建築評論家の馬場璋造氏は1990~2013年、会員に向けて音声メディア「今月の建築デザイン情報」を毎月発行していた。巻頭部で社会と建築界について熱く語る馬場氏の言葉に多くの方が耳を傾けたことだろう▼小欄の筆者も声を掛けていただき、このメディアで国際建築家連合(UIA)イタリア・トリノ大会(08年開催)の模様をリポートしたことがある。相手が話しやすい雰囲気を作りつつも、本質に迫る鋭い問いを投げ掛ける馬場氏。雑誌『新建築』の編集長を務めた編集者としての一面を見ることができた▼昨年12月に馬場氏が86歳で亡くなった。公平で誠実な目で都市や建築を俯瞰(ふかん)しながら建築界の人々を叱咤(しった)激励し、ある時は警鐘を鳴らしてきた人。建築界の代弁者として社会に都市や建築の本来の在り方も提唱した▼馬場氏は「世紀末は遅れてやってくる」と話した。1920年代に近代建築の方向性が定まり建築の20世紀が始まる。同様に建築の21世紀も2020年代に評価基準が定まると確信していた▼建築の21世紀を日本の建築界に託し、今も温かく励ましているに違いない。
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