタジアム「NDソフトスタジアム山形」は老朽化や客席を覆う屋根の未設置、陸上競技場との併設に伴う臨場感の不足などが課題になっている。

2020年3月25日水曜日

【大手企業がタッグ、プラットフォーム構築へ】トヨタとNTT、スマートシティー分野で業務・資本提携

 トヨタ自動車とNTTは24日、スマートシティー実現の基盤となる「スマートシティプラットフォーム」を共同で構築・運営するため、業務・資本提携を締結したと発表した。

 トヨタが静岡県裾野市で計画している実証都市「Woven City(ウーブン・シティ)」と東京都港区の品川駅前NTT街区の一部で先行実施する。その後、連鎖的に他都市への展開を図る。

 両社は約2000億円ずつ出資し長期的に連携を図る。プラットフォームは、スマートシティーのデータマネジメントや情報流通、これらに基づく「デジタルツイン」などで構成。住民や企業、地方自治体などに対する価値提供の基盤として位置付ける。他都市のスマートシティーと連携する基盤となることを目指す。

 同日に東京都内で会見したNTTの澤田純社長(写真㊨)は「スマートシティーの社会基盤を一緒に作り上げ、東冨士から世界へ広げていきたい」と述べた。トヨタの豊田章男社長は「日本を背負うという気概を持ち、多くの仲間を巻き込みながらプラットフォームをつくりたい。日本のプレゼンスを高めることにもつながる」と語った。

【7月豪雨が単独豪雨被害で過去最大】18年の水害被害額、1兆4050億円に

2018年に全国で発生した洪水などの水害の被害総額(確報値)が約1兆4050億円だったことが国土交通省の調査で明らかになった。

 過去10年で最大、1961年の統計開始以来3番目の水準となった。うち、大半を占める18年7月豪雨による被害額約1兆2150億円は、単一の豪雨による被害額として統計以来最大となった。全壊や流出といった被害を受けた建物は約6万3000棟に上った。

 被害総額を押し上げた主な水害は▽18年7月豪雨▽台風24号(約580億円)▽同21号(約410億円)。都道府県別の被害総額は、18年7月豪雨で甚大な被害を受けた岡山(約4209億円)、広島(約3388億円)、愛媛(約1697億円)の順に多かった。

【こちら人事部】竹中土木/熱意や気概・信念を大事に、風通しの良さが魅力

 竹中工務店グループの一員として1941年に創業し、2020年に79周年を迎える竹中土木。ダムやトンネル、橋梁といった大型構造物から、宅地造成や上下水道の整備まで暮らしに関わりの深い基盤の整備に取り組んでいる。

 時代のニーズや社会変化にも柔軟に対応。近年は、土壌浄化工事、風力発電施設の建設など「環境に調和する作品づくり」にも力を入れている。

 会社のアピールポイントの一つは土木専業という点。土木のエキスパートがそろう環境で、土木分野を極めることができる。管理本部人事部の加山貴敏氏は「竹中工務店グループとしての安定性も強みだ。竹中工務店との協業事業も多く、ダイナミックな作品(構造物)造りに携わることができる」と話す。「正道を踏み信義を重んじ堅実なるべし」という社是を実践する堅実な風土が基盤にある。

 加山氏は、求める人材に必要な素養に▽熱意▽前向き▽自主性▽ビジョン▽信頼-の五つを挙げる。「モノ造り」が好きで意欲を持って取り組めることや、好奇心とチャレンジ精神を持ち、柔軟な考えを持つことなどが大切と指摘。自分から率先して課題解決に取り組む自主性や、将来の夢や高い目標を持っていること、コミュニケーション能力と仲間を思いやる心も、ゼネコンで活躍するには重要という。

 「現時点でこれらをすべて満たしている方はもちろんいないと思う。『将来このようになりたい!』という熱意や気概、信念を持つ方にぜひお会いしたい」と加山氏。対話型の面接を重視し、一人一人が持つ素晴らしい個性に着目しながら選考しているという。

 採用過程では、定期的な学校訪問や合同企業説明会への参加、人事担当者と学校OB・OGによる各学校へのあいさつなどを展開。関東と東海、関西の各地区ではインターンシップ(就業体験)を行っている。

 「自ら考え行動できる人材が、真のプロフェッショナルとして時代に適合した新たな価値を創出し未来を担う」という考えの下、継続的な人材育成に注力している。新入社員としての1年間は「教育期間」と位置付けている。入社後1カ月間は、経営理念・経営戦略やコンプライアンスなどに関する導入研修の後、施工管理・安全管理研修や、PC基本スキル・CAD研修などの実務研修を実施。その後、作業所などへ配属して職場研修となる。

 5カ月ごとの配置異動を行いながら、年齢の近い先輩が業務の基礎について指導・教育。新入社員教育担当による面談を1年間で3回実施し、「心身における健康面をしっかりサポートする」(加山氏)。

 3、6、10年目の研修も行っており、同期社員との交流を通して「自分の力量や立場」などを理解・認識させることで、相互啓発を促し、自己研さん・成長意欲を養ってもらう。加山氏は「社員一人一人の個性を大切にし、自由に意見を言い合える風通しの良さが魅力。皆さんの夢や可能性を竹中土木で共に実現しよう」と呼び掛ける。

 《新卒採用概要》

 【新卒採用者数】 男性38人(うち技術系32)、女性4人(同2人)(19年度実績)
 【3年以内離職率】11・4%(17年度新卒)
 
 【平均勤続年数】 男性20・3年、女性11・9年(20年1月時点)

 【平均年齢】   45・6歳(同)

【調整力と技術力で困難乗り越える】現場を担うー赤坂迎賓館前公園施設新築工事(東京都港区)


