2022年1月26日水曜日

【駆け出しのころ】伊藤組土建常務取締役土木本部長・中村暁彦氏

 ◇先を見越した準備が重要◇

 子どもの頃からプラモデルや木工作をよく作っていました。高校は普通科に進みましたが、その頃から将来はものづくりの仕事に就きたいと考えていました。大学進学時は土木と建築で迷いましたが、道路や橋など大型構造物を造りたいと思い、土木の道に進みました。卒業後は建設会社に就職しようと決めていましたが、地元の札幌から離れたくないという気持ちもありました。故郷の活性化に貢献できるものを造りたいという思いをかなえるため、札幌が本社の伊藤組土建に入社しました。

 初めて配属されたのは富良野郊外のダム現場でした。入社して間もない私は当然、ダムのことも土木の仕事も分かりません。毎日のように怒られ、何もできない自分自身に腹を立てることもしばしばでした。

 今の若者はつらいと感じるでしょうが、当時の私はそれ以上に早く仕事を覚えて一人前になりたいという気持ちが強くありました。先輩の叱咤(しった)激励は「裏を返せば私を早く一人前にしたいという愛情なんだ」とプラスに受け止め、とにかく一生懸命働きました。自分より経験豊富な協力会社の方や作業員の方と積極的にコミュニケーションし、多くを学ばせてもらいました。2年目から2年間担当した新千歳空港滑走路の新設工事を含め、最初の3年間はがむしゃらに仕事をしたと覚えています。

 札幌以外の道内地域の現場は宿舎に泊まり込みます。当時の宿舎は2人部屋が中心で、食事も所長を筆頭に全員そろって食べていました。今の若者は嫌がるでしょうが、食事しながらお酒を飲んでいると自然に会話が弾み、現場で聞きにくい話もスムーズに聞けます。当時の私にはありがたく感じる機会でした。

 若手の頃、どの現場でも所長や先輩に言われたことがあります。それは「現場をスムーズに動かすには事前の準備が一番重要」ということです。特に都市土木は最初の仮設計画が重要と教えられました。

 私も40代前半で本格的に所長として仕事をするようになってから、部下には「コストが上がったとしてもその後の生産性が高まり工期も短くなるなら、仮設計画にコストをかける価値がある」と話していました。そういう考えを持ち、先々を見越して現場を進めなければ、全体の管理はできないと思います。

 建設業は経験工学の部分が非常に大きく、経験しないと身に付かない側面があります。「なんとか良い品質のものを造りたい」と気持ちを込めて仕事をすると、成果品に気持ちがきちんと反映されるのです。そうした経験を繰り返していくうちに、より良いものが造れるようになると思います。仕事もスポーツなどと同じで、努力してうまくなればなるほど、やる気が出てくるものです。頑張っていればきっと面白くなる。若い人たちにはそうした気持ちを大切にして仕事と向き合ってほしいと願っています。

入社2年目、新千歳空港滑走路工事の現場を背景に

 (なかむら・あきひこ)1982年北海学園大学工学部土木工学科卒、伊藤組土建入社。執行役員土木本部長、常務執行役員土木本部長などを歴任し、20年6月から現職。北海道出身、63歳。

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