2022年1月17日月曜日

【中堅世代】それぞれの建設業・305

思うように進められなかった会議進行。悔しさや先輩の助言を成長の糧にした

 ◇地域に根付く建設業の役割実感◇

  長野太郎さん(仮名)は東北地方にある建設業団体の事務局で職員として働いている。入職して11年目。今は事業部と総務部を兼務し、会議や講習会の開催準備、助成金の申請・報告、行政機関に提出する書類の作成など、幅広い仕事を任されている。

 25歳の時に転職し団体職員の仕事に就いた。幼少の頃から建物が造られていく過程や建物自体を眺めるのが好きだった。建設業に関わる仕事がしたいと思った時、職員募集の話を耳にした。

 転職当初は、聞き慣れない建設機械の名称や資格の種類などを覚えることに四苦八苦した。さまざまなことを少しずつ覚え、仕事に慣れ始めた頃、青年部の会議進行を任されるようになった。

 担当し始めた当初は「どのような資料を用意すればいいか」「どうすれば資料の内容が分かりやすく伝わるのか」、疑問や不安が十分に解消できないまま会議に臨むことがたびたびあった。資料や説明のボリュームが足らず、あっという間に終わってしまう会議。「出席するため各地から時間を割いて集まった参加者に申し訳ない」という思いが募った。会議の進行が思うようにいかず、知識の浅さや経験の足りなさを痛感した。

 会議には先輩の職員も同席していたが、いつも進行を任された。ある時、思い切って悩みを相談してみると、「自分で考え、自分の言葉で伝えれば自然とつかめる。教えられたものをそのまま言ってしまえば、その場しのぎの対応になる。経験あるのみだから悩まなくても大丈夫」という答えが返ってきた。胸のつかえが取れたような気がした。教えられる立場から後輩たちに教える立場に変わった今、先輩が掛けてくれた言葉の意味がより分かるようになった。

 今の職場で働き始めてすぐ、東日本大震災が起こった。災害の発生直後は被害の大きかった場所を訪れることが難しく、メディアの情報も限られた。それでも先輩職員らと一緒に、できる範囲で被災地の視察や壊れた重機の集計などに当たった。

 無我夢中で仕事をしていた時、目の当たりにしたのが生まれ育った地域の復旧・復興に奮闘する会員企業の姿だった。現場の最前線に立つ各社の社員や作業員は、ほぼ全員が自らも被災した。それでも「地域のために」と死力を尽くす姿に心を打たれた。「地域に根付いた建設業者の必要性や重要性」を実感した。

 東北エリアの建設業を取り巻く環境は厳しく、先行きを楽観できる状況にはない。転換期の渦中にあるともいえる。会員企業のためにできることは何か。自分の役割を果たしながら、後に続く後輩のために「日々勉強の姿勢を崩さず前に進み続けたい」。明るい未来を築くためにも若い世代に「少しでも建設業に興味があればぜひ挑戦してもらいたい」と思っている。

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