新施設は支柱のない、らせん階段も見どころの一つだ
◇特殊な場所、高い施工精度必要に◇

 国宝「迎賓館赤坂離宮」(東京都港区)の正面に隣接する公園内に参観者の憩い施設が誕生する。迎賓館と公園の景観を考慮し、施設の大半は地下に設けられる。建設地は鉄道トンネルに近接するなど、極めて高い施工精度が求められる局面がいくつもあった。昨年は迎賓館での国の行事が多く、現場閉所せざるを得ない日も。こうした中、受発注者が共に完成に向けて全力を傾けた。

 日本初の西洋風宮殿建築となる迎賓館は、2016年4月に通年での一般公開が始まり、1日平均約4500人が訪れる人気の観光スポットとなっている。だが休憩スペースやトイレが不足。館内や庭園を散策した後に立ち寄る飲食店が周辺に少なく、休憩施設の整備が課題となっていた。

 内閣府の支出委任を受けた国土交通省官房官庁営繕部は、迎賓館参観者の利便性や満足度の向上を図るため、休憩スペース、カフェなどを提供するとともに、周辺エリアの観光情報を発信する施設を計画した。基本・実施設計は柳澤孝彦+TAK建築研究所が担当。基本コンセプトがまとまった後、柳澤氏が亡くなった。建築家・柳澤孝彦の遺作ともいえる建築だ。

 「赤坂迎賓館前公園施設(仮称)新築(18)建築その他工事」を手掛けているのが鉄建建設。建設地は迎賓館の正門前にある若葉東公園の西側のエリア2534平方メートル。施設の規模はRC一部S造地下1階地上1階建て延べ1169平方メートル。建築や電気・機械設備のほか、造園や外構なども整備する。

憩いの場となる水盤
三角形の公園内に、迎賓館前の円形噴水と呼応した円形が特徴の施設となる。直径18メートルの円形を掘り下げ、地下1階に直径9メートルの水盤を設ける。国交省官房官庁営繕部整備課特別整備室の柊平健室長は「光の庭(水盤)が印象的な建築。この庭を囲んでテーブルやいす、カフェなどを配置して憩いの空間を生み出したい」と話す。

 迎賓館と周囲の木々の調和を考慮して施設を地下化するが、JR中央線と総武線のトンネルに近接している敷地となっている。施設とトンネルの距離は最も近いところで5メートル。昭和初期にできたトンネルで道床に砕石や砂利などを用いたバラスト軌道ではないため、「設計段階からJR東日本と協議し、トンネルが動く限界値を2ミリに設定した。新幹線よりも厳しい値だ」(柊平室長)。

 この難工事を担当した鉄建建設東京支店赤坂見附建築作業所の宮田美岳所長は「前工事(埋蔵文化財調査)の山留め杭と、地下外壁を一体化して山崩れしないようにし、トンネルへの影響を最小限に抑えた」と振り返る。通常では不要だが、鉄道に影響を与えないよう地盤改良も実施。夏季の暑さで山留めの鋼材が1~2ミリ伸びたものの、掘削の影響で山留めが動くことはなく、トンネルの原位置をきちんと保った。

 迎賓館前の工事には特殊事情も多い。現場周囲に観光バスが10台止まっている日も少なくないという。新規入場教育に加え安全教育協議会などを通じて「風紀を乱さず、第三者に迷惑をかけない。交通災害を絶対に起こさない」(宮田所長)。こうしたことを常に徹底してきた。

 昨年は天皇陛下の即位や米国大統領の来日など、迎賓館での国の行事が多数催され、現場を閉所する日も多かった。さらに自然災害が相次ぎ、台風15号では千葉県の鉄筋業者の加工場が被災。停電が解消するまで鉄筋が入ってこなかった。今年に入り新型コロナウイルスの影響も受けた。使用する予定だった中国産の石材の輸入がストップ。宮田所長は「急きょ国内中を探し、何とか在庫を確保できた」と胸をなで下ろす。

柊平室長㊧と宮田所長
官庁営繕部の職員が内閣府やJR東など関係機関との調整に奔走しながら、スムーズな現場運営を後押し。鉄建建設の技術者、専門工事業の技能者がスキルを発揮し、難しい施工や厳しい工程を乗り切り、26日に引き渡しを迎える。

 今後カフェなどの準備を経て、4月下旬にオープンする。昨年8月に日本建設業連合会(日建連)の「けんせつ小町活躍現場見学会」の現場として、小学1~6年7人を受け入れた。宮田所長は「この建物が完成したら、また見に来てほしい。夏の思い出になっていればうれしい」と笑みがこぼれる。

 柊平室長は施設を整備した目的通りに利用されることで「迎賓館の思い出と合わせて、この施設で休憩したという思い出を作ってほしい」と語る。地域住民にも開放する施設となり「地域の皆さんの憩いの場としても活用していただきたい」と迎賓館の新たな構成要素に期待を寄せる。

2020年3月24日火曜日

【回転窓】人力車と自動車と

京都や浅草などの観光地で見掛ける人力車。観光名所をコースで遊覧し、車夫がガイド役も務めてくれるそう。乗車するには少し勇気が必要な気もするが、レトロな街並みが残る場所では風情があってなかなか良い▼大きな車輪に1人掛けか2人掛けの台座。明治から大正、昭和初期まで一般的な移動手段として用いられていた。馬車や鉄道、自動車の普及によって次第に姿を消していったが、1870(明治3)年のきょう3月24日に東京府(現東京都)が人力車の営業を初めて許可したそうだ▼時代の流れとともにより速く、より多く、より安全にと交通手段も変化した。現在は当たり前になっている自動車も時間がたてば過去のものになるのかもしれない▼人に代わって危険を察知して停車したり、運転が自動になったりなど日進月歩で技術は進化を遂げている。便利になるのは結構なのだが、行き着く先は一体どこなのか、そして自分が流れに乗っていけるのか不安に思うこともある▼効率性を追求し、時間に追われる日々。ゆとりを持ってと言っても難しいのだが、あえて非効率を選択する余裕がたまには欲しくなる。

