カレー屋チェーンが廃棄依頼したカツの横流し問題が発覚して半月余。大きな事件もフルスピードで「消費」してしまうのが現代のマスメディア。続報の扱いもすっかり小さくなったが、もちろん問題が解決したわけではない▼横流し食品はカツ以外にもあり、業者間で転売が繰り返されて店頭にかなりの量が並んでいたそうだ。消費者のあずかり知らぬ所での「残飯市場」の存在をうかがわせる▼このニュースに、作家・ジャーナリストの辺見庸さんがかつて『もの食う人びと』でルポしたバングラデシュ・ダッカの残飯市場を思い出した。金持ちが夜ごと催すパーティーの食べ残しを専門業者がうまく加工して提供。スラムの貧民は日々、激安残飯で糊口をしのぐ▼同じ残飯市場でも、片や世界有数の飽食・グルメ大国、片や国民の多くが食うや食わずの貧困国。似て非なるとはこのことだろう。農水省の統計では、日本で食べられるのに捨てられる食品は年間642万トン。残飯市場成立の背景にはこうした大量廃棄がある▼新しいニュースもすぐ飽きて捨て去るかのようなメディアの報道ぶりが重なって見える。
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