2017年がスタートした。19年にラグビーワールドカップ、20年には東京オリンピック・パラリンピックの開催を控える日本。昨年にはスポーツ関連産業を成長戦略の柱に据える動きが顕在化。多くの集客が見込めるスタジアム、アリーナを地域発展の核にする取り組みの胎動も見え始めた。国や地方自治体による施設整備・改修計画は全国各地で動いており、ハードとソフトの両面で動向が注目される。
間もなく完成を迎える北九州スタジアムのメインスタンド (提供:北九州市) |
新設プロジェクトの動きを見ると、北九州市小倉北区で整備中の球技専用スタジアムが3月に開業を迎える。昨年末、同市は新スタジアムの愛称名が「ミクニワールドスタジアム北九州」に決まったと発表。小倉駅から徒歩7分とういう好立地のスタジアムが、同市のにぎわい創出にどのような影響を与えるのか、行政やクラブ、市民が連携した取り組みが期待される。1月末までに工事が完了し、市に施設が引き渡される。2月18日ラグビーのプレシーズンマッチ(サンウルブズVSトップリーグオールスター)が行われた後、3月12日には開業式典と市民イベント、ギラヴァンツ北九州の試合が予定されている。
北九州スタジアムの全景。こけら落としは2月に予定されている (提供:北九州市) |
セレッソ大阪が本拠地として使用する「キンチョウスタジアム」(大阪市東住吉区)の第3期改修も動きが出そうだ。クラブが発表しているプロジェクトのスケジュールは17~19年。50億円を投資して収容人数を4万人規模まで拡大すると共に、大規模な緑化や商業施設の併設などにより、まちづくりを担う都市型スタジアムを目指すとしている。「着工時期は現時点で未定」(セレッソ大阪スポーツクラブ)だが、サポーターなどから建設資金を募る活動を2月に開幕する17年シーズンから開始する予定だという。
スタジアム整備構想では、経済産業省の「魅力あるスタジアム・アリーナを核としたまちづくりに関する計画策定等事業」に採択されたFC今治、モンテディオ山形など五つのプロジェクトで、事業の各受託者が3月末をめどに実現に向けた計画を取りまとめ、経産省に成果を報告する。FC今治は23年までに1万5000人規模の複合型スタジアムの整備を目指している。
スタジアムの新設計画では、広島の新サッカースタジアム構想も目が離せない。広島県・市、商工会議所、サンフレッチェ広島による協議が建設地決定でどのような着地点を見出すのか、地元関係者や市民、広島サポーターはもちろん全国的に見ても関心は高いだろう。
◇実施設計履行期限は3月末◇
京都スタジアム(仮称)の完成イメージ (提供:京都府) |
現在の花園ラグビー場 (提供:東大阪市) |
熊谷ラグビー場の改修イメージ (提供:熊谷市) |
17年から始動するプロジェクトではJリーグとDAZN(ダ・ゾーン)、NTTグループが展開する「スマートスタジアム事業」も注目だ。
スタジアムの高速・高密度通信環境整備、情報サービス提供などICT(情報通信技術)をフル活用する取り組みは新たな観戦スタイルの確立、スタジアムの周辺を巻き込んだ地域・産業振興にどう貢献していくのか。世界最先端のスマートスタジアムと言われ、NFLの名門・サンフランシスコ49ersが本拠地にするリーバイススタジアム(米カリフォルニア州サンタクララ)のような施設が日本にも誕生するのか、その動向を見守りたい。
すでに昨シーズン後半から大宮アルディージャの本拠地・NAC5スタジアム(さいたま市大宮区)でトライアルが始動。国内にあるスタジアムの多くが行政所有の施設であり、プロジェクトを実現する過程では各クラブと行政の連携がこれまで以上に必要になりそうだ。
◇沖縄アリーナ、着工に向け準備進む◇
沖縄アリーナの完成イメージ |
ハード整備とまちづくりを一体的に進める取り組みが沖縄市で始まる |
スポーツ庁が取り組む「スタジアム・アリーナ改革推進事業」の概要 |
新しい形のスタジアム・アリーナ整備に追い風が吹く中で、自治体やクラブ、地域がどのような取り組みを具体化していくのか、17年は企画力と行動力、決断力がこれまで以上に試される1年になりそうだ。
0 comments :
コメントを投稿