【防火設備導入や国産材の活用求める】首里城再建、士会連合会が提言発表

 日本建築士会連合会(士会連合会、三井所清典会長)は23日、2019年10月の火災で焼失した首里城(那覇市)の再建に向けた提言を発表した。

 200~300年先にも残る建物にするため、実効性のある防火設備の導入を提案。延焼防止のための加工や防火シャッターなどの設置も求めた。材料には耐久性の高い国産木材の活用が重要とした。

 提言は▽防災▽木材調達▽職人手配-の三つが柱。火災の早期発見と対応のため、煙・炎感知器やスプリンクラー、屋内消火栓を分かりやすい場所に設置するよう提案した。正殿の2階や3階の床を防火仕様にすることで延焼防止を図ることや、消防署への自動通報装置の必要性も訴えた。

 木材調達では、1992年の正殿再建時に使用したタイワンヒノキは伐採が禁止されているため、耐久性に優れた国産のスギやヒノキの心材を使うことを求めた。長大材として一本まるごとスギやヒノキを使うのではなく、接ぎ手などの工法を柔軟に取り入れる案を示した。RC造で再建された北殿や南殿は国産のCLT(直交集成板)を使うのも選択肢の一つとした。

 前回の再建では福井県から呼び寄せた職人だけでなく、沖縄県の職人も作業に加わった。地元に伝わる特殊構法があるのに加え、長期的なメンテナンスには人材育成が不可欠となる。今回も本州と地元の職人が組んで作業に当たるよう強調。賃金も仕事内容に見合った形態に変えるよう訴えた。

【施工は清水建設JV、収容3・4万人に】横浜スタジアム(横浜市中区)、増築・改修工事が完了

レフト側スタンドに建設されたウイング席
横浜DeNAベイスターズと球場の運営などを担う横浜スタジアム(横浜市中区、藤井謙宗社長)が進めていた、横浜スタジアム(横浜市中区)の増築・改修工事が2月末に完了した。昨年3月に竣工したライト側スタンドに続き、レフト側の「ウイング席」が完成。計3万4046人の収容が可能になった。23日に報道関係者向けの内覧会を開きレフト側ウイング席や、回遊デッキなどを公開した。

 横浜スタジアムは2020年東京五輪の野球・ソフトボール競技のメイン会場としても使用される。五輪の開催や施設の老朽化などを見据え、17年11月から増築・改修工事に着手した。設計を清水建設が手掛け、施工は清水建設・馬淵建設・大洋建設JV、CM(コンストラクションマネジメント)業務を山下PMCが担当した。

ウイング席最上段からの眺め
客席は合計6000席を増設。昨年3月にライト側スタンドのウイング席3500席と、バックネット裏の増設工事が完了した。同日公開されたレフト側ウイング席の数は2812席。ビジターサイドである点などから、ホームサイドのライト側ウイング席より少ない増席数の配分になっている。天候によっては富士山を望むことも可能という。

球場の外周部に設置したYデッキ
2階部分には、球場外周を囲む1周600メートルの回遊デッキ「Yデッキ」を整備した。試合日以外は誰もが利用可能で、球場が立地する横浜公園内の緑を楽しみながら、散策することができる。デッキの外野スタンド部分には、球場内を見渡すことが可能な「DREAM GATE STAND」を新たに設置した。

 清水建設商業・複合施設設計部の平賀直樹グループ長は「工期内に無事工事を終えることができて良かった。来場者にも喜んでもらえているようでうれしい」と語った。

2020年3月23日月曜日

【回転窓】ガーベラに込めた思い

近所の幼稚園で卒園式が開かれた。「悩みましたが小学生になる子供たちの節目。なんとか開催しようと決めました」。感染症の拡大で卒園式を中止する園がある中で、挙式に踏み切った理由を園長が説明していた▼参加は親だけ、在園児とふれあう恒例の時間は短縮。参加者も式次第も少なかったが、先生からのメッセージ動画を流したり色とりどりの花の鉢植えを並べたりと、園児を明るく送り出そうとする厚意が伝わってきた▼別れと出会いが重なる時期ながら、延期や中止せざるを得ない場は枚挙にいとまない。飾り花や贈答用の花束の出荷がひどく低迷し、花き業界に深刻な影響が出ていると聞いた▼冬の手入れを念入りに施して春の出荷に備えてきた花き農家は少なくない。「花の展示を増やし、市民へも呼び掛けることとします」。ある政令市の市長はインターネット交流サイト(SNS)でつぶやいた▼話を戻すと、幼稚園がたくさん飾ったのは「希望」が花言葉の一つのガーベラ。花言葉にあやかって、来年のこの時期には気持ちを込めた花束を安心して手渡せるよう感染症の一日も早い収束を願わずにいられない。

【「ラ コリーナ近江八幡 草屋根」、卓越した芸術作品】藤森照信氏が2019年度芸術院賞を受賞

 建築家・建築史家の藤森照信氏(東京大学名誉教授、東京都江戸東京博物館館長)が、2019年度日本芸術院賞に選ばれた。日本芸術院(黒井千次院長)が19日に発表した。

 藤森氏が設計した「ラ コリーナ近江八幡 草屋根」(滋賀県近江八幡市)を卓越した芸術作品とし、顕著な業績があると認められた。授賞式は6月15日、東京都台東区の日本芸術院会館で開かれる。

 草屋根はラ コリーナ近江八幡のメインショップ。屋根一面が芝に覆われ、自然そのままに皮を剥いだだけのクリの木が軒を支える。自然素材以外のガラスや金属の部品も手作業で加工されている。

