プロジェクションマッピングでコンクリート表面の凸凹を可視化。凸部を即座に見つけて修正した |
ゴールデン・トロウェル賞を受賞した長根屋内スケート場は設計監理を山下設計が担当。建築工事は清水建設・穂積建設工業・石上建設JVが手掛けた。RC一部S造延べ2万6274平方メートルの規模で、2019年6月に完成した。
ゴールデン・トロウェル賞は測定装置メーカーの米FACEが主催する。コンクリートスラブの平滑性を競うコンテストで、米国やブラジルなどの企業は受賞実績があるものの、これまでアジア企業の受賞実績はほとんどなかった。
今回受賞で特に評価されたのはスケートリンクの大きさだ。スケートリンク部門の過去の受賞事例を見ると、規模はほとんどが1000~1500平方メートル程度。平滑性を確保する面積が増えるほど施工の難易度も高まるが、長根屋内スケート場の面積は6350平方メートルと、過去の受賞事例を大きく上回る。
大規模な面積で高い平滑性を可能にした工夫の一つが、打設後のコンクリートをならす機械「トラススクリード」の活用だ。一般的にコンクリート表面を滑らかにするには職人が打設後の凹凸を見つけならす作業を繰り返す。これに対し、今回活用したトラススクリードは幅3メートルのユニットを6基連結させることで幅18メートルのならし作業を一度に実施。作業効率が大幅にアップし大規模面の施工を可能にした。
トラススクリードを使ったならし作業中は常にタブレットで厚みが均一になっているかチェックした。トラススクリードは1ユニットで50キロの重さがあり、直線上に連結している中央部分ほど、機械の重みでたわみやすい。
そのためユニットに設置したレーザーを使ってリアルタイムで厚みにむらがでていないかチェックした。厚みが1ミリずれるとユニットのジョイント部分の高さを調整し、凹凸を修正。これらの作業を2メートルごとに繰り返すことで高い平滑性を確保した。
さらに平滑性の精度を上げるため、トラススクリードでならした後の表面を、クレーンでつり下げた3Dレーザースキャナー(LS)で上空からチェック。表面の凹凸を可視化し、これをプロジェクションマッピングとして硬化前のコンクリートに投影した。プロジェクションマッピングでは凸部が赤く色分け表示されるため、赤い部分を削り取ることでより滑らかな仕上がりを実現した。
清水建設によると、コンクリート表面の仕上がりをチェックする目的でプロジェクションマッピングを導入したのは今回が初めて。3DLSでチェックした結果を効果的に職人に伝えることは難しい。凸部分の位置などが理解しやすく共有も容易なプロジェクションマッピングを採用した。表面の凹凸を正確に可視化できるため、不足している左官に代わる技術としての活用も期待できる。
コンクリート表面の平滑性を求められる建物は、スケートリンクのほかに倉庫、精密機械を設置する研究機関などがある。清水建設は今回の技術がこれらの用途の建物にも有効としている。
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