2022年1月20日木曜日

【施工は五洋建設JV】多摩川スカイブリッジ、台風危機乗り越え3月に開通へ

多摩川スカイブリッジは羽田空港周辺や京浜臨海部の活性化で重要なインフラになる
(東京都提供)

  羽田空港(東京都大田区)周辺と京浜臨海部の活性化の鍵を握る「多摩川スカイブリッジ」が工事中の難局を乗り越え3月に開通する。多摩川をはさんで東京都と川崎市をつなぎ、東京都側は国際線の空港ターミナル駅が近い。川崎市側には国や企業の研究所などが集まっている。人や物の流れがスムーズになることでビジネスが活発化し、国際競争力の強化につながることも期待される。

 大田区羽田空港2と川崎市川崎区を結ぶ橋梁建設は2016年度に始まった。台船を使って橋桁を川の上から設置する方法や手延べ機を使った送り出し工法、クレーンで1ブロックずつ張り出す方法で施工した。最大の危機は19年9月の台風来襲。もともと川底が浅かったが「川上から石や砂が運ばれて川底がさらに浅くなった」(都担当者)。主力工法を担う台船の航行が難しくなり、工事が一時ストップした。浚渫工事をはさんで再開したが工期が1年ほど後ろ倒しになる要因にもなった。この時の台風は千葉県のゴルフ練習場の鉄柱を倒壊させるなど関東地方に甚大な被害をもたらした。

 今月下旬~2月上旬に完成し、3月12日に車両や人が通れるようになる。多摩川に架かる橋の中で一番河口に近く、延長は約675メートルある。幅は17・3~21・3メートル。2車線の車道(幅7・5メートル)と、車道の両脇に歩道・自転車道(幅4・9メートル)が通っている。

 両岸の地域は国家戦略特区に指定されている。都側には京急空港線と東京モノレールの「羽田空港第3ターミナル駅」と、大規模複合施設などがある「羽田グローバルウイングズ」が、川崎市側には医療系の研究機関が集まる「キングスカイフロント」が広がる。

 これまで多摩川の最河口部にあった橋は多摩川スカイブリッジから約2キロ上流にある「大師橋」だった。渋滞も多く、第3ターミナル駅からキングスカイフロントには車で15~20分かかっていた。新たな橋だと1分ほどで渡ることができる。

橋は羽田空港第3ターミナル駅に近接する

 川崎市の新たな橋への期待は大きい。世界で一番ビジネスのしやすい環境を整備することで、世界から資金や人材、企業が集まる国際ビジネス拠点の形成を目指している。キングスカイフロントには現在20棟の建物が立ち、官民合わせて70機関が研究所などを構えている。同市の担当者は「人や物の行き来がしやすくなることで産業同士の連携が容易になり相乗効果の創出につながる」と橋が開通するメリットを強調する。

 多摩川スカイブリッジ架設は東京都と川崎市が事業主体となり、約300億円を投じた。五洋建設・日立造船・不動テトラ・横河ブリッジ・本間組・高田機工JVが設計・施工を手掛けている。

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