【施工は大林組、10月完成へ】栃木シティFC、栃木市内にサッカー専用スタジアム建設

 サッカー関東1部リーグの「栃木シティフットボールクラブ(FC)」(栃木県栃木市、大栗崇司社長)は、栃木県栃木市の岩舟総合運動公園(三谷1038の1)内に建設するサッカー専用スタジアムの施工者を大林組に決めた。10月中の完成を目指す。設計はプランテック総合計画事務所が担当した。

 建設予定地は同公園内の多目的広場。栃木シティFCは日本フットボールリーグ(JFL)に昇格した上で、将来的なJリーグ参入を目指している。参入条件を満たすには新スタジアムの整備が必要になる。

 専用スタジアムには5129人分程度の観客席を設ける。J3に参入する場合は「5000席以上の確保」が要件の一つになる。ピッチは天然芝。観客席との距離は5メートルとし臨場感を確保する。2階建てのクラブハウスなども設ける予定だ。

 専用スタジアムの設計と工事はクラブのスポンサーである日本理化工業所(東京都品川区、大栗崇司社長)が発注した。建設費は10億~15億円を見込む。栃木シティFCの創立は2014年。現在は栃木市総合運動公園陸上競技場(川原田760)をホームスタジアムにしている。

 栃木市は1月17日の市議会で新スタジアムの計画を説明。建設予定地の使用許可を与える予定だ。市は建設費を負担しないものの、地域活性化の観点から敷地の無償利用などを検討しており、栃木シティFCと協議している。

【凜】八千代エンジニヤリング経営企画本部・藤井菜津子さん

 ◇幸せを感じる広報業務◇

 自分が手掛けた媒体で多くの人に会社を知ってもらいたい-。在籍する広報部門で社内報、記者発表資料などの企画や作成を担当している。文章で物事を伝える難しさを痛感しながら、社内外から反響があった時に「幸せを感じる」とほほ笑む。

 大学では経済学を専攻。学んだ知識を生かしたいと思い、金融機関や損保会社などに狙いを定め就職活動に入った。そうした中、3年生の時にインターンシップ(就業体験)で訪れた八千代エンジニヤリング。「アットホームな雰囲気」が魅力的で、ちゅうちょせずに入社を決めた。社会人生活も間もなく4年目を終える。

 2018年7月に10カ年の長期経営方針を策定した同社。会社の知名度を内外に発信する「ブランディング活動」としてホームページのリニューアルが企画され、担当を任された。

 閲覧のしやすさにこだわり、発注者ごとに専用ページも設けた。社名をあしらった紙飛行機のロゴには「未来に挑戦し続ける」という思いを込めた。苦労したかいもあり「反応は上々」と胸を張る。

 広報業務は社内外を結びつける重要なポスト。仕事で培ったさまざまな経験を生かし、「パンフレットや広告などを自分の手で作る」ことが夢。ロゴに込めた思いと自身の将来を重ね合わせながら、仕事と正面から向き合う。

 (経営企画部秘書・広報課、ふじい・なつこ)

【中堅世代】それぞれの建設業・250

存廃に揺れる原発も多い
◇原発で働く意味とは◇

 「正直なところ、葛藤はある」。電力会社で働く高岡統さん(仮名)は自身の仕事をこう話す。担当しているのは原子力発電所の維持管理。仕事に真摯(しんし)に向き合いながらも「自分がここで働いている意味は一体何なのか」と自問する日々を過ごしている。

 小さいころから手先が器用で、機械の組み立てやDIYに没頭していた。地元の大学に進んで機械工学を専攻し、大学院にも通った。就職活動では「大学で学んだことを生かすことができるし、地元に残れるという漠然とした考え」から、地元の電力会社を志望した。

 入社後に配属されたのが原発の維持管理を担う部署だった。家族や親戚たちに伝えると「いい顔をしなかった」。当時は東京電力福島第1原発事故が発生して日が浅く、被害状況を伝える報道が続いていた。心配や不安の声が多かったが「なんとかなるだろう」とあまり気に留めなかった。

 仕事の都合で原発がある地域に引っ越すと、原発廃止を強く訴える住民たちがいることを知った。プラカードや横断幕を掲げ、多くの住民が集まって行進するのを目の当たりにして衝撃を受けた。すれ違いざまいきなり罵声を浴びたことも。これまで楽観的に構えていたが、「自分は必要とされているのだろうか」と次第に思い悩むようになった。

 心にわだかまりを抱えながら数年が経過したころ、停電を伴う大規模災害に見舞われた。部署を飛び越え社員総出で復旧作業などに追われた。「今までで一番しんどい時期」。

 業務に忙殺される中、インターネットのニュースサイトで目にしたのは避難所の状況を伝える記事だった。いつ家に帰れるかも分からずただ途方に暮れている多くの人。「自分たちがやるしかないんだ」。決意を新たにした瞬間だった。

  災害対応を経て「生まれ育った地元を支えているという責任感のようなもの」を持つようになった。住む人が誰しも必要とする電力の供給に携わることは「他の業種ではなかなか味わうことができないやりがいがある」と考えている。

 一方で、自分が担当する原発に対する懸念の声が「いまだあることも事実」。原発が本当に必要なのかと聞かれたら「正直分からないし、答えられる自信がない」。それでもさまざまな意見を重く受け止めながら、事故などを絶対に発生させないよう「維持管理を担うプロフェッショナルとして、一生懸命仕事に取り組むしかない」。

 一昨年に結婚し、来月に第1子が誕生する予定だ。「公私ともに考えることがいっぱい」だが、「将来子どもに『パパはどんなお仕事をしているの』と聞かれた時に、自慢できるような答えを見つけ出したい」と照れくさそうに笑う。

