◇すごく良い経験になった。機会があればまた行ってみたい◇
第57次南極観測隊の夏隊(34人)に参加した飛島建設首都圏建築支店の後藤猛さん(47)が、昨年12月から今年2月までの約40日間にわたる任務を終えて3月に帰国した。
風力発電装置2号機の設置などに取り組み、予定していたすべての作業を計画通り遂行。後藤さんは「美しい自然と大学の先生など畑違いの知り合いができたのが財産。すごく良い経験になった」と振り返った。
後藤さんは、設営部門(建築・土木)の一人として南極へ行き、昭和基地周辺で▽基本観測棟工事の基礎コンクリート、高床鉄骨工事▽風力発電装置2号機建設工事▽第2車庫兼ヘリ格納庫スロープ工事-など7件の工事を指揮した。
最大の難関は風力発電装置の建設。夏の間に設置場所を決め、運用を開始するところまで進める必要があった。現地では設置に適した風が吹き抜け、岩盤がある場所を探した後、アンカー、捨てコンクリートを打って基礎を構築。鉄骨の組み立てには16トンクレーンに代え、35トンクレーンを初導入し、効率作業を実現した。
コンクリートの製造は、電動ミキサーや重機を使うが、数量の管理はバケツに入れて行った。「人力のため人数がそろわないとできない。他の作業と調整しながら進めた」と後藤さん。完成までに33日間を要し、延べ232人が作業に参加した。
建設の専門家は後藤さんを入れて4人だけ。今回は女性隊員が越冬隊も合わせると10人(南極観測船「しらせ」の同行者を含めると計20人)で過去最多となり、力仕事以外の細かい作業をお願いするなど、適切な配置に努めたという。
しらせの接岸後、機材を氷上輸送する時に16トンクレーンの油圧ホースが故障した。代えはなく、機械隊員が機転を利かし別の機械のホースを代用した。「今回は特にクレーンを使う作業が多かったので、首の皮一枚でつながった」とエピソードを披露した。
帰国後、最初にしたかったのはカツ丼を食べること。自宅で作って食べたという。後藤さんは「工事はある程度想像通り進んだ点もあれば、反省点もある。機会があればまた行ってみたい」と意欲を見せた。
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