2016年2月15日月曜日

【駆け出しのころ】新井組取締役執行役員土木本部長・三木隆氏


 ◇仕事のモットーは「効率と集中」◇

 大学時代は体育会系の部で水球に明け暮れていたため、就職活動をした記憶がほとんどありません。自分が生まれた兵庫県にあるゼネコンという理由で新井組の入社試験を受けました。

 当時の新井辰一社長と面接でお会いし、「『寄らば大樹の陰』になるか、それとも君は私たちと一緒に内容において日本一の会社を目指すか」と質問されました。どう答えたかは覚えていないのですが、他社を受けていないことを考えると、その言葉に引かれて「大きな会社の一つの歯車にはなりたくない」と思ったのではないでしょうか。

 最初に配属された現場は、三重県の大規模な造成工事でした。現場に慣れ始めていたある時、いつも通りに指示を出したつもりが、石頭ハンマーを持った石工さんに怒鳴られながら追い回されたことがありました。これには本当に怖い思いをしました。後で分かったのですが、少し仕事を覚えた気になり、何十年という経験を持ったその職人さんに高飛車な言い方で指示をしてしまった結果でした。人との接し方で大いに反省する出来事になりました。

 次に担当した道路工事は、一つの現場にトンネル工事や構造物工事、土工事など多くの工種があり、ここで土木の基礎を学ぶことができました。得られた知識もさることながら、印象に残っているのは、「仕事は要領よく集中してやれよ。後は寝ていても、休んでいてもいい」という所長の言葉です。私が現場でバタバタしながら無駄な動きをしていたのだと思います。

 それからはいかに効率的に仕事をするかを考えるようになり、非常に残業が少ない人間となりました。今でもこの考え方は変わっていません。

 その後で最も印象に残っているのは、阪神・淡路大震災です。地震発生後、大阪の現場に被害がないことを確認し、その足で西宮市の本社に入りました。それから数週間、協力会社の人たちと共に会社で寝泊まりし、人命救助やインフラの応急復旧に当たります。自分たちの造った構造物がかくも簡単に自然の力で壊れるものかと感じた一方で、インフラ整備の重要性をあらためて認識する経験となりました。

 後輩や次代の建設業を担う若い人たちには、自分たちの仕事に使命感を持ち続けてほしいと思います。どんな場面でも問題意識を持って取り組むことも大切です。常に今よりも良い方法がないか、改善すべき点はないかを、それぞれの立場で考えて仕事をすることが重要です。そうすれば個人の能力を高められ、結果的には組織や会社を変えていくことにもつながるはずです。

 (みき・たかし)1981年立命館大理工学部土木工学科卒、新井組入社。関西本店土木技術統轄部土木工事部課長、本店土木工事部部長、東京本店土木工事部長、土木本部土木部統括部長、執行役員土木本部長などを経て、14年3月から現職。兵庫県出身、57歳。

現場に勤務していた当時、社内表彰で。
入社10年目だった


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