【やっぱり!マイ・ユニホーム!!】中日本高速道路会社「現場事情に対応した機能・デザインに」

 2019年4月に新たな通年用の作業服の運用を開始した。女性の着用に配慮したりフルハーネス型の安全帯を装着した場合を想定したりと、現場事情に対応した機能やデザインを取り入れている。開発に携わった総務部総務・秘書課の神谷隆洋氏は「会社のシンボルとして、長く社員やお客さまに愛着を持ってもらいたい」と思いを語る。

 通常時に目立ち過ぎない色の反射テープを付けることで夜間の視認性を確保。熱中症対策として生地は通気性の高い素材を採用した。フルハーネス型安全帯を装着してもポケットを使えるよう、ズボンのポケットには脚部分にポケットのある「カーゴパンツポケット」を設けた。

 デザイン面はブルゾンのメインカラーをグレイッシュブルーとし、コーポレートカラーのオレンジを効果的に配置。ズボンには汚れが目立ちにくい濃紺を採用した。女性用シャツには隠しボタンを設けることで、動いても下着が見えないよう配慮した。

 現場の社員からは「速乾性が良く、着用頻度の多い現場でも着回せて便利。反射材があるので夜間も安全に帰れる」と好評だ。

【駆け出しのころ】清水建設常務執行役員東京支店長・石水功一氏

 ◇一期一会のつながり大切に◇

 ものづくりに昔から興味がありました。何より幼いころから父親が清水建設の技術者として建築現場で働いていた姿を見てきました。建物そのものよりも大勢の人たちが苦楽を共にし、ものづくりに一生懸命になっている現場の雰囲気に強い憧れがありました。

 入社後の初任地は名古屋支店。1カ月ほどの研修を経て学校関連の現場に配属されました。新人ながらもいろんなことをやらせてもらえ、多くのことを学ぶことができました。おそらく「こいつはこれぐらい失敗するだろう」と考えていた上司に温かく見守られていたのだと思います。

 近くに同期が9人ぐらいいたので、施工系のメンバーで毎週のように集まって飲んでいました。ストレス解消も兼ね、各自が担当する現場の情報を共有できたのもいい勉強になりました。名古屋の7年半の現場勤務で知り合った顧客とは異動先でも関連工事に関わり、ものづくりの縁を感じます。

 その後、東京に異動するとやはり工事規模の大きさに圧倒されました。地方で10億円程度の工事現場の所長を任されましたが、都内の数百億円規模の大現場では自分の立場も下から数えた方が早かったです。

 入社16年目に組合の執行委員長を引き受けます。建設業全体が厳しい時代でしたが、社内のすべての組織の人たちに会え、自社の全体像を知る大きな転機となりました。それまで自分が属する建築技術系や支店単位でしか見えてなかった会社のことが、一気に視野も人脈も広がり、貴重な経験をさせてもらいました。

 所長として最後の現場となった新本社の建設では、その人脈が生きます。安全や環境性能などを追求し、先進的な取り組みを可能にする新技術を開発するため、いろんな部署から各分野のエキスパートが集まりました。個々の部署だけではできないことも、コラボレーションすると無理だと考えていたものが意外と実現できるものです。

 先輩に教えられたことの一つに、「人のコミュニケーション能力は5人程度」があります。自分の考えを理解してくれる身近な5人との関係を大切にし、その5人がまた下の5人に自分の考えを伝えていくことで、大きな組織も一定の方向にまとまる。現場は人で動いています。現場が終わるとそこに集まったメンバーはバラバラになるから、一期一会の人とのつながりも大切にしてきました。

 若い人たちにはいろんなことに興味を持ってほしい。ものづくりのイメージも昔とだいぶ変わり、視野を広げれば自分の可能性も広がります。私も立場は違えど街のシンボル的な建物を一つでも多く残せるように頑張ります。

入社1年目。最初に配属された現場事務所で
(いしみず・こういち)1984年早稲田大学大学院理工学研究科建設工学専攻修了、清水建設入社。新本社建設所長や執行役員広島支店長などを経て2017年4月から現職。東京都出身、61歳。

2020年3月19日木曜日

【回転窓】刹那の出来事

冬の星座を代表するオリオン座。中央に位置する三つ星と周囲の星々を結ぶと、ギリシャ神話の登場人物を形作る。明るい星が集まっているため、子供のころの天体観測の定番となっている▼オリオンの右肩に輝く赤い星・ベテルギウスが昨秋から非常に暗く見えるようになった。もともと明るさが変わる星だが、今回はいつもより暗くなり、超新星爆発の前兆かなどとの臆測を呼んだ。冬の夜空に暗くなったベテルギウスを探し、目をこらした方も多かろう▼米大学などの研究チームは今回の減光が温度の低下ではなく、ちりで明るい表面が一時的に隠されたからだと先週までに発表。先月後半には再び明るくなり始めたという▼ベテルギウスの爆発が近いとの見方は打ち消されたが、既に寿命が近づいて赤く膨張した段階にある。約1000万年の寿命とされる年老いた星は今後10万年以内には爆発を起こすとの予想も▼宇宙の時間軸の前では地球上での出来事もほんの一瞬にすぎない。目に見えず、地上で急速に拡散する微細なものに振り回されすぎず、たまには頭上の星々を眺めるゆとりを持つことも必要なのではないか。

【明治モダンの面影残す】明治記念館本館(東京都港区)が都指定有形文化財に

 東京都港区にある明治記念館本館が「東京都指定有形文化財(建造物)」に指定された。

 赤坂仮皇居御会食所として1881(明治14)年10月に完成し、1918(大正7)年の2度目の移築で現在の場所に。関東大震災や第2次大戦にも耐えた建物は瓦屋根やふすまの取っ手、くぎ隠し、シャンデリアなどから明治モダンの面影を感じることができる。

