2017年8月23日水曜日

【駆け出しのころ】青木あすなろ建設取締役専務執行役員・小野寺弘幸氏

 ◇仕事が面白くなってほしい◇

 小さい頃から、大工だった祖父の建てている家を見てきました。私もものを造るのが好きで、母親に聞くとブロックで家や城を造って遊んでいる子どもだったようです。中学生になって好きが高じ、建築の専門誌を読むようになりました。でも私が住む田舎の本屋では買えず、東京・渋谷にいたおばに頼んで送ってもらったりしていました。

 小松建設工業(現青木あすなろ建設)に入社し、最初に配属されたのは都営住宅の建築現場です。4月末の休日に同期入社の2人で現場に行くと、所長から「仮配属の新入社員が休みの日に何で出てくるのか。ちゃんと休め」と怒られたのには驚きました。この所長は労働組合の委員長も務められ、現場の休みが日曜日だけだった時代に土曜日の半休を早くから取り入れて交代で休めるようにするなど、先進的な考えを持つ方でした。

 入社2年目に担当したのは、所長と私の2人しか社員がいない現場で、いきなり何でも自分でやらなければいけない環境に追い込まれました。分からないなりに努力しましたが、いろいろな失敗をしました。初めて捨てコンを打った時のことです。私はポンプ車と生コン車を手配したのですが、コンクリートをならしてくれる左官屋さんを頼んでいませんでした。現場で「左官屋さんはいないの?」と言われるまで分からず、だれもやってくれる人がいないので自分でコテを持ってならしました。手がマメだらけになったのを思い出します。

 大らかな所長には、私がやりたいようにやらせていただきました。分からないことは本を読んだり、電話で先輩や同期に聞いたりもし、この現場で得た経験は非常に大きかったと思います。

 現場ではコミュニケーションが大切です。新人時代は職人さんたちから「監督さん」ではなく、早く名前で呼んでもらえるようにならなくてはだめだと考えていました。二つ目の現場で初めて「小野寺さん」と言ってもらった時のことはよく覚えています。

 先日、かつて工期が非常に厳しく、24時間体制で完成させた集合住宅を久しぶりに見る機会がありました。築年数から既に大規模修繕が行われているとは思いますが、大変きれいな状態でした。手掛けた建物をきれいに使っていただけているのはうれしいものです。

 仕事は好きになれば面白くもなります。若い人たちには、もともとはものづくりが好きで会社に入ったのですから、それぞれの仕事でやりがいを見付けてほしいと思います。言われたことだけをやるのではなく、自分が興味を持ったものには失敗を恐れずにチャレンジし、難しい仕事にも前向きに取り組んでいってほしいと期待します。

 (おのでら・ひろゆき)1983年日大理工学部建築学科卒、小松建設工業(現青木あすなろ建設)入社。上席執行役員大阪建築本店長、常務執行役員東京建築本店長、専務執行役員建築事業本部統括本部長兼東京建築本店長などを経て、2017年6月から現職。埼玉県出身、58歳。

27歳の頃、休日に子ども行った動物園での一枚

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