2022年1月4日火曜日

【2022展望】専門工事業、外国人材の確保に危機感

21年11月に都内で開いた配管職種初の特定技能1号試験
(全国配管工事業協同組合連合会提供)

 コロナ禍で労働者不足が今年大きな問題になるのではないかと、専門工事業界の中で懸念する声が上がっている。前年は事業量がそれほど伸びず受注単価は下落傾向にあると言われているが、労働者不足がなぜ指摘されているか。海外との往来を規制するコロナ対策の長期化で外国人材の出国者数が増え、入国者数が減っているためだ。外国人材を多く受け入れている業種で今後、深刻な人材難になる可能性も出てきている。

 全国鉄筋工事業協会(全鉄筋、岩田正吾会長)がまとめた会員企業の21年度就労人口調査結果によると、鉄筋工事業の外国人就労者数は7647人で、全就業者数の18・2%を占めた。おおむね5人に1人が外国人労働者という割合で、いまや外国人材抜きでの作業は考えられなくなっている。

 現在、技能実習生はコロナ禍で在留期間(3年間)が延長され、国内の仕事に従事しているが、ある鉄筋工事会社のトップは、「早く帰国したいという外国人実習生が増えており、彼らが一斉に帰国し始めると、それを補うだけの新たな外国人技能実習生は確保できないのではないか」と言う。

 新たに創設された外国人特定技能者数も伸び悩んでいる。建設技能人材機構(JAC、三野輪賢二理事長)と専門工事業協会などが連携して行う特定技能評価試験もコロナ禍で思うように開催できておらず、海外で実施する試験を急きょ国内試験に切り替え、対応するケースも増えている。ある専門工事会社の幹部は「担い手確保に向け、日本人労働者の入職に取り組んでいるが、なかなか定着しない。技能実習生や特定技能の外国人材が減れば都市部を中心に、今後業務に支障を来すこともあるかもしれない」と、危機感を募らせる。

 技能労働者の処遇改善を目的に導入されたCCUSは技能労働者登録が70万人を超え、運営する建設業振興基金が掲げた本年度の目標値はクリアできそうだが、技能レベルに応じた4段階評価のレベル判定システムや、技能労働者を雇用する企業の「見える化」評価は、計画通りには進んでいない。

 建設産業専門団体連合会(建専連)の岩田正吾会長は、技能労働者の資格と経験年数に基づくレベルごとの最低賃金と、それを担保するための業種ごとの標準単価を22年3月末までに作成する意向を表明した。仕事量の多寡で変動してきた技能労働者の賃金を安定させるため、工種ごとの標準単価を提示。1次下請企業の過度な安値受注を抑制し、元請団体や監督官庁、労働者団体ら建設業界に広く理解を求めていく方針だ。

 働き方改革を実現し、高齢化が進む技能労働者をどう確保していくのか。頼りの外国人材も思うように確保ができなくなれば、専門工事業界だけの問題にとどまらず、一気に業界全体の喫緊の課題となる可能性もある。

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