マンホールの「ふた」をこよなく愛する「マンホーラー」が全国から集結-。暮らしに欠かせない社会基盤の一つである下水道への興味・関心を深めてもらおうと、「マンホールサミット埼玉2017」が14日、埼玉県川越市のウェスタ川越で開かれた。マンホールグッズの収集家から近くに住む親子連れまで約3000人が来場。愛好家や専門家によるリレートークでは、マンホールへの熱い思いが語られた。
イベントを主催したのは下水道広報プラットホーム(GKP)。6回目となる今回は、流域下水道50周年を迎えた埼玉県などとの共催により実施した。来場者数は過去最大を記録したという。リレートークの司会役を務めたミス日本「水の天使」の須藤櫻子さんは、「下水道事業の入り口であるマンホールは、魅力ある世界への扉だ」と紹介。GKPの栗原秀人企画運営委員会副委員長(メタウォーター技監)は、「興味のあるところからマンホールを楽しんでいただきたい」と呼び掛けた。
リレートークは、マンホールふたの写真を紹介するホームページ「マンホールGO」の管理人である出水享さんから開始。広島カープや桃太郎がデザインされたマンホールふたなどを紹介し、「マンホールの意味を知るだけでも、地域を知るきっかけになる」と語った。学校に通った地域など自身にゆかりのある10枚の写真を「わたしにとってのマンホールの履歴書」として紹介した。
NHKの国際放送局アナウンサーである山本ミッシェールさんも、「文化や風習など1枚のふたから学ぶことが多い」と語った。マンホールふたを目にして、平家物語の舞台となった地域に立っていることを知った体験を披露。「マンホールは新たな異文化コミュニケーションのツールになる。地味で目立たないふたこそ、美意識が高い」と述べ、訪日外国人に日本のマンホールの素晴らしさを伝えようと提案した。ロボットを用いた下水道検査技術など取材を通じて知った最新動向も説明した。
行政の立場から語ったのは同県下水道局の若狭公一主任。下水道の内部調査や維持管理作業の大変さにも触れつつ、「健全な水環境を引き継ぐことをいつも考えている。お金がかかることをしっかりと認識してもらうことが必要だ」と指摘。「マンホーラーになって、最終的には下水道マンになってほしい」と呼び掛けた。
マンホールふたを製造・販売している「日之出水道機器」で広報を担当する高橋璃花子さんは、地域の特徴を記したデザインや、直径60センチという統一されたフレームにデザインが凝縮されていることなどを、マンホールふたの魅力として挙げた。「マンホールさんの潜在的な魅力はすごい。心を込めることで自然と気持ちが届き、魅力が伝わる。伝わった時の反応が楽しい」と笑顔で話した。
同社では、マンホール情報に関するメールマガジンを配信しているほか、マンホールカードの製作や、「マンホールどら焼き」といった関連グッズの販売も行うなど多様な角度からマンホールのPRに取り組んでいるという。この日は、埼玉県内の58種類のマンホールふたが屋外に展示され、マンホールふたと並んで記念撮影をする親子連れなども見られた。
□高校生が下水道漫画制作、「伝える」ことが「知る」きっかけに□
イベントに合わせて、埼玉県が流域下水道50周年特別企画として制作した漫画が披露された。小学生向けに下水道の仕組みや役割を紹介する冊子で、川越工業と越谷西、草加東の3高校の漫画部の生徒たちが連携して描き上げた。
タイトルは「下水道ってなあに?」。県のイメージキャラクターである「コバトン」と「さいたまっち」が、下水管や処理場などを冒険し、クマムシなど微生物をモチーフにしたキャラクターと出会いながら下水の処理工程などを学んでいく。汚泥の再資源化や発電への活用、さらには水資源が循環しながら利用されていることも描いている。
生徒たちは、ストーリーを考えるに当たって下水処理場を見学した。「地下の下水処理場は未知の世界に来たような感じで面白かった」と越谷西高漫画文芸部の永田大輔さんは振り返る。永田さんは、微生物が下水処理に活躍していることに興味を持ち、ストーリーに組み入れた。
草加東高漫画研究部の兎洞葵衣さんは、「下水処理は結構大変みたいだが、普段は考えない。そういうところに目を向けてほしい」と語る。3校で手分けして制作したので構成に苦労したが、楽しんで作業をしたという。
「下水として流れたものが再生することがすごい。『水はすごい!』ということを子どもたちに伝えたい」と話すのは、川越工業高漫画文芸研究同好会の野中千裕さん。これからは節水にも気を配ろうと考えている。
3人とも、これまでは下水についての知識がほとんど無かったという。今回の漫画制作は、高校生たちに下水のことを知ってもらう意味でも、良いきっかけになったようだ。
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