 所在地は元赤坂2の201の1(明治記念館内)。明治神宮が所有する。木造平屋、建築面積539m2。結婚披露宴や企業・団体のパーティー、レセプションの会場として利用されている。
1918年の移築当時は憲法記念館呼ばれていた

【2022年度供用開始目指す】出島架橋整備(宮城県女川町)、上部工施工計画などまとまる

 宮城県女川町の離島、出島(いずしま)と本土を結ぶ「出島架橋」の詳細設計がまとまった。

 設計方針などを検討する「町道女川出島線出島架橋技術検討委員会」(委員長・中沢正利東北学院大学工学部教授)の第6回会合が18日、県庁で開かれ、上部工の施工計画や点検用付属物の設置計画などを了承。主構造の合理化や維持管理計画など詳細設計に必要な項目の検討をすべて終えた。2020年度から本体工事に着手し、22年度の供用を目指す。

 委員会では施工計画や付属物の詳細設計などについて議論。上部工は大部分を海上からクレーンで架設する。架設順は▽アンカーフレームとアーチリブ第1節(陸上架設)▽海上ベント(海上架設)▽アーチリブ側径間大ブロック(同)▽補剛桁側大ブロック(同)▽中央径間の大ブロック-とし、最後に海上のベントを撤去する。中央径間の架設は工場製作した部材を女川港に海上輸送して組み立て、大型クレーンでえい航して一括架設を行う。施工時は転倒防止用のアウトリガーを中央径間大ブロックの両端に取り付ける。

 下部工については、起点側、終点側それぞれの橋台部に仮桟橋を設置し、橋脚を施工した後、橋台工事に取り掛かる。橋台の初期ひび割れを防ぐための対策も報告し、コンクリートは7段階で打ち込み、水平方向に継ぎ目を設けるなどの基本方針を示した。

 付属物計画では支承回りを点検する通路を橋脚の上部に設置するほか、各所に点検用の通路や窓を設ける。支承を交換する際の手順も説明し、橋面部にクレーンを配置して補剛桁をジャッキアップし、新しい支承を取り付ける。

 出島架橋の橋梁形式は鋼中路式アーチ橋。橋長は352メートル。車道部(幅5・5メートル)を含む全幅員は6・5メートル。本土と出島の陸地にそれぞれ2基ずつ下部工を設置する。橋梁本体の詳細設計と施工はJFEエンジニアリング・橋本店・東日本コンクリートJVが担当。完成後は女川町が橋を管理する。

【阪神高速大和川線、3月29日に全線開通】損傷制御型鋼製セグメントで巨大地震のエネルギー吸収

 阪神高速道路会社は29日に開通する「阪神高速6号大和川線(鉄砲~三宅西出入口)」の報道関係者向け内覧会を17日に開いた。延長7・7キロの大半が地下構造。シールド区間では巨大な地震エネルギーを吸収する「損傷制御型鋼製セグメント」や、すべり台を使った西日本初の避難形式を採用するなど、先進の技術を駆使している。

 大和川線は、堺市と大阪府松原市を東西に結ぶ延長9・7キロ。西側は4号湾岸線、東側は14号松原線と接続する。片側2車線の4車線で、約7割がトンネル(開削約2・9キロ、シールド約3・9キロ)になる。松原線につながる三宅西出入り口付近0・6キロは2013年3月、湾岸線に接続する三宝JCT~鉄砲出入口間1・4キロは17年1月に先行開通した。

 今回の開通区間は残る鉄砲(堺市堺区鉄砲町)と三宅西(松原市三宅西)を結ぶ7・7キロ。府道大阪高石線に接続する常磐出入り口と府道大阪狭山線に接続する天美出入り口を設ける。

 本線シールド区間では関西最大級(外径12・47メートル)のシールドマシンを採用。約2キロに及ぶ長距離を併設離隔(約1メートル)で構築した。一部区間が上町断層系と交差するため、トンネル軸方向のひずみ集中箇所(東行き3断面、西行き3断面)には新開発の「損傷制御型鋼製セグメント」を採用した。地震発生時にトンネル全体が壊れないよう、部分的に損傷を制御する仕組みで、巨大な地震エネルギーを吸収する。

 開削区間では常磐出口ランプの一部に矩形シールドを使用。本線部を含めて開削工法を予定していたが、生活道路が使えなくなるなど周辺への影響を考慮し、シールド工法に変更した。矩形シールドマシン単体で道路トンネルを構築する事例は国内初となる。

 大部分がトンネル構造になるため、拡声放送装置やジェットファン、水噴霧設備といった防災設備を充実させている。万が一の場合は開削とシールド区間で避難経路が異なる。シールド区間には道路下部空間に避難通路が設けられ、すべり台を使って通路に移動できる西日本初の形式を採用。開削区間では非常口からトンネル外側に避難できる。

 全線開通により、西名阪自動車道などから神戸方面へ環状線を通らずに湾岸線に行くことができるなど、渋滞を避けたルート選択が可能になる。堺市の堺浜~松原JCT間の所要時間は一般道経由で約45分かかるが、大和川線を使うと約16分に短縮。周辺幹線道路の渋滞緩和にも役立つと期待されている。

【広島市、新スタジアム整備で関連業務発注】中央公園サッカースタジアム整備で事業者募集・選定支援業務プロポ公告

広島市は18日、「中央公園サッカースタジアム(仮称)整備等に係る事業者の募集・選定支援業務」の委託先を選定する公募型プロポーザルを公告した。25日まで参加申請を、4月9日まで企画提案を受け付ける。業務費用は8290万円以内。履行期間は2021年3月31日。

 参加資格は単体企業または2~3者で構成するJV。単体企業とJV構成員のうち1者以上は、公共施設で基本計画に基づくデザインビルド(DB=設計・施工一括)発注に関わる発注者支援業務(アドバイザリー業務など)の実績を1件以上有することなど。

