2016年2月1日月曜日

【中堅世代】それぞれの建設業・124/市民として建設業を理解している

資格取得を目指して努力する人たちの気持ちが分かる
 今年37歳になる佐藤哲明さん(仮名)。ある建築関係団体の事務局の職員になって4年目を迎えている。資格取得を目指す建築士の卵たちの手伝いをする今の仕事にやりがいを感じ始めてきたところだ。

 有名私立大学の文学部を卒業し、アルバイトで生計を立てながら小説家を目指していた佐藤さんは、4年前、母校の教務課で派遣職員として働いていた。その時に、この大学の非常勤講師として勤務していた今の勤め先の団体の理事の授業をサポートする仕事を担当したのがきっかけで、理事に誘われ、団体の職員になった。

 事務局では、理事や会員の会議の準備、広報誌の編集などを担当しているが、中でも最も重要なのが、団体の大きな収入源となっている1、2級建築士資格試験対策の講習会の開催準備と受講生のサポートだ。

 事務局に入った当初は、建築と土木の区別も分からず、建設業といえば、「世間一般によく言われる3Kや談合」など決してクリーンなイメージを持ってはいなかった。当然、建築関係の専門知識はまったくなく、大学の教務課時代と変わらない事務仕事だけを淡々とこなす日々が続いた。講習会を開いた時に毎回行う受講生へのアンケートでクレームを受けても、「何で俺が?」「そんな専門的なこと分かんないよ」などと煩わしさしか感じていなかった。

 それが4年近くがたった今では大きく変わった。「何か特別なきっかけがあったわけではないが、理事の先生方と話し、日々の仕事をこなしていくうちに、だんだんと建築のことを勉強するようになっていった」。

 佐藤さんが所属する団体は、木造建築文化の継承と発展を主な活動目的し、伝統的な木造建築の技術・技能の研究を行っている。そのため寺社や古民家など伝統木造建築の保存・修復に関する仕事をしてきた理事が多く在籍している。そうした理事たちと接して話を聞く機会が増えるにつれ、「人々の生活や国を支えているという自負がある。すごい人ばかりだと感じるようになった」。

 もちろん、これが建設業すべてのイメージを決定付けるものではないが、佐藤さんにとっては、自身が接してきた理事や会員、受講生一人一人が建設業界のすべてであり、その真摯しんしな姿勢が、建設業のイメージを変えていったことは間違いない。

 今も小説家になる夢は捨てていない。プライベートの時間は、小説だけでなく詩や短歌の創作活動に割いている。だからこそ、建築士の資格取得を目指し、日々努力する建築家の卵たちの気持ちが分かる面もあると感じる。

 この仕事をずっと続けていくのかという問いには、「いや、それは…」と口を濁すが、「今は建設業というフィールドの中で、建築士になろうと、自分と同じように夢見る人たちの手助けをしたいと思っている」と話す。「経験豊富な理事の方々との良い縁に恵まれ、良い経験ができている。自分は建設の専門家ではないが、一般市民としてみれば、建設業を理解している方になれているかな」。将来、事務局を離れる日が来るとしても、建設業を応援する立場は変わらないと思っている。

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