日本建築学会がカーボンニュートラル(CN)への対応を加速している。昨年7月に脱炭素都市・建築タスクフォース(TF)を立ち上げ、多岐にわたる分野で議論を深めてきた。国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が最新の報告書を発表するなど国際的な動きも進展しており、日本の建築界による対応は必須の情勢だ。同学会としての今後の取り組みを田辺新一会長に聞いた。
--CNへの認識は。
「菅義偉前首相が2050年のCNを目指すと発言して以降、雰囲気がガラッと変わった。昨年4月には温室効果ガスを30年度に13年度比で46%削減する目標が出された。相当難しいが、先進国に残っていけるかどうかの目標値となる。材料も含めると排出量のうち4割くらいを住宅・建築部門が占めている。われわれがゼロにしないとCNは実現できない」
「IPCC第3作業部会の第6次評価報告書(要約版)では、25年までにピークアウトさせないといけないと言っている。あと3年しかない。台風や豪雨など今まで考えられないような災害が起きており、もっと増える可能性がある。後の世代に大変な社会を引き継ぐ訳にはいかない」
--この1年の活動は。
「TFで問題点を洗い出して3月にシンポジウムを開いた。課題設定が明確になった。とにかく裾野が広い。コンクリートや鉄など材料の製造にエネルギーが使用されている。地震対策で堅固な建物にすると材料が増えるように、構造との両立も課題だ。施工での排出もゼロにしていかなければいけない。運用時の二酸化炭素(CO2)排出量は株式市場で評価される。構造も材料も金融にも関係する」
「私自身は、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)を提案してきた。CNにとって絶対に必要だが十分ではない。現在は運用の割合が大きいが、ZEB化していくと、運用の割合が減り材料や施工、解体後の廃棄が重要になってくる」
--今後に向けては。
「4月に特別調査委員会を立ち上げた。構造や環境の先生にも入ってもらった。ワーキンググループ(WG)で分野ごとに継続して議論していく。秋の大会で総合研究協議会を開く予定だ。耐震と防火に合わせて、省エネ・再エネは必須のものだ。ただ既存建築への対応は相当難しい。我慢を強いるのではなく、効率を高める良いイメージにしていく必要がある。正しいデータを提供して社会をCNに向けていくことが役割だ」
「産業革命によって建築物は高層化し、冷房や照明、エレベーターなどさまざまな設備が取り入れられた。快適さを保ちながらCNを実現していくには、産業革命に匹敵する革命が求められる。再開発などは、エネルギー効率が悪い建築物を置き換えたり改修したりする発想に立って進めるべきだろう。建築はCNに貢献できる。若い人は自分の仕事が社会貢献につながると自信を持って取り組んでほしい」。
source https://www.decn.co.jp/?p=141891
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