 市では中央公園広場にサッカースタジアムを建設するとともに、にぎわい機能の導入などにより中央公園広場全体が一体的に機能するような広場エリア再整備を計画。サッカースタジアムの建設はDB方式を基本とし、管理・運営の実施方針に応じてDBO(設計・建設・運営)方式も視野に入れている。広場エリアの再整備は「Park-PFI」など民間事業者の資金・ノウハウを活用した方式の採用を予定している。

 サッカースタジアム(ペデストリアンデッキなどを含む)の整備等事業者の募集支援業務では、▽事業者募集の与条件の策定を含む前提条件の精査など▽概算事業費の精査と予定価格などの算定支援▽入札方式の検討-を行うほか、▽入札資料案の作成▽要求水準書案の作成▽審査基準書案の作成▽基本協定書案、事業契約書案の作成▽公表資料に対する説明会の実施支援、応募予定者からの質疑への対応と回答書案の作成▽応募予定者との対話(サウンディング型市場調査など)の支援▽モニタリング方法の検討-などを行う。

 広場エリアの再整備等事業者の募集支援業務では、▽前提条件(事業者募集の与条件の策定を含む)の精査など▽概算事業費の精査と予定価格などの算定支援▽事業者募集資料の作成など支援▽中央公園広場全体の事業者募集方式などの検討▽事業者の選定手続きと提案審査支援▽契約締結支援-などを行う。

 8月ごろをめどに事業者募集方式などを固め、10月の企画提案審査、21年3月の契約締結を想定している。

2020年3月18日水曜日

【回転窓】予算執行への対応を

新型コロナウイルスの感染は瞬く間に全世界へ広がった。各国とも感染拡大を防ごうと懸命な対策が進む。一方で経済への影響も懸念され、景気対策を打ち出す国も増えている▼トランプ米大統領は先週、感染拡大を防ぐため欧州から米国への渡航禁止以外に、中小企業向けの融資拡充などに充てるため500億ドル(約5兆2千億円)規模の財政措置を米議会に求めると発表した▼国内でもインバウンド(訪日外国人旅行者)の減少やイベントの中止、学校の臨時休校などで、中小企業を中心に資金繰りが悪化している。安倍晋三首相も先週末「一気呵成(かせい)にこれまでにない発想で思い切った措置」を講じると述べ、大型経済対策に意欲を示した▼多くの国民が感染症の拡大と景気悪化に対する不安を抱いている。財政出動で景気を下支えするのは当然の流れだろう。防災・減災対策などの公共事業費の増額も考えられる▼人材不足によって公共事業の不調・不落が増えているという記事を一部報道で目にした。予算は増額されたが、消化できないという事態は避けなければならない。建設業界を挙げて対応してほしい。

【提携紙ピックアップ】セイズン(越)/開発事業の遅延防ぐ政令公布

 入札法の詳細を定めた政令25/2020/ND-CPが、2月に首相の承認を受けた。政令では問題の要因とされる各種法令の重複などを整理。開発プロジェクトの遅延や中断といったトラブルを防ぎ、不動産市場の活性化につながると期待されている。

 承認された政令は投資事業者の選定で新たな項目を加えた。土地収用や補償が完了後、速やかに事業が開始できるようにした。事業者や入札に関わった弁護士、監督行政側の責任を明確化することで、プロジェクトの大きなボトルネックとなっている土地取得の遅延を防ぐ狙いだ。

セイ・ズン、3月8日)

【総延べ17・5万㎡、2024年開業目指す】ミャンマー・ヤンゴン市での複合開発、鹿島とJOINとの共同事業に

 鹿島は2017年に着手したミャンマー・ヤンゴン市での複合開発事業を、海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN、東京都千代田区、波多野琢磨社長)との共同事業とすることに合意した。

 日本企業や海外のパートナーと共同して事業を実施するJOINと連携することで、政府間の枠組みをより強固にし事業の安定実施を図る。複合開発ビルは2024年度の開業を目指す。

 JOINの事業参画に当たり、国土交通省は事業への約57億円の出資と最大137億円の債務保証を認可した。複合開発事業は鹿島のアジア開発事業統括会社であるカジマ・デベロップメント傘下のカジマ・ヤンキンPPPが事業主体となる。

 70年間のBOT(建設・運営・移管)事業で、ヤンキン地区にオフィスやホテル、長期滞在者用ホテル、商業施設で構成する総延べ17.5万m2の大型複合施設を建設する。プロジェクトを通じ鹿島の設計やエンジニアリング、施工技術、不動産開発、環境、安全などのノウハウ移転も目指す。

【1930年完成の閘門、復活目指す】名古屋市、松重閘門(中川区)を再生へ

 名古屋市は、水運時代に堀川と中川運河を結ぶ水路調整で活躍した「松重閘門」(中川区山王1)の再生に乗りだす。2020年度に耐震化調査、周辺の魅力向上策を検討する。現在は使われなくなった機能の復活も視野に入れる。

 江戸時代初期に名古屋城築造の資材運搬のために掘られた堀川と、1932年に開通した中川運河は、船による貨物輸送が盛んだった60年代初めまで名古屋の産業発展に貢献してきた。特に、名古屋港と旧国鉄笹島貨物駅間約8キロを結ぶ中川運河は、水運の要として活躍し「東洋一の運河」と言われた。松重閘門は、両河川の水位差約2メートルを調整するために建設され、1930年に完成した。

 46年間活躍してきた閘門だが、貨物輸送が船から自動車に代わり、役目を終えて1976年に閉鎖された。ただ、水門昇降用の釣り合い錘を収容するために設けられた2基1組、高さ約21メートルの優美な尖塔(せんとう)は保存され、1993年には市の都市景観重要建築物に指定された。

