「価格ありきの入札に戻る方向に動いている」。不安の声が建設業団体の幹部から漏れ聞こえる▼懸念の種は、小池百合子東京都知事が主導する工事や委託業務などの入札契約制度見直しだ。都は現在、最低制限価格制度の運用や総合評価方式などの抜本見直しを検討している▼基準額を下回れば一律で失格にする最低制限価格制度は行き過ぎた低価格受注を防ぐのが狙い。企業の技術力を重視する総合評価方式は工事や業務の品質確保のために導入された。いずれも市民が安全・快適に暮らせる良質な社会資本整備を推進するための仕組みだ▼建設業には大地震などで被災したインフラの早期復旧を担う大切な役割もある。高い技術力を持つ企業を確保するために、受注者が適正な利潤を得られ、安定した経営ができる制度を整えるのは行政の責務といえる▼小池知事は「賢い税金支出」を目指すが、価格にばかり目を向ける改革は、企業のたたき合いと消耗戦を生み、品質低下や雇用の悪化、ひいては災害対応力の劣化も招きかねない。拙速な結論は禍根を残す。真の「都民ファースト」のために腰を据えた議論を願いたい。
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