2016年4月12日火曜日

【巨大建設コンサルが見据えるのは…】イアン・チュンAECOMアジア副社長が土木学会で講演

 1990年代から世界各地でM&A(企業合併・買収)を繰り返し、年商2兆円の巨大建設コンサルタント会社となった米国のAECOM。そのアジア土木インフラ部門の責任者であるイアン・チュン副社長が8日、東京・四谷の土木学会で「AECOM社の成長戦略としてのM&A」と題して講演した。

 チュン氏は「多様な地域と分野での企業を持つことで、市場対応力が強化され、より機敏に環境変化に対応できる」とM&Aの効果を語った。

 この講演は、日本企業の海外戦略を考えるきっかけにしようと同学会が「建設産業グローバルビジョン講演会」として毎年行っている企画で、今回は「建設産業のM&Aに学ぶ」編。チュン氏をはじめ、国土交通省総合政策局海外プロジェクト推進課の岡積敏雄国際建設管理官とAECOMジャパンの栄枝秀樹社長も講演した。

 AECOMは、90年代から世界各地で建設コンサルタント企業の買収を積極展開。15年1月には約4000億円で米エンジニアリング・建設管理会社のURSを76億ドルで買収した。現在までに約60社を傘下に収め、現在は従業員9万人(買収前3000人)、年商180億ドル(同3・7億ドル)と世界トップの建設コンサルタント会社になっている。

 チュン氏は、AECOMのM&A戦略について「最も重視するのは買収後の経営統治だ。買収先の企業のカルチャー(文化)、風土を見ることが大切で、当社と全く異なる企業とはうまくいかない」と説明。買収に当たってはデューデリジェンス(資産価値の適正評価)を徹底し、マネジメント方法、内部統制の仕組み、業務上で抱える問題点などを調査した上で決めることが重要だと強調した。

 URSの買収については「10年で売上高を倍にすると表明した会長の方針に沿うとともに、当社の(市場や事業分野などで)足りない部分を埋めようと考え、最もシナジー(相乗効果)が期待できると相手と判断した」と説明。「買収後には、弱かった石油・ガス分野が強くなり、さらに米国事業が一段と強化された。クライアントの裾野が広がるとともに、人材が増えたことで業務の効率性が高まった」と述べた。

 「M&Aを行うと、地域拡大による事業の相乗効果により、市場や景気のサイクルに左右されない経営が可能になる」とも指摘。「例えば市場に問題があれば他市場に注力し、ある分野が苦戦すれば別の分野に人材を割り振る。より機敏に環境変化に対応でき、収益拡大する」とそのメリットを語った。

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