2020年3月11日水曜日

【東日本大震災9年】エイブル(福島県大熊町)・佐藤順英社長に聞く「地元企業の取り組みと課題は」

 ◇地元企業のネットワークを再構築◇

 プラントの建設・保守などを手掛けるエイブル(福島県大熊町、佐藤順英社長)。東日本大震災で起きた福島第1原発事故の対応に地元の協力会社として従事しながら、被災地の復旧・復興の歩みを見てきた。佐藤社長は「震災から9年が経過し、自分としても被災地の企業としても落ち着いた気持ちになれてきた」と現在の心境を明かす。地元企業の取り組みと福島の課題を聞いた。

 --震災から9年になる。

 「震災当時は道路がぐちゃぐちゃだった。『復興は無理だな』と思ったが、インフラが直り、復旧が進んだ。福島第1原発は、歩く場所さえないほど津波の被害を受けた。すぐには片付かなかったが復旧は着実に進んだ。振り返るとあっという間のように感じる」

 「燃料デブリがあり、放射線量の高い場所もあるが、国や重電メーカー、ゼネコンらが技術力や計画力を発揮してきた。大和魂のようなものを感じる。混乱した中で自分たちがどうなるか不安だった。ここで仕事をすることで地域を良くして、子孫にふるさとを残す。構内の作業に従事する世代が代わっても廃炉の意義を伝えていかねばならない」

 --被災地での活動は。

 「廃炉作業では排気筒の解体などでロボット技術を駆使している。新しく入った人にも知恵を出してもらい、工夫を重ねてきた。被ばくが続けば作業をする人がいなくなってしまうので、遠隔操作のための装置などを必死に作ろうとしてきた。木質バイオマス発電をはじめ再生可能エネルギー事業も行っている。原発事故で地域のそれまでの雇用に変化がある。構内の作業から戻った人が働く場所を整えておく必要もあるためだ」

 --課題をどう見ているか。

 「双葉町、大熊町などで街づくりが進んでいる。地元企業なのでお役に立てることがあれば貢献し、地域を盛り上げたい。大熊町は(交付金活用の農業復興事業として)イチゴの素晴らしい栽培施設ができた。地域が意見を出す独自の創意工夫が必要になっていると思う」

 「住みたくなるふるさとにしないといけないが、長く避難せざるを得ず、戻るのが難しくなっている人もいる。被災地は計画的な復興が求められている。我々は地域の会社。地元出身の社員が多く、廃社した会社の社員も受け入れている。復興と地域のために、みんなが連携して課題を共有し、達成感を得ながら活動しようと考えられるようになってきた」

 --被災地の企業の将来をどう考えているか。

 「街があって、原発ができた。廃炉と街づくりも一体と考えている。技術、知見を生かし、魅力ある街にしたい。地域の企業が行える仕事はたくさんある。技術力のある地元企業がアイデアを出し、コラボレーションすれば、活躍できる場面は多くある。地元の企業が活躍できる環境が必要で、地域のネットワークを再構築し、組合のような組織を整えたい」

 「異常気象や新型コロナウイルスなどリスクが増えている。健康や農業などを含めて地域で力強い街づくりができる組織体ができるといい。地域の課題を克服する勉強の場にもなるだろう。地域の企業の幹部を集めて議論を続けている。中小企業が潤えば、雇用が守られ、日本の経済が発展していくと考えている」。

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