◇国も仮設住宅の整備支援◇
熊本県を中心に続く地震で避難生活を強いられている住民への支援の一環で、避難所の環境改善や応急仮設住宅の整備に向けた動きが本格化してきた。
建築家の坂茂氏(写真中央)が東日本大震災の際に考案した紙管とカーテン布を使った「避難所用間仕切りシステム」を熊本市内の小学校の体育館に24日に導入した。
県と市は引き続き坂氏の協力を得ながら他の避難所にも同システムを積極活用する。仮設住宅の仕様検討や整備の進め方などでも国を含めて連携を強化していく方針だ。
熊本県内では14日から続く地震による住家被害は全壊、半壊、一部破損を合わせて1万棟以上に達する。24日時点で600カ所の36市町村が避難所を開設しており、避難者数は約6万人に上る。
最初の地震発生から10日以上が経過し、避難所や車中で寝泊まりする市民の健康被害のほか、プライバシーが確保できない集団生活による精神的なストレスなど、避難先の生活環境の改善が大きな課題になっている。
熊本市内の避難所で坂氏の間仕切りシステムを導入したのは市立帯山西小学校の体育館。余震が続いて危険と判断して一時閉鎖した体育館の安全性を確認し、避難所として再開するに当たり、避難者のプライバシーの確保のために紙と布で仕切った個室を簡単に素早く作れる同システムが採用された。
24日に行われた体育館での設営作業を視察した蒲島郁夫熊本県知事は「間仕切りシステムにより、ストレスなどで避難者が受けている痛みを最小化できる。
今後の快適な避難所のモデルになるだろう」と強調。大西一史熊本市長は「体制が整ったところから、被災者のニーズ調査を踏まえて間仕切りシステムを積極的に導入していきたい」との考えを示した。
坂氏は同システムの使用に関する協定を1月に締結した大分県が熊本県側にシステム使用を働き掛けた経緯を踏まえ、「自治体など関係者間の連携がうまくつながり、初動期としては東日本大震災に比べて避難者の方々の生活を改善する良い形ができた」と説明した。
次に取り組む仮設住宅の整備については「従来の平屋タイプだけでなく、住み続けたいと思えるほど気持ちがよく、快適な仮設住宅を早く用意する必要がある」と訴えた。
県は東日本大震災当時の岩手県の例を参考に、県全域で2200戸の仮設住宅が必要になると試算。先行して西原村に50戸を建設する計画だ。
国土交通省は岩手、宮城、福島3県と都市再生機構の協力を得て、仮設住宅の建設関連業務を支援する職員8人を熊本県庁に25日に派遣した。今後さらに増員を検討し、避難者が少しでも安心して生活できる住環境の創出に取り組む。