2020年3月30日月曜日

【回転窓】ザハ・ハディドの新国立競技場

 英国の建築家ザハ・ハディド氏(1950~2016年)が亡くなって明日で5回目の命日。生前にデザインした建築が世界各地で誕生し、死去後にザハ事務所がコンペで取ったプロジェクトも進行中だ▼幾何学的な曲線、直線、鋭角が織り成す流動的でダイナミックな外観が特徴のザハ建築は時として物議をかもした。来年に開催は延期されたが、東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる国立競技場の当初案もその一つ▼世界からデザイン案を募る国際コンペで選ばれた完成イメージ図を見た誰もが、近未来的な流線形の大屋根に強いインパクトを受けた。だが総工費が大幅に膨らんだことに批判が集まり、15年7月に白紙撤回された▼当時、業界内では設計や施工の発注方法で注文合戦が繰り広げられ、日本全体でデザインやコストを巡る激論が巻き起こった。この騒動で新競技場建設プロジェクトが国民に近くなり、良いスタジアム、良いスポーツ文化を作ろうとの意識が高まっていったように感じた▼ザハ氏のデザイン案は実現しなかったが、新しい国立競技場を国民のものにした。そんな役割は果たしたのだろう。

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