山形県酒田市の海向寺で即身仏を見てきた。即身仏とは、ミイラのように現世に体を残し人々を救済しようという究極の修行の形。同寺には全国で唯一、忠海上人と円明海上人という2体が現存する▼即身仏になるには、まず山ごもりをして穀物を断ち木の実だけを食べる「木食もくじき修行」に励む。体の水分や脂肪分をそぎ落としてから寺に戻り、地中に設けた石室にこもって、命尽きるまでお経を読み続けたそうだ。相当に屈強な人物だったのだろう▼極限まで体力を落とす必要があるため、修行に失敗して途中で亡くなってしまうこともあるという。同寺の住職も務めた鉄門海上人は、そうした一人だ。途中で病死したが、即身仏のように残されたと伝えられている▼鉄門海上人は、社会事業に尽力したことでも知られる。険しい山道を越えるのに人々が苦労していたため、寄進を募って隧道ずいどうを通す道路建設に取り組んだ。山形県鶴岡市には感謝を込めた石碑が今も残る▼歴史をひもとくと、インフラの話が絡むことが少なくない。説明してくれた同寺の関係者が鉄門海上人の功績を誇らしげに語る姿が印象的だった。
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