2020年3月23日月曜日

【駆け出しのころ】清水建設常務執行役員東京支店長・石水功一氏

 ◇一期一会のつながり大切に◇

 ものづくりに昔から興味がありました。何より幼いころから父親が清水建設の技術者として建築現場で働いていた姿を見てきました。建物そのものよりも大勢の人たちが苦楽を共にし、ものづくりに一生懸命になっている現場の雰囲気に強い憧れがありました。

 入社後の初任地は名古屋支店。1カ月ほどの研修を経て学校関連の現場に配属されました。新人ながらもいろんなことをやらせてもらえ、多くのことを学ぶことができました。おそらく「こいつはこれぐらい失敗するだろう」と考えていた上司に温かく見守られていたのだと思います。

 近くに同期が9人ぐらいいたので、施工系のメンバーで毎週のように集まって飲んでいました。ストレス解消も兼ね、各自が担当する現場の情報を共有できたのもいい勉強になりました。名古屋の7年半の現場勤務で知り合った顧客とは異動先でも関連工事に関わり、ものづくりの縁を感じます。

 その後、東京に異動するとやはり工事規模の大きさに圧倒されました。地方で10億円程度の工事現場の所長を任されましたが、都内の数百億円規模の大現場では自分の立場も下から数えた方が早かったです。

 入社16年目に組合の執行委員長を引き受けます。建設業全体が厳しい時代でしたが、社内のすべての組織の人たちに会え、自社の全体像を知る大きな転機となりました。それまで自分が属する建築技術系や支店単位でしか見えてなかった会社のことが、一気に視野も人脈も広がり、貴重な経験をさせてもらいました。

 所長として最後の現場となった新本社の建設では、その人脈が生きます。安全や環境性能などを追求し、先進的な取り組みを可能にする新技術を開発するため、いろんな部署から各分野のエキスパートが集まりました。個々の部署だけではできないことも、コラボレーションすると無理だと考えていたものが意外と実現できるものです。

 先輩に教えられたことの一つに、「人のコミュニケーション能力は5人程度」があります。自分の考えを理解してくれる身近な5人との関係を大切にし、その5人がまた下の5人に自分の考えを伝えていくことで、大きな組織も一定の方向にまとまる。現場は人で動いています。現場が終わるとそこに集まったメンバーはバラバラになるから、一期一会の人とのつながりも大切にしてきました。

 若い人たちにはいろんなことに興味を持ってほしい。ものづくりのイメージも昔とだいぶ変わり、視野を広げれば自分の可能性も広がります。私も立場は違えど街のシンボル的な建物を一つでも多く残せるように頑張ります。

入社1年目。最初に配属された現場事務所で
(いしみず・こういち)1984年早稲田大学大学院理工学研究科建設工学専攻修了、清水建設入社。新本社建設所長や執行役員広島支店長などを経て2017年4月から現職。東京都出身、61歳。

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