東証の株式市場再編で4月4日から上場企業の市場区分が大幅に変わる。11日時点で、3777社の上場企業のうち1841社がプライム市場を選択。日本取引所グループ(JPX)の新市場区分検索システムで建設業に分類される企業では88社がプライム市場に移行する。プライム市場は、従来の1部に比べてより高いガバナンス(統治)が必要となる。東証は、企業価値向上への新たなスタートラインとしており、各企業の具体的な取り組みがより求められる。
「成長に向けて果敢に挑戦する企業と、それらを投資によって支えるという好循環を形成することこそが目指すゴールだ。選択結果の公表は、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けた長い道のりのスタートラインだ」。東証の山道裕己社長は、東京・日本橋兜町の東証アローズでこう訴えた。
今回の再編では従来の1部や2部、マザーズを▽プライム▽スタンダード▽グロース-の3市場に変更する。プライム市場は世界経済をリードしていく企業のための市場と設定。流通株式時価総額100億円以上や、流通株式比率35%以上などが求められる。より高いガバナンス水準を備え、投資家との建設的な対話の実践や持続的な成長に向けた積極的な取り組みが期待される。市場再編と並行してコーポレートガバナンスコードも改定された。プライム市場では、3分の1以上の独立社外取締役選任や、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)または同等の国際的枠組みに基づく気候変動開示の質と量の充実など一段高い原則が適用される。
3月期決算会社は、移行後に開催される株主総会が終わった7月ころに、改訂コードに基づくコーポレートガバナンス報告書を提出する流れとなる。実施の有無や実施しない場合にはその理由を説明する「コンプライ・オア・エクスプレイン」の開示を見据えて、事業ポートフォリオの積極的な見直しや親子上場の解消などの動きも進む。
プライム市場への移行を選択しているものの、基準に適合していない企業は296社あった。今回の市場再編では、上場維持基準適合に向けた計画書を作成して、同計画書に基づく進捗(しんちょく)状況の開示を行うことを条件に、経過措置として緩和された基準が適用される。経過措置の終了時期は未定。
適合できていない理由を見ると、流通株式時価総額が217社で最も多く、1日平均売買代金は84社、流通株式比率が36社だった。流通株式時価総額はマーケットからの評価に委ねられるため、正攻法で企業価値を高めていくほかない。流通株式時価総額の適合に向けた計画期間は多くが2~5年を想定している。
建設産業関連では松井建設や大末建設、イチケン、四電工、朝日工業社、駒井ハルテック、オオバ、ジェコスらが同計画書を開示済みだ。収益力強化や成長分野への投資による企業価値向上、DX(デジタルトランスフォーメーション)による収益性改善、IR活動の活性化などの取り組みが挙げられている。
スタンダード市場は、一定の時価総額を持ち、基本的なガバナンス水準を備えつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けが対象。企業活動を通じた地域経済の活性化や国内の雇用拡大などが期待されている。建設業に分類される企業は62社だった。
全体で見ると、1部上場会社のうち344社が、最適な市場区分としてスタンダードを選んだ。建設産業関連では、明豊ファシリティワークスや錢高組、佐田建設、ナカノフドー建設、富士ピー・エス、北野建設、植木組、日本基礎技術、巴コーポレーション、三谷セキサン、エーアンドエーマテリアル、東洋シヤッター、三洋工業、ERIホールディングス、丸紅建材リース、いであらが、1部からスタンダード市場への移行を選択。理由には、現在の事業規模や、プライム市場の上場維持基準への非適合などが挙げられた。
新たな挑戦を重ねていくベンチャーらを対象としたグロース市場にも、建設業分類から7社が移行する。
山道社長は、今回の選択結果を「上場会社の企業価値向上に向けた決意表明」と表現し、投資家や市場関係者らに「上場会社の変化に注目してほしい」と呼び掛けた。新たな市場区分で成長戦略をどう描いていくのか。各社の挑戦が試されることになる。
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