16社によるロボット分野での連携が始まった (建設RXコンソーシアム提供) |
コロナ禍で冷え込んだ民間の設備投資は回復基調にあるものの、21年はゼネコン各社が利益の確保に苦戦した。コロナ禍以前からの懸念事項だったポスト五輪の発注端境期で、建設市場は建築を中心に競争が激化している。五輪級の起爆剤となるイベントの予定がない中で、「50年のカーボンニュートラルに向けた取り組みは大きな市場に成長する」(大手ゼネコントップ)との見方もあり、新たな市場に期待が高まっている。
21年4~9月期決算では大手ゼネコンを中心に各社が営業利益を減少させた。市場環境は「コロナ禍による(発注量減少の)トンネルは抜けた」(ゼネコン関係者)との見方が強いが、競争の激化で受注時の利益の確保が困難になっている。こうした状況に「競争しているところには入らない。勝てる工事だけ取りにいく」(ゼネコン経営者)という姿勢のゼネコンも少なくない。各社が得意分野に磨きを掛ける動きが加速しそうだ。
資材価格の上昇も今後の懸念事項の一つ。21年、資材メーカー各社は相次いで値上げを表明。鋼材やセメントなど主要資材の価格上昇は現場の利益を圧迫する。「資材価格の上昇リスクは意識せざるを得ない」(ゼネコン経理担当者)と危機感を強めている。
新たな市場として注目されているカーボンニュートラルに向けては各社が対応を急いでいる。重機の稼働に使うエネルギーをクリーンエネルギーに切り替えたり、製造過程での二酸化炭素(CO2)排出量が少ないコンクリートを開発するなど、各社が設定した環境目標の達成を目指す。顧客の環境意識の高まりにも対応し、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)など環境配慮技術の開発にも力を注ぐ。
働き方改革では、現場の生産性向上に向けて各社が技術開発を急ぐ中、21年9月にゼネコン16社が施工ロボットやIoT(モノのインターネット)分野で技術連携するため「建設RXコンソーシアム」を立ち上げた。ベースになる研究や技術開発で連携しコストと労力を抑えながら、独自性が発揮できる分野に各社が経営資源を配分。生産性などを高め、より健全な競争ができる環境を整えることが狙いだ。業界の課題解決に向けて技術や知恵を結集しようとする動きに注目が集まる。
時間外労働の罰則付き上限規制適用は24年4月に迫っている。4週8休を9割以上達成するゼネコンも出てきており、22年は休暇取得や時間外労働削減など取り組みの仕上げ段階に入る1年とも言える。建設業が働き方や将来性で魅力的な業界になれるか、重要な局面に入っている。
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