 現在、閘門周辺の水路は埋め立てられ、一部が公園になっている。だが訪れる人は少なく、近代遺産が観光資源として十分活用されていないのが現状。このため市は、堀川や中川運河の整備、観光船運航の充実と併せ、閘門の再生を図ることにした。耐震化などの調査では、閘門としての機能復活も検討する。両河川は、市内中心部の貴重な水辺空間であり、閘門の復活を沿川の活性化につなげる考えだ。

2020年3月17日火曜日

【回転窓】桜をめでて春を感じる

雪交じりの冷たい雨が降った14日午後、東京都千代田区の靖国神社にあるソメイヨシノの標準木が開花した▼全国で一番乗りとなる桜の開花。気象庁によると、1953年に統計を取り始めてから東京では最も早い開花で、平年より12日、昨年に比べて7日早かった。記録的な暖冬もあって2002年と13年に記録した3月16日を2日更新した▼東京に続いて早い開花が予想されているのは名古屋の19日。今週末には大阪や高知、福岡でもつぼみがほころび、春の便りが届けられるそう。月末には仙台などまで桜前線が北上するようだ▼慶長3(1598)年に豊臣秀吉が京都の醍醐寺で開いた盛大な花見。約1300人が招待されたといわれる「醍醐の花見」をきっかけに庶民へも花見が広がり、春の恒例行事になったといわれる。天下統一を果たした秀吉はどのような思いだったのか▼ソメイヨシノは開花後、1週間から10日ほどで満開になる。〈扇にて 酒くむかげや ちる桜〉(松尾芭蕉)。今年は桜の木の下で宴会というわけにはいかないが、それでも愛らしいピンクの花を見て春の訪れを感じる気持ちは大切にしたい。

【総額620億円、工期は36カ月】大成建設、スリランカで空港ターミナル工事受注

 大成建設は16日、スリランカ空港公社が計画する「バンダラナイケ国際空港改善事業」のうち、旅客ターミナルビルの建設を含む工事を受注したと発表した。受注総額は約620億円。工期は36カ月を見込む。12日に契約した。

 工事名称は「バンダラナイケ国際空港改善事業フェーズ2(パッケージA)」。工事場所は西部州ガンパハ県カトゥナーヤカ市のバンダラナイケ国際空港。同空港は年間旅客取扱数を1500万人規模に拡大するため、運輸ネットワークの強化などを目的とした施設改善工事が進む。大成建設が受注した工事では4階建ての旅客ターミナルビルの新築、高架橋の建設、その他付帯施設整備を行う。設計は日本空港コンサルタンツ・日本工営JVが担当した。

 バンダラナイケ国際空港は、大成建設が2007年に増築・改修工事を施工して以来、空路での物流・旅客輸送で同国の拠点となっている。近年は観光客数の増加などを背景に、旅客ターミナルの取り扱い能力がキャパシティーを超え、ターミナル拡張が喫緊の課題となっていた。

【MM21に2万人収容アリーナ】Kアリーナプロジェクト新築(横浜市西区)、鹿島で8月にも着工

ケン・コーポレーションは横浜市西区のみなとみらい(MM)21地区で計画しているアリーナ・ホテルなど複合施設の施工者を鹿島に決め、8月にも着工する。

 設計は梓設計・国建・鹿島が担当している。2万人を収容する国内最大級の音楽専用アリーナをはじめ、ホテルやオフィスなどで構成する総延べ12万平方メートル規模の複合施設。2023年10月末の完成を目指す。

 計画名称は「Kアリーナプロジェクト新築工事」。所在地は西区みなとみらい6の2の2ほかのMM21地区60・61街区。敷地面積は3万1793平方メートル。建築面積は2万7600平方メートル。建物は28階建て延べ11万9300平方メートル(うち容積算定外3000平方メートル)。用途は観覧場、ホテル、オフィス、駐車場。

 横浜市が60・61街区の進出事業者を公募し、17年11月に同社を選定した。同事業は19年2月、国土交通省の都市再生特別措置法に基づく民間都市再生事業計画に認定されている。

【施工は東亜建設工業とピーエス三菱】泉陽興業、MM21地区ロープウエー(横浜市)整備に着手

 遊園地の企画や建設、経営などを手掛ける泉陽興業(大阪市浪速区、山田勇作社長)は、横浜市西区のみなとみらい(MM)21地区に整備するロープウエー「YOKOHAMA AIR CABIN(仮称)」の建設工事に着手した。

 設計・監理は山下設計、施工は支柱などの海上工事を東亜建設工業、2カ所の駅舎工事をピーエス三菱が施工する。ルートはJR京浜東北根岸線の桜木町駅東口駅前広場と新港ふ頭の運河パークを結ぶ延長約630メートル。2021年3月末の完成を予定する。完成すれば国内初の常設都市型ロープウエーになるという。

 YOKOHAMA AIR CABINは横浜市が17年10月に公募した「まちを楽しむ多彩な交通の充実」で採用された提案の一つ。横浜都心臨海部に新たな交通ネットワークを形成するとともに、移動自体を楽しむことと新たな景観づくりを目指す。同社と市は19年12月にロープウエー建設事業の実施協定を締結している。

 計画によると、桜木町駅東口駅前広場から新港ふ頭の運河パークまでのルートは汽車道沿いの海上で、停留所は桜木町駅前(S造2階建て、ピロティ形式)と運河パーク(S造2階建て)の2カ所。支柱は地上2基(高さ約10メートル)と海上3基(高さ約40メートル)。ゴンドラは乗車定員8人で36基(全基車いす対応)構成を計画している。営業時間と料金などは未定。

 周辺景観や夜間照明などに配慮したデザインコンセプトは、周辺施設との調和を重視しながら横浜の都市文化を継承した夜間景観の創出を目指すとしている。照明計画は世界的な照明デザイナー・石井幹子さんが監修する。