2020年3月16日月曜日

駆け出しのころ/建設技術研究所代表取締役副社長執行役員・寺井和弘氏

 ◇尻込みせず積極的に提案を◇

 学生時代は土木という世界をまったく意識していませんでした。当時は水質汚染などの公害問題が深刻化しており、環境分野のことを学び、公害をなんとかしたいという思いが強かったです。水処理メーカーなどに就職した同級生が多かったですが、担当の先生には建設コンサルタント会社を数社紹介されました。

 その中で挙げられた一つが建設技術研究所。建設コンサルタントがどういった業態で、建設生産システムのどの部分を担っているのかも分からず、企業名から研究的な業務をしているのかと思っていました。

 入社後は大阪支社に配属。当時はお世辞にも先輩から手取り足取り、一から懇切丁寧に教えてもらうような感じではありませんでした。ある自治体から受けた調査業務の報告書を届けに行った際、先方の担当部署の関係者が顔をそろえる中で、新人ながら調査結果をいきなり説明することになり、肝を冷やしたのを覚えています。

 河川関係の部署で水環境の仕事を中心に任せてもらえたのは、学生時代に学んだことが生かせてよかったです。自分が提案した新しいやり方も採用されるなど、比較的自由に業務を任せてもらえました。

 今では環境分野は重要課題の一つであり、経営戦略の柱に位置付ける企業も多いですが、当時は環境関連の人材ということで重宝がられました。外注していた実験などの関連業務も、事務所の外に実験室を作って内製化しました。若手だからと尻込みせず、どんどん提案していけば、自分のやりたい仕事ができるんだと思ったのを覚えています。

 自分だけではやれる範囲が限られ、能力にも限界があります。河川浄化施設の整備プロジェクトでは計画立案以外に設計ができる人材も必要になります。独りよがりにならず、適材適所でチームを組んでプロジェクトに当たる重要性も学びました。

 国や地域が一体となって水環境の改善に取り組む「清流ルネッサンス」も思い出深いプロジェクトの一つ。環境汚染の発生源や要因を解析し、できる対策を具体化していきます。日本の湖で最大の面積と貯水量を誇る琵琶湖の取り組みでは、水質実験センターの立ち上げから携わりました。

 若手にもいろんな場面で積極的に提案してもらいたい。採用されたらやりがいを感じるし、だめでも改善して再提案すればいい。提案する際は相手の要望の裏にある事情などを把握し、提案の方向性を合わせることも重要です。

 自由にやらせて育つ人や密着指導が必要な人など、若手の育て方も見極めが大切。先輩や上司も若手に教えることで学べることがあります。

新入社員のころ、会社のチームで参加した野球大会で
(東京本社長、てらい・かずひろ)1980年大阪大学大学院工学研究科環境工学専攻修士課程修了、建設技術研究所入社。管理本部長や大阪本社長などを経て2019年から現職。福岡県出身、64歳。

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