一般市民に建設業の魅力や意義を伝える「地方発」の取り組みが全国各地で続々と動きだしている。あるところでは技術者集団が、またあるところでは民間企業が自発的に活動を展開中。業界内外の賛同者を増やしながら、市民との貴重な接点となっている。
九州橋梁・構造工学研究会(福岡市)の研究分科会として産官学の土木技術者有志が立ち上げたのが「ツタワルドボク」。発足後の約4年で、技術者と市民がカフェで語り合うトークイベントなどを企画。土木構造物の見学会や建設機械の体験会、中学校の美術授業のプロデュースなど、現在も活動のバラエティーが広がり続けている。
代表を務める福岡北九州高速道路公社の片山英資氏は、道路の維持管理投資の増加に関する情報がネガティブに報道されてしまった経験に歯がゆさを感じていた。「技術者として伝えるという技術を学び、実践しなければならないと決意した」ことが活動につながった。
メンバーには新聞やテレビ、広告業界などの関係者、いわば「ツタエルプロ」も名を連ねる。情報がねじ曲がって伝わることを恐れるあまり、「市民の心を動かすための遊び心とユーモアを持った伝え方ができなくなっていた」との反省があったからだ。
昨春、3日間に渡り開催した「天神ドボク大学」と銘打ったイベントも好評。参加した市民からはリクエストの声も上がっている。
フェイスブックやインスタグラムといった人気のSNS(インターネット交流サイト)を活用した情報発信に取り組むウェブサイト「みんなのどぼく」。土木現場の訪問記や土木にまつわる豆知識などをほぼ毎日のペースで更新している。
運営するのは、建設業向け施工管理ソフトを開発・販売する建設システム(静岡県富士市)。「使いやすい製品を提供するのはもちろんだが、ほかにも建設業界のためにできることはないか」。建設業界が直面する担い手不足などの課題解決を目指し、社会貢献活動として14年に始めた。
同社広報・企画制作部の鈴木千晴氏によると、コンテンツ制作はすべて自前。SNSを通じて賛同企業を募り、鈴木氏が取材に飛び回っているという。登場する企業や現場は、地元・静岡に限らず東北や四国など幅広い。
SNSの利点の一つは、一般市民の反応に直接触れられること。「(企業の中には)記事にして良い反応を目の当たりにすると自信や誇りを取り戻し、次に会う時には笑顔になっていることもある」と鈴木氏。「建設業界に若い人たちがやりがいを持って入職してもらえることが最終目標」という。
どちらも建設業界では珍しい取り組みだが、ツタワルドボクの片山氏は「同志との出会いを大切にして全国に仲間を増やし、その勢いを加速させたい」と意気込む。全国各地で同様の取り組みが広がっていくか注目だ。
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